亜空領域
チビゴーレム、マジ許すまじ。
時は、ゆっくりと流れている。
今も、落ちてるんですケドね。
『────"反射速度":発動中です。』
『>>>だぁー!! だからトラップに気をつけなって言ったじゃないかぁー!!』
ごめんってばぁぁ──!!
だって、あんなちっこいゴーレムが、
ひと芝居うって落とし穴にハメてくるなんて、
思わないでしょーよぉ!!
顔、覚えた。
次会った時、許さない。
ここを登ったら、手足もぐ。
食べれないくせに、食べれないくせに……っ!
あの……マイスナさん?
ちょっと食欲の矛先おさめてもらっていーぃ?
『>>>まったく……けっこーな速さで落ちてるよ。すぐ反応しな? クラウンちゃん、ソルギアブーストを──』
『────はい。
────マイスナ機も:用意完了しました。
────バーニヤ露出後:即座にブーストします。』
〘#……うむ。ローザは一応、落下に備えてほしい。大丈夫だとは思うが、下方に棘のある地面でもあったら、かなわぬからな……〙
〘------はいはいのーん☆〙
{{ な、なんかヤバそうだけど、大丈夫……? }}
『 がるがるぅー? 』
『>>>よし……じゃ、"反射速度"を少し弱めるよ──?』
ばっちこーい!
ちっこいからって、油断したのが悪かったわね……。
マイスナじゃないけど、上に戻ったら容赦ナシよ!
あんなにっくたらしい顔で、
首かっきるような動作をするヤツぁ、
将来、ロクなゴーレムにならないわっ!!
『────"反射速度":出力抑えます。
────"ソルギアブースト"デバイスを射出。』
──ゥゥ──……、、、
{{ ……!? ガルン!! }}
『 がるっ! 』
──落下の速度が増す。
──ローザの体積が膨らみだす──。
──ィィイ・・・ン──、?
『────:え……?。』
ブースト……────しないッッ!?
『────なっ!?。
────空間接続・・・失敗!:
────バーニヤが:露出しません!!。』
『>>>っ!? な、何故ッッ……!?』
〘#……マイスナ!! すぐに壁面にアンカーを撃て!〙
「っ──!」
──ジャギン、シュパァ──!!
何かがおかしいと気づいた先生が、即座に指示を出す。
マイスナの腕装甲から銀の剣が生え、
鎖の尾を引きながら射出される。
落とし穴の壁面に、鎖付きの剣を刺し込む気だ。
──-──-──ギュウオオオオンンッッ!!!
──バッコオォオオオオッッ!!!
「──!!! くずれた……!!」
「くっ──!」
今も、落下し続けている。
手刀を壁に突っ飲む。
──-──-──キィィイインン……!!
──バラァァああ……!!
「っ!! くそったれ!! もろいッッ──!!」
砂のように崩れやがるわっ!!
{{ ピエロちゃん!! 底が近いわっ!! }}
『 がるがるっ!! 』
「──あっ!?」
い……イニィさん!!
いつの間に外に……!?
私の肩に掴まってる!!
うぁ、本当だ!!
槍がいっぱい生えたみたいな地面が見える!
ヤバい!
ソルギアが、いきなり使えなかったせいで、
身体をひねって受け身をとるヒマが無かった!
〘------は;羽根の体積が増やせないのんっ──☆
------クッションを作るのに;そっちのも;もらうのん──☆
------ドンは悪魔さんに任せるのんっ☆☆☆〙
{{ わかったわ!! ガルンッ!! }}
『 がるがるぅぅぅ──!!! 』
私に接続されていたローザの流体が、
マイスナの方の流体に接合し、
天使のような白翼が銀の装甲を覆う。
私の方は、
イニィさんとガルンが混じり合い、
悪魔のような黒翼が黄金を包んだ。
{{ 衝撃に備えなさい! }}
「く──!」
「ん──!」
──がぁおぁあああんんん──!!!
黒翼と白翼が、落とし穴の底のトラップから、
私たち二人を守る。
予想だにしない事が起こった。
──ボコォ……!!!
「──底がっ・・・!!」
「──ぬけたっ・・・!?」
トゲトゲの落とし穴の底が、見事に粉砕された。
巻き上がり、飛び散る砂のような残骸。
──その先は、意外な空間が広がっていた。
「 な に も ……──!! 」
「 な い っ ……──!! 」
落とし穴の下は、
地面が無かった。
まるで、空──……?
『>>>──なんだ此処ッッ!?』
『────駄目です……!。
────"時限結晶"空間との接続:不能判定……!。』
どこまでも、何も無い空間が広がっている。
空のような色だけど、少しだけ青緑っぽい。
落下したままの速さは、まだ落ちていない。
「──マイスナ!! 私にアンカー撃って!!」
「──くっ!!」
「──はやく!!」
──パキュゥオオオンン──!!
──ガキィイインンン!!!
マイスナの腕から発射された鎖の付いた剣が、
私の装甲に届き、密着した手錠型に変形する。
よし! これで繋がったわ!
「──クラウン!! 足場を作る!!」
『────くっ……:予測展開。』
くそっ、最初っから、こうしとけば良かった!
判断ミスだわっ!!
歯車をいくつも召喚し、
落下する方向に重ねて空間固定する!!
────きゅおおおんんん!!!
────きききききんんん!!!!
「──着地!!」
────キィィィイイイインンン……!!!!!!!
まるで宇宙のような空間で、
私は歯車のおぼんの上に着地した。
マイスナが下に落ちていくので、
繋がれた鎖を引っ張り、彼女の勢いを殺す。
──ギィィいいんん──クゥン──……!!
