アイノスの肖像 さーしーえー
おまたんたん♪( *´ω`* )/.*・゜
原因は、いくつかあったのよ……。
・容量が無限なので、時間を忘れてポイポイ薬草採取。
・夏の日が沈むのは遅い! ふと気づいたら夜やんけ。
・雨風、急に猛威。ゲリラ豪雨ですね、わかります。
・ここどこやねん。地図の表示範囲が狭かった。
ゴォォォォォ────……!!!!!
ざぁぁぁぁぁ────……!!!!!
「……やってもたで、私達……」
「……すごい雨だねー」
────ジョボジョボジョボ……、
────ジャバジャバジャバ……!!!
森の斜面はゴッツゴツ。
雨は水流となって、地面の上を滑り落ちる。
生き物が、本能的に恐怖を感じる水の量……。
ザァ──────ビュゥオオっっ──・・・!!!
「にょ、にょおぉ……!」
「く、くゆーっ!」
「っ! マイスナっ!」
「わっ……!」
ぬかるんでいたので、
私がマイスナの腰に手を回して支え、
歯車の足場を浮遊させて、ふたりで立った。
地面に足を下ろすのは難しくなってきた。
頭の上には、大きめのバッグ歯車を出し、
傘の代わりにしているけど……、
これ以上、風が出てくると──本当に厄介だ。
うーん……いかん。
唯一の救いは、
クラウンとローザが復活したことかな──?
『────私は……金輪際:お酒を飲みません。
────あと:精霊王は怨敵認定。』
〘------あ──っ☆
------そんなこと言って;自分でも
------けっこう飲んでたのんなぁ──☆☆☆〙
こら、神様。
ケンカしないの。
『────アンティ……。
────今度:箱庭にて私を殴ってください……。』
「いや……反省してんならいーのよ。要は、酒に飲まれるなってことよ……今度飲むなら先輩とか先生も巻き込んで飲みなさい。つーか、今はそれどころじゃないっつーか……」
嵐の夜の森に、敵味方共に遭難してんねやで……。
────ピカッ、ゴロゴロゴロ……!
「にょ、にょきっとなぁー!」
「くゆくゆ!」
どっしよっか……。
頑張ればソルギアブースターで飛べるかな……?
でも、雨やら風やらで視界は悪いし、
たぶんもう、どの街の門も閉まってるわよね……。
復活せし神に、すがるとしましょう。
「うえー。クラウン、助けてぇー」
『────レディ。
────地形の参照分析は終わっています。
────現在位置は:ナトリの街の:ほぼ右手:
────ホールエルの街の:ほぼ真下です。』
────ゥヴォォン!!
かなり広範囲の、
すんばらしく高性能な地図が表示されたわ!
いつものやつね!
おっ……。
南の右、東の真下ってことは……。
「……完全に、街門閉鎖の時間には間に合わないわね……」
「えぇー!」
つーか、もう絶対しまっとる。
野宿決定である。
『>>>しまったな……。ここまで離れてたのかぁ……』
〘#……うむ。方角は合っていたが、純粋に距離を読み違えた。あとは少々、薬草探しに熱中し過ぎたな……〙
すんませ──ん……。
ガッツリ、油断してましたん……。
だって、探せば普通にあるじゃん。
ホールエルの街の付近で薬草が不足してるって情報、ホントか疑うくらい!
ただ……集中しすぎて時間を忘れていたのは事実。
すっかり迷ってしまっていた。
いつもクラウンがやってくれてる、
『道案内』の凄さが、よくわかる結果かもしんない。
「街までたどり着けば、無理やり入れてくれるかなぁ……」
『>>>ちょっと厳しいんじゃなぃ……? 良い子は寝てる時間だろうし……んー、この天気だしなぁ』
「ぅんぅ……。クラウン、確認。飛行デバイスでの、いずれかの街への到達は可能?」
『────非推奨行動認定。』
「ですよねぇー……」
──ザァァァァァァ────……!!!
──ゴォォ、ゴォォォォ────!!!
あ、ダメだな、コレ。
頭の上のうさ丸は、耳をお手手で押さえてる。
こんな大きな音の雨は久しぶりみたいだ。
「にょんやぁー……」
────ピカッ……!!
──────……ゴゴゴン!!!
