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時限石とアナライズカード

 自分の力で、何か出来ないか、試してみることにした。

 超自信ないけど。はぐるましかだせんけど。


 魔法の授業は捨てる事にする。属性魔法の実技授業が、私のためになるとは到底思えない。この事は、まぁしかたねぇな、と両親納得済。

 月1回の座学のテストだけ受ければ、卒業だけならできるはずだ。

 今まで通り、お店を手伝わなくて大丈夫かな、と言ったが、


「あのなぁさっきも看板娘化は何時でもできるっつったろ?」

「時間ある内に、色々してみなさいな~」

「店はプライスが頑張るからでーじょーぶだ!!!」


 って言ってくれた。……ご愁傷さまプライス君。


「だったら……」

「ん?」

「だったら、私、隣街の冒険者ギルドに行ってみたい」

「ほぅ……」

「そうきましたか~」

「私が学校に行きたいって言い出した理由、知ってるよね」

「えーっと、確か、おでんの魔法使い? とか言ったか」

「紫電! 紫電の魔法使い! 何言ってるの!」


 そう、私が子供の頃、まさにあの絵本が大好きだった時。

 街に魔物が入りこんだ事があった。結界柵の修繕の時に、フォレストウルフが数匹入り込んだのだ。

 この街、カーディフの冒険者ギルドは仲介所レベルで小さい。

 教会や、本格的な冒険者ギルドは、隣街のドニオスまで行かないとない。ウルフ種といえど、当時のカーディフにしては脅威だった。住民は高い建物に避難し、ウルフ種の討伐を待った。


 その時にウルフの討伐にきた冒険者が"紫電"だった。たまたまドニオスにいた彼女は、早馬でカーディフに駆けつけたのだ。私は当時、その討伐風景を目にしている。


 薄紫の髪をした、女の子だった。

 驚いた事に、私と同じくらいの年齢の感じだ。

 当時は4年前、11歳手前くらいだったはず。

 手をかざした女の子から、カッと光が溢れたと思ったら、数匹のウルフに稲妻がおちた。

 一瞬だった。憧れた。


 その後どうしたらあんな風になれるかみんなに聴いたら(主にお客さん)学校で勉強すればいいんじゃ? となったわけだ。今から考えると安易な決断だったが、両親は喜んでくれて、私の入学許可をくれた。


「自分の力を試すなら、やっぱり夢だった冒険者がどんなものなのか、挑戦してみたいの。そ、そりゃ危険な魔物討伐とか、そんなのは全然受ける気ないけど……」

「うーん、まぁお前は考え方はしっかりしてるから無茶はしないだろうが」

「いいんじゃない~? 冒険者さんって、薬草つみとか、郵便屋さんとかもお手伝いするんでしょう~?」

「ここで行くなっつっても、後で煮え切らん人生になるだろうしなぁ……よっし! アンティ、いっちょやってみろ!」

「本当!」

「ただ準備はちゃんとするのよ~。冒険者ギルドに行くなら、拠点はドニオスになるんでしょ~?」

「あ!」


 そ、そうか。冒険者ギルドに行くのは、冒険者登録するだけじゃない。依頼を受けたり? して色々試すなら、カーディフの仲介所だけじゃダメだ。ある程度ドニオスに居座る形になる。


「まぁ、座学のテストには月イチで帰らなきゃだから、めんどくせぇかもしれんがな! はっはっは!」

「月1回、カーディフとドニオスを往復する馬車代分は稼がなきゃね~」

「そんくらいの金ならだしてやろうか?」


 カーディフとドニオスはそんなに離れていない。馬車で早朝に出れば、昼前には着く。そんな位置関係にあるから、大きな街であるドニオスのほうに、色々な施設が集中している。カーディフは住み良い街だが、近くに冒険者ギルドがあるのにわざわざ作ったりしない。せいぜい簡易祭壇や、仲介所どまりだ。


「……いや、できる限り自分で稼ぐように頑張るよ」

「そうか。よし、その意気だ」

「ふふふ」


 挑戦するって決めたからには、自分だけで独立するくらいは目指さないと。目指せ紫電の魔法使い! ……は無理か。はぐるまだもんなぁ……。


「そうだ、あなた、ほら、アレ」

「ん? お! アレか!」

「?」


 なんだなんだ?

 父さんが木の箱を持ってくる。小さな宝箱みたいだ。


「何これ。綺麗な箱だね。宝箱みたい」

「そうだ、これはオレが昔、炭坑で掘り当てた宝箱だ」

「え!? 何それ? 父さんの働いてた炭坑ってダンジョンだったの!?」

「と言うよりは、働いてた炭坑が、小さなダンジョン化したことがあってな!」

「な、何それ……」

「いゃーあの時は慌てたぜ! いきなり炭坑の壁がウネってよ! まるで生きてるみたいだった!」

「そ、それからどうなったの!」

「掘って掘って掘りまくったのよ!」

「は?」

「いやぁー、出口がどっちかもわかんなかったしなー! オレその時はソーラの弁当とツルハシしか持ってなかったんだぜ!」

「流石にあの時は心配したのよ~! でもこの人ったら~」

「え、え、で、どうなったの?!」

「ダンジョンコアを壊してやったのよ! ツルハシで」

「ツルハシで!? そ、それってダンジョン攻略者ってことじゃないの!?」

「おうよ! だから王都で管理されてるダンジョン攻略者の名前のリストにオレが載ってるんだぜ! はっはっは!」

「マジですか……」


 父さんが、ダンジョン攻略者だったなんて……。


「その時に国から報奨金が少しだけでてね~。それがこの食堂を建てる時の資本金になったのよ~」

「そ、そうだったんだ……」


 我が家に歴史あり、だよ……。


「まぁ出来掛けのダンジョンだったし、まだ魔物は湧いてなかったしな、ツイてたんだ! 報奨金もショボかったしな! で、その時に手に入れた宝箱がこれってわけだ!」


 改めて木の箱を見る。派手ではないが、まるで浮彫されたかのような装飾が綺麗だ。……まてよ? 宝箱?


 「この宝箱、にはどんな宝が入ってたの」

 「それよ! 開けてみな」


 えっ! 入れっぱなしなの! 売ったりとかしなかったんだ……。


 「えっと、じゃあ」


 木の箱のフタに手を伸ばす。


 き、きききき……


 なかにあったのは、布に包まれた赤い宝石と、水色の透きとおったカードだった。


 「これは?」

 「時限石とアナライズカードだ」




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