表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
699/1216

墓前の誓い

れんこん? いや連投だ(((;゜Д゜)))

挿し絵がないと、速いのは速いん(笑)



 前にも言ったけれど、

 先輩のお墓は、世界で一番美しい。


 自分も死んだら、

 こんなお墓に入りたいくらいに。


 サンクロスの十字架のお墓は、

 夕焼けに染まる一面の精霊花の丘に、

 長い剣のような影を伸ばしている。


 コココさんとリリリさんは、

 感慨深い様子だった。



「……アイツは、あきらめていなかったんだな。俺たちと違って──」

「……そぅね──」



 リリリさんの肩には、

 ちょこんと、ピクシーちゃんが腰掛けている。



「……すまないが、鈴を持っていないか?」


「えっ」



 コココさんが聞いてきたので、

 面食らった。



「エルフが勇者を大地へ送る時には、鈴の音と共にあるべきなのだが……実は、今は持ち合わせていなくてな……」

「ここへ立ち寄ったのは、本当に偶然というか……当初は寄らないつもりだったのよ……」


「「……」」



 え……っと。

 すず。

 鈴、か。



「こういう、ものなら……」



 ──きゅうぅん……、──リン。



 マントのバッグ歯車の中から、

 マザー・レイズから借りパチしている、

 変な形の鈴をふたつ、取り出して見せる。



「……! "聖鈴(せいりん)"じゃないか!」

「まぁ、よい物ね」


「……知っているんですか?」


「ああ。それは人族の神官が使うものだろう? 君はどうしてそんな物を持っているんだ?」


「え"っ……」



 困る。

 王城から逃げるために、

 大司教から渡された……なんて言えるワケない。



「……ふふ。まぁ、余計な詮索は野暮(やぼ)ですね」

「む……。その鈴なら、祈りの時には相応しいだろう。鳴らしてくれまいか……?」


「……」

「……アンティ」



 マイスナに、聖鈴をひとつ渡す。

 といっても……鈴の鳴らし方なんて……。

 あの時、土壇場(どたんば)でマザーに教わった、

 ひとつのやり方しか知らない。



 

 7つの花が吊り下がったような鈴。


 片手で持ち、垂れ下げさせ、


 前を打つように、三回、鳴らす────。





 " りぃ────────ん……! "


  " りぃ────────ん……! "


   " りぃ────────ん……! "





「────」

「────」




 一対(いっつい)のエルフは、花の上に跪き、


 背を折り、祈った。


 私とマイスナの鳴らす、


 計、14の鈴の音は、


 広がる夏の夕陽と花の丘を、


 風と共に巡っていった──。




「……感謝する」

「私達は、もっと早くに来るべきでした……」



 コココさんとリリリさんは、

 後ろで見守っていたバスリーさんに向き直った。



「──ふん、ありがとォよぉ。アイツのために祈ってくれて」


「……済まない、バババ。オレたちは、君はもう人族の里へと紛れて暮らしたんだろうと、ずっと思いこもうとしていたんだ……」

「ええ……。そして、もう生きてはいないと思っていました……」


「か、か。そうだろうねェー」



 私は、複雑な気持ちで聞いていた。



「それが……どう、だ。こんな……」

「……、……」


「泣くんじゃないよォ」



 ポンポン、と、

 バスリーさんが、二人の肩を叩く。

 身長差があるので、腕辺りになる。



「ここに……ここに眠るアイツは、偉大な男だった。オレ達の誰もが、出来ない事をした」

「私達エルフは……彼のことを忘れてはならないわ……!」


「かっか! 大袈裟だねェ!」



 バスリーさんが、ちょっと曲がった腰の後ろで、

 腕を組む。



「あたしが覚えてるから、いいんだよォ」



 夕焼けの中で、

 バスリーさんはニカッと笑った。



「……いいえ。バスリー? 彼がした事は、この素晴らしい大地を甦らせたことだけではないわ」


「むゥ……?」



 ──スっ。


 コココさんが、ある方角を指さした。

 東だ。



「あちらの方角にずっと行くと、大きな川の周りに出来た街がある」


「「……!」」



 それって……。

 昔の先輩と、ローザが旅した街……?



