東の街へ?
ハナシススメールという、
消費アイテムがあってだな……( º言º)
夏の折り返しの月になって。
また、数日が経った。
おっぱい姉のオシハさんが、
" プ会 、あるなら月初ね! "
的なコトを言ってくれていたので、
(私のテストと被るからズラしてくれる的な)
もしかしたらなー、と思ってたんだけど──、
結局、呼び出しは来ず。
マイスナとドニオスの街を巡って、
集荷を募ったり、
"のぼり隊"の子供たちを集めて、
絵本読み大会なんかもした。
ふふ、なんだかみんな、
不思議そうにしていたっけ。
んで、本日は。
キッティのお仕事を手伝ってます。
「ありゃ……こっちのクエスト表、採集クエストに入るんじゃないの?」
「アンティ。この魔石の販売記録、やっぱり計算まちがってる」
あっ、この書式、記入間違ってんじゃん。
訂正印は──。
ズシン──・・・!
ズシン──・・・!
「──ンティ! マイスナ! いないのか……? 塔にはいなかったが……まさかギルドの方か……? む──……?」
ガチャ──。
「おっ……」
「「 ──あ 」」
書類の整理中に、
ヒゲイドさんに見つかった。
「ど、ども……」
「こんにちはー」
「……。……キッティはどうした」
やばい。
イーストハニーに、
パン買いに行ってもらってるとは言えないわ……。
黙秘、黙秘。
──義賊はナカマを売らないのだ!
「パン買いにいったよ」
「 ち ょ …… 」
だが、狂銀は別である……。
「むむぅ……」とヒゲイドさんは、
私たちの周りにある、
仕分けやら、事務処理やら終わりまくっている、
"書類の城"を、舐め回すように見た。
「お前たちが、ギルドの書類を、か……。妙に、のんびり茶を飲んでいる職員が多いと思ったら……!」
「あっはは……」
「がんばりました!」
「──むむっ!? その手に持っているのは──経営管理魔石の請求書ではないかっ……! そんなややこしい書類も、あのアホたれは任せていきおったのかっ!?」
「ぅえ? ゃ、そんな難しくもないと思いますよ……?」
「キッティがね、受付嬢の仕事、ぜーんぶやり方、説明してくれた!」
「ぼっ、冒険者に、ナァニを押し付けとんのだ、あの受付嬢はァ……!」
はっはは……(笑)
ヒゲイドさんが、おデコを手で押さえて呆れている……。
ま、こっちもヒマだったしさ?
「あぁ、それと……キッティ、人に仕事教えるの──メチャクチャうまいです!! アレはすごいわ……!」
「やり方の説明、すっごい分かりやすかった。仕事を人に理解させる天才」
「あのなぁ……」
キッティの数分間のお仕事説明は、
マジで、一度も質問し返さなくても、
イッパツで理解できる明快さがあった──!!
要点を、なぜそうなっているかという理由と共に、
簡潔にまとめて説明してくるんだもの。
あれは──"さすっティ"と、言うしかないわね……!
──で、本人は菓子パン屋に直行したワケだけど。
「アイツはァァ……! そんな"擦り付け"ばっかり上手くなりやがってぇえ……! そんなに上手いなら、新人教育にでも回してやろうかぁ……!!」
「あ、いんじゃないすか」
「キッティぱいせん」
「──うぉおっ!? お前たち……今月末締めのクエスト書類まで処理したのかッ!? バッ、バカ者、まだ月初だぞ!? やっ、やめろやめろっ!? このギルドの職員の仕事が無くなっちまうっ……!!」
「え、えぇー」
「また、プーたろぅかー」
「お前たちも、冒険者であるという誇りを持て……! このままだと、スーパー受付嬢になっちまうぞ!!」
すーぱーうけつけじょう……?
