ブロンズ・フェイス さーしーえー
((o(。>ω<。)o))下にコミックバナー置いたぇー!
あ、ちっと丁寧語に直しました(笑)
「ふぁぁ……。どぅ? サイズは、ピッタシだと思うけど」
「がんばりまひ、たはわははわぁ……!」
「「「「「「 …… 」」」」」」
私たちは、自分たちの鎧の事を、
" ブロンズ・フェイス "───。
そう、呼んでいました。
拾い集めた安価な銅の装甲、破片、武器──。
それらを闇街の鍛冶屋に粗野な鎧にしてもらい、
自らで、拙い改造を施し続けた、
ツギハギだらけの、鎧。
顔の装甲は、
ただ、亀裂を刺し貫いただけ。
各所の噛み合いは、
お世辞にも良いとは言えず。
身体に当たる所は叩き潰し、
外れた部品は、縛り付ける。
何とか、やってきたのです。
限界だったようにも……思います。
だから──あんな怪異で、死にかけた。
──。
さて、義賊と狂銀は、宣言どおり。
朝には鎧を、返してくれます。
くれたの、ですが────……。
私は、代表だ。
代弁者だ。
問おう。
「…………これは、何ですか?」
「はぃ? ……何って、そりゃ──」
「──" ブロンズ・メイル "、ですっ」
「「「「「「 ………… 」」」」」」
私の知ってるブロンズ・メイルと、
ぜったい、何もかもが──違った。
仲間の、顔を見ます。
「……」
「「……」」
「「「……」」」
……うん。
おそろいの、
見事な " ブロンズ・フェイス " ですね……。
「……質問を何点か」
「どーぞ」
「えーっ」
「……このブロンズ・メイル(仮)のヘッドには……覗き口がありません」
「そうね」
「うん」
「……なぜ、前が見えるのですか」
ナトリ方面の土地には、
ノッペラボーという魔物が出るそうですよ。
「……顔周りには、ガラスが使われているわ」
「ガラスですって?」
顔という弱点を守る箇所に?
「ただのガラスじゃないわ……"強化ガラス"よ。違う素材と、サンドイッチになっていて……あー、ワイヤー繊維も挟んでいるから、つまり──」
「顔の装甲は、そのヨロイの中で一番頑丈に出来ています」
「「「「「「……!」」」」」」
繊維状の素材が……、
積層構造に、なっているという事……?
そんな……高度な技術を……?
……、一夜で、造った鎧が?
「あー、ちょっと材料が足りなかったのよ……へそにも回したし、関節部も、まーまー凝った造りにしたからね……、ふぁあ……!」
「たいへんでしたぁ」
……、関節……。
まさに、そこも聞きたかったのですが……。
メーチやハルコ達が、
横で、銅色の腕を、
グァングァン、動かしています。
「……イヴ。これ、おかしい……」
「ぁ、ああ……。関節部の抵抗が、全くねぇ……」
鎧を着ているのです。
腕や足、腰周りの関節が動かせる範囲は、
普通なら……かなり狭まってしまいます。
素早い動きで隙を突く暗殺職にとって、
これは致命的な欠点でしょう。
が、この鎧は……。
足が……頭まで上がる……?
関節の装甲は、あるのに……?
「関節の間の……これ、チェーンが網状になっているんだけど……」
「……動きやすいです。異常に。あと、内側に貼ってあるのは、タウロス系の革ですか?」
「よく分かったわね。その通りよ」
「革は食いません」
……。
女、6人分のフルメイルの鎧の内側、
全てに、タウロスレザー加工を……?
「何これ……全然、痛くない……」
「いや、おかしいよ……」
おかしい。
「あの……」
「あに?」
「しつもん、おーいなー」
「修理する、との事でしたが……」
「そ、そうね」
「ぅ、うん」
「…………全く、別物になっているんですが」
しかも、最高級の仕様で。
「い、色々あったのよ……! あによ! あんか文句あんのっっ!?」
「ぜっ、ぜいたくだぞぉー!」
確かに、贅沢です。
未だに……私たちは戸惑っています。
この鎧は、エルダースミスクラスの構造処理だと思うのですが……。
これは一晩で出来て良いアイテムではありません。
しかも6つも。
「……代金は?」
「いらないわ。その代わり、私たちの事は秘密になさい」
「ぜったいだぞー」
……美味すぎる、話です……。
それに、得体が知れません。
上位の闇の魔物を殺しきる実力。
突然、空間を歪めて出現する館。
そして、非常識な鎧の鋳造技術。
私たち全員が……彼女たちを、
イレギュラーだと思っていました。
「……」
「「?」」
──私は、構えを作ります。
「「──!」」
他の5人も、私に続きます。
昨日の全てが夢ではないかと、
疑っていたとも、言えるのでしょう。
「──ぉ、おい! ちょアンタら……!」
「またケンカー?」
恩がある故、ナイフは使いません。
純粋な、格闘戦です。
金と銀の少女、それぞれに。
3人ずつ────攻撃を加えます。
「おい、てめ──」
「やんのか──」
義賊と狂銀は、非常に落ち着いて、
私たちの集団攻撃を、いなしました。
体幹が──ぶれません。
数回、同時と言える殴りや蹴りを、
手で受け、体捌きで流し、
後ろに目があるかのような動きもします。
義賊は、殴る前の腕を抑え込み。
狂銀は、蹴る足を蹴って止めます。
異常な反射速度です。
私たちは……数分で、飛び退きました。
「……気は済んだ?」
「殺気がないです」
「「「「「「 ………… 」」」」」」
朝日の射す、大きな玄関。
いくつも、分かった事があります。
コイツらは……ヤバい。
格が、違います。
殴った時の受けで、
なぜ、あんな感触になるの。
硬いのでは、ないのです。
まるで、クッションに受け止められているよう。
力加減で……吸収されている。
あの、金属鎧なのに。
私たちのランクは、飾りではない。
それを……3人同時に、あんな──……。
自然に、口が動きました。
「なぜ」
「「 ? 」」
「なぜ……それほどの力を、隠すのですか」
素直に、質問する。
「「 それが私たちの、幸せじゃあないから 」」
「「「「「「 …… 」」」」」」
微塵の迷いも無く。
それは、答えられました。
「はん。ヨロイは、気に入った?」
当たり前でしょう。
今の模擬戦闘で、わかりました。
この関節可動の広さは、至高です。
ヘッドメイルも、全く蒸れません。
なんてものを、造るんでしょう。
「それは──"賄賂"、よ。口止め料に、さしあげるわ」
「代わりに、私たちの全てを、人に喋ってはダメ」
「「「「「「 …… 」」」」」」
安いようで、高い料金なのかも知れません。
間違いなく、私たちが出会った中で、
一番強い、二人組です。
は……それが、絵本の敵味方とは。
世界は私が思うより、ユーモラスなものです。
「ひとつ、答えなさい」
──!
