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曜日クエスト さーしーえー

( º言º)ちょっとだけ時間軸もどるん




 はじめ。


 大きな腕(・・・・)が、船内の壁(・・・・)を突き破ってきた時。


 あの子が、殴った……!?


 そう、思った。


 すぐに、わかる。


 違う。



 ────ちぎれてる(・・・・・)──……!!





「──くそったれぇえ!!」


 先代から伝染ったと信じたい暴言を吐き、

 私たちは後ろに跳び退く。


 ──BUN-BUN-BUN──……!!

 ──GOOOOOOooonnnNNN────!!!!!


 アッパーの腕だったもの(・・・・・・)が、

 激音と共に辺りをガレキに変えていく。

 飛び散る破片と、破裂から生まれるケムリ。


『>>>ロケットパンチって訳じゃないよな……』

〘#──バカ者! 不謹慎だぞ! 只事ではない!!〙


 チラリと見たマイスナの横顔は、驚愕している。


「アン、ティ……! いまの……ッ!?」

「クラウンッッ、仮面ッ!! すぐによ!!」

『────れ:レディ(準備完了)。』


 ────ガシュ、キィィンン……!!

 ──バシュ、バシュッ!! ぶぅウン──……!


 首元から仮面がスライドし、

 耳元の歯車で固定される。

 仮面の内側と視覚に映し出される映像(ビジョン)


 ったく……クラウンにしては反応が遅い!


「クラウン、アッパーが何かと戦っている(・・・・・・・・)と思いなさい! バックアップ頼むわ!!」

『────も:申し訳ありません。』

〘------ごめんなさいのん;

 ------たぶん;ウチのせいで混乱してるのんな…… ☪︎ 〙


「っ!」


 このスラ姫さんったらぁぁ……!

 なーんか、含みのある言い方ねぇぇー!!

 じっくりコトコト聞きたいんだけど、

 今は、それどころじゃないってば。



「ローザ、わたしの仮面もっ!」

〘------は;はいのんなっ──☪︎〙

 

 ──ガっ、ギャァアアン……!

 ──ギィン、ギィン、ぎぃぃいンンッッ──!!

 

 マイスナの仮面がスライドし、

 氷の粒子が集まり、

 銀の月のような形状で凍結する。

 二本角のフルフェイスマスクの下には、

 まだ動揺が見て取れた。


「マイスナしっかり! アッパー、助けにいくわよ!」

「っ、うんっ!!」



 衝撃で飛び散る破片と砂。その間。

 ふたりのレター・ライダーが、()い走る。


  マフラーマントと、

   ホワイトドレスが、

     追従する────。



 ────キン、キン、キュォオン!


   ────ギン、ギン、ギュゥウン!



 パラパラ……パキ、バキンッッ!!



「!! これっ、地面が……!?」

「割れ続けてる!」


 足場が不自然に崩れていく……!

 それが……止まらない!!

 アッパーの腕が、壁にぶち当たったせい?

 いや、でも……こんなにずっと床が割れ続けるかなっ!?

 その違和感を初代(せんぱい)たちも気づいている。


『>>>チッ、普通じゃない! この砂煙と地割れ……』

〘#ああ、衝撃だけで発生したものではない!! 厄介だ!〙


「それはぁ、わかってんのよ! つまり、どゆことやねん!! 食堂娘(わたし)にもわかるように説めぇーしてぇ!!」

『────アンティ。

 ────この建造物が:粒子崩壊を継続しています。

 ────物質が:分解されているのです。』

「なっ……!?」



 パキキ……パキパキ……サラサラ──……・・・!



 まっ、周りをよく見てみるると、

 とんがったモンの角が、丸くなってきてる……!

 まるで小川に沈んでる丸石みたい……!

 (ほそ)いトコから、バラけてんのか……?


 床だけじゃなくて、壁や天井も同じように……?

 ケムリが()()めてるように見えるけど、

 これって────……、



「これ、私のチカラに似てる……!!」



 彼女(マイスナ)の言うとーり!

 この現象は、マイスナの鎖錬(サレン)の能力を思わせる。

 物質を分解(・・)して、再構成(・・・)する前に似てる!