うわっ……また雷、鳴りやがった。
ちかいな……。
バッグ歯車で吸い込めない雨粒が、
私たちのヨロイを濡らす。
「アンティ……今日、帰れないの……?」
「うぅっ……」
慎重さに欠けていたと、言わざるを得ないわ……。
普通の馬車持ってる商人さんとか、
ベテランの冒険者さんとかなら……。
こんなバカみたいな嵐の日に、
森のど真ん中で立ち往生なんてしないはずだ。
『────アンティ。
────この森で一夜を過ごしましょう。
────ヒゲイド・ザッパーからの依頼は:
────至急とは言われましたが:
────明確に達成期限がある訳ではありません。』
「で、でも、どうしよっか……?」
「風、強くなってきましたよ……」
マイスナと聞き返すと、
神の言葉が紡がれる。
『────御二方とも:何を言っているのです。
────私達は:良いものを持っているでしょう──。』
「「……??」」
『────現在位置より:
────20メルトルテ南東に移動してください。
────比較的:地表が平らなポイントがあります。』
「?? りょ、りょーかい?」
「アンティ、私、このまま引っ付いてていーい?」
「しっかり掴まっときな?」
ゴォォォォォ……。
雷と雨の中、何とか濡れないように。
マイスナを抱き寄せながら、飛行する。
頭上には、大きな金の歯車の輪。
足元には、風力推進のふたつの歯車。
『────ミャーツ:ニャーナ:
────もちろん:修復は終わっていますね。』
『C7:バッチリですにゃあああああ!』
『C2:雨風を凌ぐには、問題ないと思いますみゃ!』
「あっ……!」
「……そっか!」
────きゅぅうううううんんんん・・・!!
────ずぉぉおおおおおぉぉぉ………!!!
私が気づいた時には。
もう、その" ひみつの隠れ家 "は、
召喚され始めていた────。
ガチャ、、、。
『────正面の扉のロックを解除。』
「あいよ!」
「わーっ!」
キィ────・・・ッ、バタン・・・。
「……──」
「……──」
中に入った瞬間、雨音が。
フィルターがかかったように小さくなる。
すっげぇ、壁が厚い証拠だ……。
はぁ……大理石の床に水をしたたらせながら、
ゆっくりと着地する。
キン……。
ギン……。
「お、おじゃしまーっす……」
「ただいまー」
この家に2年も住んでいた彼女。
にゃるほど。ただいまは正しい。
「建物の中だと、こんなに雨の音って違うのね」
「ほっとするね……昔は、こんなこと思わなかった」
皆さん、もうお解りのように。
クラウンが召喚したのは、
マイスナが以前、あの氷の山で住んでいた、
"郵送配達職の別荘"である。
「ふぅ〜〜! 持ち運びできる御屋敷ってのは、反則ねぇー」
「ちょっと濡れちゃったね!」
「にょきにょきにょきにょき!」
「くゆぷるるるるるる……!」
「へぇ……! 壊れてた玄関、きれいに直ってるじゃないの!」
「ほんとだねー!」
『C7:えっへんにゃあん!』
『C2:必要な素材の粒子を吸い込んで、屋敷の建材に転用したんですみゃ!』
……んん?
さらっと……凄いこと言ってるような……。
……まぁ、こんな豪華なお屋敷で雨宿りできるんだ。
細かいこたぁーいっか!
──ギンギンギィン・・・!
マイスナが私の目の前に躍り出て、
私に向かって、優雅に一礼した。
「──ようこそ、おいで下さいました。
愛しき義賊殿────」
「──ふふふ。一夜、お世話になります。
愛しき狂銀殿────」
返礼し、クスクスと笑い合う。
今日は、ここで大人しく朝を待ちましょう。
『────こちらの御屋敷のアイテム名ですが:
────現在は:"アイノス"に設定されています。』
「っ!? あれっ……? そんな名前、付けてたっけ?」
確か……"氷のナンタラ……"だったような?
私の記憶違いだっけ?
「私がつけ直したんだぁー」
「──! マイスナが??」
ほぉ……うん。
まぁ、元々はこの子の家みたいなもんだし。
別に異論とか無いけど、理由が気になったりして。
「"アイノス"……って綺麗な名前だね。なにか由来が?」
「私とあなたの"愛の巣"だからだよ?」
「 ……」
……ワリと卑猥なうえ、ダジャレであった……。
「あとは……"夜戦城"と迷ったの♡」
「あっ、アイノスにしましょう!!」
由来がわかると恥ずかしい……。
ともかく、もっとヤバい名前になる前に、
今のおウチネームに同意しておく。
「へへー♡ 私とアンティの……♪」
「や、やめぃっ、恥ずいだろぉー!」
──きんぎん、きんぎん!
ちょ、くっつくな、こりゃっ、
可愛いからやめなさぃっ!
『C7:──にゃっほん! どうにゃ? 首領にオク様……! ここまでカンペキに修復しきった私らを、褒めたたえてもいーんにゃよぉおおお──!!?』
『C2:みゃはは……ま、無断外泊のバツでやったんみゃけど……』
『C7:に!? にゃぅッッ……///。き、きさまぁー!!』
『C2:ぃ、いたっ!? いたい、蹴らみゃいで!』
褒める? ふーむ、確かにね……!
玄関ホールの、あのデッカい大穴が、
ここまで綺麗に塞がってるとは思わなかったわ。
ゴウガさんとのシュギョーで使った、
この、"めちゃくちゃ殴っても壊れない岩"も、
綺麗にインテリアみたいに見えるように置いてある。
──うん!