「ホールエルの街で、薬草を盗み、冒険者を襲っているのは、あなた達?」
「「「「「「 ……!? 」」」」」」
や、……。
……"薬草"……?
…………"やくそう"………?
そう、言ったの…………?
「……私たちじゃねーよ」
ハルコが言います。
「ここ数週間は、私たちは森の奥にいました」
メーチが言います。
「薬草なんて……要りません」
私が、言いました。
「私たちは……確かに、ある治療法を探しています。ですが、それは薬草ごときで解決するような問題では、決してないのです」
「「……」」
「恥を忍び、お願いします。貴女方は……私の左眼の古傷を、完治させる程の治癒魔法の使い手です」
「「「……!!」」」
「お、おい!」
「イヴ……あなた」
5人には、相談していませんでした。
私たちに、薬草など要らないのです。
「治していただきたい、人が居ます。報酬は払います」
「「……、……」」
「私たちの……家族なのです。今から、ご同行願いたい──」
「「……」」
非常に、図々しいお願いでしょう。
私たちは恐らく、
彼女たちに会っていなければ、
魔物にやられ、死んでいました。
命の恩人に私たちは斬りかかり。
豪華なディナーをご馳走になり。
風呂付きの宿に一泊し。
ガラクタ同然の鎧まで仕立て直してもらったのです。
自分を殺したくなる図々しさは、
守るべきものの前で、
その価値を────失います。
私は、意を決していました。
「……同行は、できないわ」
「私たちには、私たちの用事があります」
「今までに私たちが稼いだ全てを、払うと言っても?」
「「「「「──…… 」」」」」
銅の仲間たちは。
もう……何も言いませんでした。
目の前の、僅かな可能性の煌めきを、
皆……私を含め、感じ取っていたのです。
「……額、ではないの……」
「お金が欲しいワケじゃありません」
「……ご同行は、願えない……?」
「自分勝手なコト言ってるって、わかってはいるのよね?」
「私たちは、私たちの幸せのために、動きます」
「…………、……」
ダメ、でしょう、ね……。
目の前の黄金と白銀の瞳には、
確かな決意と意志が込められています。
私は……──みじめですね。
「貴女たちは……"信念を持ったバケモノ"なのですね」
「「 っ! 」」
「知っていますか? そういうのを……"英雄"と言うのですよ」
「……、イヴ……」
私にしては、珍しい軽口でした。
自嘲も……あったのでしょう。
黄金の義賊は、あっけらかんと答えます。
「──はっ! 絵本の中では、とっくに"英雄"だわ」
「──ふふ。アンティを見たら、誰でも分かること」
……、……。
また、私たちは、探さなければならない。
ひとつかみの、可能性を。
「──……たいへん、お世話になりました。
約束通り、この事は、他言を──」
────ピン・・・!
何かが弾き飛ばされ。
私は、ソレを受け取った。
小さな──瓶、だ。
液体が──入っている。
「これは?」
「「……」」
金と銀の瞳は、
こちらを、じっと見ていました。
「あの……」
「「──"祝福されし精霊王の万能薬"──」」
「え……?」
「ふん。義賊は義賊として、振る舞いましょうか──」
「ひっそりと。それを、大切な人だけに使うがいい──」
陽射しは、少しだけ──。
朝を、通り抜けていきます。
「「 全ては物語、泡沫の夢──。
真実の全ては、遥かな御伽噺──── 」」
金と銀の声が、クスクスと、そろいました。
「あ、の……?」
「じゃーね。誰にもしゃべんなよ?」
「さらばだー!」
──。
気づくと、私たちは。
キラキラとする銅のヨロイと。
不思議な小瓶を持って。
朝の森の中に、立っていました。
「……、……」
「ぅそだぁ……」
「いみ、わかんねぇー……」
「……ビックリですね」
「やっぱり、夢だったんでしょうか……?」
「いや、新品の鎧、着てるでしょ……」
そう、確かに握られた、
……手の中の──小瓶。
「…………祝福されし……、精霊王の、万能薬……?」
私たちの向かう先は、決まっていました。
((((;゜Д゜))))ほぉー!