『────分解された粒子が:

 ────建造物外部へと:流れ出ています。

 ────著しい構造弱体化を確認。

 ────速やかな脱出を推奨。』



「こっ、ここが崩れるってコトよね!? くっそ何なのよ……!」

「アンティ、はやくっ!! そっちはもう崩れてる!!」

「クラウン!! 足場が崩れそうなら歯車で作って!!」


『────レディ(準備完了)

 ────走り抜けてください。

 ────こちらで照準します。』



 ドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・!!



 ──キィぃいイんん・・・!!


  ──ギィぃいおンん・・・!!


   ────くァァああんん──-──-!!



 ────"船"の外へと、急げ!!!


 私たちの甲高い足音が、あまりの脚力のために、

 ナベの底をぶん殴ったような金属音になる。

 弾丸のように駆け抜けろ!!


 ──バキ!! ごカッ!! バキコンッッ!!


 黒いガレキ(まみ)れになっていく内部構造!

 ついさっきまでは、まだ綺麗な部屋のカタチだったのに……!

 なんとか、マイスナと一緒に、

 アッパーが"仮面ごっこ"をしていた入口まで戻ってきた。

 ……あんだコレ。


「入り口が……ポッカリ無くなってんわよ……!」

「アッパーは、どこ……!?」


 この"船"の入口は、大きな大きな空間になっていて、

 かろうじてアッパーの巨体も入り込むことが出来ていた。

 壁に『貨物格納室』って書いてあったから、

 でっかい倉庫みたいな所だったのかもしんない。

 それが──……、


『>>>ひでぇな……フーセンガムみたいに破裂してるよ!』

〘#……この装甲の湾曲の仕方は異常だ。外から突き破られ、中の物が引きずり落とされた(・・・・・・・・・)かのような……〙


『────分析完了(アナライジング)

 ────アッパー・ゴーレム:左腕部の:

 ────破片と思われるパーツを複数発見。』


 ……ちっ……。

 すぅ~~~~────……!!


「っ、あっぱぁぁぁああああ────!!!

 どこだぁ、ゴるラぁぁあああああ────!!!」


 叫んだ。

 音が、響かない。

 赤ワインのような……匂いがする。


 砂とチリが、生き物のように、

 足の隙間を、ザラザラと、

 船の外へと流れていく。


 風なんて、ない。

 砂の川が、声を吸い取ってるみたい。

 滝のように、落ちていく。


 ──ザザザザザザザザザザザザザザザザ──……!!


「アンティ」

「なに」

「なにか、へん」

「……?」


 指をさしたマイスナ。

 ……下?

 

 船の入口は、ご覧の通り、跡形も無い。

 地下の底への道は丸見えだ。

 覗き込む。


『────下方より:高速接近する物体を多数確認。』


 ……! こりゃあかん。

 視覚に表示された結果を見て、動く。


「マイスナこっち」

「えっ……んぐ」


 マイスナを片手で抱き寄せ、しゃがむ。

 もう片方の手を前に突き出し、手を広げ、

 大きめのバッグ歯車を盾のように召喚する。


 ──きゅ、きゅ、きゅぅぅうんん!!


『────耐:衝撃防御。

 ────格納準備完了。』

『>>>破片が乱反射する可能性を忘れるな。コーティングした。アンカー打つよ!!』

〘#……足を固定する。耐えろ──…… 〙



 ──ホァァアア──……!

 ──ガチャン……ドンっつ!!

 ──ヂャリリッッ……!!


 私とマイスナのヨロイが、光の粒子で包まれる。

 両足のヨロイが少し開き、

 金属性の鎖杭(くさりくい)が射出され、

 身体を固定する。



 ──┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨──……!!!!!



 地下深くより、

 岩の弾幕(ロック・バレット)が、噴き上がる。

 


 ────どどどどどどどどとぉおどどどぉおお!!!!!



