表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/1216

夢は、ついえたのか?

 我が名は、アブノ・マール。

 服飾屋、店主である。


 この街にきて、もうかなりになる。

 夢に生きてきた、我。

 しかし、もう、潮時なのかもしれぬ。



 我が野望は、"セクシーギルド"を樹立する事である。

 我は、女性の活躍を、切に願っている。


 女性の冒険者は少ない。

 当然だ。

 男勝りの職業なのは、言うまでもない。


 だがしかし!

 必ずいるはずだ!

 腕っ節の強い、たくまし系女子たちが!

 今や、時代は男女平等なのだ!

 女性の能力を発掘すれば、冒険者の平均実力は、もっと上がるかもしれない!

 有能な冒険者たちが、増える街は、発展する。

 この街を発展させるために、女性たちの力が必要だ!

 なら何故、冒険者には、男が多いイメージなのだろうか!


 女性たちが、冒険者にならない理由を、若き日の我は、考えた。

 そして、2つの結論に達する。


 "危ない"! そして、"可愛くない"!


 こ、これだッッ!!!


 方針が決まった我の行動は、はやかった。

 女性の活躍のために、女性のための装備を作る店が、あっても良いではないか!

 他の防具店は、男目線でしか、商品を置いていない!

 そうだ! ヨロイの下に着る服飾も取り扱おう!

 女性はデリケートだ! 品質にはこだわろう!

 そして、ちょー可愛い、強いヨロイを作るんだ!

 そして、才能ある女性たちに、光を!


 ─────そう、思っていたのに。




 もう、明け方である。

 現実は厳しい。


 店を閉めると息巻いていたが、片付けは、一向に進んでいない。

 店の段差に座り込み、悲しさに震えていた。


 ────我のしてきた事は、全て、無駄だったのか?


 ────女性の幸せは、やっぱり、プリティな花嫁になることなのか?



 ……ふっ、もう、そんな事を考える必要もない。

 我は負け犬だ。

 もう少ししたら、あの部屋のキラキラシリーズは、封印しよう。

 我の野望はついえたのだ。

 大人しく、引き下がるとしよう……。


 ──そう思った時だった。





 ……────きゅいいいいいいん……



「……何であるか、この音は」


 ───きゅん……


「……?」


 ───────ぎゅおおおおおお!


「……!?」


 ────ドゴオオオオオオオオオン!!



「なッ!!!?」


 店の、入り口の扉が、蹴破られた(・・・・・)

 な、何事であるか。

 吹っ飛んだ扉が、我の横を通りすぎていく。

 朝日が逆光となり、その人物の(・・・・・)シルエットを(・・・・・・)映し出す(・・・・)


 目が、慣れてきた。


「君は……昨日の、お嬢さん?」


 朝日に光る、2つ括りの、黄金の髪。

 逆光の中でも煌めく、オレンジの瞳。

 頭の上には、王冠を模した、装飾品。


 昨日、我の夢を聞いてくれた、あの少女ではないか。


 どうしたのだ。

 思いつめた顔をして。


「……どうしたんだい、お嬢さん。また、肌着かい?」

「…………」


 何故だろう。

 とても、何か、悩んでいる。

 彼女に、何が、あったのか。

 沈黙が、彼女によって、破られる。


「……ねぇ、アブノさん、あなた、私の秘密を守れる?」

「……何だって?」


 どういうことだ?


「……私、姿を隠さないといけない。隠し通さなきゃ、守れないものがあるの。」

「……お嬢さん?」

「危険に(さら)したくない、人達がいるのよ」

「……ああ、それで?」

「でも、私、自分の夢を、あきらめたくない」

「…………」



 彼女は、眩しかった。

 朝日のせい、だけではない。

 瞳には、魂の輝きが、宿っている。

 夢を追う、かつての我と同じ、光が。


 我は、全く状況を理解していなかったが、勢いで、こう答えた。


「何の事かはわからない……だが俺は!! 顧客の個人情報は、命にかえても! 守る!! それが、俺の、我の信念である(・・・・・・・)!」


 女性のスリーサイズとか、絶対言わぬ!!


「……その言葉、信じるわ」

「……!」


 コツ……コツ……


 少女が、こちらに歩いてくる。

 目の前で、止まった。

 少女は、顔に、手をかざす。


 ────きゅいいいいん……

 ────ぶぉおおおおん……


「! そ、それは!」


 少女の顔に、いつの間にか、黄金の仮面が、現れていた!


「……アブノさん、この仮面に合う(・・・・・・・)ヨロイを(・・・・)見繕ってほしいの(・・・・・・・・)

「そ……その仮面……どこかで」


 どこかで見た事が…………まさか!!


「まさか……まさかその仮面は……!!」

「…………」


 多くの素材を見てきたから、わかる。

 この仮面は、ただもんじゃない。

 そして、その、あまりにも有名な(・・・・・・・・)、造形!

 ホンモノだ(・・・・・)。理屈じゃない。

 じ、実在していたんだ…………()は!!!


「見繕うヨロイってのは、もしや……」

「……そうよ。奥の部屋から(・・・・・・)お願いするわ(・・・・・・)。この仮面に合い、軽くて、強度があって、そして、徹底的に正体を(・・・・・・・)隠せるヨロイ(・・・・・・)。ソレを私は、求めている」

「────……」


 言葉が、でなかった。

 はじめて、求められたのだ。

 我の理想。我の夢。

 それが、確かに、動き出す音がした。


「──君が」

「?」

「君が、我の夢か……!」

「…………不本意だけど」



 涙が、頬を伝う。

 思わず、素で"我"って言っちゃった。

 涙を拭う。


「……で? あるの? ないの?」


 ふ……愚問だ、我が夢の姫君よ……。


「……姫よ、要らぬ心配である。我が、あの御仁の装備を(・・・・・・・・)再現していない(・・・・・・・)訳がない(・・・・)であろう!!」

「あるんだ……」

「そう、"キラキラシリーズ"No.1……我が最初に着手し、つい最近まで、手直しを重ねた、最強の! "女性用"ヨロイ!! うおおおおおお!! たぎるぜぇぇぇえええええ!!!」




 我は、ここに、きてよかった!

 自分の信念を貫いて、よかった!


 夢を叶えてくれた少女よ、姫と、呼ばせてくれ。








「──くっそ〜あるのか。まさかとは思ったけど……てか、いいから早く出しなさいよ!」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
[良い点] そうだね女体化はよくあるし、女性版黄金の義賊の鎧は、当然あるよなw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