黄金の決意とべいびー さーしーえー
「私、"封筒"を目指します」
「はい?」
サルサさんにのせられて、思わず答える。
でも、軽い気持ちじゃない。
「みんなの手紙を守る、"封筒"に」
「あら、まぁ! ふふふ……」
ち、ちょっと、サルサさん……
そんなニヤニヤ笑わないでくださいよ……
「"クルルカン"なのに……ぷくく!」
ひ、ひどない?
完全にバカにされてるんだけど!
「ねぇ、聞くまいと思ってたんだけど、聞いていい?」
「なにをです」
「なんで、そんなカッコしてるの?」
ぐふぉッ……!!
一番ストレートな質問きたっ……!!
「し……正体を隠しているからです!!」
「ほぅえぇ〜〜……」
なんすかその返事!
15年間生きてきて、初めてききましたよ!
「顔みたい!! 仮面とって!」
「ダメです!!!」
サルサさん、抑えてください。
私、貴族に囲われるかもしれないんですよ!
「──おぅや。きれいにまとまったみたいだねぇ」
シマおばさんが、背中でドアを押して、入ってくる。
その腕の中には……
「わぁ〜……かわいい……!」
「ふん、その声だけ聞けば、そんなカッコしてるとは思えないねぇ!」
「ぐぅッ!」
や、やめましょう。
クルルカンは口の暴力に弱いんですよ?
「……おいでおいで」
「いや、サルサ……。まだ私が抱いてなきゃ動けないよぉ」
「ふふ、つい、ね」
気持ちはわかりますぅ……。
最初みた時は、肌が赤くて心配したくらいだけど、今は落ち着いて見られるから、また違うよね。
あぁ、かわいいぃぃ────!!!!
パンジーちゃんが、サルサさんの手に抱かれる。
あ、ああやって抱くんだ。
ほほぉ〜〜……
「ほぉら、パンジー、クルルカンだよぉ〜……」
サルサさん……人生のしょっぱなから、飛ばしすぎですよ。
こんな金色のピエロを見て育ったら、ロクな大人にはならんです。
じ〜〜…………。
うおぅ、超、見てるな……。
な、なんだ、この、こいつ何やってんだ感は……。
や、やめろ、私をそんな目で見るんじゃない……。
ぐおおぉぉぉぉ……。
「はっはっは! 赤ん坊でも、普通じゃないものは気になるんだね!」
「失礼です!! ……そう言えば、ゴリルさんは、娘さんが生まれたこと、知っているんですか?」
「いや、知らないねぇ。予定より早かったし。娘だと言うことも知らないだろうよ」
「え、えええええええ!!!」
そらあかん!! あかんやないの!!!
「は、はやく教えてあげないと!」
「どうやって?」
「え、や、だから、ドニオスに手紙を……」
「え、あんた、届けてくれるのかい?」
「あら、ほんとうに?」
え? なんでこんな、意外がるんだ?
「はい。私、今日ドニオスに帰りますよ?」
「ほ、本当かぃ? 郵送配達職ってのは、冗談かと思ってたよ!」
「はいぃ?」
な、なんで、わっちの目標が、冗談になんのですか……。
「いや、だってさ……郵送配達職なんて、儲けになんないだろう……」
「そ、そうなんです?」
「そんなんですって、あんた……だから無くなったんだよ?」
「私が現役の時代……には、知らない人もいたわね」
「大量の手紙を安い金で仕分けたり、荷物を運んだり、時間のかかる雑用ばかり! そりゃ、無くなるよ!」
「ええええええ……」
だ、だから、ギルドであんな目で見られたのかな……。
でも、手紙を届けるって、とても、大切な事だと思うんだけど……。
「普通は商人に頼んで、ついでに運んでもらうんだ。でも、小包は、たまに無くなるし、手紙は面倒だから、嫌われるんだよ」
「そ、それって、盗まれたり、拒否されるって事ですよね……」
「ああ……まぁ、それでも金に少し色つけりゃ、商人はちゃんと運んでくれるやつもいるよ」
「えええ……規定の料金もないんですか……」
「完全に無くなったのは、私が娘っ子だった時だねぇ……ずっと前から、無くなったり、臨時で復活したりの繰り返しだったんだよ!」
「ずっと前から廃れた職種なのは、間違いないわね」
「そ、そんな〜〜……」
そんな、不遇職だったなんて……。
ううう、こんな金ピカにまでなって……。
「でも、手紙がくるって、素敵ね」
「あ……」
サルサさんが、手紙を大事そうに見つめている。
「……そうさね。とても珍しい事になっちまったね。年に、2、3回、あるかないかだよ。……たまに延着した役所の通知だったりするしね」
「人から人への手紙は、とても嬉しいって、今、わかったわ。こうやって手元に残るもの!」
…………。
「────やっぱり、私、目指します」
「……郵送配達職を、かい?」
「はい」
────どんな、人の想いでも。
────どんな、場所だって。
────必ず、届けてやる。
『────レディ:オーバー。アンティ。
決意表明による行動指針の登録項目が更新されます。
各部流路接続完了。規格概念に反映を確認しました。
クラウンギアは、あなたの想いと共に、存在します。
───────────待機モードに入ります。』
あ、クラウンさん……いたんすね。
『────……。』
じ〜〜……………。
ぐおおぉぉぉぉ……。