ほぅ……。
「ま、ヒマよりはいっかな!」
「うん!」
今は副業の時代だかんね!( •̀ω•́ )✧
「あッッほぅう……! ウチのギルドの連中が、ダルっダルにダラけまくっちまうだろがぁぁぁ……!」
ヒゲイドさんは、
ビターメロンを生で噛みちぎったかのような、
苦渋に満ちたヒゲフェイスになっている……。
「はぁ──……。とりあえず、その仕事は中止だ。
それと……喜べ。仕事を持ってきてやったぞ」
「「──!!」」
ま・・・まじっすか!!
「やったぁ!! 親に顔向けできるっ!!」
「清い、労働ぉー!」
「義賊と狂銀のセリフではないな……。
ふん……端的に言うとだ。
"ホールエルの街"に薬草を届けてもらいたい」
「……!! 東の……王凱都市よね!」
「中、入った事ない街だね!」
ホールエルは、地図で言うと、
王都の右っかわにある街だわ!
南東っかわの海に繋がる川が、
チョコチョコと流れている地域だから、
陸の食材の他に、お魚とかの食材も豊富なのよね!
まぁ……これ以上有名人にならないために、
街壁の外周にあるギルド出張所にしか、
行ったコトないけんども。
ホールエルとナトリの出張所には、
水属性の食べられる魔物の食材が、
いっぱい売ってて楽しいのよね!
「ちょっと久しぶりに行くわね、ホールエルの外壁出張所! この際、出張所で川魚の食材、買いこもっかな?」
「さーかーなー♪」
「……それなんだがな」
「「 ぅ? 」」
ヒゲイドさんが、話を割った。
「今回は……、ホールエルの街の中まで、入ってきてもらいたい」
「「 …… え"っ 」」
……、……………………。
「なんで、よ……?」
「……クエストを受けるためだ」
「? ……うゅ??」
「……"薬草採集"のクエストを、ホールエルの冒険者ギルドで受けてきてもらいたいのだ」
「ちょ……ちょっとちょっとちょっとちょっとちょっとちょっと」
「いみわからんです」
マイスナの言う通りだわ。
「えーと、薬草を荷物として配達するんじゃないんですか?」
「……薬草はあったらあるだけ使い道がある、貴重な消耗品だ。状態が良けりゃそのまま使えるし、ポーションの材料にもなるしな……。ドニオスギルドから、そんな大量には出せん」
「……?? 荷物となる"薬草"が、ない……?」
「……ないものは配達できないよ」
「だから……ホールエルの街で"クエスト"を受けろと言っている……」
ちょっとなんかかなりコレ話がわかんなくなってきたわよぅ。
「あの……ごめん、ヒゲイドさん。私の頭が足んないのかもしんないけどさ……。今かなり、イミフメイな理解度です……」
「要点わからん」
「むぅ……。ま、そうなるわなぁ……。やはり背景を説明しなければいかんか……。──おぉい!! エルテシオ!! お前なにサボってやがる!! ウチのギルドの受付嬢をピカピカにするつもりかぁ!! さっさとこっちに来い!!」
恐らくコーヒーかなんかを飲んでいた、
顔見知りの男性ギルド職員さんが、
慌ててこっちに駆け足で来た。
すれ違いざまに「ごめんごめん!」
みたいなジェスチャーされたので、
苦笑いで会釈しとく。
ヒゲイドさんが案内したのは、
受付カウンタのすぐ前にある、
前によく私が寝ていた対面式ソファだった。
あ。端っこに、うさ丸とカンクルがいる。
うさ丸は寝ているようだ。
「にょんやぁ……ぷくー……Zzz」
「くゆっくゆ♪」
「まあ座れ」
ここで話すということは、奥の執務室で、
コショコショ話をするような内容じゃないってことだわ。
……カンクル? やめなさい、
こしょばいってばぁ。
「くゆくゆ」
ヒゲイドさんは目の前のソファを片手で持ち上げ、
反転させて置き、背もたれに座った。
……ワイルドな座席の確保ねぇ。
「……東の地方で、薬草が採れにくくなっている」
説明は、簡潔に始まった。
「一時的なものだと思いたいが、原因がわからん。向こうのギルドマスターに問い合せたが、返答がない」
「はぁ……え?」
「ホールエルのギルドマスターと、仲わるいの?」
マイスナの問いに、ヒゲイドさんは息をはいた。
「はぁー……そうでは無い。東のギルドマスターは、人に会わんので有名でな……」
なんじゃそりゃ。
「なぜ、東の地域から薬草が不足しているのか──。理由がわからん以上、残りの各・王凱都市は万が一に備えて、薬草をストックせねばならん」
「……! さっき、ホールエルの街で採集クエストを受けろ、と言ってましたね。じゃあ、ドニオスでクエストを受けないのは──……?」
「今朝、すでにヒマな冒険者には、薬草の採集クエストを頼んだからだ」
?? うーん、まだ、よく飲み込めにゃい……。
つまり今、ドニオスの街は、
薬草を、念のために、
溜め込んでおきたいのよね……?
