ホールエルにお届け物でーす! さーしーえー
一夜あけて──……!?٩(๑•̀ω•́๑)۶
お屋敷での、朝ぁ。
「にょろろうにょろうにょろ」
──ぺこり。
「……ぉぅ」
「……ぅぁ」
起きて風呂入って出てきたら、
ニョロニョロが朝食を用意しとった。
──でろでろでろ。
なんだそれは。
トーストに、スクランブルエッグと、
ベーコンとホウレンソウを、ぶっかけたやつか。
おまえ。
それ……私らが全部、作り置きしてたヤツだろ。
「にょーろ」
「……。ど、どーする……アンティ?」
「う、美味そうではあるわね……」
いいけど……食うけどさぁ。
──トポポポポ……。
────トポポポポ……。
「にょろろ!」
「「……ども」」
紅茶、入れてくれた。
それも私が作り置き──……まぁいいや。
……いただきます。
「ぱりっ、もぐもぐもぐ……」
「もぐもぐもぐ……ごくんっ」
……美味いこた、美味いわぃや。
が、私とマイスナは、ちょっと不機嫌である。
何故かというと、
ニョロニョロ対策で服を着てるからである。
ぶっちゃけて言うと、既に私たちは、
朝っぷろの後は全裸で、ご飯たべる派だ。
……わかってほしい。
いつも正体を隠すタメに、なにゆえか、
あんな目立つヨロイ着てるのである……。
ヨロイを着ずに、ご飯を食べる時の解放感ったらない。
なのにニョロニョロがいるので、
風呂上がりに、ワザワザ私服を着込んだのだ。
……どうせ、あんなにガッツリ、
描き込まれるくらい見られてんなら、
タオルだけ首にかけて、
マッパで席についたったらよかったのである。
『────それは:非推奨行動認定……。』
『>>>ダメだろ……。だいたい、毎日サカりまくってるから、あんな絵ばっか描かれるんだよ……』
「「 いらぁ 」」
──ばしっ!
──ぶちちゅ──!
「ニョロっ……!?」
ちょうどニョロニョロが卵トーストにケチャップをかけてくれてたので、奪って仮面にジグザグにかけて黄金オムレツみたいにしてやった。
いっつもお風呂でイチャついてる新婚さんが、
なぁぁああに、言ってやがんだぁああ・・・!
『>>>ちょっとぉー!!?』
『────か……回収します。』
食べ物は粗末にしません。
食べ終える頃に、にょろ助がヒザ(?)をつき、
なんか献上してきた。
「にょろぉお〜〜!」
受け取ると、小さな絵だった。
マイスナと見る。
私とツーショットの構図。
ちゃんと服着てる。
ニョロニョロがスケッチブックに、
筆墨で文字をサラサラと書いて見せてきよった。
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お詫びの品でございます。
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そぅか……このゴースト、
筆談できるのか……。
口調が丁寧なのが腹立つ……。
ここで今回の品を見てみよう。
小さな絵だけど、かなり精巧に描かれている。
さすが……元・宮廷画家さんである。
〘#……見事だ。生き写しだな……。ご両親に贈られては、喜ばれるのではないか?〙
……! そっ、それは確かに……。
父さんと母さんにあげたら、
すっごい喜びそうだ。
「これは……いい絵です」
「……もらっとくわ。アンタ! 私らのハダカ絵! 全部違う絵に書き直しておきなさいよ!」
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しっ、しかし、お嬢様方っ!
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お、おじょ……!?
おじょうさまってガラじゃねーわ!!
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もう、絵具のストックが底を……
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……いや……。
あんだけハダァカ、描くからでしょうよ……。
つか、よくあんだけ肌の色あったな……。
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買い足していただきたく。
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……はははははは。
このゴースト、財政圧迫までしやがりますか。
ゴーストとは……。
うーん……。
まぁ、ハダァカ絵は、とっぱらったらいいんだけども。
あのサイズの絵を全部とったら、
ちっと、お屋敷がさびしくなりそうな気はすんのよねぇー……。
「アンティ……ホールエルで絵具屋さん、見てみる?」
「ぅ、うーん……」
普通の絵は、見応えあるんだよなぁ……。
いまんとこ、経営は黒字だし……、うーむむ。
「い、一応、絵具屋さんには寄ってあげるから、あんなハダァカ絵は、ポンポン描くんじゃないわよ!!!」
「にょろぉおおお〜〜♪♪♪」
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有り難き幸せ!!
白と赤と黄色が多めが良いです!!
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……お前それ、ハダァカ色の材料じゃねっだろな。
「にょきっとなー☆」
「くゆぅー☆」
──きゅぅぅおおおおおおおお・・・!!!
お屋敷を巨大なバッグ歯車の中に沈める時。
おえかきゴーストも一緒に沈めたった。
サムズアップをしたエロゴーストは、
スケッチブックを見せつけながら沈んでいった。
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アイ・ウィル・ビー・バック!
