神ズにケンカを売った聖女
今回は難産やった( *¯ ꒳¯*)
(マザー……!)
(レイズ……?)
何故ここで、その名がでるのか。
アンマイの混乱おさまる前に、
聖女リビエステラは、
さらに揺さぶりをかける。
「あら、違いまして? 王女殿下の誕生日の翌日、仲がよろしそうだったじゃありませんか♪」
「「……っ!!」」
「わたくし、パーティには出席しませんでしたが、一応、万一の事態に備えて、王城の第二正門には、ずうっと待機しておりましたの……♪ お気づきではなかったでしょうが、二階の窓から、お見送りさせていただきました♪」
「「……、……」」
国内随一の回復魔法の使い手である、
聖女リビエステラが、
シャンティちゃん……──つまり、
オルシャンティア王女殿下の、
誕生パーティに出席しなかったのは、
ひとえに注目のマトを奪わないための、
大人の事情による配慮である。
故に、王族の周りには護衛のため、
高品質のエリクサーを所持した暗殺職が、
わんさか隠れていた事は、言うまでもなく。
ちなみに、リビエステラの得意とする回復魔法は、
"広範囲の対象選択可能な持続回復効果"──、
" ディバイディング・エリアヒール "である。
つまり、彼女は王城外からの襲撃に備え、
万が一の時は応戦する騎士団を支援するために、
正門近くに配置されていたのである。
「「……、……」」
一方、" どのように城から脱出したか "を、
聖女に、ほぼ察せられていると解釈したアンマイは、
言葉をつぐみ、冷や汗をかいていた。
誓って、やましい事はしていない。
が──聖女にコッソリと見られていた。
その、事実。
(ややこしそうったら……ないわね……!)
(神官さんのカッコで逃げ出すの、見られてた……?)
──聖女は続ける。
「まさか、あなた達が──あの、大司教マザー・レイズと繋がっていたとは驚きました。わたくしは、彼女と敵対している訳ではありませんが──……」
「「──……!?」」
「……──聖教皇。聖女。と続いて、この国の地位的には、三番手にいる偉大な聖職者ですし……すぐ下にいる、大きすぎる経歴を持った大偉人の弱点……! など、知りたいっていうのは本音ですわね……♪」
「あ、あんた……っ!」
「む、むぅー!」
「ふふ……♪ さいしょは、あの方が送り込んできた間者かも? ──とも思ったのですが?」
「──ふ、ふざけ……っ!」
「──ち、ちがうもん……っ!」
この聖女の言葉を聞いて、
冗談じゃない! と思うアンマイである。
ただでさえ厄介な状況なのに、
自分たちがキッカケで、聖女と大司教に、
ケンカでも、おっぱじめられてみろ・・・!
慌てて弁明に入る!
「あ、あの人とは、ちょっとした縁があるだけよ……っ!」
「マザーはいい人だよ。今回の件は、あの人とは関係ないもんっ!」
なんで、あの人のフォローをしなきゃいけないのか……、
と思いつつも、大司教の優しさを感じ取っているが故に、
ついぞ庇いにかかるアンティとマイスナ──!
「──へぇ♪ じゃあ、知り合いだって事は否定しないのねっ♪ すごいわっ♪ こっぱ貴族じゃ、会話すら出来ないのよっ♪」
「「 ぐっ……! 」」
全ては、聖女の手のひらの内。
"話術"のスキルは、伊達ではない。
「──それに、あなた達って本当は、そういう喋りかたなのねっ♪ サバサバした黄金の義賊に、一途そうな狂銀、か……。ふふっ、いいわねっ♪ 私、そっちの方が好きよっ♪ その恰好に、とっても良く似合っているわっ♪」
「こ、こんやろ……」
「リビっち、やー」
聖女とギルマスを兼任する、
その才覚は凄まじく。
対話のリズムで場の空気を制し、
様々な情報を抜き取っていく、
聖女リビエステラ。
「ふふふ……♪」
その、ご尊顔は。
"あたらしいお人形"を手に入れた、
無垢な少女のソレである。
誰も知らない事を知った彼女は、
楽しそうに、笑った──。
「そっかー♪ マザー・レイズの息がかかってるなら、さっきのスキルは納得かなぁー♪」
「ぬっ……」
「ぇうー?」
──だが。
ここでの" マザー・レイズ "の存在は、
必ずしも悪い方向に転んでいる訳ではなかった。
聖女は内心、こう思っていたのである。
( レべルMAXの認識阻害を無視できるような鑑定もち、か……。当然、見つけ出したマザーは聖兵にして秘匿しておくわよね── )
この聖女の"深読み"は、
アンティ達の異質なスキルへの更なる追及を、
踏みとどめさせていた。
アンマイ真の特異性は、奇しくも、
マザーの恩恵によって守られていたのである。
そして、聖女は踏み込む。
そう、いささか不躾に──。
