朝帰りしかゆるさん城
((((⊂⌒っ´ω`)っほふくぜんしん。
故郷の父さん、母さん。
今、お城の壁の出っ張りに座ってます。
ええ、外です。
わぁー。王都、きっっれいだなぁー。
「うえぇぇ〜〜!
うぅ〜〜んわんわんおうわんおぅうう〜〜……!
あのオババぁ、きらいぃぃ〜〜!!」
「ぬ、ほらぁ〜〜……。もう、泣かないでぇ〜〜……!」
──パーティ会場の窓の下。
城外の隠れ絶景スポットで、
腕の中の憧れの魔法使いが、
ワンワンと、泣いています……。
ま、でもそら、泣くわな。
あんな事、言われたらね。
……ムカッ。
思い出すと、ハラたつなっ!
な、な、な……、
「なんなのよォ、あのオババはぁぁああ──……っ!」
「うわぁんおぃおぃおうおうおうおうおうぅう〜〜……!」
王様が住んでる城を、
背もたれにしている私に、
しなだれかかるようにして、
マイスナは泣いております……。
私は優しく抱きしめて、
宿敵のカッコした女の子を、
ナデリコナデリコ、
しておりました。
「にょきっとなんなん」
「くゆっくゆ!」
「わんわんおうおうわんわんおぅぅ〜〜……!
ぶばば、ぶばばぁぁ〜〜!」
「にゃぁあ……! もう泣きやみなって……!
わ、私まで悲しくなってくるでしょーよぉー!」
スキルの完全同期のせーで、
相方が悲しいと、こちらも悲しくなります。
同情できる分、なおさら涙ちょちょ切れです……。
「ぐすんっ……、アンティ、ごめんねぇ……」
「……なにがぁさ」
「怒るの……ガマンできなくて……」
「……──」
────" 何故、そばにいるのか "。
あのオババが、
何をトチ狂ってソンナコトを言ったのか、
私にはまるで理解できん。
そりゃ、あそこでブチ切れて氷だしたのは、
マズいっちゃ、マズいわよ!
でも……私の言うコトなんざ、決まってんだろ……!
「──あんたは、悪くないっ……!!!」
「……!」
「……ぜんぜん悪くなんか、ないかんな?」
「ぁ、アンティ……!」
「今日は超、なぐさめまくる」
「ぅ……ほ、ほんと?」
「もちろんっ!」
「……な、なぐさみまくり?」
「う、うん……? うん、なぐさみまくり」
「……にへ」
ニュアンスがチョット、チガわね……?
と、とりま、同意したった。
しっかし……、
お城の外壁に座るなんて、
こりゃまた……貴重な体験だわぁ。
たっけ。
数ヶ月前の私なら、漏らしてるかんね……。
マイスナを慰めてて、
けっこう時間が経った。
もう夕焼けは、終わり始めている────。
『────このポイントに降下して:
────20分程:経過しました。
────日没までの予測時間:アト・12分:です。
────対人センサー:反応:無。』
『>>>やれやれ……王女様どころの騒ぎじゃ無くなっちゃったな。まったく何なんだ、あのバアさんは……!』
〘------パーティで出たお酒;
------何種類か持ち帰ってほしかったのん☆
------ふざけるなのんっ☆☆☆
------次あのババアにあったら;天に還すのんっ☪︎.*・゜〙
〘#……精霊王の言葉とは思えん物騒さだな……。君たちに一応は聞くが……"尊主"と"反逆花"という呼ばれに、覚えはあるかね?〙
「……私アンティ。しょくどぉうむすめぇー」
「……軟禁生活の後、サバイバル娘でした……」
尊主と反逆花なんざ、呼ばれる要素がねぇ……。
〘#……あのババア殿は……、……意味が、わからんな……〙
「にょきっとなぁー!!!」
「くゆくゆくゆくゆくゆくゆくゆ」
もはや先生ですら、ババア呼ばわりである。
いや、いい。あのオババに、慈悲はない……。
〘#……王女殿へのプレゼントだが──アレを託したシャンティという少女は信用できるのかね?〙
──!