 これ、当たったら死にます。


「はっ……流れ星は、上から下に行ってほしいわねぇ」

「こわいねー」

『────大量の土砂を格納中。』

『>>>まるで噴火だ……熱量が無いのが不気味』

〘#……物理的な攻撃か?〙

〘------のん……☪︎〙



 ひぇー。

 歯車盾の内側で身を小さくする。

 予想してたより、ムチャクチャこえぇ。

 ツインテかすったら、消し飛ぶんじゃないの……?

 後ろ側に、(かろ)うじて残った船の装甲が、

 ボッッコボコに破裂していく。



 ──ザザザザザザザザザガガガガッッ──!!!!!

 ──ドカドゴボコドカガガガガガッッ──!!!!

 ──パァン、パァァンン──!!



「アンティ、ちょっと痛い。ぎゅうってしすぎ」

「だ、だって……」



 ──ドドォォオ・・・・・・・。



「……! ……少し、収まった……?」

「やぅ……くしゃみ出そう」


『────警戒を。

 ────地形が変形しています。』


「「……!?」」



 まず変化があったのは、空洞内の壁────。



 ────ゾゾゾ、ゾゾゾゾ……!!



「トゲ生えてるね」

「……」


 いや……アレ、トゲってサイズじゃないわよ……。

 超デカいから。

 柱やわ、柱……。


「……! なんか、あの壁さ……? 模様が出来上がってない……?」

「あそこの岩も、絵が浮かびあがってきてるよ!」

「っ、ほんとだ……!」

 

 砂の壁が続々と変化をきたし始め、

 不気味な模様や、意味のある形を浮かび上がらせる。

 あれって……なんかの生き物かな……?

 いや、つか……キッショ……バケモノの絵だわ。

 趣味の悪い、岩の浮き彫り(レリーフ)の出現は止まらない。

 一面を覆い尽くしていく────。



 ──ゾゾゾ、ドドゴゴゴゴ──……!



「アンティ、あの岩の柱」

「ええ……彫刻のような溝ができてるわね」


 いつの間にか、この空間は、

 装飾された岩の柱で埋め尽くされている。

 目を覆いたくなるようなバケモノの浮かし彫りが、

 大量に仕上がっているわ……。

 うわ、サイアク。

 チラッと見ただけで、うげぇ、ってなるし。

 あれは何かデロデロしたモンが人を食ってる場面(シーン)だし、こっちは裸の女の人が真っ二つになった彫刻がしてある。


 ……はーい。

 ゴミ(くず)プレイスかくてーぇい。



『>>>クソみたいな神殿だね。見てるだけで不愉快だなぁ』

〘#ふぅ……素直に同意しよう。確かに下劣な神殿だ〙


 なるほど、"下劣神殿"ね。

 なかなか、ドンピシャな表現ね。

 とにかくキモイ。

 どうやら、紙芝居みたいにクソ壁画が並んでいるみたい。

 年頃の女の子二人の判定は──?



「ゼロ点。無価値」

「ブッブー」


 

 気持ち悪く拡がる光景に、

 ローザがアワアワと言う。


〘------"ダンジョン化"……してるのんなぁ……☪︎

 ------ま;まずいのんぅ……☪︎

 ------たぶん;リポップ間隔が正常化したせいで;

 ------ヤツが復活しちゃったんだのん……☪︎〙


「っ!」

「ローザ、何か知ってる?」


 そっか、ダンジョン……確かに!

 この異様な変化は、そう言われるとそうねっ!

 もう、巨大空洞全てが神殿のようになってる……。


『────:……。』


 クラウンが汁子に何もツッコまない……?

 ……。

 なぜ、こんな事(・・・・)をローザが言い出したのか、

 気になるけど……、

 ───今は、重要なトコロだけ、聞く。

 つーか、マイスナが代わりに聞いてくれた。


「……ローザ、何が復活(・・)したの?」


〘------曜日レイドボスモンスターのん ☪︎

 ------たぶん;土属性のどれかだのん ☪︎〙


「あんた……どんなヤツか、知ってんの?」


〘------;……最悪の場合は;たぶんアイツだのん ☪︎

 ------うぅ──っ……まさかぁ……;;