「──ぐっ!!!」
「ま、マイスナ……!?」
「だ、だいじょうぶ……!」
ふ、ふぅ……。
ドラゴンの腕力は頼りになるわ。
くん、とマイスナを引っ張りあげると、
マイスナはシュタッ……と歯車の上に乗った。
「あわわっ……」
「おっとっと……」
ふらついたマイスナを、受け止める。
……! ここ……重力が、おかしい。
なんか、身体が軽いわ……フワフワする。
〘------ボディチェックのん──☆
------ん☆ ふたりとも;怪我は無さそうのんな☆
------いやー;ビックリしたのんなぁ──☆〙
{{ 災難だったわね……。まさか落とし穴の下が、こんなダダっぴろい空間になっているなんて…… }}
「あはは……イニィさんも、ローザもありがと」
『 がるぅー! 』
「もちろんガルンもね?」
「よしよし」
『 がるるんーっ♪ 』
よし……。
皆ちゃんと、でっかい"歯車おぼん"に乗っている。
くそ……なんなのよココは……?
「クラウン。空間接続はどう? バッグ歯車が使えないって事?」
『────再接続中・・・ERROR。
────申し訳ありません。
────"時限結晶":復旧しません。』
〘------ふんむ──☆
------"鎖ポケット"も;ダメのんなぁ──☆
------なんかココ;変な感じのんよ……?☆〙
「アイテムバッグが……使えない……」
「ほんとだ……中の物が取り出せないよ」
『>>>この空間の特性か……? ソルギアの飛行ユニットが召喚できなかったのは、そのせいかな……』
〘#……ふぅ……イニィ殿とガルンは、よく間に合ったものだ……〙
{{ あぁ、いえ……何か嫌な予感がしたので、とっさにガルンと"外"に出たんです。その後にすぐ、ソルギアのデバイスが出なくなってたようで…… }}
『 がるがるんっ! 』
イニィさん、ファインプレーだわ!
お陰で助かったよ……。
"力量加圧"と合わせたドラゴンヨロイの防御力は凄いけど、あんな槍まみれの底に、背中からまんま落ちるなんてのは勘弁だったわ。
『>>>呼吸はできているね? よかったよ……。うーん、やっぱりこの空間のせいで"時限結晶"が使えないとしか思えないよなぁ……』
〘#……摩訶不思議とはこの事だな。この広大な場所は、一体何なのだろうか……〙
「ひろいね、アンティ……」
「うん……」
改めて辺りを見まわすと、
物凄ーく、だだっ広い場所だった。
つーか、地面がない。
例えるならば……そうね。
" 青緑色の空のような宇宙 " ……?
「……ダンジョンって意味わかんないわねぇー。こんなトコに落っこちるトラップとか、ベタにあるモンなの……? 今度から極力、ダンジョンには近寄らないでおこう……危ないったらないわ!」
「すごいね、見て、瓦礫が浮いてるよ」
「ぁ、ほんとだ……」
ものっそい広い宇宙のような場所に、
チラホラ、岩の塊みたいなモンが点在してる。
あ……あれとか結構、遠い場所にあるから、
私ん家の食堂くらいあるかも……。
{{ こんなの初めて見たわ……普通のダンジョンじゃないわよ……。ここって、地下のはずでしょう……? }}
『 がるがるぅー 』
〘------ガレキ以外、なんもないトコのんなぁ──☆〙
「アンティ……どうする?」
「と、とりあえず元の場所に行きましょう! こうやって歯車で足場を作れば、ソルギアが使えなくても上に進めるはずよ!」
『────申し訳ありません:ソルギアやブースト系が使えれば……。』
「いや、クラウンのせいじゃないって!」
ふぅ……。
ドンドン炭鉱の地下に、
こんな場所が隠されてるなんて……。
……ん?
そういえば、『ドォォォン!』って音が……、
さっきから聞こえないわね……。
「……アンティ」
「ん、なに?」
「ないよ」
「……なにが?」
マイスナに肩をギンギンされる。
彼女が指をさした方を見る。
「……さっき落ちてきた穴が……ない」
「……………へっ?」
………。
あれっ。
あれれっ?
「…………なんで?」
「……わかんない」
ない。
来た所が、無い。
遠くに、小さな岩の足場が浮いたような、
変な色をした宇宙モドキが、
どこまでも広がっている。
「そんな……!?」
ありえないっ……!!
だ、だって……!?
あんな、大きな炭鉱の地下から落ちたのに……っ!?
なんで、岩盤のひとつも見えないの!?
{{ ピエロちゃん、これ……ヤバいんじゃない? }}
『 がるるぅー? 』
〘------帰り道;無くなったのんな?☆〙
「…………」
「…………」
さァ────────…………。
ローザの言葉に、血の気が引く。
『────ストレージ:未だに使用不可能判定です……。』
『>>>かっ、観測しよう!! この空間を調べるんだ!! クニャウンズは全員サポートルームへ! あっ……ニャーナとミャーツ、いないのか……! くそーこんな時に何やってんだよー!!』
〘#……放射系の観測デバイスを作ってみよう。こちらからの空間転送は無理のようだが……アナライズカードや鎖、歯車は使えるのだな? やれやれ……とんだ落とし穴があったものだ……〙
【 んぉ、なんやなんや……? 】
< 厄介事かいなぁ〜〜♪ >
「「 …… 」」
拝啓、故郷の父さん母さん。
ダンジョンって、けっこう怖い所です。
(´・ω・`)またこの子たちは……










