ドンドン炭鉱
アンちゃんワールドでは夏の初めかな?
(*´ω`*).*・゜
ふぃー、あっちぃ。
「アンティ〜〜! はやくぅ〜〜!」
「んにゃ〜〜! ちょっと待ちなさいよぉ〜〜!」
マイスナは私と初めてのダンジョンが、
楽しみでならないみたいだ。
ギンギンと軽くステップを踏みながら、
飛び跳ねるように進んでいく。
ふふ、嬉しそうにしちゃって。
白銀の光が、キラキラと舞う。
ずいぶん、陽射しが強くなってきた。
──ココに向かう前。
ヒゲイドさんに誕プレの相談をしたら、
「うーむ……貴金属系のアイテムは貴族に喜ばれるんじゃないか?」
と、言われた。私が、
「えーと、それって食器とかです?」と返す。
「ほぅ。俺は装飾品の類を想像していたが……それは良いかもしれん。"銀のカトラリーセット"は貴族には定番のアイテムだ」
「アンティ、王女さまに食器あげるの?」
「ぅ、うん。スプーンとかフォークとかいいかなって。うーん、銀の食器か……どこかで買おうかな」
「今から買いに行く?」
「いやいや……お前たち、何を言っておるのだ」
「「へ?」」
「俺もまだ、よくわかってはいないのだが……こちらの"愛しの狂銀"殿は、"ミスリル銀"ですら自在に形を変えられるのだろう?」
「「あっ!」」
そうか!
マイスナの"錬成"の能力で、
カトラリーセットを作ればいいんだわ!
ミスリル銀も、私たちの家の外壁に超あるわ……!
「あの、ヒゲイドさん……"塔の家"のミスリル、ちょっとだけ……」
「あのなぁ……。ふん、聞かなかった事にしてやる。というか、その銀ピカの鎧で既にかなり持ち逃げしておるだろう……」
「す、すんません……」
「助かってます」
「やれやれ……流石、"盗賊と敵役"のコンビだ……」
ヒゲイドさんの、お目こぼしOKをいただいた私たちは、
早速スプーンやらフォークやらを試作してみた。
設計や意匠は、
クラウンチームやローザチームが手伝ってくれる。
意外にファインプレーかましたのがローザで、
クラウン達がモデリングした食器を、
自分の体流を使って、ウネウネ再現してくれた。
おお、実際のカタチがわかりやすい。
流石スライム……まさに万能粘土。
立体ホログラムを使ってたクラウンが悔しがってた。
〘------どやぁ──☆☆〙
『────むむっ……!。』
スプーン、フォーク、ナイフ。
ほぼ造形が決まった所で、
マイスナがゴネた。
「この食器、銀色ばっかり! アンティもプレゼントするんだから、金色も入れる!」
「えぇー!」
き、金って、ゴールドですよね……?
金貨を分解して装飾にするかな……?
い、いやいや……よくわかんないけど、
金貨って勝手に溶かしたりしたら怒られそうじゃね……?
どこかで装飾用の純金、
売ってるのかなーと思った矢先に、
お茶持ってきたキッティが、いらん事言った。
「あらぁーシンプルでいいデザインですね! でも、この持ち手の所に宝石かなんか欲しいですねー」
あっふぉ。
キッティのあっふぉ。
プレゼントにケチがついたマイスナは、
銀の食器に、金の装飾と宝石は絶対つける!
と騒ぎ出す。
べ、別にいーじゃん、と言ったらポカポカされた。
ご存知のとおり、狂銀ちゃんのポカポカは、
女クルルカンにとっては、かなりの有効打である。
仕事の合間にお茶を貰いにきたヒゲイドさんが、
困った顔でアドバイスしてくれた。
「う、うぅむ……もし装飾用の宝石を用意するなら、"スターエメラルド"などがいいのではないか? ドンドン炭鉱のゴーレムの魔石で、一定確率でドロップするぞ」
「! ドンドン炭鉱って、いつもゴリルさんがゴーレム狩ってる所ですよね?」
ドンドン炭鉱は、正式名称が……、ええと……。
"ドゥン炭鉱"か、"ドォン炭鉱"だった気がする……。
いつもドンドン音が鳴っている場所らしいので、
"ドンドン炭鉱"という愛称で定着してしまってるみたい。
ギルドマスターであるヒゲイドさんも、
たまに、そっちの愛称で呼んじゃってるし。
「あそこはまだ攻略されていないダンジョンだが、利益のためにわざと放置されている背景がある。ゴーレム共は餌場である炭鉱から、わざわざ外には出ないのでな。あまり群れも作らないので、比較的、安全に戦いやすいダンジョンなのだ」
と、ヒゲイドさん。
「行こう!! アンティ!」
「う〜〜ん……自分からダンジョンに行くのは思うトコあるけど……、ま、行ってみっかぁ!」
「──えっ!?!? アンティさん達、ダンジョンに行くんですか!? ぜっ、ぜひゴーレム系のクエスト受けていきましょうよ!?!?」
「いやいや、いらないから。パートリッジのイレギュラーコールのお金、どんだけ残ってると思ってるの!」
「や、そういうモンダイじゃなくて、アンティさぁ〜〜ん!!」
なんで泣くねん……。
何故か猛抗議のキッティを放置し、
ドンドン炭鉱へ向かうことにした。
「ギルド……ギルドのじっせきぃぃい……!」
「よせ……逆に考えるのだ……地底王とか倒してきたらどうする……」
