キリノセントウ
久しぶりに、こういうのです(*´艸`*)
ちょっとリハビリかな?
──濃霧が、味方をした。
足音が、近づき。
水と闇の魔素を孕む風が、
姿見えぬ者たちの、体表を流れた。
仄かな、陽の光が反射し。
私たちは、
襲撃者たちが人の形であると。
正しく、認識した。
「 ──マイスナ、殺すなっ! 」
「 ちぇっ── 」
"透明人間"の最初の攻撃は、
背後から、行われた────。
「っ……──!」
確信があった。
首元を、ガントレットで庇う。
次の、瞬間────。
──ギィィいいァァアッッっぱぁん──・・・!!
摩擦音。
火花。
『────腕部装甲に損傷:無。
────敵:刃物での攻撃と断定。』
龍の鎧に、刃が負け。
鋭利は、光の粉となりて散る。
『>>>アサシンタイプだ、くそったれッッ──!!
>>>ぼくと同じタイプだ! 気をつけろッ──!!』
透明人間は、背後からナイフで、
私の首を狙ったのである。
問答無用で、殺しに来ていた。
「霧と光で、わかる──……」
「えいっ」
──ギィィいいん・・・!!!
マイスナの、
瞬時に硬化した腕の装甲が、
幻影の凶刃を、弾く──。
「何故、透明なの」
『────隠蔽のジェムの効果と予測。』
「チッ……。あたし、死ぬまでジェムのこと、大っ嫌いだわ──」
姿が見えない幽霊は、
ひとりだけではなかった。
クラウンは、足音にて分析する。
──ザッザッ、
──ザザザ・・・!!
──ザザっ!!
『────6名です。』
「マイスナっ! 人間っ!!」
「わかってる。でも、少しは怒っていいよね?」
殺すと、私が悲しむと、
マイスナは、わかっている。
でも、私を殺そうとした事も、
マイスナは、わかっている。
──ガキん! がギン!
と、火花が散った。
ちっ……。
いやらしい、攻撃。
「さっきから、急所ばっかり狙ってきてるよ」
「……」
少し考え、
周囲の目に見えぬ襲撃者たちに、
話しかける。
「なぜ、私たちを狙う」
返答は、なかった。
ザザザ……。
ザザザ──……。
ザザザ──……。
薄暗い森で、霧の流れを作りながら、
幻影の人影は、波を打つ。
……っ!
黒い、尾を引いている移動痕が目についた。
「……ふたり、黒いモヤのようなモンを、まとってるわ」
「そいつら、逃げそうだよ」
マイスナの言う通りだった。
ジェムで姿を隠す、見えざる襲撃者たちは。
ふたり、黒い霧のようなものが、
身体から出てやがる。
その"モヤ付き"は、
ここから離れていくように見てとれた──。
『>>>代わるか? ぼくの方が得意かも』
「いや、大丈夫……。対処できると思う」
『>>>オーライ。逃がすなよ』
『────敵性勢力のマーカーを表示。
────多方面の情報を統合。』
『C7:ドン、光の屈折率を計算して、敵のシルエットを投影するにゃ!』
『C3:クニャウンズが、それぞれ、ひとりずつ対応するみゃ! みゃうぅ〜〜こんな時にシーニャは何してるんみゃ〜〜!?』
──ヴぉヴぉヴぉん・・・!!
視覚に、"まさしく透明人間"といった、
絵本よろしくなシルエットが表示された。
オッケ、上等。いいねぇ。
まな板のフィッシュが見える。
で? シーニャがいない?
残ったネコ兄妹6人で、
敵6人分のシルエットを作ってんのか。
別にいーっしょ。
ガキンチョに、
首狩ってくるヤツらとの戦闘シーンなんて、
見せたくもないわ──。
「例の盗賊団なら、逃がすわけにはいかねぇ」
「アンティ、ちょっとはいいよね?」
「ああ。私もアンタに斬りかかられて、ずいぶんムカついてる」
やはり、襲撃者6人のウチのふたりは、
それぞれ、手と足から黒い煙のようなモンが出てる。
なんだ? 闇魔法でも使うのか……?
姿は見えにくいけど、逃げる速度が遅いな……?
「逃げれると思うな──」
マイスナが、ヤツらの足に向かって、
変形した腕から、銀の杭を撃ち出す。
──紫電が走った──。
────ギャゥオオオオンンン・・・!!
──────ギャゥオオオオンンン・・・!!
──キァイイン・・・!!
────パァァァァんん・・・!!
「はじかれた!」
〘------次弾を装填-☪︎.*・゜
------ナイフが視覚化して吹き飛んだわね-☪︎.*・゜
------バランスを崩してるわ-☪︎.*・゜〙
〘#──マイスナ、もう少し連射しろ。明らかな殺意なのだ。足を潰せ。死ななければ、容赦など要らぬだろう──〙
先生も、冷酷に判断する。
逃げる、黒い霧を纏った二人。
「クラウン」
『────レディ。
────左腕部に:サブマシンガンタイプの:
────射出体デバイスを構築。
────試作機ですが:威力は保証します。』
──ガチャ・・・!
