殿姫アンマイ。
今日の連投その3。(●´ω`●)
──慈悲なき神官は、言った。
「──実に簡単です。神様は──アイテムバッグを"物を運ぶもの"として使って欲しかったのです」
「ぁ……」
「……」
このアマロンさんの言葉で、
私は目の前の神官さんの認識を、
改める必要があると思った。
「もし、アイテムバッグに魔法が保管できてしまえば、それは攻撃の手段……つまり"武装"にも転用できてしまう。この世界を創った神様は……アイテムバッグは、アイテムバッグとして使って欲しかった!」
その、通りだ。
この人は、とても────かしこい。
私は、この世界が、
" げぇむ "を元に造られた世界だと、
神様本人に聞いて、知っている。
でも、アマロンさんは、見事に。
昔のクラウンやローザの気持ちになって、
この世界の真理を、読みとったのだ。
「……む……」
「……あくまで……アイテムバッグ、として……ってことです?」
「──ええ。……少なくとも、"魔法が入ってしまう"、なんて機能を持ったアイテムバッグは、世界を創る際……神にとっては都合が悪いモノだった。私は……そう思えてなりません。アイテムバッグは、アイテムを入れる物──。魔法は、自身の魔力と魔素を使って生み出すもの──」
「……そのふたつの要素の住み分けを明確にするために──アイテムバッグには魔法が入らないよう、神が決めた、と……?」
「私は、そう感じます。役割は、きっちりと……分けられているんですよ」
「……。ふぅむ……。真実味はともかくとして──面白い意見ではあるが……」
「……」
「……」
これは、まずいな──……。
キレ者、ってヤツ?
それに、かなり神学の勉強もしてそう。
たぶん、とても立派な神官さんなんだ。
そんな感じが、ヒシヒシとする。
だからこそ。
私は冷や汗をかいた。
しまった……!
さっき"バッグ歯車"を見せた時に、
もう少し、注意しておけば……!
「……しかし、です。アンティさんとマイスナさんの格納スキルは……その法則が、非常にあやふや過ぎます」
「……!」
「……そう、ですか……?」
ここで、
マイスナがフォローに入ってくれた。
そう。
髪は、もう繋がっているのだ。
私たちの気持ちはひとつ。
なんとか──波風たてずに、切り抜けたい。
「む……。火が入っている、という事が、か……? 確かに前例は聞いたことが無いが……それは、コイツらが珍しいアイテムとユニークスキルの組み合わせをだな──」
「──そんな、生ぬるいものではありませんっ! ……アンティさん? あなた……気づいていますか?」
「は、はい……?」
くそ……、なんだ?
何を、言ってくるの……?
「あなたのアイテムバッグには、魔法が入りますよ?」
「──ッ!!」
「──っ!!」
……!
「…………。……そんな……はずない」
……落ち着け、大丈夫。
考えろ、アンティ。
何が一番、大切だ?
「炎の魔法が格納できないのは、風の魔素が格納できないがために、燃焼が格納した瞬間に停止するからです」
「それは……で、でもっ、……あれっ?」
髪の流路伝達を使って、
マイスナが、"待って!"と呼びかけてくる!
……少し、任せてみよっか……!
「……待ってください。アンティと私のバッグは、完全に時間を止められます。だから……出した瞬間に時間が動くから、すぐに燃えて──」
「──それは違います。先ほど見せてもらった火は、明らかにアイテムバッグ内部からの風の魔素で噴き出していました」
「え……? で、でも……」
ち、ちっくそー……っ!
そんな所を見てたのか……!
確かに、「ボッ! ボッ!」って火ィ出したわ……。
気体が入ってるのは、バレてるわね……。
「先ほど……腕を"歯車の中の空間"に押し入れた時──」
「……」
「指先を、少し紅茶で濡らさせていただきました。アイテムバッグの中に、風の流れを感じましたよ」
ほぅら、来た……。
なんとか、はぐらかせるかな……。
やってみるしか……。
「──そ、それは!! 魔素、じゃなくて……空気を取り込んでいるから、だから──……!」
「……気体を取り込んでいて、全く風の魔素が入り込まない、という事は有り得ませんっ」
「いや……、えぇ……!? ちが……!」
少し、驚く。
……てことは、やっぱり私のバッグ歯車って……!?
「アンティ……。落ち着け」
──わかってますよぅ!
……くそ、なんとか誤魔化したいんだけど──……!?
