初めての子供アタック
────よじよじ。
ん……。
────よじよじ。
ん……?
────がっ。
「んん……?」
起きたら、目の前に、こどもがいた。
…………何でやねん。
あ、朝か……。
光と、音でわかる。
あの後、赤ちゃんが産まれてから、流石に疲れて、眠っちゃってたみたい。
この丸い建物。
集会所と、あと、教会と病院も兼ねてるみたいね。
椅子がいっぱい。
壁際に、大勢で座れそうな段差がついてるし。
そこで、寝ちゃってた。
……誰かに毛布を掛けてもらっていたらしい。
────で、今。
ちびっ子に囲まれとるワケですな。
「…………」
「…………」
あ、この子、女の子ね。
勝手に、お腹まで登ってこないでね。
……3歳くらいか?
あ、足にも男の子がしがみついてるわ。
他にも3人くらいいる。
太ももにぶら下がらないでね。
うん、ムリね。
逃げられないわ。
「…………」
「…………」
どうせいと。
何なんですか。
朝ごはん食べてきなさいよ。
「────くゆゆかん」
「…………」
仮面にペタペタ触らないでね。
「────くゆゆ、かん!!」
「────うん、そうね……」
なんかちょっと、あきらめた。
てか、3歳児でも、クルルカンって知ってんの……
この世界に身バレしすぎだろ、大義賊様……。
「おんな、じゃない!」
女です。
「くゆゆかん、おんなのこ!」
「ちがう〜〜おとこだよ!」
「おんなのこ! だよ?」
「くゆゆかんちがう!」
「ちがうの?」
ジ〜〜〜〜……。
え、何……私にきいてんの……
えちょ、う〜〜んどう答えれば……。
「……生まれ変わり」
「「「「「!」」」」」
「……クルルカンの、生まれ変わりよ」
超、適当な事、言ってやったわ。
というか大人。
こんな、クルルカンのカッコした不審者に、こどもを預けるんじゃねぇ。
────がっ!
おい、貴様。
何故、顔に抱きつく。
前が見えないでしょが。
両脇を支えて、女の子を、少し下にズラす。
「……へへ〜♪」
何故に嬉しそうなのだ。
ユータやアナより年下のこどもに触れるのは、久しぶりだ。
感覚がようわからん。
「……こぉら、アンタたち。クルルカンに迷惑かけんじゃないよ!」
「あ……」
昨日、お産を仕切っていた……シマおばさん?
「ほぅら、手ぇ洗っといで。ごはんだ!」
「ごはん!」
「ごはんぁ!」
だだだだだだ……!!
おお、はやいな……。
「ほれ、その子も」
「はい……よいしょ」
女の子を、シマさんにまかせる。
"力量加圧"で、力が入り過ぎないか、少し心配だったけど、大丈夫みたい。
この子、にこにこだ。
「あんたも、食べるかい?」
「あ、えと」
くるるるる……
「…………」
「はっは! あんたは腹の音もクルルカンなのかい? そら、おいで!」
「はい……」
なんてこったい。
ぐすんっ。
ぐ、グローブはずせねぇ……。
仕方ないので、そのまま手を洗った。
あ……かなりピッカピカ。
水も染みないのね。
ほっ。
でも、フォークとナイフで綺麗にいただきました。
「……あんた、料理できるだろ」
「ふぁ!?」
シマさんに、いきなり言われた。
「食べ方でわかるんだよ。あんたのマナーは、綺麗っていうか、効率がいい食べ方だ!」
「そ、そうですかね……ハハ」
「時間がない時に、それでも、美味しく食べれる食べ方だね……いや、大したもんだよ!」
えええ〜〜……
何でそんな事わかんの〜〜……
そら、食堂では、早さ勝負の時もありますから……。
食事は掻っ込む事もある。
ただ、美味しくは食べたいので、切り分けや、食べる向き? とかは意識してるかも……。
そこか! そこに気づかれたのか!
こわい! 大人こわい!
「……あんたには、世話になったね。女の力持ちがいるってのは、こういう時、助かるよ」
「いえ、私は言われるがままでした……」
「ふふっ、なんだい、普段はしおらしいね! 集会所のドアを蹴破った娘と、同じやつの言葉とは思えないよ!」
「ああ〜……すみませんでした」
村共有の建物を破壊してました。
「まったく気にしないでいい。両手が塞がってたのはわかってる。むしろ、あれは好感が持てたよ。何を大事にしているか、わかったからね」
「…………」
いや、その。
申し訳なさと、照れが……。
「さっき、サルサが起きた」
「! ……大丈夫でしたか?」
「ああ、あんたのお陰さ。こどもも元気そうだ。女の子だよ」
「そうですか!」
ふぅ……。
これでやっと、手紙が渡せるよ。
あ……。
「あの……」
「あんた、サルサに会ってやってくんな」
「え、あ」
「あの子ね、クルルカンにお礼が言いたいんだと!」
「……はい。実は私、サルサさんに用があって来たんです」
「そうなのかい?」
「ええ……ドニオスで、手紙を預かってて」
「それって、もしかしなくても、ゴリルかい?」
「あ、やっぱり……」
「旦那だよ」
────うわああああ!!
サルサさん、
ゴリラ顔さんのお嫁さんだったあああ!!