── ギ ャ ゴ ゴ ッ ッ・・・ !!
『>>>装填した。足だ』
私とマイスナが再び、
射出体を形成した腕を向けると、
残った四人のウチの二人ずつが、
飛びかかってくる。
─── ガ ッ !!
─── ガ ギ ギ ッ ・・・ !!
仲間を逃がす気か……?
{{ 姑息なッッ!! ──ガルンッッ!! }}
『 ガルルルオオッッ……!! 』
「 待ちな 」
無視して撃った。
────ダダダッッ、ダダダッッ──!!
────ギャゥオオオオンンンッ・・・!!
『────双方:脚部に着弾を確認。
────敵装甲の一部の剥離を確認。』
〘------お相手さんが視覚化したわね-☪︎.*・゜
------口に含んでいたジェムが;
------吐き飛んだのかも-☪︎.*・゜〙
『>>>あれは……茶色い鎧か……? あっ、金属装甲か……!』
〘#……近くに行ってやれ。顔を見ないと気が済まん〙
は、けっこう先生もキレてんじゃないのよ。
ふたりずつ飛びかかられているが、
私とマイスナは、歩き出した。
──きん……。
──ギン……。
「「 ……!? 」」
「「 く……! 」」
そのまま歩き出されるとは、
思ってなかったのだろう。
足止めしようと抱きついていた襲撃者たちは、
ご丁寧に、露出しているヘソを狙ってきやがる。
ナイフだろうか。
いくつかの刺突は、
先輩の積層バリアに弾かれ。
いくつかの斬撃は、
ガルンのマントに防がれた──。
「「 な……!? 」」
「「 こっ……!? 」」
ずんずんと、歩く。
足に撃ち込んだ二人は、
そう、遠くない位置で、
上半身だけを、起こしていた。
脚の金属鎧が弾け飛び、
しかし、血は出ていなかった。
マイスナが言う。
「ね? ちゃんと、できたでしょ?」
「ふふ……」
マイスナも、だいぶ手加減してくれたようだ。
組み付いている四人のヤツらを無視し、
倒れた二人の元へ近づく────。
『>>>……! やはり、金属系の全身鎧だよ。しかし……あれは重装じゃないな……。"軽技職"ってクラスの使う……、軽装鎧に近いんじゃないかぃ? "軽装鎧で全身鎧"、ってのは……ぼくも、自分ときみたち以外では、初めて見たな……』
先輩が、隠蔽のジェムの効果が切れた襲撃者の装備を観察する。
私は、違うことが気になっていた。
「……装甲に、胸があるわ」
「どっちも、女の人?」
「ぐ……っ!」
「ぃ、……」
呻きが聞こえ。
組み付いているヤツらの攻撃が、
激しくなった。
ナイフを何度も振りかざしてくる。
ざけんな、てめぇら──。
──ぎゅぅぅうおおおおおおおんんん──ッッ!!!
「「……────ッッ!?」」
両腕に内蔵された歯車が回転し、
黄金の打撃を与える。
高速回転した肘打ちと裏拳は、
まぁ、オークなら一撃で食材だ。
──── ぐ ぉ お お ん ん ・・・!!
── ギ リ ガガガ ガ ァ ッ──……!!!
金属同士が、かち割れる音。
「うぁ、あっ・・・!?」
「ごっ・・・!?」
隠蔽のジェムが、解けた。
女だとは気づいていたけど、
ムカついてたので、
そのまま殴った。
「クラウン、ナックル」
『────レディ。』
── が し ゃ 、 こ 。
「 ら ぁ ── 」
装甲が所々、砕け散った女盗賊さんに。
まぁまぁの、パンチをブッ込む。
──キ ガ だ ぁ あ ん ・・・ !!
「ぐぇべ、ば……!」
「うぁっ……、ぇ!!」
不運にも、両サイドに、
それなりの太さの木があり。
鎧が砕け散った襲撃者さん達は、
強かに、体をぶつけた──。
「はん……茶色の金属鎧、か……。マイスナは? あっ……」
愛しの狂銀の方を見ると。
二人の襲撃者さんは、感電していた。
「うごごが、あ……!」
「……!! ……!?」
触られた所が、凍りついとる。
「こ、こえぇ……」
『────あれでは:逃げられませんね……。』
ま、"紫電の魔法使い"に組み付くなんざ、
バカのする事よねぇ……。
「よいしょー!!」
マイスナは、湯気の出ている襲撃者たちを、
隣の木の幹に、叩きつけた。
──どがしゃやああああんんんん・・・!!