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……つっこまんぞ。
仮面がケチャップくさい。
『>>>自業自得だ……』
『────回収したケチャップは:
────次回の食事に利用可能です。』
新婚さん、すんませんした。
におい除去、お願いします。
「アンティ。はい、うさ丸」
「ぁい」
「にょきっと」
「かんくゅ」
うさ丸たちを頭にセットし、駆ける。
ホールエルの街には、あっという間についた。
「薬草回収のクエスト、別に外周壁のギルド出張所でも受けられるわよね……?」
「そうなの? どーする?」
ヒゲイドさんが、
街の中でクエスト受けてこいっつったのは、
つまり、" 街の中心部でウワサ集めしてきてくれ "って事だわ。
うーん……。
街の中は、初めて入る。
このカッコーだ。
ホールエルの冒険者ギルドに突っ込むのは、
ちと、心の準備がいるし……。
『────外周出張所には入り慣れています。
────先に薬草を精算してしまっても:
────問題はないかと提案します。』
『>>>情報収集は色々な形で出来る。酒場や街の中でも出来るだろうし、サイアク……後でギルドに顔を出してもいい』
はぁ……ま、目立たない方向でいきましょう。
けど、薬草が無くて困ってんなら、
すぐに届けてあげたいわね。
あんまワル目立ちもしたくないし……。
慣れてる出張所で精算するほうがいっかな?
「いいと思うよ」
「ん、いこっか!」
ギルド出張所は、どの王凱都市でも例外なく、
街壁の外側に位置してる。
私たちが一番、立ち寄るトコロだ。
顔なじみのギルドの人は、それなりに多い。
あっ……!
制服を着た、
ちょっと忙しそうな女の人が目にとまった。
「キキさん!」
「──! アンティさん! 狂銀さんも、おはようさまです!」
キキ・ネーザルさんは、
よくホールエルのギルド出張所にいる受付嬢さんだ。
赤い丸メガネをかけていて、褐色っぽい肌。
ふわっとした明るい髪を、
ふたつおさげにしている。
実は、バヌヌエルの村の出身(!)なんだって!
私らも西を拠点にしてるので、
そこから話がはずんで仲良くなった。
バヌヌエルの村っつーと、
ゴリルさんの奥さん、サルサさんがいる村だ。
パンジーちゃん、元気かなぁ……。
「随分とお早い……! 今日も配達ですか?」
「そう言えるのかな……? 実は、今日は薬草を持ってきたんです」
「たくさんあるよ」
キキさんの反応は……──予想よりすごかった。
「な──なんですってッッッ!?!?!?」
ドヨヨぉぉぉ……。
お、おょ……?
ギルド出張所の空気が揺れる……!
「薬草を……配達しに来てくれたのですかっ!?」
「えっ……や、配達っつーか……」
「私たちが個人的に持ってきました。大量にあるので、薬草採集のクエストを受けたいんです」
マイスナが、はっきり伝えてくれた。
ありがと。
「たっ、助かります──っ!!! 少々お待ちくださいぃぃ!?」
「は、はぃ……」
「なんか、慌ただしいね……」
ドタタタタタ──……! パシッ!
キキさんは掲示板のクエスト用紙を一枚、
即座に、かっぱらってきた。
「はぁ、ハァ……お待たせしました・・・!!!」
「えーと、どこに出せばいいですかね……?」
「大量なんですよね──!? じゃ、ココに出してもらえますか!?」
えっ、ココ床じゃん……。
いや、そりゃ多いケドさぁ??
「ここは出張所の中心です!! 職員全員で仕分けしやすいですから・・・!!!」
な、ナルホド……?
──じゃ、遠慮なく。
「よっと」
────しゅるるるる──!!!
「「「「「 ──!!!!! 」」」」」
いつも通り、"白金の劇場幕"を展開し、
歯車が見えないように搬出する。
──きゅぅぅぅううううんんん・・・!!
───ド・ゴ・ガ・ガッ・・・!!
────ばさぁあああっ・・・!
大きなマントが伸縮した後には、
俵状になった薬草が、
六つほど積まれていた。
●
● ● 〇〇 ←こんな感じっすね。
● ● ● △△
「とりあえず、こんだけあるんですけど」
「全部で6000本くらいあるよ」
「 」
…………………。
キキさ──ん。
動いてぇー。
「「「「「 う 」」」」」
「「「「「 、」」」」」
「「「「「 う 」」」」」
「「「「「 お 」」」」」
「「「「「 お 」」」」」
「「「「「 お 」」」」」
「「「「「 お 」」」」」
「「「「「 お 」」」」」
「「「「「 お 」」」」」
「「「「「 お 」」」」」
「「「「「 お 」」」」」
「「「「「 お 」」」」」
「「「「「 お 」」」」」
「「「「「 ! 」」」」」
「「 ぉわっ…… 」」
「にょっ……」
「くゆっ……」
ギルド出張所が、揺れた。
──ひしっ・・・!!