「ちが──違います……違うんです! これは……"風の魔素"を格納しているわけではなくて……"酸素"! 気体の一部で……それが、燃焼に必要な気体で……」
「アンティ、さん……?」
「それは……! 私たちが呼吸するのにも必要不可欠で……だから、魔素が入っているわけでは、ないっていうか……! あ、あくまで、"化学的"な……」
「……」
ううっ、ちょっとヘタこいたかも……!
何とか、先輩や先生の知識で、
煙に巻こうと思ったけど、
考えたら、これって私たちの世界では、
意味不明なのよね……っ!
くそーぅ……!
土壇場のお芝居は、
やっぱニガテだわぁー……!!
「も、もうっ!! へ、変なこと言って、混乱させないで! 魔素は……魔法になったら、私には見えるし……! 火が燃えたまま格納できるのは……気体の中の"酸素"があるから── 」
「……アンティさん。それは──、
──何処の世界の学問ですか?」
「へ……!?」
こっわ──!!
かなり、ドキリとする……!
まっ、まさか……この人も異世界人!?
とかじゃないでしょーねっ!?
「アンティさん……」
「そ、……、……」
「この世界では、風の魔素がないと、炎は燃えません」
「……! ……、……」
「……あなたがどのような知識を持っているのか、私には計り知れません。ですが……少なくとも。"サンソ"という物質名は、私は今日……初めて聞きました」
「……!! そ、れ……は── 」
うぅぅ……そう、なるわなぁ……。
まずい……。うやむやワードに、
異世界の知識をひけらかすのは、
完全に悪手だったわ……。
それに、やっぱアマロンさん、
人からの情報を紐解くって事に関しては、
かなり鋭い人っぽい……。
「燃える気体……。それが"サンソ"と言うのだとしたら、"サンソ"とは──"風の魔素"のことなのではなくて?」
「ちが!! ……それは! ちが……ぅ、せかいの……」
いや、黙れ、私。
酸素と風の魔素の違いなんか、
ここで説明して、わかってもらえるはずがない!
「……あなたは……誰かからか、それを教わった。もしくは……何らか"未知の知識"が載った書本を読んだのかもしれない。そして……それが真実か嘘かは別として。──"そのおとぎ話"かもしれないモノを、あなたは……"信じた"」
「ち……」
うう、とぼけにくい……!
アマロンさん、厄介だわ……!
髪の流路を伝って、
マイスナも発言しかねてるのが伝わってきた。
ヘタな事を言うと、なんかヤバいっぽい。
「炎は……最初からアイテムバッグに入っていたわけではないわね? あなた……どうやって、その歯車に入れましたか? 学校で習った──"火はアイテムバッグに入らない"──など、という事を、意識しながら入れましたか……?」
……!
異世界の知識は、もう言わない方がいい。
ふぅ……!
「そッ、あの時は……!! ただ、ひっし、で……ッ! 」
「──そうよね。あなたは……"意識"なんてしなかったはずです。可能性を" 信じた "。だから……" 入った "」
「……! ──ッ 」
「この、精霊花ですが……」
「──!!」
「さいしょに入れた時……こう、思ったでしょう──…… 」
「 …… 」
「 " もしかしたら、入るんじゃない? " 」
「 、… 」
はーい、ブラックリスト、けってーい。
アマロンさん、心理分析やばい。
この人、たぶん懺悔室とか、めっちゃ得意そう。
悩める人を導くのに、相応しい能力すぎる。
「……ねぇ、キッティ。そこにあるのは……普通のアイテムバッグですね?」
「ぁ…………はい、そうです……備品の……」
「ギルマス? お借りしても……?」
「……つかえ」
当然、私とマイスナにも、
この後、アマロンさんがやる行動は、
予測できた。
それと同時に、興味もあった。
もし、そうなら。
ずっと考えないようにしてきた予想が、
証明されることになる────。
「感謝を。キッティ、その袋の口を広げなさい……。このお花……ここに入れようとしたら……ホラ、このとおり──」
「ぁ………」
キッティ、口、ぽかーん。
「……浮い……た」
「 ──ッッ!! 」
くっそー!!
やっぱりかぁ──!!
「……気づいたわね?」
「ふぅ……なるほど、な……」
なるほどな、じゃねっぞヒゲイドさん……!
王女様に誕プレ配達するという偉業をはたした、
私を助けてくれぃ……。
こーなったらぁぁ……!
な、なんとか、しらばっくれるしかなぁ──い!!