「──ねぇ、お姉様方っ♪ わたし、知りたいなぁ──っ♪ お姉さんたちが、他にどんな秘密を抱えてるのか♪」
「「……」」
「その鑑定能力の詳しい効果とか……、あ! 何なら仮面を外してくれてもいいのよっ♪」
「「 」」
「ほら、私いちおう、聖女ですしっ♪ ご挨拶も、かねて──ねっ♪」
聖女・リビエステラの。
──ここで、気の緩みがあった。
普段、人と触れぬ者が、
自分が優位だと認識し、陥る油断だ。
彼女は、大まかに相手のチカラを、
わかった気に、なっていたのだ。
自分は、情報強者だと────。
だが、当然。
彼女たちは。
"仮面で正体を隠した高位な神官"などではない──。
それは、
聖女の"おごり"と言うべきモノであった。
アンティ・キティラに寄り添う、
最も信頼を置くスキルバディ。
クラウンギア=アマテルの行使するスキル、
" 分析 "は────。
聖女リビエステラなどの想像で、
計り知れるようなものではない。
太陽を司りし神は、
星に拡がりし聖樹ネットワークを仲介し、
"SUNDAY – SERVER"と繋がっている。
神は、ゲームの世界の住人だったモノ達、
全ての大衆の知識を以て──、
────" 分析 " を実行するのだ────。
『────アンティ:少々時間を稼いでください。』
(……!?)
『────私が:この調子にのったチビッ子を:
────再スキャニングします。』
(……そっ!? そんなことをして、どうなるの)
『────この方は:
────人の動向を探る能力に長けています。
────ですが:その性格は:
────ずいぶんと湾曲しているようです。』
(く、クラウン……?)
『────調子にのった子供は:
────怒られて成長する。
────私は知っています。
────しかし……。
────恐らく彼女には:
────"怒れる者"がいないのでしょう。』
(ちょと、アンタ……?)
『────ならば:誰かが。
────お灸をすえてあげるべきでしょう。
────それに。
────こちらの情報ばかりを開示していては:
────少々:分が合いませんね──。』
(は、はいぃ……??)
『>>>はははははは……!
>>>後輩ちゃん、こういう事さ……!
>>>ぼくの嫁さんは、
>>>相手のデカい態度が気に食わないって言ってんのさ!』
(ぅ、ぅおいおいおいおい……!)
こんな時に何を言い出すのよ、と、
思わず顔をしかめたくなるアンティ・キティラ!
『>>>まったく、君によく似てきたねぇー!』
(わっ、私のせいだっての……っ!?)
〘#……くくくくく、確かに。少し、相手を舐め腐った態度が鼻につく子供ではある──〙
(きょ!? 教師とは思えないお言葉っ……!)
(先生ワルそう)
〘------ふふふふふ……☪︎.*・゜
------この聖女さん;いったい誰を相手に;
------デカい態度を取っているつもりかしら?☪︎.*・゜〙
(ローザが精霊王モードになってる!?)
(ぼんきゅっぼん)
やられ放題とも言える状況に、
箱庭の偉人たちが、活気づく──・・・!
〘#……何にせよ、このままではズルズルと、こちらの情報を聞き出されてしまうぞ! そうだな……。やはり、交渉に持ち込むには、"相手の弱み"となる情報を掴むべきであろう──〙
『>>>賛成ですねぇー。こんなちっちゃな女の子に、デカい顔されまくってると、イタズラ心が湧くよなぁ──!』
(せ、先輩までぇぇ……! なんちゅうこと言いだすかなぁ……!!)
(あ、アンティ、どうするの?)
〘------で? クラウン;
------何か手伝える事は?☪︎.*・゜〙
『────そうですね。
────では──・・・。』
──ぐぐ、ぐ。
(……! アンティ、私の、ヨロイから……!)
(……っ!)
マイスナの白銀のヨロイから、
"蕾"が、ニョキニョキと姿を現す──!
ぐぐ、ふわり──と。
聖なる花が、華開く──。
「──? それ、は……?」
聖女は、いきなり様変わりした、
白銀のウェディングドレスに、
つかの間、呆気に取られた。
世界で一番美しい華で飾られた、
ミスリル銀のドレスだったからである!
チャンスだ。
(──ちっ……。時間を稼げって言ったってね──!)
こちらから切り出すなら、今しかない。
アンティは、手探りで話しかける事にする。
敬語は綺麗に、忘れていた。
「……私たちは、そんな事を話しにきたんじゃないわ」
「……!」
「何故、盗賊団のクエストを棄却したの?」
「……、……」
次回、アンマイ情報戦……!?((o(。>ω<。)o))










