⑤ ЯヨHTOM
つ────ん、だ。
ふて寝じゃ、ふて寝ぇー!
本の部屋についてソッコーで、
フワッッフワのベッドに潜り込んだったわ!
クラウン、温度調節お願い。
へ? すっぽりマントどうすっか?
まんまでいいわよ、まんまで!
あぁーあぁー、もうイミわかんなぃー。
何がイミわかんないってさ。
マザー・レイズが、
今、すぐそばに、腰掛けてるってトコよ……!
「ぐーすかー、ぐーすかー」
「…………」
なんだか、視線を感じる。
なんなのよ、もぅ。
人の夢にケチつけといて。
なんでソコへ座りやがりますかね。
ん? なんか、いーにおいするわ……?
「あ、あの……。もし、お腹へってたら……」
「……! それは」
「アンティがつくった、焼き飯です……」
「……」
こっ、こらマイスナ……!?
アンタ、勝手に鎖ポケットから……!
アンタが食べんならいーけど、
大司教サマに、おいそれと与えるんじゃにゃーわ!
そりゃ、ばっちゃん焼き飯の作り置きは、
全調理済み格納の中で、イチバン多いけどサ……。
※『────ものすごい量です。』
ちな、私とマイスナはステータス同期してて、
寝るときゃほぼ同時に寝るので、
私の"タヌキ寝入り"は、マイスナにはモロバレである。
「す、すごく、美味しいですから……どうぞ」
「……」
……クラウン。ベアークラッチ、展開して。
え? 直接見れば、って?
ゃ、やじゃーい!
ふて寝はゼッタイ決め込んだる。
ほら……視覚つないで。
あやー、やっぱりマザー困ってるじゃないのー。
仮に毒でも入ってたらどうすんねんな。
や、死んでもそんなことはせんけどな。
……大司教って、けっこーなお偉いさんでしょ?
こんな義賊娘のつくった料理、食べるはずが──……、
「いただきましょう」
「っ! ど、どぅぞ……!」
── た 、 食 べ る ん か ー い !
もうちょっと警戒心とかないの……。
あ! マイスナか!
愛しのマイスナの手渡しだからか!
マイスナへの警戒心どんだけ薄いのよ、
マザー・レイズぅぅううう……!
な、何がハラ立つって、
私に冒険者やめろって言ったのは、
マイスナの身を案じて、ってことでしょう!?
マイスナのオマケで身を案じられても、
私……、ぜんぜん納得できないじゃん……。
そりゃあ私がケガすりゃ、マイスナもケガするわよ!
でも……冒険者にチャレンジしなきゃ、
マイスナとは再会できなかったわ……っ!
それに……!
手紙の配達するのもさ、
食堂と同じくらい、好きなんだから……っ!!
「ど、ドキドキ……」
「……」
──パクリ。
あ。ほ、ホントに食べよったわ……。
……ふーんだ。
どーせいっつもイイもん食ってんだろ。
食堂娘の焼き飯なんかで────。
「……! ……、……、」
「え……? ま、マザー……?」
……。
……?
なんか、震えてない?
……?
……泣いてる?
いや、仮面で顔、見えんけども。
な、なんで……?
「……、……」
「お、おきらいですか?」
「……そうではありません」
……?
パクパク食っとる。
マイスナは、オロオロしながら見てる。
「にょ」
「……ありがとう」
うさ丸、あんた、にょ……って。
どっからお水出したの。
って、マザー、完食しとる……!
「くぷー」
カンクルがお皿、咥えて持っていきよる。
あんたけっこー顎のチカラあるわね。
「お、お粗末さまです」
「いえ……とても素晴らしいご馳走でした」
……! ふ、ふんっ!
焼き飯、褒めたからって、
ふて寝はやめないかんねっ!
てか、大袈裟すぎよぅ……。
そりゃ、焼き飯は超自信あるけどね?
「……あなたも、アンティと一緒に料理をするの?」
「えっ……」
つーか、さっき食堂がどうとか言ってたわよね、
マザー・レイズさんさぁ……。
私の実家、ガチバレしとるやんけ……。
「は、はいっ。アンティによく、お料理教えてもらってます」
「そう……素晴らしいことだわ」
この人……よくわかんない人ねぇー……。
でも、マイスナ大好き人間であることは確実だわ……。
つーか実家バレてんの、キッついなぁー……。
大司教でしょ? よくわかんないけど、
超お偉いさんじゃん……。
ヒゲイドさんに、なんて言えば……。
「アンティに、たくさんお料理を教えてもらいなさい」
「は、はいっ!」
「にょわわわわぁ……」
「くかー」
こらうさ丸! あくびしてんじゃないわよ!?
気を張りなさい! 鍋に封印されたの忘れたの!?
カンクルもぉ……! 腹を出してお寝んねは、
おおかみ失格だっつーにぃぃ……!