 ------こっちでは;言葉は大きな意味を持つのん ☪︎

 ------こんな事になると思ってなかったから;

 ------ウチ達は;向こうの神様の名前をつけたのん ☪︎

 ------だから;その……☪︎

 ------ゆうしゃ様と……ギンガ様は;

 ------よく知ってるヤツかものんんんんんぅぅ…… ☪︎〙


『>>>っ!!! なっ!? おまえっそっ……!!?』

『#──その呼び方! ロザリア!! 記憶が……!?』


「タンマ……(あと)にして。スラ子、帰ったらアンタ取り調べな? クラウン、下よね?」

『────間違いありません。

 ────アッパー・ゴーレムは:

 ────下方に引きずり落とされています。』


 この下にある、でかい岩のキズは……そうだよなぁ。



 ────いくか。



「マイスナ」

「いこう、アンティ」





 踏み出す。


 もう、チビらない。


 流れ落ちるは、金と銀────。






『────ソルギアインパクト:レディ──。』

〘------ライジングインパクト;ノンプロブレム──☪︎〙









 ────back.









「「……、……」」




 OooooooooonnnnuuuuUUU────・・・!!!




 ……あれだわ。

 たとえるわ? たとえるわよ?


 ────″ 巨大きなこ餅 ″、だわ……。


 箱庭で、食べたことあるもん……!



『『『『『 アッパ、PA…… 』』』』』

「……」

「……いたそう」



 後ろにいるアッパーは、かなりボロボロだ。

 やっぱり左腕が千切れてる……くそ……。

 右膝も、かなり壊れちゃってるわね。


 どうやらここが、このタテ穴の底らしい。

 すっかりクソ神殿化してやがる。

 目の前には、ヌシがご在宅してらっしゃる。



〘------あいつは……凄く厄介のんよ;;☪︎〙



 いつもノーテンキな汁っ子の声が、

 震えるように、ピリリと緊張している。

 色々ツッコみたいけど──……。



「……ローザ、あれなに? きなこ?」


〘------土系のボスモンスターで;

 ------いちばんアカンやつのん……☪︎〙


『────!。』

『>>>……!! なぜ知ってるんだ……?』

〘#……むぅ……〙


「クラウン、分析は?」


『────ERROR判定:頻発。

 ────分析:連続トライ中。

 ────お待ちください。』



 Oooooooooonnnnuuuu────・・・!



「アンティ。あれ、まだ生きてるよ」

「けっこう、やってやったと思ったのになァ……」



 飛び降りてくる時に、

 マイスナと一緒に流星ビームをお見舞いした。

 私にもできたで、ビーム。

 炎の柱と、雷の柱。


 かんなり、

 きな粉クラッシャーになったと思ったけど、

 まだ動いてらっさるわ。

 汚ったない色の砂の塊。

 ウネウネしてる。

 んだあれは。

 あれ口かな。



〘------過去の自分たちを;(うら)みたいのん ☪︎

 ------トラウマ検索ワードだったからのんなぁ…… ☪︎〙



 あ、やっぱりあの丸いの、口だわ。

 中が全部、歯だもん。

 あれ……………目か。

 ああ、こっちみてんな。

 おっ、カタチが変わってきた……?

 ……………………。

 なるほど、わかったゾ。




「きっしょ」

「きもい」



挿絵(By みてみん)

 ──OooooooooonnnnuuuuUUU────・・・!!!


『────分析完了(アナライジング)


   対象名【 サトゥルヌス 】

   属性:土

   弱点:不明

   全長:測定不可能


 ────捕捉されています。

 ────対象を構成する土砂:

 ────周囲の物質を取り込み:

 ────現在も増大中です────。』



〘#……なるほど。確かに″土曜日関連″のお客のようだな……〙

『>>>くそったれが……。

 >>>なんで……こっちに来てまで……。

 >>>元の世界の神様(・・・・・・・)を、相手にしなきゃなんないんだ──……』





 ──OooooooooonnnnuuuuUUU────・・・!!!





 むせ返るような、


 赤ワインの香りが、


 砂埃に混じっている。










。(°´Д⊂ヽビェェェエエ

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