「そっ、そうじゃ、ないわ……ッ! 精霊花は、その……特別な花で! わ、私のバッグも、ほら……"歯車法"って、ちょっと妙ちくりんなスキルだから、それで、だから、たまたま入って──……!!」
「そう、"納得"してきたのね?」
アマロンさん、うぜぇ──!!!
「ちが、そ! そうじゃな、くて……! 魔法だって……、ああッ、そうだっ! 私、葉っぱで攻撃された事があるんです! フォレストウルフの……だったっけ? 敵の体から飛んできた葉っぱで、まだ生きてて……! だから、バッグ歯車で防御できて! だから、あれは生きてるし──!」
「あなたは……そう"認識"したのね?」
ひぃぃぃいい──……!!!
この人、だいたい勘づいてんなぁ──!!
私の、思ってた事と、ほぼ、ドンピシャだわ……。
「かって、に、じゃ、ないわ! ……ゼッ、ゼッタイ……!」
「……。アンティさん……」
やべぇ、今のは墓穴ほった。
自分で言ってるようなもんだわ。
「……わかりやすく、教えて」
えっ、マイスナ!?
「……、……」
マイスナから、心のお手紙。
" ……消す? "
" あかんあかんあかんあかん…… "
「そんな事は、できない……」
当たり前やろ。
「……世界中のアイテムバッグは、この世界の神が決めた物しか格納できない。でもね── 」
「ちがうん、だってば──…… 」
あー、ダメだな。
これ、ちょっと煙には巻けねぇな……。
「 ──その歯車のアイテムバッグの、誓約を決めているのは──あなたです 」
「私……」
言葉が出てこねぇ……。
んなこた、わかっとんねん。
私、当事者やぞ。
肌で感じとるわ。
「あなたは、やろうと思えば──神様が決めたルールを全部、無視することができるのよ」
「ちがう、ってば……!」
とにかく、試されるのが、マズい。
それだけは、死守しないと────……!
「……魔法だって、生き物だって入るわよ。なんだってね──…… 」
やかましわぁ──い!!
こちとら、謎のくゆくゆまで生み出しとんのじゃ!
えぇぃ……これ以上、付き合ってられっか!
マイスナ、適当なこと言って逃げるよ!!
「と、とにかく!! 私は今まで通り、このアイテムバッグのことは隠しますっ!!」
「これ以上、アンティをいじめたら、ゆるさない」
っし、マイスナ、ナイース。
「失礼しますッッ!!」
「バイバイ──」
「あっ……」
「お、おい、アンティ……!」
「あ、あほー! アマロン、責めるような言い方をし過ぎですよ……!」
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
「──てな感じだったんだけど……?」
「頑張りました」
──回想、終わりぃ。
目の前の四名様の、反応は・・・?
『────:……、……。』
『>>>…………』
〘------のんなぁ……☆〙
〘#………、………〙
……なんか、しゃべりなさぃな。
『>>>……じゃあ、きみは……』
「ぅん?」
『>>>……"時限結晶"に、"生き物"や"魔法"が入る可能性に……前から気づいてたのか?』
「……。予感はしてたわよ」
先輩が、えらい目を見開く。
……だって、そうじゃん。
「"そんなはずないかぁ"とは、思ってたけどね? でもさ……私がこの四ヶ月間──何百回、歯車から出た火で料理したと思う?」
『────……。』
「変だって思うわよ……そりゃあ。今でこそ先生の言う化学的な内容も、ちょっとはわかるわよ? でも……なんだかんだ言って、私の常識のベースって、こっちの世界よりなんだってば。"魔素"が格納できないのに、こんな自由に火が使えるのかな? くらい、意識はしますって」
〘#……なんと……〙
「あと、私がどんだけ野菜をぶち込んでるか、あなた達、知ってるでしょう。たまにバッグ歯車から出して、葉っぱ付きのコガネリンゴとか、かじってさ……? "これ、植えたら芽ェ出んじゃね?"とか。"アイテム扱いの割には、新鮮すぎよね?"とか……食堂娘目線で気になる事は多かったわよ」
『>>>まじかぁ……』
「つーか、レエンで光と闇のイナズマ、吸い込んだじゃん? あれ、やっぱ魔法だと思うんだよね……」
『────な。』
「だとすると、やっぱカーディフの火も、"火の魔素"だったんじゃないかって……」
『────! でしたら。』
「ん?」
クラウンが、正座のまま。
ちょっと、前に乗り出した。
