めいどりお さーしーえー
☆疲れている時のかば的思考回路
「ミッフィーちゃんの人形ふたつくらいあれば、改造してうさ丸にできるんじゃ……?」
「やめれ、胴があまる」
☆ 前回までの『はぐるまどらいぶ。』は? ☆
デッデレデッテテ・・・テテテ──テーン♪
「ギルマスなんでクエスト破棄った許さねぇ」
の総意を代表して、教会に乗り込んだ
絵本カポーこと、アンティとマイスナ達。
依頼料をふんだくろうと決意した二人の前を、
双子メイドたちが、颯爽と駆け抜けて行く──。
待ちぼうけ中に、モフモフとフニフニしたり、
キス死守百合バトルへと発展したりするアンマイ。
シーニャが第五サーバー、クイッククイーンを
秘密裏に回収しているとも知らず、激しさをさらに
増す運命の二人の元へ、近づく足音がある事に、
彼女たちは未だ、気づかないのであった──。
デッドロ、デッドロデッドロ、デンデンデン♪
パー、パー、パー、パ────ン♪
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⚙ HAGURUMA DRIVE ⚙
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© かばやきだれ
<(_ _*)>.*・゜
「……、……」
「み、見るですの、モナリー! 義賊と狂銀が戦っているんですの──っ!!」
「す、すごい取っ組み合いをしてるんですのっ──!!」
「「……」」
至近距離までの接近を許し、
私とオクさんは、
やぁやぁ、目が覚める思いだ。
オホン、ウェッホン。
……なんで、クラウンさん、
教えてくれへんのんなぁ……。
『────たまには:良い薬かと。』
〘------なんで;ウチのマネしてんのんなぁ☆〙
『>>>こりないねぇー』
〘#……やれやれ……盛る場所を選べと言っとろうが……!〙
すみませぇん……。
「「……///」」
あと二秒遅ければ、ヤバかった……。
なんでもないです。
まだケンカをしてると思われた方がマシなので、
私とマイスナは、そっ……と、
組み合っていた金銀フィンガーを解く。
決して、チチクリ愛っていたワケではない……!
えぇ、えぇ、ありませんったら……!
「「……//////」」
気恥しい私たちをよそに、
純粋な双子メイドちゃんたちが、
我らがモフモフ勇者を指さした!
「ほら、モナリー! あのラビットが、言ってた丸いヤツですの!」
「ただ太ってるんじゃないんですの! ほら、アレ……もう概念が丸いですのっ!!」
凄いこと言うなぁ。
「にょ、に"ょわ"ぁー……」
「くゆゅ!」
「まるい、ですね……。それに──」
ど──ドキンコ……!
双子メイドちゃんが連れてきた方が、
めっちゃ、こっちを見てらっさる……!
お上品な声が、裏庭に通った……!
「いきなり何事かと思いましたが……まさか本当に、あなた達の言う通りの状況になっていたとは……」
「えっへんなのですー!!」
「ミルルたちは、ウソはつかないのですぅー!!」
いばられておられる。
この黒髪メイドさんは──、
たぶん、20歳前後かな……?
ま、いきなりギルマスは出て来ないっか。
「参りましたね……」
とても、綺麗な人だ。
シックなメイド服に、
清楚にまとめられた黒髪が映える。
母さんに似た色で、ちょっと羨ましい。
"庭に義賊と狂銀がいる!"とでも、
ちびっ子メイドペアから言われたのかな?
表情は、かなり複雑そうだわぁ……。
「失礼ですが……あなた様方は──」
や、挨拶かましといた方がいいわね。
不法侵入の身だし。
食堂娘たるもの、常、礼節を重んじよ──。
さてさて……。
何だか、こなれてしまった動作が、
私の中で再生される。
ス──── 、 。
私は胸に手を当て、
軽くお辞儀をしよう。
マイスナが、前もって、
示し合わしたかのように、
優雅に続いた────。
────キン・・・。
────ギン・・・。
「──お初に、お目にかかります。
至高の配達職、
"アンティ・クルル"と──」
「──その、クランバディ、
"マイスナ・オクセン"と申します──」
「……──!」
「わぁ──……!」
「ですのぉ──……!」
……ですの?
にしてもマイスナ、
きれいに繋げてくるわね。
やりおる。
ふぅ────……と、息を……。
落ち着いて、吐き出しながら。
お辞儀した姿勢を保ち、待つ。
マントとツインテールが、
緩やかに、星に惹かれた。
「あっ、えっ……!? 」
「あのっ、いま、" プレミオムズ "って言いましたのっ……!?」
おっ。
"ミルル"と"チルル"という名前であろう、
ちびっ子ちゃんメイド達。
どうやら、
プレミオムズを、知ってるらしい?
