墓前の誓い
れんこん? いや連投だ(((;゜Д゜)))
挿し絵がないと、速いのは速いん(笑)
前にも言ったけれど、
先輩のお墓は、世界で一番美しい。
自分も死んだら、
こんなお墓に入りたいくらいに。
サンクロスの十字架のお墓は、
夕焼けに染まる一面の精霊花の丘に、
長い剣のような影を伸ばしている。
コココさんとリリリさんは、
感慨深い様子だった。
「……アイツは、あきらめていなかったんだな。俺たちと違って──」
「……そぅね──」
リリリさんの肩には、
ちょこんと、ピクシーちゃんが腰掛けている。
「……すまないが、鈴を持っていないか?」
「えっ」
コココさんが聞いてきたので、
面食らった。
「エルフが勇者を大地へ送る時には、鈴の音と共にあるべきなのだが……実は、今は持ち合わせていなくてな……」
「ここへ立ち寄ったのは、本当に偶然というか……当初は寄らないつもりだったのよ……」
「「……」」
え……っと。
すず。
鈴、か。
「こういう、ものなら……」
──きゅうぅん……、──リン。
マントのバッグ歯車の中から、
マザー・レイズから借りパチしている、
変な形の鈴をふたつ、取り出して見せる。
「……! "聖鈴"じゃないか!」
「まぁ、よい物ね」
「……知っているんですか?」
「ああ。それは人族の神官が使うものだろう? 君はどうしてそんな物を持っているんだ?」
「え"っ……」
困る。
王城から逃げるために、
大司教から渡された……なんて言えるワケない。
「……ふふ。まぁ、余計な詮索は野暮ですね」
「む……。その鈴なら、祈りの時には相応しいだろう。鳴らしてくれまいか……?」
「……」
「……アンティ」
マイスナに、聖鈴をひとつ渡す。
といっても……鈴の鳴らし方なんて……。
あの時、土壇場でマザーに教わった、
ひとつのやり方しか知らない。
7つの花が吊り下がったような鈴。
片手で持ち、垂れ下げさせ、
前を打つように、三回、鳴らす────。
" りぃ────────ん……! "
" りぃ────────ん……! "
" りぃ────────ん……! "
「────」
「────」
一対のエルフは、花の上に跪き、
背を折り、祈った。
私とマイスナの鳴らす、
計、14の鈴の音は、
広がる夏の夕陽と花の丘を、
風と共に巡っていった──。
「……感謝する」
「私達は、もっと早くに来るべきでした……」
コココさんとリリリさんは、
後ろで見守っていたバスリーさんに向き直った。
「──ふん、ありがとォよぉ。アイツのために祈ってくれて」
「……済まない、バババ。オレたちは、君はもう人族の里へと紛れて暮らしたんだろうと、ずっと思いこもうとしていたんだ……」
「ええ……。そして、もう生きてはいないと思っていました……」
「か、か。そうだろうねェー」
私は、複雑な気持ちで聞いていた。
「それが……どう、だ。こんな……」
「……、……」
「泣くんじゃないよォ」
ポンポン、と、
バスリーさんが、二人の肩を叩く。
身長差があるので、腕辺りになる。
「ここに……ここに眠るアイツは、偉大な男だった。オレ達の誰もが、出来ない事をした」
「私達エルフは……彼のことを忘れてはならないわ……!」
「かっか! 大袈裟だねェ!」
バスリーさんが、ちょっと曲がった腰の後ろで、
腕を組む。
「あたしが覚えてるから、いいんだよォ」
夕焼けの中で、
バスリーさんはニカッと笑った。
「……いいえ。バスリー? 彼がした事は、この素晴らしい大地を甦らせたことだけではないわ」
「むゥ……?」
──スっ。
コココさんが、ある方角を指さした。
東だ。
「あちらの方角にずっと行くと、大きな川の周りに出来た街がある」
「「……!」」
それって……。
昔の先輩と、ローザが旅した街……?