ここは、素直に褒めておきましょう。
「──大したもんだわ! 綺麗に掃除されてると……めっちゃ豪華な御屋敷ね! 階段とか手すりとか、装飾すげぇし……」
「私とアンティに相応しいです♪」
『C7:にゃ……!? にゃっふぅ──♪♪♪ どっ、ドンに褒められたにゃ──!!!』
『C2:頑張ったかいがありましたみゃあ♪』
『C7:にゃふふ……♪ これは我らがドンに、とうとうデレ期が到来したにゃあ!?』
あほぉーう。
私をなんやと思っとんのじゃ。
フツーに、めっちゃ凄いと思ってるわぃ。
──────……ただ。
「あのさぁ……? 凄いと思うんだけどサ……。
いっこだけ……突っ込んでいーい?」
『C7:にゃにゃ……っ!?』
『C2:みゃん……? 何か、至らない所がありましたかみゃ……?』
「ぁ、や……別に、文句ってワケじゃないんだケドさ……」
実は、ここに入ってすぐ、
"ソレ"には気づいていた。
「──…… 」
「──…… 」
マイスナもとっくに見つけてたようで、
私と同じ方を見上げている。
「ほら────正面の、"あの絵"。
あれはぁ、そのぉぉ……。
ちょっと恥ずかしいっていうか……さ?」
「……ふふ。私、あの絵、好きだよ」
『C2+7:──え……?』
配送設置型・住居アイテム:──"アイノス"。
その玄関ホールに訪れた私たちを出迎えたのは、
正面階段の上にある、とても巨大な絵画だった。
豪華な装飾が美しい、アンティークの金の額縁。
切り取られた、スクエアのキャンバスの中。
金のヨロイと、銀のヨロイの、少女二人が。
こちらを、見つめている──────。
「よっ、よくもまぁ、こんなモン用意できたわねぇー!!?」
「私も、アンティも、すっごくかっこいいねっ……!!!」
「にょきっとぉお・・・!」
「くゆぅ〜〜〜ぅ・・・♪」
な、なんか顔、ほてってきたわ!
『────私も感心しました。良い出来ですね。』
『>>>油彩絵だよねっ? 凄いじゃないか! どうやって、こんなモノ作ったんだぃ? ははっ、ホントに貴族の御屋敷みたいだね!』
い、いやそんな褒め……なんだコレっ……!
恥ずかしいやなぃかぃ……!
自分の絵を見るって、こんなキモチなのねっ!?
まったく、なんでこんな巨大なモンを用意すんのよぅ……!
〘------あ;ありぃ──? のんのん? のん……☆〙
〘#……! はて……この絵のタッチ。どこかで見たような気が……?〙
……?
ローザと先生の反応が、なんか変だな。
──いや! それはいいっ。
私的にはっ、それよりもですねぇ──!?!?!?
「──あんねぇ、ニャーナぁ! そ、そりゃっ、私もいい絵だとは思うわよぉ!? その……笑ってるマイスナの表情とか、すっごく……か、可愛いし……」
「──きゃっ♡」
「──ただアンタ! こぉーんなデッカイ作品にする必要、なかったでしょーよぉー!? ひっ、ヒゲイドさんの身長よりデカいじゃないのぉ……」
ただの街娘の私が、
自分の身長の三倍はあろうかという、
絵のモデルになるなど、まず有り得ないっ……!
しかも……すっ、好きな人とのツーショットですよ……!
なんとも言えないこの気恥しさを、
わかってほしぃったらぁぁああ──……!
「えへへ……♪ アンティ照れてる!」
「もぉー!! そら照れるでしょーよー!!!」
一緒に絵を見ていたマイスナが、
銀色の爪を、私の金のガントレットに絡ませてきた。
「……アンティ。あの絵見れて私、幸せだなぁ……///」
「ぅ……///」
ちぇっ……認めましょう。
とっても、好きな絵だ。
外の雨の音が、小さくなった気がした。
……。
私とマイスナの絵が。
この先も残っていくなら。
それはちょっと……──"感慨深い"。
「えへへ……"アイノス"で、よかったでしょう?」
「っ! ば、ばかぁ……///」
くそぅ。
猫、やりおるやんけ。
「──み、みゃーつ、にゃーな! こっ、今回はいいけど? 次からこんな内装やらかすなら、事前にちっとは相談しなさいっ!」
こんな小っ恥ずかしぃアイテム量産されたらたまらんので、猫二匹に軽く言い聞かせておかなくちゃあ!
『C2+7: ……、 …… 』
……。
…………あの。
………………なんか、しゃべって?
『C7:こんにゃ、え…………し、しらん、にゃ……! 』
「「 え? 」」
マイスナと私の疑問符、かぶる。
『C7:こんな、の……、まったく、しらんにゃああああああああぁぁぁ!!!』
『C2:──なぜみゃ……ッッ!? 真っ白のキャンバスに、ぜんぶ入れ替えたはずなのにみゃ……ッッッ!?!?』
「「……ぅん?」」
………………また、なんか起こったの?
今回はサインは入れて居りません(笑)
(*´艸`*).*・゜










