ナメナメサイソク さーしーえー
だめだ、しゃっくりがとまらねぇ₍₍ ( ‾᷄꒫‾᷅ ) ₎₎
「さて、俺の依頼した薬草不足の調査の話だが……」
「あむあむ、うまい」
「……キッティ、あんた予想以上にモロにホイップよ? 洗ってきたら……? あんむ、モグモグ」
「あっはは……ここまでいったら、もう食べ終わってからお風呂で生まれ変わろうかと思いまして……」
「……俺の話、きいてる?」
キッティの顔についたクリームと苺を、
パクパク食っている義賊と狂銀よ。
……食ってくれるのは嬉しいが、
顔についたのは止めとけバカもん……。
「なめる」
「やめな」
「えっ……ま、マイスナさん!? それはダメですよ! 歳上のお姉さんの顔を舐めるなんて! まだ嫁入り前なんですから!」
「嫁入ったら、なーめるな」
「!?」
「キッティ気にすんな。この子、こゆトコあるから」
「きかんかバカもの共」
俺、スネるぞ。
キッティの顔に濡れタオルを投げつけながら、
「へぷぁあ!」アンティとマイスナに話を聞いた。
「……!? つまり……あの桃色娘に直接、会えたという事か──……ッ!」
「つーかヒゲイドさぁあん!!! 先に聖女さまがギルマス兼任してるって、おせーとぃてくださぃよォォー!!!」
「しらなかったです」
えっ? あ、すまん。
言ってなかったっけ?
あ? 名前も教えてもらってなかった?
それは……ひどいなぁ。
「いきなりの遭遇で、超・ビビったんですからねぇぇえー!!」
「さいしょは、おっかなかったです」
「し、しかし、よく会えたな……。それって凄い事なんだぞ……」
あの"幻の聖女"とまで言われている人見知り娘が……。
奇抜な格好の娘たちが成せる技か……?
怖いもの見たさ? レアエネミー扱い?
ま、まぁいいや。
詳しく話を聞くと、色々わかってくる。
アンティとマイスナは、
期待以上の情報量を集めてきてくれたようだ。
●ホールエルの街の南東側の地域の薬草が枯渇しているということ。
●盗賊騒ぎがあり、その者たちが薬草を盗っているかもしれないということ。
●それを知った冒険者たちが、やきもきして討伐クエストをギルドに促したが、ギルマスである聖女が許可しなかったこと。
●聖女は盗賊団を、高位な魔人などの勢力かもしれないと、かなり警戒しているということ。
「──わかりやすくまとめると、このような所か。桃色から話を聞いた後、教会前に陣取っていた冒険者たちは説得できたのか?」
「も、もも……。──……えぇ。すごい強い魔物の集団かもしれないから、薬草や回復薬不足の状態で街の外を散策するのは危険だって、本人の口から説明させたわ……」
「リビっち頑張ってたよ」
「──!? 冒険者たちの前に、聖女が姿を現したのか!?」
「え、えぇ……」
「すごい大声だしてたよ」
「……」
「……」
──パチクリ。
白いクリームまみれのキッティと目線を合わせた。
キッティは、
こんな顔面ホイップベタベタになってはいるが。
ドニオスの街で知らぬ者はいないほどの、
ベテランのギルド受付嬢だ。
聖女リビエステラが、
本っっっっっ当に人と全く会わない事を、
よぉおく知っている職員の一人である。
「ひゃわぁぁー……。東のギルマス聖女様が、教会前に集まった大勢の冒険者さん達を、自ら説得する、ですかぁー……」
「……正直に言うとだな、信じられんな……。そんなのは、一番めんどくさがってやらないタイプだと思ったがな、あの桃色は……」
王城の大臣クラスですら、
居留守キメ込むようなワガママ娘なんだぞ……。
素朴な疑問を、とびだし絵本にぶつける。
「……会えた事といい、お前ら、どうやったんだ?」
「な、ななななななな、ななな何にもしてないわよバカねヒゲイドさんったら向こうもギルマスなんだからたまには自分の口から説明するわよホホホホホホ……」
「私とアンティの言うことなら、リビっち何でも聞いてくれるよ?」
……コイツら、俺をナメてんのか?