『────何故:言ってくれなかったのですか……。
────もしかしたら:"魔法が入るのでは"と。
────"生き物が入るのでは"と──。
────そうすれば:
────私の理論が間違いだと──。』
「……何言ってんの」
バカねぇ……。
「……さいしょに、不可能を可能にできるって教えてくれたのは──クラウン、あなたでしょ?」
『────え──。』
「あんたが、あの山火事……ぜんぶ、やっつけてくれたんじゃない!」
『────そ:れは──。』
「……私、あの時わかったのよ。あきらめないって、大事だって──」
『────! ……。』
「レエンの時もね? あの光と闇を吸い込まなければ、イニィさん達は──守れなかった。魔法か、そうじゃないかなんて、どうだっていいのよ! ──まず、試すっ! やれるかも、しれないっ!! だって私たちで……山火事だって、吸い込めた──……!!」
『────アンティ……。』
「試したら──ほぉら、できたじゃない! あとは、細かい事よっ! 大切なのは、私はいま……ぜんぜん、後悔なんかした事がないってコト! あんたのお陰なのよ、クラウン──」
『────:……、……。』
「……──胸を張りなさい! 私はもぅ、こんくらいでヘコまないってば! 二代目クルルカン、舐めんじゃないわ──……!」
『────あ:あははっ……。』
クラウンが、泣き笑いみたいな顔になった。
もぅ、まったく。
トライする精神を教えてくれたのは、
アンタなんだからね──……?
〘#……ひとつ、聞きたい〙
「はぃ?」
〘#……では、話を有耶無耶にしようとしてまで……あの執務室から、さっさと立ち去ろうとしたのは、どのような意図があっての事なのだろうか……?〙
「ぇ、いやぁー、そりゃあ……ねぇ?」
「うん」
マイスナが、頷く。
続きを言ってくれた。
「あの時、もし万が一、"この中に入れるか試そう"……などと言われていたら──箱庭に、侵入されるかもしれませんでしたから」
「うんむうんむ」
〘#……──っ!!〙
何をビックリしてんすか。
『>>>じ、じゃあ……きみ達が、一芝居うったのは──……』
「「 箱庭のみんなに、会わせないため・・・! 」」
『────ぁ……。』
『>>>……、』
〘------のんの──ん☆〙
〘#……なん、と……〙
「バッグ歯車に入れなかったとしてもさ? 覗き込まれて、この船とか見られた日にゃー! 余計に生きづらくなりますからねっ。やすやすと知られて、たまるかってーのっ!」
「ここは、みんなの場所です。不用意に危険に晒す気はありません」
「ま、そーゆーことっ。
ふふっ、──" You all right ? "」
きひひ、と笑いながら。
人差し指を、ピシッと……!
『>>>……はは、は……』
〘#……なんと、いう事だ……。つまり、心配されていたのは──〙
『>>>ぼく達の方だった、ってことか……!』
──どかっ……!
きっひひ!
やっと正座、崩したわねっ……?
「つーか、そんくらいの事、察しなさいよー! ほら、私の心とか、プライベート皆無で読み取ったりしてたじゃないの、昔ぃ」
『────いや:最近は厳しいです。』
『>>>はぁ……きみに恋人が出来てから、思考内容の読み取りはしづらくなったんだよ』
「──えっ、そうなのッッ!?!?」
〘------あんだけイチャイチャ;
------ブチュブチュしてるのん☆ 無意識に;
------周りに対して思考ガードしてるのんなっ☆
------あんな恥じらいのない毎夜のクセに──☆〙
「黙りやがれ、精霊王……」
「ところで、相談したいデバイスの内容が」
「黙りやがれ、オクさま……」
『────しかし:
────本当に生命が格納できるのでしょうか。』
「いや、まだ無理だと思うのよ……私自身も、まだちょっと抵抗感あるし──。野菜とかは、何個か生きたまま入ってそうなんだけどねー……。今度、カンクルがしまえるか、試してみましょう。ほら、元々はこっちで生まれてるワケだし──」
『────なるほど。よいですね。』
「ちょっと実験じみてて、可哀想な気もすっけどねー」
「なら、うさ丸もセットで入れよう」
「そういや……あいつはなんで最近、水バケツに入ってんの?」
「たぶん、プール好き」
「……そうなの?」
ちゃんちゃん。
うさ丸が in 水バケツなのは、
もちろんスネてるだけでごわす(笑)
((´∀`*))ヶラヶラ