『>>>……』

〘------のんなぁ……☆〙



「あいつはここにたどり着く前に、捕らえられたエルフ達と、人族の貴族の子供を助け出したんだ」


「……!」



 バスリーさんは、それは初耳だったらしい。



「セリゴという少年だが……彼は、エルフの権利と友好を、人族に広めてくれた」

「私達はね? 結局あの街に戻って暮らしていた。あの街は、最初にエルフが住める人族の街になったのよ」



 やっぱり……そうだった。

 先輩がした事は、とても大きい。



「セリゴの一族と彼がいなければ、私たちがここまで穏やかに暮らせる世界は、訪れませんでした」

「ああ……。かの一族は街を改革した後、たくさんの旅団を各地へ放った。エルフと人族の友好を深めるためだ。わかるか、バババ……。あいつから、全てが始まったんだ」


「……そうかィ」



 先輩は死んじゃったけど、

 その人生は、無駄じゃなかった。

 たくさんの人を助け、

 エルフと人の架け橋になった。

 私たちだけが、正確に知る、物語。



『>>>……ふん』

『────ふふ:照れているのですか。』

『>>>や、やめろよ……』


〘------へへへ──☆〙

〘#……そうか。笑顔になった者達も、居たのだな──〙



「……かっかっか。じゃァ、こいつァ"エルフの大恩人の墓"、って事になるねェ……!」


「その通りだ」

「ふふ、まさか二代目がいるとは思いませんでしたが」



 ……!



「……先ほどは、弓を引いてすまなかった。オレ達は風の精に道や魔物を見張ってもらっているのだが……」

「物凄い速さの何かが、騒音を上げて近づいてくるとわかって……もしやと思った次第です……」



 あー……。


 風の精、というのは、

 そのピクシーのことだろう。

 リリリさんの肩を見ると、

 なんか、必死に謝ってた。



「はは……いえ、気にしてないです」

「自分でも、たまにうるさいと思う」


「……まさか、"狂銀"までいるとはな……」

「ふふふ……」


「……絵本の内容を知っているんですね?」


「この場所にその絵本を仕入れたのは、オレ達だ」

「……ふふ。彼の事を描いた物語だとは、少ししてから気づきましたが……」



 あれ……?

 そいや、先輩がまだ生きてる時に、

 絵本が出版されていたような……?


 作者、けっきょく誰なんだろぅ……。



「しかし、なんだこの偉大な精霊獣は……」


『 クルォンクルォン? 』

「「すぅ──……すぅ──……」」



 おっきなままのカンクルの背には、

 ロロロとラララが眠っている。



「精霊花を食べ、植える聖獣など……他の同族が見れば、おったまげるぞ……!?」

「世界は広いわね……バスリー。この子たちは、あなたの親戚?」


「……23代目の、花守の巫女のご子息さァ」


「「……!!」」



 ……。

 ネネネ・アーガインズ。

 バスリーさんの、師匠。



「あたしゃ、その子たちを25代目にするつもりだよォ。僅かな余生の……さいごの仕事サ」


「「……、……」」



 コココさんとリリリさんは、

 バスリーさんの手を取る。



「……24代目、花守。バババ・フラネットの名を、オレは必ず後世へ伝えよう」

「誓います。エルフの子供たちへと、必ず」


「おーげさだねェ……! かっかっか……!」



 そばで、見ていて。

 これは歴史に残る1ページなんじゃないかと、思う。


 バスリーさんは、嬉しそうだった。



「……気高き、花守の巫女よ」

「……頼みが、あるのです」


「いいよォ」



 バスリーさんは、

 頼みの内容を聞かず、快諾した。



「……!?」

「あなた……?」


「エルフ達を、ここへ集める気だね。いいよォ。ロロロ達も、その方が楽しいだろぅ。あたしゃ、いつ死ぬかわからない。それだけが、最近の心残りでねェ──」


「よ、良いのか……?」

「そんな、あっさりと……」



 コココさん達から、肩のチカラが抜けていく。

 ピクシーが落ちそうになる。

 バスリーさんの、お婆ちゃんの勘みたいなのは、

 ホント、ずば抜けているのだ。



「出来損ないのハーフエルフにゃ、この壮大な聖なる大地を管理するのは荷が重い。あたしの名など、どうでもいい。未来を、作ってやっておくれ」


「……感謝の言葉が、ない」

「……生涯の、命とします」


「かっか……! お、おおげさだねェー!」



 かっかっか、と、バスリーさんは笑った。



「ところで、アンタ達、子供はまだなのかねェ?」


「「ブッ……」」


「……おんやァ? まさか、まだ童貞と処女とか言わないだろォねェ?」


「ば、バカヤロウ! バカにするなっ!」

「し、しばらく旅をしてましたから……その、外ではですね……!?」


「かっかっか! なぁにを慌ててるんだィ! しゃんとしな! いっぱいポンポン産んで、ロロロ達のトモダチを増やしておくれ!」


「お、お前ホントにバババか!? ちょっと達観しすぎだぞ!?」

「歳が近いとは、とても思えません……」


「──はっ! ハーフエルフなめるんじゃァないよォ!」




「……にょっきにょき♪」


「……ふふ」

「よかったね」




 これから、にぎやかになりそうだわっ!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