「……聞きたい事があります」
「は、はいっ」
「あなたとアンティは、魔物をよく倒すのですよね?」
「っ! そ、それは……」
ほらぁ、さぐり、入れてきたァー。
「は、い……。でも、とても気をつけています」
「気をつける、とは?」
「私が死ねばアンティが死ぬし、
アンティが死ねば私が死ぬからです」
「……」
このこと、言わない方が良かったかなぁ……。
でも、マイスナの保護者さんみたいなもんだし……。
「私たちは……あなたが思ってるより、ずっと強いと思います。でも、少しの油断でアンティが死ぬなら、私は全力で敵を殺します」
「……! ……」
……。
マイスナは純粋だけど、
たまに、鋭い氷みたいな時がある。
そゆとこ、とても好きだけど、
ちょっと、気をつけとかなきゃかもしんない。
「……あなた達が」
「……?」
「あなた達が魔物を倒した時、何か異常な事は起きますか?」
「え……?」
「例えば……急に魔物がアンデッド化する、などは?」
……!?
「え、えと……たまに、いきなりアンデッド化したりします」
「!」
「でも……たまに起こることですよね?」
う、うん。
マイスナの言う通り、
たまーに倒した直後に、
急にアンデッド化したりする。
「そ、その時、あなた達はどうするのですかッ!?」
「殺します。もう一度」
あ……。
マイスナが、聖流の外套を広げて、
少しだけ、ローザの流路を解放してる。
淡く、光る──。
「アンティは食べられる魔物と、人に害なす魔物は、視界に入り次第、即座に狩ります。アンデッドになるのは後者で、私は聖属性が得意です。すぐに殺し直します。アンティも使おうと思えば使えます」
「……! そう、なのですか……」
そ、そうね。
精霊王がパーティにいるかんなぁ……。
お酒と雨水で増え続ける乙女型聖水だもんね。
「これは……」
「……え?」
「これは、他言無用ですが……。あなたたち二人は……倒した魔物がアンデッド化しやすい体質です」
「……──!?」
──えッッ!?
「そ……そ、うなん……ですか……?」
「あなた達が共に行動する事によって、その力は共鳴し合い……顕著に発現するやもしれません」
「そ……」
ま、待て待て待って待って!!
そんなの初めて聞いたわよ!?
この人、なに言ってんの!?
「……マイスナ、許可します。もしも倒した魔物がアンデッド化した場合は……必ず殺し切りなさい。微塵の容赦もなく、完全にこの世から消し去るのです。ゴースト系も警戒なさい。絶対にアンティに近づけてはなりません」
「ぅ……?」
な、なん……?
……!
あ、あれ……?
あたまを、撫でられてる────……?
「……この子を、必ず守って」
──わ、たし──……?
「は……──はいっ!」
「……頼みましたよ」
……?、??
……、ど、どういう、こと……?
なんで、マイスナじゃなくて──わたし……?
「……明日の朝、迎えにきます」
「──えっ!」
「王城の外に、出たいのでしょう?」
……!
そりゃ、月末の試験が近いし、
明日の朝にはオサラバしときたい。
でも、なんで迎えにくんの!?
「あ、朝になったら、勝手に出ていきますっ!」
「お城の壁を跳び越えて……ですか? なりませんっ」
「な、なぜ……」
「後で疑われないためにも、あなた達には堂々と正門から帰ったという記録をつけてもらう必要があります」
「ぅええ……!?」
お、王様が箝口令を敷いてくれたとはいえ、
それは、目立ち過ぎるんじゃ……。
「そのお手伝いをしてあげると言っているのです」
「は、はい……」
「……今日はもう寝なさい。──、ぁ……」
そう言ったマザーは、ハッ、として、
慌てて私の頭から、手を、離した。
……んだよ。無意識で撫でてたってか……?
「……おやすみなさい、アンティ、マイスナ」
「……はい、おやすみなさい。マザー・レイズ……」
……、……。
「……服は、できる限り着て寝なさいよ?」
「──びゃ!? ぜ、善処しますっ!!」
こ!? この四つ目仮面っっ……!?
「あなた達も、アンティ達を頼みますよ?」
「にょななぁ……」
「くかーZzz……」
眠そーな、うさ丸が手を振り、
マザー・レイズは、本棚に隠れた扉に消える。
しばらく、静寂が続いた。
「…………」
…………。
ムックリと、起き上がる。
「……なんなのよー、あの人はぁー……!」
まだ頭に、撫でられた感触が、残っている。
ほんと、なんなのよぅ……。
マイスナが、ベッドに近づいてきた。
「……優しい、人だと思うよ」
「そ、そりゃ……! そうかもしんないけどさ……」
ふたりで、マザーが消えた扉を見ている。
……明日の朝もご対面するらしいし。
「……ああん! もぅ、わっけわかんね……!
……マイスナ、お風呂はいる?」
「……! うんっ、はいる♪」
あ……これ、服着ない流れだ。
もう、いいもん。
ベッド、ふかふかー。
『────:……。』
『>>>……"体質"、だと……?』
〘#……さて……反省したかね?〙
〘------びっ;ビリビリはダメのんっっ……☆
------ビリビリ;はぁっ……☆☆〙
C=⊂⌒っ´ω`)っ










