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圧縮に失敗した。
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構造体は出力機共々飛散し、本体の復元は絶望的だ。
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基幹部は鉱山帯に座標が重なり、基質融合してしまっている。
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意識が保てるネットワークがあるだけ、幸いだろうか。
魂魄容量は膨大であり、
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こちらでの身体生成は物理的に厳しいだろう。
他の降下組も、このようなミスはしまい。
現状では、生物体とコミュニケーションを取るのは難しい。
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この山に閉じ込められ、孤独に耐える事になるだろう。
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自身の生体データを最適化するが、
圧縮失敗に起因する膨大化は大きく、
軽量化と言える程の結果は出ていない。
意識の混濁が無い分、今の現状を正確に認識できてしまう。
誰にも知覚されない者は、生きていると言えるのだろうか。
やはり魂魄プロトコル自体が、
フィールド系の言語プログラムに同期してしまっている。
自身の消滅は……この世界の大地の消滅を意味する。
仲間のためにも、この現状で生き続けねばならない。
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アップルのネットワークの一部へ接続に成功する。
孤独に苛まれる中、他者の存在を感じられる要素は、
少なからず光明となる。
彼女の生命は、自身と違って無駄ではない。
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大きな成果は、彼女のネットワークを利用して、
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飛散した衛星のパーツの座標を捕捉できた事である。
通信は可能だが、このような状態だ。
物理干渉できるデバイスを持ち合わせていない。
歯がゆい日々が続く。
仲間たちに申し訳ない。
自身にできる事は、他に無いのだろうか。
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地下水で流路系がショートし、思わぬ幸いを招く。
岩肌に癒着していたであろう、
電算系デバイスのコントロールが戻ったのだ。
この区画には多元拡張現光体が残留していて、
今の自身でもデバイス形成が可能である。
是非もない。
この魂魄媒体をインストールできる、
肉体生産プラントの設計を開始する。
生産プロセスは順調である。
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しかし、圧縮されていない自身の、 □
全てを収める事を可能とする肉体は、
巨大になる事は必須だろう。
成功したとしても、畏怖の対象となるかもしれない。
だが、この孤独から解き放たれる可能性を、
あきらめる事はできない。
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いいぞ……順調だ。 □
しかし、やはり大きい。
なんっ──……。
こいつ、動くぞ!!
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──……失敗した。
自身は、、、、、致命的な、、、、失敗をした。
自身の入るはずのボディが、自立可動を始めたのだ。
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AIプロセスが可動している事は間違いなく、
自身は、こちらの世界で言う……、
"魔物"を創り出してしまった事になる。
新しくボディを製造する資材は、もう残っていない。
絶望に等しい感情が、精神だけの自身を支配する。
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……。
落ち込んではいられない。
自身が肉体を得ることは限りなく不可能となったが、
それよりも問題視すべきなのは、
全長40にもなる、巨大なオリジナルの魔物を、
自身の手で生み出してしまった事である。
これが鉱山内空洞から外に出れば、
どのような被害が発生するか予測不可能だ。
堅牢に設計したフレームと人工筋肉は、
現地人にとっては脅威となるだろう。
自身の手で、破壊しなければ……。
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数週間に渡り観測を続けたが、暴れる様子が無い。
反応を見るに、
学習プログラムは作動しているようだ。
……大きな赤子のようなものだろうか。
おとなしい内に演算してみたが、
今の自身に、このボディを物理破壊する手段は無い。
外装を装着する直前に可動を開始したため、
胸元の多元拡張エンジンは露出している。
弱点ではあるが、
破損しなければ半永久的に可動するだろう。
停止信号を出力する機器は破損している。
この鉱山の金属を取り込み、
独自の変化をしているようだ。
困ったな……。
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何とか行動を制御できないかと思案し、
そもそも、ボディに言語プログラムさえインストールしていない事に思い当たる。
知識を与えるのは危険かもしれないが……。
このままでは行動の予測すらできない。