これなら、何とかなるかな……?
「やはり──」
「「 ─ 」」
もう1つの、落ち着いた声は、
私たちにとって、意外なモノだった。
「──やはり、そうでございましたか……」
「「 ……! 」」
モナリーさんと呼ばれた、黒髪のメイドさん。
今、"やはり"って──……?
「「──…… 」」
見苦しくない程度に、
慌てて頭を上げてみる。
目の前に構えるメイドさんから、
キリリ、とした雰囲気が、伝わってきた──。
「お噂は、拝聴いたしております。最近、復活した"配達職"のプレミオムズは……"黄金の義賊クルルカン"の格好をしていて、その相棒は"狂銀オクセンフェルト"であると──」
「「──……!!」」
ま、マジか……!
そんな噂が、真反対の街まで広がっているの……!
「しかし……正門は、施錠していたはずですが?」
あ、やべ……。
メイドさんの瞳が、ピカリと光る。
なー……、正直に謝っか。
「ごめんなさい。跳び越えさせていただきました」
「申し訳ありません」
「と、とび……」
あはは……。
まさか、あの高さを、とは、
思ってなかったろぅなぁ……。
前に、ヒキ姉が、
カーディフの街の壁を跳び超えてて、
驚いたモンだけども。
同じような事、
今やっちゃってるわな、私……。
( ね、ねー!? モナリー! "プレミオムズ"って、冒険者のエラいひと、ってコトなのですのっっ……!? )
( こっ、このクルルカンさん達は、とってもVIPなお方たちなのですのっ……!? )
聞こえてんで……。
小声でモナリーさんに問いかけている、
ミルル&チルルちゃん。
すんません……中身は食堂娘よぉー。
モナリーさん、
という、素敵なお名前のメイドさんは、
はぁ……と、黒髪を揺らし、
困った顔で、語りかけてきた。
「わかっていると思いますが……本来、この教会に無断で侵入すれば、憲兵に突き出されても文句は言えないのですよ?」
グゥの音も出ねぇ。
「ごもっともです」
「申し訳ありません」
「はぁ……従獣も、事前に許可をとっていただかなければ困ります。万が一、危険な魔物などが入ってきたら──」
「にょきっとなぁ☆」
「くゆーっ♪」
「……………。ま、まぁ、この二匹は問題ないと思いますが……」
……クレーターを、
いとも簡単に作るウサギなのだが。
こちらも言えることは言っておきたいわ。
様子をうかがいながら、
言葉を紡ぐ。
「勝手に入ってしまった事は、全面的に此方に非があります。申し訳ありません──」
「──でも、そうでもしないと、この街のギルドマスターには会えないと思いました」
「……! ……、……」
モナリーさんは、何か、考えた後──・・・、
「どちらからの──"おつかい"でしょうか」
「「 ──……! 」」
何やら、意味深な。
ご質問を、投げかけてきなすった。
「「 ……──? 」」
ふむ……。
少々、面食らう。
マイスナと顔を見合わした後、
とりあえず、素直に答えることにした。
薬草の事を調べてる事は、
まぁ……別に隠しきる必要は無いかもしんない。
「──西のギルマスから、とだけ──」
「……!!」
「「 ……?? 」」
モナリーさんは、
予想以上に驚いたようね……?
しばらく、真剣に何かを考えていた。
──で。
「……、……。プレミオムズの方がいらっしゃったのに、突き返す訳にも参りません……」
──おっ!?
モナリーさんっ。それってつまり??
思わず、拳に力が入る……!
「──わたくし、この教会で婦長をしております、モナリー・フルートと申します。アンティ様、マイスナ様、こちらへ──ご案内いたします」
や、やりぃ♪
(これで、中に入れそうよ!)
(やったねアンティ♪)
──ジャラ……!
モナリーさんは、大きな鍵の束を持っていて、
いくつかのドアを解錠し、
教会の中に、連れてってくれた。
「──ラビットさん! 土を中に入れちゃあいけませんですのっ! ミルルが持ってあげるですの♪」
「にょやーい☆」
「──うわぁ! このこの尻尾、フワフワですのぉぉ……!」
「くゆぅー♪」
あらぁ。
うさ丸とカンクルは、
ミルルちゃんとチルルちゃんに、
ひしっと、持ち上げられている。
小さな女の子というのもあって、
ぬいぐるみにしか見えん……。
ま、嬉しそうだ。
あの子ら、抱き心地、超・いいかんなぁ。
「ミルル、チルル、大切なお客様の従獣です。丁寧に扱うのですよ?」
「「 はいですのーっ♪♪ 」」
勇者御一行の力にかかれば、
双子メイドなど、一瞬である。
(中も……綺麗だね、アンティ……!)