『>>>……』
〘------のんなぁ……☆〙
「あいつはここにたどり着く前に、捕らえられたエルフ達と、人族の貴族の子供を助け出したんだ」
「……!」
バスリーさんは、それは初耳だったらしい。
「セリゴという少年だが……彼は、エルフの権利と友好を、人族に広めてくれた」
「私達はね? 結局あの街に戻って暮らしていた。あの街は、最初にエルフが住める人族の街になったのよ」
やっぱり……そうだった。
先輩がした事は、とても大きい。
「セリゴの一族と彼がいなければ、私たちがここまで穏やかに暮らせる世界は、訪れませんでした」
「ああ……。かの一族は街を改革した後、たくさんの旅団を各地へ放った。エルフと人族の友好を深めるためだ。わかるか、バババ……。あいつから、全てが始まったんだ」
「……そうかィ」
先輩は死んじゃったけど、
その人生は、無駄じゃなかった。
たくさんの人を助け、
エルフと人の架け橋になった。
私たちだけが、正確に知る、物語。
『>>>……ふん』
『────ふふ:照れているのですか。』
『>>>や、やめろよ……』
〘------へへへ──☆〙
〘#……そうか。笑顔になった者達も、居たのだな──〙
「……かっかっか。じゃァ、こいつァ"エルフの大恩人の墓"、って事になるねェ……!」
「その通りだ」
「ふふ、まさか二代目がいるとは思いませんでしたが」
……!
「……先ほどは、弓を引いてすまなかった。オレ達は風の精に道や魔物を見張ってもらっているのだが……」
「物凄い速さの何かが、騒音を上げて近づいてくるとわかって……もしやと思った次第です……」
あー……。
風の精、というのは、
そのピクシーのことだろう。
リリリさんの肩を見ると、
なんか、必死に謝ってた。
「はは……いえ、気にしてないです」
「自分でも、たまにうるさいと思う」
「……まさか、"狂銀"までいるとはな……」
「ふふふ……」
「……絵本の内容を知っているんですね?」
「この場所にその絵本を仕入れたのは、オレ達だ」
「……ふふ。彼の事を描いた物語だとは、少ししてから気づきましたが……」
あれ……?
そいや、先輩がまだ生きてる時に、
絵本が出版されていたような……?
作者、けっきょく誰なんだろぅ……。
「しかし、なんだこの偉大な精霊獣は……」
『 クルォンクルォン? 』
「「すぅ──……すぅ──……」」
おっきなままのカンクルの背には、
ロロロとラララが眠っている。
「精霊花を食べ、植える聖獣など……他の同族が見れば、おったまげるぞ……!?」
「世界は広いわね……バスリー。この子たちは、あなたの親戚?」
「……23代目の、花守の巫女のご子息さァ」
「「……!!」」
……。
ネネネ・アーガインズ。
バスリーさんの、師匠。
「あたしゃ、その子たちを25代目にするつもりだよォ。僅かな余生の……さいごの仕事サ」
「「……、……」」
コココさんとリリリさんは、
バスリーさんの手を取る。
「……24代目、花守。バババ・フラネットの名を、オレは必ず後世へ伝えよう」
「誓います。エルフの子供たちへと、必ず」
「おーげさだねェ……! かっかっか……!」
そばで、見ていて。
これは歴史に残る1ページなんじゃないかと、思う。
バスリーさんは、嬉しそうだった。
「……気高き、花守の巫女よ」
「……頼みが、あるのです」
「いいよォ」
バスリーさんは、
頼みの内容を聞かず、快諾した。
「……!?」
「あなた……?」
「エルフ達を、ここへ集める気だね。いいよォ。ロロロ達も、その方が楽しいだろぅ。あたしゃ、いつ死ぬかわからない。それだけが、最近の心残りでねェ──」
「よ、良いのか……?」
「そんな、あっさりと……」
コココさん達から、肩のチカラが抜けていく。
ピクシーが落ちそうになる。
バスリーさんの、お婆ちゃんの勘みたいなのは、
ホント、ずば抜けているのだ。
「出来損ないのハーフエルフにゃ、この壮大な聖なる大地を管理するのは荷が重い。あたしの名など、どうでもいい。未来を、作ってやっておくれ」
「……感謝の言葉が、ない」
「……生涯の、命とします」
「かっか……! お、おおげさだねェー!」
かっかっか、と、バスリーさんは笑った。
「ところで、アンタ達、子供はまだなのかねェ?」
「「ブッ……」」
「……おんやァ? まさか、まだ童貞と処女とか言わないだろォねェ?」
「ば、バカヤロウ! バカにするなっ!」
「し、しばらく旅をしてましたから……その、外ではですね……!?」
「かっかっか! なぁにを慌ててるんだィ! しゃんとしな! いっぱいポンポン産んで、ロロロ達のトモダチを増やしておくれ!」
「お、お前ホントにバババか!? ちょっと達観しすぎだぞ!?」
「歳が近いとは、とても思えません……」
「──はっ! ハーフエルフなめるんじゃァないよォ!」
「……にょっきにょき♪」
「……ふふ」
「よかったね」
これから、にぎやかになりそうだわっ!