「「ぐ、ぁ……、……」」
うわぁ……。
「な、何故に叩きつけたし!」
「アンティのマネー」
「わっ、私のせいかぁー!?」
マイスナ、恐ろしい子……。
さて、だいたい片付いたかな?
〘#……驚いたな……全員、女のようだ……〙
『>>>顔も全て覆うタイプの、お揃いの金属鎧だね……。ま、きみ達のお陰で、バッキバキに割れてるけど。はっはは──』
「「ぐ……」」
「「うぅ……」」
「「か、かはっ……」」
呻く襲撃者6人の中には、
フルヘルムが割れて、
長い髪が露出してる人もいる。
全身を覆い尽くすヨロイは、
まるで、動く金属人形のようだ。
でも、確かに中に、生きた人が入っている。
「……この人らが、例の盗賊団……かな?」
「アンティのヨロイと色が似てるねー」
ん? うーん……、
ま、ちょっと似てるかな……?
「ぐ、く……っ」
お腹を押さえて唸っている、
木に叩きつけた一人に、
近づいてみることにした。
{{ 気をつけて。昔っから、手負いは怖いものよ }}
『 ガルルルルルル…… 』
「おーらい……」
そっと……近づく。
へし割れた金属ヨロイから見えているのは、
──白い髪と、褐色の肌……!
「……」
「髪の色、私と似てる。肌はチョコ」
……。
なんで、私たちを──。
「お、まえ、たちは……」
「「……っ!」」
不意に、襲撃者から。
声がかかった。
「あいつらの、なかま、か……?」
「「……、ぇ……??」」
『────アンティ!。』
褐色さんの言葉を理解する前に、
クラウンが、焦りを言葉に表す。
『────アンティ……。
────隠蔽のジェムの効果が解除された事で:
────"分析"に成功しました。
────彼女の結果を:表示します──。』
「「 ……っ! 」」
襲撃者たちのメンバーの、分析結果。
私たちの視覚に、転送される──。
────ヴぉん……!
────────────────────
対象名【 キュイーヴル・クレフティス 】
種族:人間
性別:♀
年齢:20
暗殺職クラン:"銅の刑死者"/リーダー
所属:王立ギルド
状態:視覚低下 / 打撲・中
────────────────────
これ、は……っ!?
「銅の……、刑死者……ッ!?」
「……!」「く……」「うぅ……」
「がっ……」「ぃ、た……」「くそ……」
く、クラン、ですってぇええ……っ!?
"暗殺職クラン"というのは、
コトバの響きとしては、物騒だけど────、
これが、犯罪者としてはなく、
ギルドの扱っている"正式"な、
中クラス役職のことだとしたら──……!!
「王立ギルド、所属……のッ!?」
てことは……この女の人たちは──。
「" 冒険者 "、なのぉォオ……!?」
「えーっ」
「……」
銅の仮面のヒビ割れから、
青銅の瞳が、こちらを覗いた。
思わず、声を張り上げる──。
「あ、あ……あんたたちねぇっ!! 冒険者なら、なんで私たちを、いきなり襲って────…… 」
{{ ──ピエロちゃん!! ヤバいっ!! }}
えっ──……!?
イニィさんの声と共に、
辺りが、暗くなった。
ズ ォ ォ ぉ ・・・!
「……!? 日没……!?」
『────否定します。
────アンティ。
────これは──。』
『>>>いきなり、空気中の闇の魔素濃度が……跳ね上がりやがったんだ……っ!!』
「──!!」
「……アンティ」
空気が、霧が、黒い。
〘#……なんなのだ、これは……〙
〘------この;エフェクトは……!?-☪︎.*・゜〙
夜までの時間が、早まったみたいだ。
視界が、暗黒に包まれていく──。
オ オ オ オ オ オ ォ ォ ォ ──。
{{ ガルン!! ピエロちゃん達を、守りなさい!! }}
『 ガルルルルオオオオオオ……!!! 』
闇の濃霧は、吸い込むとマズいらしい。
ガルンのマントとコートが、
周囲の闇を吸い込み、
私とマイスナを守る。
「──ぐ!? が、が……」
「──!?」
「あっ……」
声に振り向いた。
半壊した銅のヨロイの女性たちは、
モロに黒い霧に、まとわりつかれている。
吸い込んで……しまっているの。
「……」
「アンティ、どうする?」
──────────────────────
どうしますか?▼
ほっといてトンズラする
装備品を強奪する
おんぶして逃げる
▼ 闇の霧を何とかする ──ピッ
ざまぁねぇな! と罵倒する
─────────────────────
「「 げほっ……、げほっ! 」」
「「 ぐ、ふぁぁ…… 」」
「「 くっ……! 」」
………〜〜〜〜〜〜!!!!!
