" 失敗だな…… "
「ねぇパパー」
「ん? なんだぃ」
「クルルカンの、ゴーレム退治のお話ききたい!」
「え"っ!? いや、それはよォ……」
「昔、私が小さかった頃、よく話してくれたじゃない!」
「や、そ、そーだったかぁ……?」
「あー、やっぱり、クルルカンと狂銀が仲良しなんて、ウソなんだー」
「う、嘘じゃねぇよ!」
「じゃーおしえてよー。くわしくききたいの」
「しゃ、しゃーねぇなぁ……誰にも言っちゃダメだぞ? 母ちゃんにもな……?」
「うん!」
「ふぅ……あれはな、まだパンジーが一歳にもなってねぇ頃だ……」
「ふふふ……」
「俺が馬車に乗りそびれて、ドンドン炭鉱ってゴーレムの巣で次の馬車を待ってたらよ」
「そーこーはーいーいー!」
「な、なんだよ……」
「そこはもう知ってるもん」
「えーっと……じゃあ、まぁ二人が来たわけだ。陽射しがきつい日でよ。アイツら二人分の鎧のギラギラ感ときたら、そりゃ凄かったもんだぜ!」
「あはは! その後、狂銀に氷入りのお水をもらうんでしょ!」
「あぁそうだ! あっつい時に狂銀がいるといいよな!」
「ふふふふっ!」
「んーでよォ……話を聞くと、ゴーレムの魔石がいるって話じゃねぇか。それを聞いて俺ァ、仕方ねぇから付いてってやる事にしたのよ!」
「わくわく♪」
「中に入ってな? あの2人は……坑道の途中の鍾乳洞で、綺麗さにおでれぇてた」
「どんなトコなの……?」
「ん? とにかくひれぇんだ……天も高くてよォ。坑道を掘ってる時に、たまたまたどり着いちまった秘境なのさ。つららみてぇな石が上から垂れて、下には碧く光る水が溜まってやがる」
「見てみたいなぁ……」
「いやいや危ねぇからな? だが、その光る池の水面に、ドンドンって鳴ってる地響きのせいで、独特の波紋が出んのよ。それが俺は好きでよォ……」
「そこで!」
「あぁ……すぐ側の岩に、ゴーレムが2体、化けてやがったんだ」
「……!」
「あんときゃヒヤッとしたぜ。俺たち3人だけじゃ危なかったんじゃねぇか!? ってな……」
「……!! ……!!」
「だがよォ、次の瞬間、手前のゴーレムが────、
「──クラウン、ナックル」
『────レディ。』
『>>>とろいな』
先輩が、ポロッともらした。
不謹慎ながら、同意する。
こいつら……やる気あんのか?
「しっ」
打ち抜く。
ナックルは、正確に岩人形の胸を叩いた。
キ────ゥンンン────……!!!!!!!
……ズズんぅ──!
……よし、動かないわね。
マイスナを見る。
「ローザ、水流操作」
〘------Non;problem──☆☆☆〙
〘#……興味深い人形だな……〙
ふぅ、心配には及ばないみたい。
「 ──" 氷帝 "──……! 」
── バ キ ィ イ イ ン ン ・ ・ ・ !
ゴーレムが、ぶち凍る。
「 ──" 照全 "──……! 」
「あ、やりよった」
──────ガァァアアアンンンン!!!!!
マイスナの怖いトコって、
氷と雷、どっちも使える事よね。
おっそろしく相性がいいわ。
凍りついた敵に雷を落とすと、
水分に帯電して、威力の逃げ場がないのよ。
マイスナの紫電は出力が落ちないから。
凍りついた標的めがけて、延々と。
雷撃の鎖が、絡め取られるの。
──ジュゥウウウウウウウウアアワワワワワ……!!!!!
私が連想するのは、"蒸し焼き"。
"ヒモで縛られたハム"──。
──ボッ、ボッ、ボワッ──!!
〘------せんせぇ何あれ──☆☆☆〙
〘#……水分を電気分解して水素と酸素にしてみた。が、失敗だな……〙
〘------なんでのんな?☆〙
〘#……いや、キレがないだろう〙
先生は、普段とってもクールな大人だけど、
たまに「この人、確かに一代目狂銀だわ……」
と、納得する時がある。
青い炎が噴き出る電流氷塊に閉じ込められたゴーレムに、
"失敗だな……"とか、
"キレがない"とか、素で言っちゃう御仁である。
〘#……今のは納得がいかぬ。次を試そう〙
謎のストイックさがあるというか……。
敵に回すと恐ろしい御方でござる……。
「アンティ、こげたよ」
「おぉ……ゴーレムも炭化すんのね」
マイスナの電撃は、私と同じく魔法じゃあない。
物質を分解した時に生じる電気エネルギーを使ってるらしい。
ゴーレムは体に金属質も多く含むだろうから、
まぁ、マイスナは天敵だろう。
電気を防げないお相手さんは、
きっちり消し炭になっていた。
「ゴーレムよわい」
「あっ、そこにもいるわ!」
正確に敵の胸を打ち抜き、ほぼ一撃で停止させる。
む……確かにクッキーみたいね。
お、まだいるやんね。
おっ、殴ってきた!
