表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
624/1216

メッセージフォルダ







 圧縮に失敗した。



               □

                □


 構造体は出力機共々飛散し、本体の復元は絶望的だ。

          □

 基幹部は鉱山帯に座標が重なり、基質融合してしまっている。

       □

 意識が保てるネットワークがあるだけ、幸いだろうか。


 魂魄容量は膨大であり、

                □

 こちらでの身体生成は物理的に厳しいだろう。


 他の降下組も、このようなミスはしまい。


 現状では、生物体とコミュニケーションを取るのは難しい。

                      □

 この山に閉じ込められ、孤独に耐える事になるだろう。



    □

  □

     □



 自身の生体データを最適化するが、


 圧縮失敗に起因する膨大化は大きく、


 軽量化と言える程の結果は出ていない。


 意識の混濁が無い分、今の現状を正確に認識できてしまう。


 誰にも知覚されない者は、生きていると言えるのだろうか。


 やはり魂魄プロトコル自体が、


 フィールド系の言語プログラムに同期してしまっている。


 自身の消滅は……この世界の大地の消滅を意味する。


 仲間のためにも、この現状で生き続けねばならない。



      □

    

      □



 アップルのネットワークの一部へ接続に成功する。


 孤独に苛まれる中、他者の存在を感じられる要素は、


 少なからず光明となる。


 彼女の生命は、自身と違って無駄ではない。

          □

 大きな成果は、彼女のネットワークを利用して、

      □

 飛散した衛星のパーツの座標を捕捉できた事である。


 通信は可能だが、このような状態だ。


 物理干渉できるデバイスを持ち合わせていない。


 歯がゆい日々が続く。


 仲間たちに申し訳ない。


 自身にできる事は、他に無いのだろうか。



        □

      □

        □



 地下水で流路系がショートし、思わぬ幸いを招く。


 岩肌に癒着していたであろう、


 電算系デバイスのコントロールが戻ったのだ。


 この区画には多元拡張現光体が残留していて、


 今の自身でもデバイス形成が可能である。





 是非もない。


 この魂魄媒体をインストールできる、


 肉体生産プラントの設計を開始する。





 生産プロセスは順調である。

                     □

 しかし、圧縮されていない自身の、   □


 全てを収める事を可能とする肉体は、


 巨大になる事は必須だろう。


 成功したとしても、畏怖の対象となるかもしれない。


 だが、この孤独から解き放たれる可能性を、


 あきらめる事はできない。



                 □

              □

 いいぞ……順調だ。       □

             

 しかし、やはり大きい。





 なんっ──……。





 こいつ、動くぞ!!