「「わっ!」」
キキさんに、抱擁された。
けっこうおっぱいある。
「あ、ありがとう・・・! ありがとう・・・!!
これで、何人かのギルド職員は、
お休みが取れますっ・・・ぐっす!!」
な、泣いとる……。
「ぶぉ、大袈裟だなぁ……」
「くゆしい」
「なにが大袈裟なものですか・・・! ギルドで一番消費されるアイテムですよ・・・! 初級ポーションすら支給できないギルドなんて、ギルドじゃありません……! 特に最近は、街より東側はほぼ全滅で・・・ううう!」
け、けっこう深刻だったみたいだ。
ちょ、乳きつい。
「おっ、お待ちくださいね・・・!? すぐに、クエスト報酬、お支払い致しますからっ!!!」
「あ。あの……数の確認、大変でしょう?」
「正確には6,323本ありますけど、6000本分でいいので」
「そだね。配達職の誇りにかけて、ぜったい六千はありますから!」
「残りはオマケするので、はやくみんなで分けてください」
「な、なん、と・・・!!」
確実にある本数で、即決妥協案を出してみる。
こちとら薬草で稼ごうと思ってないかんねぇ。
さっさと検品して、
とっとと人に行き渡ったほうがいいに決まってる。
「…………神か?」
「……神がいるぞ」
「義賊と……狂銀の姿をした……神だ……!」
「おお……後光がまぶしいぃ……!」
「アーメン……」
「「……」」
拝むなや……。
ぎ、ギルドの皆さんの雰囲気、やべぇな……。
薬草が不足してるって、ホントだったのね……。
「あ、でもキッチリしないとギルマスさんに怒られるなら、やっぱり数えるの……私らも手伝って、ソッコーやっちゃいます?」
「うん、みんなでやったら早いよ」
「にょきっとな!」
「くゆー☆」
「な、なんであなた達は、そんな親切なんですか・・・!! いーんですっ!!! うちのギルドマスターは、最低限の経営しか口を挟んできませんから!! ここは、ほとんど民営みたいなモンですっ──!!」
「そ、そうなの?」
「みんえい??」
あ!
そういや、ホールエルのギルドマスターは、
人に会わないので有名って、
ヒゲイドさんが言ってたっけ……。
──と、考えてる間に、
どんどん薬草の塊が、ギルド職員さん達によって、
仕分けられまくっている!!
──ガサガサ、ゴソソォ・・・!!
「ひゃっほう……!! コイツは上物だぜ・・・!!」
「こんなに濃度が濃い……これは、一等級ね!!!」
「ヒマしてる調薬職たちに、どんどんほおりこめ!!」
「未加工の流通は最小限に!! ポーションが先だわ!!」
「これは先に治療所に持っていこう! それ取ってくれ!」
「ごめん! 私の担当、学院なの! これはいただき!」
……めっちゃ忙しそうである。
「アンティ……なんか、エモノに群がってるみたいだね」
「そ……そゆこと言わないの」
でもまさに、そんな感じだわ……。
「本当に、ありがとう・・・!! これ、報酬ですっ!」
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──チャリン!
アンティと マイスナは
300,000イェル 手に入れた!●▼●.*・゜
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「 ──── お お く な い ッ ッ !? 」
「 う わ あ ぁ …… 」
「適正価格ですっ!!! 普段は薬草は単品5イェル程度ですが、今は品薄で50イェルまで引き上げられてます!!! 品質も高いうえに、回復量濃度が統一されてますし! なんでこんな同等規格の薬草を大量に集められるんですかっ!? すごいですねっ!! びっくりです……!」
「だ、だからって、30万イェルってのは……!?」
「すごい大金だよっ……!」
「──あなた達っ!? こんなに薬草集めて来て、なぁにを言ってるんですっ!? これ以上とやかく言うなら、チューしますよっっ!!!」
「「……、……」」
チューは困るので、ギルド出張所を後にした……。
「──あ"! なんで薬草が品薄か、理由聞くの忘れた……!」
「ぁ"……」
慌ててギルド出張所に戻って覗いてみると、
薬草戦争になっていた。
みんな、早送りみたい……。
超・多忙そうである……。
「……ダメだ。もはや、話をじっくり聞ける状況じゃないわ……」
「う、うん……みんな走ってるね……」
ぬぉわぁー……。
しょうがないので、
ホールエルの街の中で、ウワサを集めましょう……。
「クラウン、マント全開。スッポリ包んで」
「ローザも、体流のドレスをローブ状に!」
『────レディ。』
〘------ノンプロブレム☆〙
「にょきっと……な!」
「かんくゆー☆」
おらァ──・・・!!
潜伏調査の、始まりだわっ────・・!!!
薬草たわらฅ( ˙꒳˙ ฅ).*・゜