「……この情報をくれたのは、ジィさん……あ、っと……パートリッジの街のギルドマスターだ」
……! ブレイクさんのことだわ。
シュッとした、お爺様。
水晶球は、離れた場所に短い文章を送れるから、
たぶん、それね。
「知っての通り、西のドニオスと東のホールエルは、王都を挟んで真反対だ。ここまで情報が来る間に、時間は予想より経過していると思っている」
……つまり、けっこう前から、東の地域では薬草が"品薄"になっていた……ってコトかな?
「……お前たちの" 速さ "を見込んで、ふたつ、頼みたい」
「「 ……? 」」
ヒゲイドさんは、真剣な顔で言う。
「ひとつは──" ホールエルの街に、薬草を届けること "。当ギルド……というより今、ドニオスからは薬草のストックは出したくない。だが、できれば届けてやりたい。冒険者の生活の礎になるアイテムだからな……」
「はい……ぅんーと。私たちが集めまくって、ホールエルのギルドにあげてもいいですよ?」
「うん。たぶん、頑張れば、いっぱい集まると思う」
「あほ。貰えるモンは貰っとけ。ホールエルに売れば、こちらのクエストより、かなり儲かる。ふん……向こうの街の方が値が張っているはずだからな」
あぁ──ナルホド!
ヒゲイドさんは、私たちの"お財布事情"も、
あわよくばカイゼンするつもりだ。
オイシイ臨時収入、ってワケか……!
ぅーんむ、優しい巨人さんは健在ね。
……前に貰った分、全然減ってないんだけどなぁー……。
「もうひとつは──" なぜ、東の街から薬草が枯渇しているのか "──その理由を探ってほしい。これは、済まないとは思うのだが……」
あー……。う、ぅうーん……。
確かに、純粋な"レター・ライダー"のお仕事……とは、
言えないかもしんないわね。
ま……でも、頼られてるしなぁ。
「今、俺が恐れているのは、薬草の何種かが変異を起こし、まとめて枯れたり、絶滅したりするような事態が起こっているのでは……という所だ」
「うーん、どうする? マイスナ」
「いいよ。どうしたらいいですか」
あっさりとオーケーが出た。
私も、いまんとこ断る気はサラサラ起きない。
「薬草を"ほどよい量"集め、ホールエルに向かってほしい。そして……"街のウワサ"を出来る限り収集してほしいのだ」
「ほ……" ほどよい量の薬草 "と……」
「……" 街の、ウワサ "……」
ど、どんくらい持ってったらいいんだろ……?
それに、ウワサ、かぁ……。
当然、誰かと……しゃべるのよねぃ。
「ううぁあ……! あっちの街のウチッカワじゃあ、まだ私たち、あんまり知られてないのよねぇー……!」
「目立つ」
「そ、そうだな……」
ひとごとーっ!!!
