星令聴取 ⑤
I'm so sorry for what happened in Kyoto Animation.
My thoughts are with all the victims.
In deepest sympathy.
あなたには きこえていますか
あなたに とっては みらいの
かのじょたち からは かこの
この ものがたりが きこえていますか──?
ち
く く
た た
く ☼ く
ち ち
く く
た
……今日は、世界がサッカーボールになる日だ。
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,." `ヽ.
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──────西暦 2077年7月7日:東京。
「……空は変わらないなんて、だァーれが言ったんだろ……」
下校中の僕は。
建造物がはみ出しまくった、
水灰色の──空を見上げた。
自宅での通信教育が、十分に可能な科学の時代。
僕たちはまだ「健全だから」という理由で、
前時代的な学び舎に通っている。
僕の夢は、両親に反対された。
物を作る仕事なんて、もう人間は到底、
シミュレーターには敵わないからだ。
新しい発見も。古き良きデザインも。
全ては、データの海から、
溢れかえっている。
「はぁ……鬱だ」
視覚の端っこのホロ・ヴィジョンは、
ここ一週間、まっっったく同じよーな内容を、
タイムリープのように、延々と展開している。
──" さて-いよいよ本日施工される-宇宙ステーション『はぐるまどらいぶ』の世界再構成計画ですが──国際情勢に詳しい亜坂乃編集長にお越し──今、どういった心境でしょ──ハーイハイハィ、これはですね──昨日のニクニク生放送でもワタクシ、言いましたケドモね-ご自宅に置き換えてみればよいでしょ──兄妹でもね、当然、部屋は分かれておりますよね? つまり──そぉーいう事ですよ! 納得ですよね? 各国のマイルームを物理的に造りあげる! すばら──ですね! ワタクシはもぅ、ワクワクがとまりませ──ありがとうござ──では昨年の2076年度新人主演女優賞で話題になった志賀野優衣さんはどう── "──
「なァァにが、マイルームだっての……。ケンカしまくった挙句に、国を"蜂の巣"みたいに区切っちまおうって、カネ持ってる国が言い出しただけじゃんよ……」
少しでも棒で突っついたら、即・世界大戦。
五角形と六角形に区切られる、陸、海、空。
その世界を分断する壁を、宇宙から見ると。
わぁ不思議。平和のスポーツの象徴である、
サッカーボール・クリソツになるって寸法。
「……実に皮肉のきいたお話。平和を象徴する、蜂の巣の星へようこそ。おはよう、未来。こんにちは、終焉……」
"わぁ~~! きっく!"
"──きゃははは!"
……あそこの地球柄のサッカーボールで遊んでるキッズどもは、それぞれが名のある神さまに違いない……。
「あぁ~~……夢がない。つまらんこって。なぜ僕が行かねばならん。学校が僕に来い」
今日の進路指導室も、
ご機嫌なシミュレーターでピカピカしていた。
あのデカいゲーム機にオススメされた職業を、
僕が両親に言うワケがない。
「鬱だ……」
友達は壁が国境になる前に、
休学して海外旅行に行ったっきり、
1ヶ月ほど帰ってこない。
アイツに借りたラノベ・メモリを返すのは、
どうやら数十年単位の奇跡になりそうだ。
「ダンプカーに轢かれようにも、既に車道は浮いてらっしゃる……」
科学は常に夢を追い、夢を轢き殺してきた。
あ、コレ僕の考えた格言です。
「ああああぁ……父さんに、なんて言やいいんだ……」
僕の夢は、クリエイター。
本日のオススメは、クラッシャーだ。
オーケー、二文字目まではあっている。
英語の場合はだけど。
「なんてもんを生徒にオススメすんだよ、あのピコピコはァ……」
この科学の時代に格闘技なんてモンは、
よっぽどのスペシャリストがするセレモニーだ。
僕はトントン相撲でいい。
異種格闘技戦が気軽にできる。
「トントン相撲の現在価格は……2980円!? 密林乙」
レトロ過ぎて生産量がヤバい。
ホロ・ヴィジョンの検索を消す。
「こうして夢は食い潰されるのであった」
僕は空に呟いた。
自動的に、更新されるSNS。
ジャックの豆の木よりは高い、
世界の人々の発言のログ。
「……、……」
……なんだコレ。
世界が、おかしな事になっていく。
僕たちは何だ?
なぜ、この街は平和に見えるんだ?
このゴチャゴチャした空も、
まだ、綺麗に見えるんだ。
でも、これさえも変な形になったら。
六角形? 五角形? くそ……。
「そんなんで、いいのかよ……アンタらはさ」
視界の、カタスミ。
ホロ・ヴィジョンの番組のひとつで、
あの宇宙ステーションのスタッフが特集されている。
僕の国からも、一人、選ばれているからだ。
──"我が国からも選出されている宇宙ステーション"はぐるまどらいぶ"の乗組────野純夜さんは、先ほどの中継で明るい表情を見せていまし──彼のおじい様とおばあ様は共に──団記憶喪失事件に遭遇した事もあり話題になり──たが、亜坂乃さんはどう"──
「おうの……じゅんや」
こんな所で、有名人の名前をつぶやいたからって、
世界は何にも変わりやしない。
いや……逆か。
もうすぐ、世界は変わってしまう。
「僕らは、何なんだろう……」
世界を変える、なんの力もない。
そんな僕が、七夕の空に言った。
カウントダウンが、始まる────。
小分けでごめぬな。(*´ω`*)