……。
なでなで。
「……♡♡」
「そう、ね……。かなり、信用できると思います。あそこには、あの子のおばあちゃまも居たし……、あ。てことは、王書を預かった貴族様は、おばあちゃまとも家族なのよね……?」
世界って、狭いなぁー!!
や……純粋に、
お城の中の貴族様・濃縮率が高いのか……。
「うん……私が知っている貴族様の中では、しゃべりやすくて……いい人たちです」
〘#……ふむ。なるほど……〙
「……信用、ならない?」
〘#……いや。君のご実家は食堂だろう。たくさんの客の表情や心象を読み取る力は、他の同年代より優れていると、私は仮定する〙
「あ、あざんます」
〘------ひと言;信用しているって言えばいいのんっ☆〙
〘#……! ふふ、そうだな──〙
はは……ハァ。
結局、王女様にも王様にも会わなかった……。
ま、シャンティちゃんや、おばあちゃまなら、
何とか、渡してくれるでしょう!
信じて託す──。
アッパーの魂こもった、あのカトラリーを──。
「……そーいや、宝石に触っちゃってたなぁー、シャンティちゃん……。ビュンビュン飛んでたけど、結局ヒゲイドさんが言ってた"宝石の劣化"って、どういうコトだったんだろう……ねぇ?」
「ふみゅ♡」
泣きっ面がマシになってきたマイスナの、
ほっぺたを優しくフニる。
『>>>……おーらい。イレギュラーはあったけど、ま、終わっちまった事はしょうがない。とりあえず移動しよーぜ。ここは高所絶壁だから、人目はないと思うけど……』
〘#……とはいえ、いつ人が来るかわからぬ。早々に移動すべきだろう〙
そ、そりゃそうよね。
ここで、20数分もナデリコしてたし。
「ご……ごめんなさい……私がアンティにしがみついて、泣いていたから……」
『>>>気にすんな。こっちじゃ対人センサー見張ってんだ』
〘#……左様。女の涙を無下にはできん〙
ありゃ。きひひ。
男子チームが、カッコつけてる。
『────王室図書館:分室は:
────ここより真下に位置します。
────どうされますか。』
『>>>もし、もう王城から出たくて、今夜のうちに王都を脱出したいってんなら、とめないよ。最大限サポートする』
〘#……もうすぐ夜になる。炎を推進剤に使うなら、光と音が目立ってしまうぞ。やはり、急いだ方が良い〙
動かなければ。
先生の言うことは、尤もだ。
「マイスナ。元気チャージOK?」
「もちっと」
「──ㄘゅっ♡」
「やん♡」
ぉら、元気でたやろげ。
「クラウン。飛行デバイス、オススメで」
「にへへ♡」
『────レディ。
『────脚部:及び肩甲部に:
────フレア・バーニヤを展開。』
が、ヂャキンッッ・・・!
ぎゅるぅううん・・・!
ぱ・・・、ぱ・・・!
──ぎゅぅういいィィ、んっ・・・!!
『────"Ready:"。』
『>>>城の壁から離れなよ。例の、ねずみ返しに引っかかる』
「おっけー」
「にょわわわわわ……」
「抱っこのままでいーい?」
「あら、今度は交代してね?」
「くゆるー」
……くゆる?