おい、聞こえてんわよっ。
──んで、冒頭に戻るワケですよ。
「はーやーくー!」
「またんかーい!」
ちなみに今回は、うさ丸とカンクルはお休みになった。
あのウサちゃん、ゴウガさんの修行で、
どうやら腰をやったようである……。
看病にカンクルを置いてきたった。
帰っても回復してなかったら、
ローザの体液をぶっかけようと思う。
「にょ、にょきっとな……」
「くるぅ〜〜?」
実は王女様の誕パ招待状が届く前に、
クラウンと先輩が、何か相談したそうだった。
どうやらシゼツに少し話を聞けたらしい。
「……で、ホントに聞かなくていいの?」
『────まだ:不確定事項が大きいのです。』
『>>>はは……きみもそれどころじゃないだろう。ちょっとだけこっちで確かめてからにするよ。それに、まだニャーナに話を聞けてないんだ……』
「む……そ、そりゃ、けっこう私もいっぱいいっぱいだけど……」
王女様の誕生日パーティなんて、
貴族さんがほとんどに決まってる。
"時限結晶持ち"の私たちにとっては、
自らの兵器としての価値がバレるかもしれない場所だ。
たぶん、クラウン達や……マイスナがいるから、
落ち着いていられるんだ。
同じ境遇の人が、目の前で笑っているって、
とても勇気づけられる事なんだって、すごく思う。
「アンティ……? 元気ない? 氷だす?」
「っ! ふふ……大丈夫よ。ありがとね」
はは……最悪の場合は、
この子と地の果てまで逃げよう。
天敵同士で愛の逃避行なんて、ロマンチックだわ。
「そいえばさ? ニャーナ達、まだ帰ってこないの?」
『────肯定。
────"不要格納"の捜索に出たまま:
────ミャーツと共に:連絡がとれません。』
「ねぇ、それってさ……アイテムバッグの中で行方不明になってるって事だよね……?」
『>>>遺伝子アルゴリズム反応は消えてない。そのうち無事に帰ってくるとは思うんだけどね……』
いやいやいや……大丈夫なのソレ?
無限のアイテムバッグ、怖いわねぇ……。
「……ちなみに、あの二人は何を探しに行ってんの……?」
『────じ:実はですね…… ……。』
「「 ……へ? 」」
クラウンは、その"廃棄予定の物"の内容を、
私とマイスナにコッソリ教えてくれた。
まぁ、その…………、
とっても赤面したと言っておく。
「な、なんでそんなモン、とってあったのよぉ〜〜……!」
『────も:申し訳ありません。
────あなた方の遺伝子データは:
────こちら側のあらゆるバックアップデータに:
────流用できたもので……。』
「ちょ……ちょっと見てみたいね? 透明なのかな……」
「やっ、やめなさい……」
クラウンの言う通りなら、
小さな立方体のアナライズカードの中に封印しているらしい……。
ニャーナ達が帰ってきたら、問い詰めなきゃね……。
処分する前に、ちょ、ちょっとだけ見せてもらおっ。
〘#……む、見えてきたな。アレではないのか?〙
〘------でっかい岩山のんなぁ────げぷ☆〙
せんせぇ……その幼女にあんまり飲ませないでね……。
目の前には、大きな大きな岩の山がそびえている。
なるほど。ドニオスから、そう離れていないわ。
うーん、"炭鉱"って言うくらいだから、
坑道を行くダンジョンなのよね。
暗いのかなぁ……。
キンキンギンギン歩いていると、
ドンドン炭鉱の方から馬車が来て、すれ違った。
……! えらいたくさん、人が乗ってるな。
御者さんの席まで、パンパンだわ。
横を通り過ぎる時に、
冒険者の人に何人か手を振られた。
「おおお〜〜!! おへそちゃん達ぃ〜〜!!」
「あっ、義賊ちゃんと狂銀ちゃんじゃねぇかっ!」
「炭鉱へ行くのかぁ〜〜い!?」
「うおっ、今日もまっぶしいなぁ〜〜!!」
「そのおへそ、俺にくれぇ〜〜!!」
「ばいばーい」
「なんだなんだ……」
マイスナと手をヒラヒラ振り返す。
おへそちゃんって言うな。
これはアンタたちの街の変態店長のせいだかんね?
マイスナのおへそは、私のモンじゃ。
「おへそ出てたら、いいことあるのに」
「? どんな?」
「? いつでもアンティとサンドイッチできるよ?」
「……??」
ちょっとよくわからないので、
深く、ツッこまない事にする。
気にしたら負けだ……気にしたら負け……。
「アンティ、あそこに誰かいるよ?」
「んぇ? あ……」
恐らく炭鉱の入り口である大穴のそばに、
あっつい陽射しに照らされながら、
見慣れた赤茶の革鎧の冒険者が一人、立っていた。
向こうも、こっちに気づいたみたいだ。
近づく。
──キンキンキン、ギンギンギン──。
「──よォ! どぉした? 珍しいな、こんな所でよ!」
「ゴリルさん、こんにちは」
「ゴリラさん、こんにちは」
「えぇと……狂銀ちゃんは、やり直しな……?」
ドニオスギルドのアニキ分。
ゴリラパパこと、ゴリルさんが汗を滲ませて言った。
(*´ω`*)マイちゃん失礼(笑)