(本当だ……街によって、けっこう違うものなのね──)
教会の中は、一言で言うならば、
上下に引っ張られたような壁の模様をしている。
アレだ……パン生地を、引き伸ばしたみたいな?
わかんねっか……。
タテの筋が、綺麗な意匠なのだ。
基本はオフホワイトの壁のようで、
所々に優しいピンクの色が散りばめられている。
ここの通路なんて……とってもオシャレだわ。
何人かの修道女たちとすれ違い、
ギョッとされた。
「ごきげんよう、モナリー……────!?」
あ、すんません。義賊でーす……。
「こちらです」
「あ、はい」
「ととと……」
スタスタと前を行く、メイドのモナリーさん。
今更だが、違和感がある。
なぜ、教会にメイドさんがいるのだろうか?
いや……事前のウワサで、
この東の街のギルマスが、
メイドさんを雇っているのは、わかってる。
(どゆことだろ……あ、まさか、貴族様、って事かな……!?)
(え"っ……)
あら、不安になってきた。
つーか、これ何処に案内されとんねや。
横を歩くミルルちゃんとチルルちゃんは、
ニコニコ顔で、うさ丸とカンクルを運搬してっけど、
私とマイスナは逆に、なんだか緊張してくるわ……。
すると、
モナリーさんが、まくしたててきた。
「……ミルル、チルル。私は、この御二方と……大切なお話があります。その従獣さん達のお世話を、しばらく頼みます」
「「……!?」」
「! わかったですのー♪」
「にょき……!?」
「いっぱい、お世話しますですのぉー♪」
「くゆぅ?」
モナリーさんの声をきいた、
ミルル&チルルちゃんは、
トタトタと違う部屋に消えていく!
や、やべぇ!
ちょと、これどゆことじゃ、
分断されてね……!?
「お二人は、こちらの部屋へ──……」
キィィ────……。
「「……」」
白い壁にある、飴色のドアを指し示された。
ど、どうすっぺ────。
『────うさ丸たちの位置は:捕捉しています。』
『>>>あのメイドちゃん達なら、大丈夫だろう──。まずは、この"目の前の人"から情報を引き出そうぜ──?』
ぅ、うんむ……そうしよっか……。
「……失礼します」
「……します」
中に入ると、丁寧にドアが閉められた。
さすが、メイドさんと言えるかもしんない。
「おかけになって、お待ちください」
モナリーさんは、
驚くべき速さで、
まったく音を出さずに、
紅茶を用意し始めた。
途中で窓の外に、そよ風が吹かなかったら。
この世から、音が無くなったのかと、
不安になるくらいだ。
うわぁ、職人技っすわ。
本職のメイドさん、すげぇ……。
呆気に取られて二人で見ていると、
知らん間に、カップが3つ、
ティーテーブルに並んでいた。
「あ、ありがとうございます……」
「ご、ご馳走になります……」
「ええ、どうぞ……」
──コク……。
紅茶を飲むと……あ、ダメだ、わかんねぇ。
美味しくて、良い香りってのは、
モチロン、わかんだけど。
あぁ〜〜……コレたぶん、
すっげぇ高い、お茶っ葉なんだろぉなぁ〜〜……。
(食堂娘には、ツラい試練だぜ……)
(あ、アンティの入れてくれる紅茶も美味しいよ!)
普段、ぜったいに飲む事のない、
高級すぎる紅茶に、なんかショックを受けながら。
しかし、モナリーさんの表情が気になるぞコレ。
なんか……俯いてなーい?
今、目の前に座っている。
手は、膝の上。
ご自身で入れた紅茶には、
まるで手を付けていらっしゃらない……。
(……な、なんか、思いつめてらっさる……!?)
(しゃべんないね……)
完全、反応待ちである。
この部屋には当然、
私たちと、モナリーさん、だけ。
「…………」
「「……」」
なんか、しゃべってくださーい。
紅茶を消費するぅー。
(気まずいってもんじゃないわよ……)
(勝手に敷地に入ったの、
やっぱり怒っ──「あの!!!」「「ぬぉっ!!?」」
ビックリ。
いきなり、話しかけられた。
「あ、あの、西の街のギルマスはっ……!!」
「は、はい?」
「ドキドキドキドキ──」
「ヒゲイド・ザッパー殿は、当方のマスターを……快く思っていないのでしょうかっっ・・・!?」
「「……へぁ!?」」
待って待って、話が見えにゃい。
_(:3」 ∠)_.*・゜