マイスナを"姫抱き"したまま、
溜め池の飛び込み台みたいな城壁を前に進む。
学校のチビぃのより大きくて、
下は水じゃないケド。
──……キン。
ハシまで行き────……あれだ、
────鉄棒の前まわり。
あの要領で─────飛ぶ。
「なぐさみもの〜〜♡ なぐさみもの〜〜♡」
「狂銀さん? お黙りなさい?」
くるん。
空と同じ色の炎が噴き出し、
ギアと装甲がそれらを補助し、
推力は重力に反抗する。
「にょきっと」
うさ丸は流石な握力だ。
後頭部から微動だにせぬ。
「くゆゅー♪」
カンクルはマイスナの首に、
呑気そうに巻き付いている。
なかなか度胸のあるアニマルズね。
噴き出す炎はご機嫌だけど、
白銀の声は、よく聞こえた。
「……ごめんね」
「……気にすんな」
……まったく。
本音を言うと「あんだあのババアぁぁ──!!!??」に尽きるんだけどね。
が……とりあえず今は、お城の敷地から脱出したい。
〘------神罰がくだるのんっ☪︎.*・゜
------ウチがくだすのんっ☆〙
『>>>酒飲みって厄介だな……。やぁ、もうすぐ日が落ちる。光と音、高度を下げる時には気をつけて』
『────アンティ。
────"王室図書館・分館"へ:戻りますか?。』
「いや……このまま外に出ちゃおう。私もかんなり、アレは予想外だったのよ……お城、こっっえぇ──!!!」
「……パーティ荒らし、しちゃったもんね……」
「きっひひ。だぁから、もぅ気にしない! あんたが悲しくなるトコロから、私は全速力で逃げるぜ?」
「あ、あんてぃぃ、いけあん……っ!」
な、なによイケアンって……。
後ろは振り返らない。
肩のバーニヤがキリキリと回転し、
落下の減速が、横向きへの飛行へと変化していく。
──キ・キ・キ・・!
──ギュオォオオ・・!!
──ゴォオオオオオオ──・・・!!!
「……宿、見つかるといーわね」
「アンティとなら、外でもいいよ?」
「なんかそれ、エッチよ?」
「えぇ〜〜! そんなことないもーん!」
野宿ウェルカムな宿敵にクスリとして、
王城の壁側を目指す。
やっぱ広いわ。
こんだけ飛んで、まだ敷地内だし。
けっこう高いし、だいじょぶだろ。
──────と、気を抜いていて。
ごぉぉぉぉぉぉ……!!
────ブ ォ ォ ォ ォ ン ・・・・!!!
「・・・──ッッ!? 」
「・・・──っっ!? 」
なんか突っ切ったな。
『────警告。
────王城敷地内・上空の:
────何らかの術式を通過。』
────ぱぁぁぁああああんんん・・・!!!
『>>>城壁の魔石が光った。まずいぞ』
〘------侵入者用の警報術式だと思うのん☆
------帝国の城にも同じようなの;つけてたのんっ☆〙
くそったれが。
『────シゼツの使用を提案。』
〘#──待て。後方から光の矢のような物が射出された。多いぞ! 避けろ!〙
「クラウン、バーニヤ制御、私に繋げ」
『────ご武運を。』
シュルル、カチン!
──ツインテールがコード状になり、
肩と背中のデバイスに有線接続する。
「マイスナ、このままいく」
「抱えてて、撃ち落とす」
とりま左肩のバーニヤを反転させ、
不規則な動きを生み出す。
これくらいでは、
私たちの感覚は乱れない。
「そんなはやくない」
「昔ローザにやられたのよりはトロいな」
〘------え"っ……!?☪︎.*・゜
------そ;そんな事ありましたか……?☪︎.*・゜〙
スラ湖のね。
なんで素に戻ってんねん。
「撃つー」
「それ平気か?」
王城の防犯術式、撃ち落として大丈夫?
と、聞きたかったが、
すでにマイスナの両手の銀爪は、
銀の髪が有線接続され、
小型荷電粒子砲になっている。
指は十本あるので、つまり十門だ。
「えい」
パ パ パ ぅ 。
マイスナはこゆとこ遠慮しないアレな子なので、
一気に3セットやりやがった。
十門で3なので、
30のレーザーが指から放たれた事になる。
〘#──追尾操作を行う──むんっっ!!!〙
〘------NON;problem-☪︎〙
ピンク色に見える魚みたいな矢を、
カクカクと曲がる聖白のビームが撃墜した。
ジュッ! となんか焼け落ちる音がする。
「あれ、ストーカーヘルって名前にしたんだ」
「どんだけなの」
地獄が追ってきとるやんけ。
クラウンとは違う意味で、センスを疑うわ……。
てか手からビーム出すなよ。
お姫様抱っこでする技ちゃう。
「よ、よしゃ全部なくなったわ。シゼツの"王絶"で──」
『>>>──アンティ、後退しろ』
「っ」
すごいと思うのは、
センパイの名前呼びに対して、
もうほぼ思考無く、反射的に行動する所だ。
『────INVERT。』
クラウンも、是非もなく補助る。
私は即座に両肩のバーニヤを反転させ、
変な炎が前方に出て、最速バックした!