"ボディ"が自立可動を初めて三週間後に、
最低限の知識を圧縮した多元拡張メモリを発射する。
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驚いた。
彼は、こちらを知覚しているらしい。
言語の概念を獲得し、わずかながら知性を発現している。
思わぬ形で、孤独から解放される事となる。
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解析し、誤作動の原因がわかった。
どうやら自身の魂魄データを"アップロード"する際、
"ウェイクアップ"という起動命令として誤認識したようだ。
被重転移してしまったため、システム流路は不完全だ。
把握できていないERRORが多いのだろう……。
何故か彼は、"アッパー"としか言わない。
発声でのコミュニケーションは失敗した。
やはり赤ん坊のようだ。
違う方法を試すしかない。
「こんにちは」と言うと、「アッパー」と返される。
こちらの発言を受信はしているようだが……。
タイミング的には挨拶なので、
ただの条件反射ではないと信じたい。
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数種類の言語を表示させての意思疎通に成功する。
撃ち込んだ情報メモリは、良い方向に転んでいるようだ。
名前の概念が必要だったので、アッパーと名付ける。
こちらも名前を教えてみたが、
やはりアッパーとしか言わない。
緊迫した危険度は無いと判断し、環境情報を開示する。
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アッパーは魂魄データではできない物理作業が可能だ。
あまり期待せずに変換器の発掘を依頼すると、
翌日に複数の機材を掘り出してくれた。
これには素直に驚きと感謝がある。
「ありがとう」と言うと、「アッパー」と返された。
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アッパーが頻繁に岩につまづくので、
残り少ない資材を工面し、
脚部に連圧スプリングを組み込んだ。
整備機材が不足していたので、
弦楽器を鳴らすような、
奇妙な足音が出るようになってしまう。
アッパーは気に入っているようだ。
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アッパーの発掘は自由気ままだ。
欲を言えば新たなボディを造る資材を集めて欲しい。
が、そもそも多元拡張系が、
この鉱山にどれだけ残留しているか不明瞭だ。
こちらの世界の構成フレームに、
徐々に取り込まれている可能性が高い。
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アッパーが掘り起こしたデバイス設計図の中に、
"トレイン"に関する項目があった。
子供に玩具を与えるべきか悩む親の心情を理解する。
この暗い穴の中に閉じ込めている事もあり、
一緒に作ってやることにした。
丁度、飛散している衛星のパーツ座標を"駅"とし、
駅員となる、26体の小さなゴーレムを作成した。
小型の座標指定装置の出力だけでも、
この程度の玩具ならば運用可能だろう。
私もアッパーも大きすぎるため、
列車本体に乗る事はできない。
アッパーは走り通り抜けていく車両を見ては、
楽しそうにしている。
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日光の概念を上手く教育できない。
不安はあったが、
鉱山山頂の沈黙した火口部を利用する事にした。
アッパーが、初めて天の光を見る。
ここから彼が下山しないか気が気でなかったが、
アッパーは私に背く気は無いようだ。
昼には太陽を、夜には星を見に来ている。
巨体故に、この場に閉じ込めている事を、
改めて済まなく思う。
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ここには土砂が多量にあるので、
アッパーに"粘土"の概念を教育する。
巨大な粘土細工が始まった。
まだ人型だった頃の3Dデータを、
いつのまにかアッパーが見つけたようで、
どうやら製作のモデルに採用されてしまったらしい。
その粘土のボディが実際に使用できればいいのだがな、
と苦笑してしまう。
粘土細工の精度は高く、大きな像が完成した。
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多元拡張現光体が周囲の土砂や鉱物に浸透している。
やはり、こちらの構成物質と互換性があるのだ。
ジュンヤの仮説は正しかった事になる。
転移前に地上に投影するはずだった世界が、
反映されているのだ。
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アッパーが魂魄基盤の近くにいると、
特殊電源デバイスのノイズが抑えられる。
創造主権限でアッパーを鑑定すると、
"属性効果無効"というステータスが表示された。
影響を受けにくい、という事だろうか。
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妙な地鳴りが聞こえる。
嫌な予感がする。
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■㎜㎝㎞㎎㎏㏄㎡℃¥¥$$¢£%%‰°′″++--∞∴∵∝
■非常電源に切り替わった
■そんなはずはない
■ファイアーウォールが 正常稼働してないのだ
■ここが コアになってしまっている
■ダンジョン化してしまったのは |
■集積流路が 誤作動している
■まずい
■大きなものが うまれてしまう
■アッパーに 探索を 依頼する
■««««»»»»
■ちがう
■アッパー だめだ 戻ってこい
■アッパー きみはどこにいる?