「ねぇー、ヒゲイドさぁーん……! 薬草が品薄な理由、向こうのギルドマスターさんに、ちゃんと聞けないんですかぁー……??」
「そーだそーだぁー」
そのモンダイさえ無くなったら、
ウワサ集めんのに、こっちから人のいる所に、
突っ込んでいかなくて済むんだけどぉー……!
「……さっきも言ったがな……、東のギルドマスターは、ホンッッッ…………トに、偏屈なヤツでなぁぁ……! めったに人に会わんし、接触を持とうとさえせんのだ……。他人を毛嫌いしていると言っていい」
「 な ん そ れ ぇ ぇ ぇー …… 」
「……ギルドマスター、なんですよね……?」
ギルドのトップが、
人に会わへんって、なんやねん……。
「はぁ……。ギルドマスターとしての裁量が無いわけではないのだ。メイドを通して指示は的確に出すと言うし……やはりギルドマスターと兼任している、ちぃと特殊な役職が──── 」
「ちょ、ちょと待……メイド……ッ??」
「……けんにん??」
マイスナと、首を傾げる。
────そん時。
「ただいま帰りましたー!」
あ っ 。
キッティ、帰ってきた。
「……おい、サボり魔 受付じょ……──、……? 」
ヒゲイドさんが、
キッティへの文句を言うのを止めた。
なんやなんや。
キッティの声がした方を、
マイスナとふたりで振り向く。
「 ………………………… 」
「……すみません、幼なじみを拾いました」
……………。
あの……………神官ねぇちゃん。
…………顔、死んでない?
「……ふむ」
「しんでる」
「しんでるね」
ヒゲイドさんが、たまらず、問う。
「おい、キッティ……。その、にょきっと神官は、なにをそんなに塞ぎ込んでおるのだ……」
「……や、私もわかんないんですよぅ……」
「 …… 」
……ちょっとぉ……。暗すぎやしませんかね、
アマロンさん……。
キッティは、甘いハチミツの香りがする、
イーストハニーの紙袋をテーブルに置き、
ゾンビみたいな神官ねぇちゃんを、
ヒゲイドさんがくるっと元に戻したソファに座らした。
め っ ち ゃ 、
落 ち 込 ん で る よ う に 、
見 え ま す 。
「…………」
「……どしたの? アマロンさん……」
「パン食べる?」
「おい、キッティ……お前」
「いや仕方ないんですよぅ……! アンデッドみたいに、街を徘徊してたんですよぅ……!?」
神官あるまじき。
しばらくみんなで待ったけど、
マジでしゃべらねぇ。
ど、どぅしたの……。
「 」
──あっ、しゃべった!!
「ど、どうしたんですかぁ……」
キッティが、座ってるアマロンさんに近づく。
アマロンさんが、ボソボソしゃべる。
「 」
「ふむ? フムフム……」
しばらく、キッティが幼なじみパゥワで聞き取った。
──で。
「あ──……、わかりました」
「……わかったか。言え」
ヒゲイドさんも、腕組んで待ってた。
キッティのわかりやすい解説。
「……アンティさんとマイスナさんが主役のお祭りの……"クルルフェルト祭"の企画書を──……王都の警備をしながら頑張って仕上げてたそうなんですけど──」
お い こ ら 。
「……どっかで、落っことしたそうです。」
「…………ぐすん」
「…………」
「「…………」」
……………ほ────ぉぅ……?
………────……。
「しゃ──ざまぁぁぁあああああああああああ───!!!」
「ぶぅ──べろべろぶぅぅぁああああああああ───!!!」
「ぉ、おぃ……やめてやれ……」
「おふたりとも、大人気ないですよぅー……?」
「にゅああああああああああぁぁぁ──!!!?? うさ丸さまぁぁあああああ────んっ!!!!!」
──ガバッ!! ぐにゅぅッッ!!
「Zzz……──にょほぉッッ……!?
にょきっ……!? にょきっとな……ッ!?!?」
「くゆーぅ♪」
うさ丸、びっくら起床。
で……。どこまで話したっけ?
びっくり。d(ゝω・´○)