──ギャ・ギャ・ギャっっ!
──パ・ォ・ウ・ウ……!!
「にょぉおわぁああ──とッッ!!?」
「く、くゆゆっ……!?」
〘#──何故か頼む〙
理由を教えてくれ、という意味だろう。
もうすぐ、城壁の上を通過する所だった。
マイスナが言う。
「アンティ、おっぱいにしまってるギルドカードが震えてる」
「──うん、私も気づいたわ」
──ヴヴォォオン……、……!!
なにか、まずい。
これは、街の門を通る時に似ている。
『>>>アンティ、マイスナ、よく聞きな。恐らく防犯上の理由で、お城の壁を許可なく飛び越えた者には、ギルドカードに記録が残る』
「それだぁ……!」
「えぇー……」
城壁から離れながら、
"眼魔"のスキルで壁の上を見ると、
うっすいピンク色の壁みたいなのが空まである事に気づく。
夕焼け終わりの色と混ざって、めっちゃ見えにくい。
『>>>危なかった……! 視覚分析と、この義手の集積回路がなけりゃヤバかった……! すまない、多分……今夜は城から出られないと考えた方がいい』
『────ㄘゅっ♡。』
『>>>ぅおっ』
今の音なによ。
『────スペサルサンクスという事です。』
『>>>……何でもない。何でもないって』
〘#……よく気づいたな! 今日は王女殿の誕生祭だ。城の警備が強いのやもしれん〙
マジ、先輩サマサマだわ。
くっそー!
これ以上、ギルドカードにヤバい情報積んでたまるかぁー!
「ごめんマイスナ……」
「いいよ、図書館に戻ろ?」
パーティ荒らして、
明日の朝に正門から出れるかも心配だけど──。
〘------人が出てきたのん☆
------多分、空の防犯トラップに反応したのんっ☆〙
うわぁー。
下を見ると、神官さんの騎士さんが何十人か、
建物から出てきてる。
『────読唇しています・・・。
────"なんだ、空のほうか!?"。
────"いつ以来だろう!"。
────"何が反応したんだ!?"。』
クラウン、そんな事もできるの。
けっこう人、出てきちゃったな。
「よし……シゼツを起動する」
『────レディ。』
……きゅぅうううん──!!!
──ぱしゅ──! ぱしゅ、ぱしゅッ──!
{{ 厄介な事になったわねー! }}
【 使い所に気ぃつけぇや? 】
< 隠れんぼの時間やねぇ〜〜♪ >
「マイスナ、ちょっと乳からどいて」
「よいしょ」
『────"さいしょのむねあて":展開。』
ガシャコ・・・!
『────イニィ:ソウル / セット──。』
──きぃいん・!
『────ヨトギ:ソウル / セット──。』
───きぃあん・・!!
『────ダイオル:ソウル / セット──。』
────きゅぉおん・・・!!!
3つの特別な"どらいぶ"が、
私の乳装甲の上で、噛み合っている。
ギュウ・オ・オ・オ・オ・オ・オ……!!!
き──────ぃ い い ん・・・!
『────は、ぐ、る、ま、ど、ら、い、ぶ 。
────シ ゼ ツ ・ ソ ウ ル :
────ク ラ ウ ニ ン グ 。』
魔刃、唄い賜う────。
『『
い と し の 血 呼 び に
刃 絶 さ る べ き に や
』』
「 ──王絶、起動──・・・! 」
──自販機にあったかコーンスープ出現!▼
──たれは喜んでいる!▼
⊂⌒っ´ω`)っぬおあーっ










