ハッカー夫婦
最近思う事:
タイトルをつけるセンスが無い
((((;゜Д゜))))ごップぉ
ぼふっ……!
「おわっ……!?」
「アンティ!」
よろめいた。
地面がやけに柔らかい。
部屋の床をよく見ると、
クッションが一面に貼ってある……?
「なによ、この部屋……?」
「へんな入り口だね」
あ……床だけじゃなくて、
壁や天井にも、ぐるりとクッションが貼ってある。
と言うか、床と壁の境い目が無い。
……筒状の通路なんだわ。
「はぁー……」
「モコモコしてるよ」
ぴょんぴょん。
マイスナが床の弾力を確かめるように弾む。
なんで上にまで、マス目状にクッションが敷き詰められているの?
「青い光……? 妙に明るいわね」
「青白くて、きれいだね」
『────劣化状況が確認できません。
────光源を調査中……。』
『>>>この部屋、ずいぶんと保存状態がいいな。それに、この構造は……?』
〘#……あらゆる所に緩衝材があるな……天地がひっくり返っても弾力性のある床となるだろうな……〙
「部屋の奥から光ってるわ……ちょっとひんやりした色だけど、透き通った感じで嫌いじゃない」
「デートの夜に見たいね」
「あはは、あんたすぐ言葉になんわねー」
愛しの狂銀のブレない発言に苦笑いしつつ、
クッションまみれの通路を進む。
「──っ! クラウン、見て! 水晶がこんなに……それに、」
「足元に水がある……!」
ちゃぼ……!
こんな炭鉱の奥に……!
いや、炭鉱だからなんだろうか。
草花のように、水晶がそこらじゅうを覆っている。
下には、物凄く透明度の高い水溜まりが出来ていて、
私たちが足を踏み入れた所から波紋がひろがる。
それが、水晶に灯る光を揺らめかせていた。
「……デート、いっかもね……?」
「ねー!」
これ、なんで光ってるんだろう。
凄い……水晶って、こんなカタチになるんだ。
ここまで澄んでいるモンなの?
ちょっと……みとれちゃうよね。
『────アンティ。
────これらは水晶と水ではありません。』
「? どゆこと?」
「?? 水だよ?」
クラウンが、変な事を言う。
『────これは──:
────変質したアナライズカードです。』
「なんですって!?」
「えええ……?」
たぽぷん……。
いや……だってコレ、水じゃん!?
『>>>こっちでも分析結果を見たよ。凄いね……"水晶"の方はまだわかるけど、"水"タイプに変換されたデバイスは初めてだ……こいつは貴重だよ。今、基礎構造をコピーさせてもらってる』
「これ全部、ホントにアナライズカードなの……?」
「こ、氷になるかな……?」
「あ……ちょっと、マイスナ?」
──バチンッッ……!
「「 わっ 」」
ホロホロ……サラサラ……!
下から持ち上がった"水"に見えるモノが、
空中で光の粉になっていく……。
薄暗いので、ずいぶんとロマンチックだ。
〘------きれいのんなぁ──……☆☆☆〙
〘#……温度変化による凍結はしないようだ。やはり通常の水分ではあるまい。私が気になっているのは、この水晶と水が……長期間によって自然発生した可能性だ〙
『────"アナライズカード"が:
────潤沢にある環境……だったと予測できます。』
『>>>さっきのデカブツくんもアナライズスキャンを使ってたし……済まない、ふたりとも。出口を探す前に少し調査したい』
「い……いいわよ?」
「もぅちょっと、ここ居たいね」
あんた……語尾「ね」の時、可愛いわね……。
おっとダメだ、空気読め私。
「あたり一面、光る水晶だらけだわ……」
「アンティ、そこ尖ってる。気をつけてね」
「おととと……!」
"アナライズカード"は、クラウンにとって特別なモノだ。
"時限結晶"、"アナライズカード"、
そして……私の"歯車法"。
この3つが合わさって、クラウンが産まれた。
クラウンの声と知識は、
父さん達にもらったアナライズカードが基礎になっている。
私はソレを、15年の人生で初めて見た。
珍しいモノ……なハズなのだ。
それが、それと同系統のデバイスが、
ここには、溢れかえっている。
わかる。先輩も、気づいてる。
"彼女の過去"の、においがする。
『>>>……そばにいるさ』
『────! ……はい。』
生意気にも、先輩がカッコつけてる。
ふふふ、初めて会った人が聞いたら、
生意気なカレシみたいに思われるね。
〘------のんのん? あれなんのん?☆☆〙
〘#……──!! アンティ、マイスナ!! 見よ!! 水晶体に埋もれているが、それは机だ!〙
本当だ! やっぱりここは部屋?