「──〜〜〜〜くそったれが!! イニィさん!!」
{{ ──えっ!? }}
首元のマフラーに付いてたブローチフォークを外し、巨大化させ、"魔杖スリーフォウ"へと変形させる。
{{ ぴ、ピエロちゃん……!? }}
「 ── ど っ せ い !! 」
── ズ ド ォ オ オ ン ── !!!
十字架の杖を────、
私たち全員がいる中心の、地面に立てた。
「ガルンはそのまま私とマイスナを守れ!! イニィさんは、こいつらの周りの闇を、何とかしたぁげて!!」
{{ ッッ、ピエロちゃんっっ!! 私も攻撃に──…… }}
「 お ね が い ッッ !! 」
{{ ──……んもぅッッ!! しょーがないわねぇーっ!!! }}
──ぶぉおおおあああああ────・・・!!!
イニィさんの十字杖から、
空気の渦が巻き起こり。
銅のヨロイを纏いし乙女たちから、
漆黒の霧が、吹き晴れていく──。
「「「「「 ………ッッ!? 」」」」」
「こ、これは……」
よぉおし……。
これで私とマイスナが動いても、
半壊ヨロイさん達は、濃霧を吸い込まずに済む。
{{ この状態を維持するなら……私、動けないわよっ!? }}
「まかせな……。──ガルン! 私とマイスナんこと、頼んだぞ! 食いまくれ……!!!」
『 がっ……、ガルゥンンンッッ!!! 』
「いい子ね。──クラウン! 視覚を確保したい。プライス君が卵を焦がした厨房より、ヒドイ有り様だわ……。周囲、直径30メルトルテの空間を、圧縮した空気で続けざまに爆散しろ」
『────レディ。
────頻度と方向の詳細入力を。』
「テキトーで、ヘドが出そうな方向よ」
『────ふ。
────とても:分かりやすい指示ですね。』
──きゅるるるる……
──── バ ボ ん ッ ッ !!
──きゅぉおおお……
──── バ ボ ん ッ ッ !!
ユーモアに長けたスキルバディが、
空気の爆発を始める。
ソルギアの燃焼補助のための気体格納が、
こーゆぅ時にも役に立つってことね。
『>>>よし、視界が一部だが、確保できるな……』
〘#……何故いきなり、このような邪悪な霧に包まれたのだ……〙
ああ、くそ……。
マイスナに初めて会う前に、
こんな森に迷い込んだなら……、
オシッコちびって、
べそ泣きしまくってた自信があるわ……。
絵に描いたような、サイアクの森だ。
耳鳴りが、する気がした。
「マイスナ……?」
隣の嫁さんが静かなので見ると、
森の奥の一点を、ずーっと見ている。
「どした」
「きてる」
私も見る。
「先輩」
『>>>アナライズカード積層で作った光学レンズだ。二人共に、転送する』
〘#……ピントはこちらで合わせる。見ろ──〙
──キュキュキュ──……カチン!
────ジ────────。
「「……」」
あぁ……。
「くそ……」
「おおいね」
{{ 何が、見えるの──……!? }}
慌てなくても、イニィさん。
もうすぐ、聞こえるよ──……。
{{ ……!! }}
『 ガルルルルルルルルルルゥゥゥオオオオオ……!!! 』
〘#……犬か?〙
イエス。
だが、問題がある。
〘-----私の体を;使いなさい……☪︎.*・゜〙
精霊王サマは、だいたいどんな相手が来たのか、
想像が、ついたみたいだ。
── わんっ!
── わん、わんっ!
「「「 ぐっ……! 」」」
「「「 ……っ、……!! 」」」
ヨロイ半壊チームの反応を感じ、
理解した。
コイツらは──、
──アレから逃げてきたんじゃないか?
マイスナが、視線を微動だにせず、言う。
「このレンズ、はずして。もういらない」
「そうね……先輩」
『>>>……やる気かぃ?』
しゃーないでしょうよ。
『────来ました。』
わんっ!!
ワンッ!!
──バォォオオン……!!
はぁ……。
なんの、こたぁー、ない。
犬コロだ。
腰くらいのデカさの、黒い犬コロ共が、
まぁまぁ、たくさん、走ってきやがる。
問題は──ヤツらの顔だ。
「バォ、バオォオオンン……!!!」
「わんっ、わんっ!! フシュウルルルルル……!!」
〘#…………醜悪、だな……〙
ツラが、ポタタバターみたいに、
くってり、開いてやがる──……。
「ローザの体流由来の弾丸を撃ち込む」
『────レディ。
────両腕の換装を開始。』
きゅぅぅううううううういいいんん……!!
カチ、カチ、ガシャン────……!!!!!
「土に還んな、ゾンビ犬ども」
+(σ・ω・)σ ふぁっきん、
ゴートゥーヘール!