 ────。






 ──……失敗した。


 自身は、、、、、致命的な、、、、失敗をした。


 自身の入るはずのボディが、自立可動を始めたのだ。



          □

        □   □

          □



 AIプロセスが可動している事は間違いなく、

 自身は、こちらの世界で言う……、

 "魔物"を創り出してしまった事になる。


 新しくボディを製造する資材は、もう残っていない。

 絶望に等しい感情が、精神だけの自身を支配する。



          □

          □


 ……。


 落ち込んではいられない。

 自身が肉体を得ることは限りなく不可能となったが、

 それよりも問題視すべきなのは、

 全長40にもなる、巨大なオリジナルの魔物を、

 自身の手で生み出してしまった事である。


 これが鉱山内空洞から外に出れば、

 どのような被害が発生するか予測不可能だ。

 堅牢に設計したフレームと人工筋肉は、

 現地人にとっては脅威となるだろう。


 自身の手で、破壊しなければ……。



 ────。



 数週間に渡り観測を続けたが、暴れる様子が無い。


 反応を見るに、

 学習プログラムは作動しているようだ。

 ……大きな赤子のようなものだろうか。


 おとなしい内に演算してみたが、

 今の自身に、このボディを物理破壊する手段は無い。


 外装を装着する直前に可動を開始したため、

 胸元の多元拡張エンジンは露出している。

 弱点ではあるが、

 破損しなければ半永久的に可動するだろう。

 停止信号を出力する機器は破損している。

 この鉱山の金属を取り込み、

 独自の変化をしているようだ。


 困ったな……。



         □

      □     □

         □



 何とか行動を制御できないかと思案し、

 そもそも、ボディに言語プログラムさえインストールしていない事に思い当たる。


 知識を与えるのは危険かもしれないが……。

 このままでは行動の予測すらできない。



 "ボディ"が自立可動を初めて三週間後に、

 最低限の知識を圧縮した多元拡張メモリを発射する。




 ────。




 驚いた。


 彼は、こちらを知覚しているらしい。


 言語の概念を獲得し、わずかながら知性を発現している。


 思わぬ形で、孤独から解放される事となる。






         □

       □   □

         □



 解析し、誤作動の原因がわかった。


 どうやら自身の魂魄データを"アップロード"する際、

 "ウェイクアップ"という起動命令として誤認識したようだ。

 被重転移してしまったため、システム流路は不完全だ。

 把握できていないERRORが多いのだろう……。


 何故か彼は、"アッパー"としか言わない。

 発声でのコミュニケーションは失敗した。

 やはり赤ん坊のようだ。

 違う方法を試すしかない。


 「こんにちは」と言うと、「アッパー」と返される。

 こちらの発言を受信はしているようだが……。

 タイミング的には挨拶なので、

 ただの条件反射ではないと信じたい。



         □

       □   □

         □



 数種類の言語を表示させての意思疎通に成功する。

 撃ち込んだ情報メモリは、良い方向に転んでいるようだ。

 名前の概念が必要だったので、アッパーと名付ける。

 こちらも名前を教えてみたが、

 やはりアッパーとしか言わない。

 緊迫した危険度は無いと判断し、環境情報を開示する。



         □

       □ □ □

         □



 アッパーは魂魄データではできない物理作業が可能だ。

 あまり期待せずに変換器の発掘を依頼すると、

 翌日に複数の機材を掘り出してくれた。

 これには素直に驚きと感謝がある。

 「ありがとう」と言うと、「アッパー」と返された。



         □

       □ □ □

         □



 アッパーが頻繁に岩につまづくので、

 残り少ない資材を工面し、

 脚部に連圧スプリングを組み込んだ。


 整備機材が不足していたので、

 弦楽器を鳴らすような、

 奇妙な足音が出るようになってしまう。

 アッパーは気に入っているようだ。



         □

       □   □

         □



 アッパーの発掘は自由気ままだ。

 欲を言えば新たなボディを造る資材を集めて欲しい。

 が、そもそも多元拡張系が、

 この鉱山にどれだけ残留しているか不明瞭だ。


 こちらの世界の構成フレームに、

 徐々に取り込まれている可能性が高い。



         □

       □   □

         □



 アッパーが掘り起こしたデバイス設計図の中に、

 "トレイン"に関する項目があった。

 子供に玩具を与えるべきか悩む親の心情を理解する。


 この暗い穴の中に閉じ込めている事もあり、

 一緒に作ってやることにした。


 丁度、飛散している衛星のパーツ座標を"駅"とし、

 駅員となる、26体の小さなゴーレムを作成した。

 小型の座標指定装置の出力だけでも、

 この程度の玩具ならば運用可能だろう。

 私もアッパーも大きすぎるため、

 列車本体に乗る事はできない。

 アッパーは走り通り抜けていく車両を見ては、

 楽しそうにしている。



      □     □

         □

       □ □ □

         □

      □     □



 日光の概念を上手く教育できない。

 不安はあったが、

 鉱山山頂の沈黙した火口部を利用する事にした。

 アッパーが、初めて天の光を見る。

 ここから彼が下山しないか気が気でなかったが、

 アッパーは私に背く気は無いようだ。

 昼には太陽を、夜には星を見に来ている。

 巨体故に、この場に閉じ込めている事を、

 改めて済まなく思う。



      □     □

         □

       □ □ □

         □

      □     □



 ここには土砂が多量にあるので、

 アッパーに"粘土"の概念を教育する。

 巨大な粘土細工が始まった。


 まだ人型だった頃の3Dデータを、

 いつのまにかアッパーが見つけたようで、

 どうやら製作のモデルに採用されてしまったらしい。

 その粘土のボディが実際に使用できればいいのだがな、

 と苦笑してしまう。


 粘土細工の精度は高く、大きな像が完成した。




        □□□

       □ □ □

        □□□




 多元拡張現光体が周囲の土砂や鉱物に浸透している。

 やはり、こちらの構成物質と互換性があるのだ。

 ジュンヤの仮説は正しかった事になる。


 転移前に地上に投影するはずだった世界が、

 反映されているのだ。



 

        □□□

       □ □ □

        □□□



 アッパーが魂魄基盤の近くにいると、

 特殊電源デバイスのノイズが抑えられる。

 創造主権限でアッパーを鑑定すると、

 "属性効果無効"というステータスが表示された。

 影響を受けにくい、という事だろうか。

 


        □□□

       □ □ □

        □□□



 妙な地鳴りが聞こえる。

 嫌な予感がする。






  ■■■■■■■■■■■■■■■■■■

  ■■■■■■■■■■■■■■■■■■

  ■■■■■■■■■■■■■■■■■■

  ■■■■■■■■■■■■■■■■■■

  ■■■■■■■■  ■■■■■■■■

  ■■■■■■■■  ■■■■■■■■

  ■■■■■■■ ■■ ■■■■■■■

  ■■■■■■■ ■■ ■■■■■■■

  ■■■■■■■    ■■■■■■■

  ■■■■■■■■■■■■■■■■■■

  ■■■■■■■■■■■■■■■■■■

  ■■■■■■■■■■■■■■■■■■




 ■㎜㎝㎞㎎㎏㏄㎡℃¥¥$$¢£%%‰°′″++--∞∴∵∝


 ■非常電源に切り替わった


 ■そんなはずはない


 ■ファイアーウォールが 正常稼働してないのだ


 ■ここが コアになってしまっている


 ■ダンジョン化してしまったのは |


 ■集積流路が 誤作動している


 ■まずい


 ■大きなものが うまれてしまう


 ■アッパーに 探索を 依頼する


 ■««««»»»»


 ■ちがう


 ■アッパー だめだ 戻ってこい












 ■アッパー きみはどこにいる?







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