誰かが、こんなトコロに住んでいたの?
うへぇ、何処かにドクロさんとかいないよね?
〘#……よく見るのだ。机自体は重要ではない。上だ! 机の上に……〙
え……?
「……! クラウン、机の上の水晶体を除去したい。私たちの髪でできる?」
「ん、ローザも手伝って」
ゴールドとシルバーの神秘が、
ジグザグと生えたクリスタルを霧散させていく。
舞い散る火の粉のような光。
隠されていたモノが、姿をあらわす。
「……! パソコンだわ……!」
「これ……! 氷のお屋敷にあったのと……!?」
アナライズカードで構成されてる……!
シンエラー教授の持ち物と同じ……!?
……! いや……。
『────用途が似たデバイスですが:
────設計概念が違うように思います。』
『>>>同意するよ。それにコレ……前に見つけたヤツより上物だ!』
クラウンと先輩が言ってる事が、私にはよくわかった。
なんだろう……マイスナが住んでいたお屋敷にあった"パソコン"は、"突貫工事"のような印象を受けるのだ。
知識のない人が、なんとか最低限のデバイスを自力で組んだかのような……。
でも今、目の前にあるモノは違う。
完成されてる。見た目がカッコいい。
流線型と直角のフォルムが美しい液晶画面と、
青く透き通る流水のようなキーボード。
"パソコン"なんてモノに馴染みがない私でも、
すごいな、ってわかる洗練された意匠。
「……中身、生きてるかな」
「また、格納する?」
『────お待ちください。
────この端末は:どうやら付近の水晶や水体と連動しているようです。』
『>>>ぶんどる前に、調べてみるか……おふたりさん、髪のケーブルお願いしていーかぃ?』
「ははは……やっぱ、ぶんどんのね」
「うねうねーっ」
『────接続端子が存在します。
────そちらへ:──。』
──シュル……、
──シュル……、カチッ。
パソコンの側面の小さな穴に、マイスナと髪を刺し込む。
うねうねヘアーの先から光の筋が流れ出す。
『────起動できそうです。
────パスコード解読中:::。』
『>>>ウィルスに該当する物は確認できない。一応、流路図をいただいとこう』
〘#……やれやれ、まるで"ハッカー夫婦"だな……〙
〘------発火のん?☆☆☆〙
ローザがしょーもない勘違いをする中、
私とマイスナの瞳には、無数の光が流れている。
チカチカすんわね。
いけそうなの?
『────こじあけました。
────破損率:ゼロパセルテルジ。』
『>>>障害なし。まるっといただき……!』
仲良し夫婦だ。
なにが出るかな?
『────元々破損しているデータがあります。
────不明フォルダを発見。
────復元可能判定。』
『>>>やっちゃえやっちゃえ』
こりゃー。
『────"フォルダ01"を:復元成功。
────フォルダ内部に:更にフォルダが二件。』
『>>>番号管理してたのか……? タイトルだけじゃ中身がわかんないね』
遠慮というものをしなくなってきたわね、
このカポーは……。
『────"メッセージフォルダ"のようです。』
『>>>……! こっちはなんだ……? "設計図"かな……? まぁまぁ容量がある。こちらに転送してみよう』
〘#……う、うむ……たくましくなったと言うべきか、教師としては嘆くべきか……〙
〘------どっちもすりゃいいのんな☆☆〙
「で、どうなのよ……? なんかわかった?」
「やっぱり誰かが住んでたんですか?」
『────"メッセージフォルダ"の:
────先行確認を申請します。
────アンティ:マイスナ:許可を頂けますでしょうか。』
「ん。まぁまがりなりにも義賊二代目だかんね。今更"覗き見ダメです!"とかは言わないわ」
「開けちゃったものはしょうがないです」
「見てみましょ」
『────レディ。
────再生可能アプリケーションを:
────こちらで自動生成します。
────"メッセージフォルダ"を開いています:::。』
「さ、何がでるかな……」
「がめん、ちょっと光ったよ」
──ヴぅ、ぉおおお、おおおんん……!
──────ViVi──……!
『
圧縮に、失敗した。
』
さいしょには、そう書いてあった。










