空元気エントリー
図書館のひみつきちを出る前に、
マイスナと一緒に、
呪いの仮面、千本突きを決行した。
『>>>すーみませんでーしたぁ──。
>>>ちぃーと、いーじぃわーるでーしたぁ──』
「このこのこのこのこのこのこの」
「あちょちょちょちょちょちょちょ」
キキンキンキンキキンキンキキンキンキン。
『>>>……はっ。それが全力かぃ?』
「ぶっっっ飛ばすぞてめぇー!」
「クルルカン、ゆるすまじ……!」
〘#……やぁーめないか、バカ者共ッ……! こんな時に、まったく……!〙
〘------普っ通ーにガラ悪くてウケるのんなぁー☆☆☆〙
うへぇー、せっ、先生に怒られたやんかぁー!
うっ……現役、座学優等生ゆえの、妙な恐怖心がっ……!
「イヤミな先輩なんてっ、先輩なんてっ……!」
「私はクルルカンを倒す運命なのだ」
『>>>好きに言うがいいさ。いつでも挑戦を受けよう』
「……半裸の時と打って変わって、妙にプラス思考で尊大な態度がムカつくぅぅ……! ちょっとクラウン! あんた何かしたのっ!」
『────……しましたね。』
えっ。
{{ 私、チョットそこら辺の事、詳しく聞きたいんだけど }}
【 おいよせナスっ子……入ってくんな。これ以上ややこしくすんなアホたれ…… 】
{{ なんでですかぁぁぁああああ────っ!!! }}
< ズズぅ〜〜、ぷはぁー♪ あんたはん外に出れるんやから、てきとぉに花撒いてきはったらよろしおすぅ〜〜♪ >
『 が、がるがるっ……がるがる! がるがるっ!? 』
{{ そんなことできませぇええええええんんん!!! }}
頭がうるせぇ。
「アンティ大家族は今日も元気です……」
「マイスナ、ナレーションで区切るのやめて。悲しくなってくる」
『>>>なぁ、ちょっとチューしてみな』
……は?
「「は?」」
声にも出しました。
『>>>いいから。チューしてみな』
「「……」」
私と……マイスナ、でだよね。
「……クラウンさん。おたくの旦那さん、ちょっとゲス野郎が過ぎるんじゃありません?」
『────え:ええと……優しくて:激しいですっ。』
……こいつもだいぶ毒されてきてるわね。
『>>>こんな可愛い奥さんがガチゼロ距離にいるのに、きみらのソフトキスくらいで興奮しないから』
『────か:カネトっ……。』
「……ドラゴンのチカラって、宇宙に届くかな……」
「初代義賊、次に箱庭であったら覚えとけー」
『>>>はぁ……冗談でこんな事、言うわけないだろ……。いいから、軽くでいいから、ちょっとチューしてみな!』
「「えっ……」」
……。
何か、意図があるんだろうか……。
「……」
「……」
「「x」」
『>>>──すぐ離れて、腹を見ろ』
……!
──バッ!
「「──!!」」
お腹に、ピンク色のハートマークが、
うっすら浮き出てる!
すぅ〜〜〜〜……。
「「……」」
消えた。
『>>>……ぜったいに見られるな。見る人が見れば、隷属紋章だとすぐにわかる。互いに奴隷だなんて、信用ならない奴に知られていいモンじゃない』
「……おーらい」
「気をつける」
『>>>……オーバー。先輩からの有難いお言葉は以上! パーティなんだろ? 必要以上に硬くなるな。少し楽しむくらいでいい』
〘#……ふふふ、生意気な男になったものだ〙
先生が、愉快そうに言う。
「……ひねくれてた腹だし義賊が、一夜でずいぶんと持ち直したこと?」
『>>>当然だろ。ほんっと……すっげぇ可愛いんだぞ』
「とうぜんでしょ、私のスキルよ?」
『────ちょ:ちょっとお二方:何を言ってるんです。』
先輩は機嫌を直してくれたみたいだ。
まだ日は落ちていない。
明るい内からパーティがあるのは、
実は意外だった。
貴族様のパーティって、
小娘的には、夜のイメージがある。
石でできたお城の建物の中は、
優しいオフホワイトに照らされている。
くもった赤の絨毯の道を、歩いた。
「あの純粋無垢なクラウンは、もういないのねっ、……よよよ」
『────私は:いつでも純粋です。』
「ついこの間まで、ベッドを落としてアタフタしてたと思ったのに……! 今は、そのベッドの上で……!」
『────昨日はベッドを使用していません。』
「え、くわしく」
『>>>ふっ、布団でって意味さ……!』
【 嘘やのぅ 】
< 嘘やねぇ♪ >
〘#……いや……行為自体を否定しない時点で、お前はダメだろう……〙
{{ な、何かのナゾナゾですのっ!? }}
〘------酒もってこいのーんっ☆〙
明るい会話をしているけど、
パーティ会場に行くのは、
実は処刑台にいくような気持ちで歩いている。
……。
さっきから、なんでうさ丸とカンクルは静かなの?
肩の上の勇者に、視線を向ける。
「……うさ丸?」
「! ……」
──ポムポム。
頭を、真っ赤なグローブで、ポムポムされた。
……優しいな。
内心は、不安なのがバレてるのかもしれない。
──ぴょこん!
と、襟巻きモードのカンクルから、
おおかみフェイスが飛び出る。
マイスナが、見る。
「……──カンクル」
「──!」
──こしょこしょ!
カンクルは、励ますように、
マイスナをコショコショした。
「……」
「……」
私とマイスナの中で、
モフモフ勢の株が爆上がりである。
「…………いきたくねぇなあ」
「…………うん」
本音でた。
これに対して、箱庭勢は黙った。
ひとりだけ、しゃべった。
『C7:ごはん、食べに行くと思えばいいにゃ!』
ニャーナが、天才的なことを言う。
『C7:少し豪華なレストランなら、ドン達は立派なお客さんにゃ♪ プレゼント渡して、みんなに笑われて、美味しいもの食べるんにゃ♪ そしたら箱庭に反映されて、ワタシたちも美味しいもの食べれるかもにゃん♪』
『C2:自分のことしか考えてないみゃっ!?』
「ふふふふふっ……!」
「! マイスナ──……」
隣で、美しいドレスの花嫁が、わらっている。
「──……ふふ、そっか。いいね」
「アンティのごはんより、美味しいもの、でるかな──」
足取りが、踊る。
かるく、絨毯のうえで。
たとえ、この先に何があろうとも。
私たちは、となりで、かなであう。
「アンティ、ホントにそのままでいいの?」
「……いーの。主役は、王女様でしょ?」
「……アンティが、言っちゃいけないセリフだなぁ」
見張りの騎士が立っている、大きな扉が見える。
石の彫刻は、まるで生きている植物のよう。
両サイドの騎士は美しい装飾鎧を着て、
天高い槍をたずさえている。
「お手を、姫君」
「はい、義賊様」
騎士たちは一礼し。
ゆっくりと────開かれた。