「あの方がホイホイ何でも聞いてくれるなんて、有り得ないですよ、マイスナさんん……」
キッティが、呆れ笑いで俺と同じ気持ちを口にする。
つーか、気になるのはアンティの反応だ。
コイツ、今度は何やらかしやがった。
「あっ、あ! あのっ、んで、その聖女さまから、お手紙あずかってきましたよ!」
「なにィ?」
ワガママ桃から、俺に、だと……?
受け取った、妙に品の良い模様の封筒には、
確かに俺宛だという記載がある。
「どうなっているのやら……」
まだ上手く状況が飲み込めていないが、
とりあえず、封を切る。
やれやれ……ギルマス兼、聖女とはいえ、
13の娘っ子から手紙を貰う事があろうとは……。
……ん? そういえば、
何故、水晶球を使わないんだ?
わざわざ、手紙にした意図はなんだ?
まるで、要望を押し付けるような────。
「……、……」
すっげぇイヤな予感がしつつ、
手紙を広げる。
──ぺらぁ。
────────────────────
素敵な懐刀を お持ちですこと
そんなに心配してくださるなら
半月ほど お貸しいただけるかしら?
私はいたく 気に入っております
決して不自由など させません。
私は 目が覚めた思いです。
可哀想な 乙女の願い、
精霊王の 御名の元において
必ず通るように致します。
お姉さま方のご到着、
心よりお待ちしております。
" L "
────────────────────
「……、……」
……最後の方とか、脅しだな。
「お前ら、コレ読んだか?」
「えっ、いいえ」
「ひとのお手紙は読まないよ」
「ホレ」
──ぺらり。
アンティの持つ聖なる手紙を、
キッティとマイスナが覗き込む。
金の仮面の上からでも、
肌から血の気が引くのがわかった。
「にゃに、コレ……」
「お手紙?」
「アンティさんたち、これ……」
「……まァた、変な気に入られ方をしよってからに……!」
"その金と銀を貸さないと、聖女の権限を行使します"。
そういう内容の手紙である。
「ひゃ、ひゃわわぁぁー……す、すごい。直筆で"気に入っております"、なんて書いてありますよ!」
「……アンティ。マイスナ。これはもう、"イレギュラーコール"レベルの催促だ……。しかも、二人セットで、という要望付きとキてやがる」
「う、うぞぉ"……」
「リビっち、わたし達のこと呼んでる??」
呼んでるっつーか、抱きこもうとしてるっつーか。
「……おい、お前ら。正直に吐け。聖女リビエステラに、何をした。これは半分は脅し文句だか、もう半分は、お前達への確かな好意が見て取れる」
「え"っ……」
「んー?」
「──吐きやがれ。いったい何しでかした」
ギルマスの威厳を込めて、
ガン飛ばした。
「な"っ、何もっ、してませんってば……!!!//////」
「ちょっと"仲良し"見しただけだよ?」
「……"なかよし"?」
「わっ、ちょっ、バッ……!」
「ふんぐー」
ふんぐー、ってなぁ……。
「アンティさん……、もう認めてるようなもんですよ……。ていうか私、さっきのマイスナさんの、"私とアンティの言うことなら、リビっち何でも聞いてくれるよ?"……ってのが気になってるんですけれど……」
「ふむぐー。だってリビっち、もう私たちの下僕──」
────ふぎゅむ。
アンティがマイスナの口を押さえた。
「あなた達は何も聞いていません」
「…………」
「…………」
義賊よ……。
何故いきなり敬語なのだ……。
「ぷはぁ。げぼくいもうと」
「狂銀、お前今日寝れると思うな」
そして、今日も金と銀の、
低俗な争いが始まる────。
とっ組み合うバカ娘たちの横で、
クリーム受付嬢が、問いかけてきた。
「……ギルマス、どーしますぅ……?」
「知らん。聖女は怖い」
「し、身長3メルトルテもあって、何こどもみたいなこと言ってるんですかァ……」
バカもの。
相手は教会権力者、ナンバー2だぞ。
「……ふぅ。どっしり構えるのも、俺の役目だ」
「うっわぁ……。流れに任せる気だぁ……」
「あほぉぉー!」
「うななぁー!」
キンギンカンガン、キンギランギん──……!
「気にしたら、負けな時もある」
──ポイッ、ぱくっ。
俺は皿のヘコんだスポンジ生地を、
ひと欠片だけ、頬張った。
(っ´・ω・`c)しゃっくりぃー