ズ、オ、オ、…… !
「……」
お、……っせぇな──!
明らかに遅いので、殴ってみる事にする。
絶対安全を考えたら、一応避けるべきだと思う。
でも、遅い打撃ならば、
それより速い打撃で殴り返せばいい。
効かなければ……それから避ければいいよね……?
「──しっ!」
──キィィイインン──ガァアンン・・・!
迫り来るゴーレムパンチに、裏拳した。
ちょうどナックルが上手く当たり、よい音がする。
グワン、と、ゴーレムの左腕が弾かれる。
(あっ……いけるな)
パンチを外側に弾かれた巨体ほど、
がら空きボディが目立つものはない。
私は地面に脚を突き刺し、あの技を試す。
──キィン・・・!!
──キュゥウウウウンンンン──・・・!!!!!
「──" 消印拳 "──!」
■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■
■
■
■
■
「ぷあっ、ふっ──けっほ、けほッッ──!?」
──ぅぅううンンン……。
右手と右足の回転が落ち着く。
ぺっぺっ。
こらあかん、粉が舞う。
粉末状になる敵には使わないほうがいっかな……?
あっ、やべ!
これダメだわ。
坑道の壁に、ガッツリ「〒」マーク刻まれてますやん。
私が来たってバレるやんけ……。
ど、どしよぅ……、……。
なんか、投げて潰すか……。
──ズン!!!
隣にあった岩に手刀を突っ込むと、
にょきっと手と足が生えた。
あっ、これゴーレムやっ──!
「………」
──ブンッ!!!
ガァァアアアんんん──!!!!!!!
「ゴーレムごめん!!」
『────大破しました。』
『>>>ごめんで済んだら賊にはならんよー』
伝説の義賊が何を言ってるの。
マイスナを見ると、けっこうな団体さんのお相手をしている。
「……クラウン。あの爪……なんで光ってんの」
『────高周波ブレードに高圧電流を流しているようです。』
『>>>わぁ……あの子、金属合金とか作り放題だからな。爪からレーザーでも出てるんじゃない?』
マイスナの光る爪が、
サクッ、とゴーレムさんの胸元に吸い込まれる。
と、豆腐かな?
あっ、沸騰した。
ぉ……?
あの頭の上で光ってんの、なんだろぅ……?
〘------せんせぇー;安定したのんよ──☆☆☆〙
〘#……マイスナ。仮面の二本の角の間に、プラズマ体を発生させた。ぶつけてみなさい〙
「えーいっ!」
──とぅぱぁぁああんん──ぺしゃぱッッ……!
光る飴玉のようなモノがぶつかり、
ゴーレムさんが胸から溶けた。
ドレッシングみたい。
「ねぇ……あの子おかしいよ……もう、なんか……おかしいじゃん」
『────着弾点から:直径3メルが融解しています。』
『>>>きみも同レベルでおかしくはあるんだよ。性格の差が出てるだけで……』
いやあそこまでじゃないわよ。
ひぃー味方でよかった!
いやーもうあの子と戦うのムリやわ。
もうベッドでしか戦いませーん。
「あっ、また来た……! こいつら顔なくなったらどうなんの?」
──パァン!
「おぉ……動く動く、でも前は見えてないのね」
ゴーレムってモツ、どーなってんだろ……。
すごいなぁ、岩が動いてんだもんなァ。
開けてみた。
「クラウン、ちょっと流路調べてみない?」
『────いいですね。』
『>>>…………』
髪の毛の流路とアナライズスキャン使うと、
けっこう色々わかんのよねー!
あーなるほど、スライムと似てるわね。
流動と伸縮で……。
ふむふむ。
「……アンティずるい。サボりよくない」
「あっ、ごめん……」
マイスナが隣でプンスカしてたので、
ゴーレムさん退治に戻った。
しっかしドロップしないわねー!
けっこう倒してるのになー。
「アンティ、あっちにいっぱいいるよ」
「おっ! ほんと! ちょっとデカイね」
ズシンズシンと歩いてくるゴーレムさん達は、
コケた。
「氷でトラップ作ったよ」
「足元、見えてないのねぇ」
寝転んでらっしゃる。
やっぱり、胸が弱点なんだろーなぁ。
「さっき、マイスナがやってた溶かすヤツ……ソルギアでもできるかな?」
『────可能判定。デバイス構成。』
『>>>こらこら。洞窟内なんだから、ちゃんと呼吸可能な気体も生成するんだよ』
「えーっと、私はどうしたら?」
『────微調整はできませんので:
────手を前に突き出してください。』
『>>>いくよー、ひらくよー』
「──でなー? ゴーレムの魔石が胸にあるって知らずに、あのアホタレ共、50体いるゴーレムぜーんぶ壊しちゃってなー。ごあはっはっはっはっはっは!!! まったくしょうがないヤツらだぜ!!!」
「……ねぇパパ。クルルカンと狂銀って、人間だよね?」










