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彼女の確信

いつも誤字指摘あざんますです(●´ω`●).*・゜

即ジャッジできるのは本当に助かりますっ!

<(_ _*)>多謝。





 流路が魔素の通る道なら、

 術式はそれを形取るもの。


 インクが線を成して文字となるように、

 それらは意味の概念を持つ言葉となる。

 それが学校で教えられる、世界の常識。


 だけど────。


 私たちは、能力おろしを受けた。

 金と銀の髪の中を、血のように流れる光。

 薄暗い、ブルーライトが灯る部屋で、私は思う。



(これは……なんなんだろう)



 チカラ持つ形。

 発生する概念。


 空間に生まれし、

 数々の仲間たち。

 

 時に忘れ去られたキカイを、紐解いていく──。





「……どぅ?」

『────アナライズカードとの互換性を確認。』

『>>>今、髪の流路を通して解析してる』


 マイスナは複雑そうな表情で、

 私の隣にいてくれている。


『>>>ニャーナ、戻ってきてくれ、こいつの調査を手伝ってほしい!』

『C7:お呼ばれにゃ!』


 ──きゅぅぅん──……!


 猫モードのニャーナが、私の肩の歯車の輪から、

 エレベーターのように降下していった。


「……」

「……」


 ……微妙な空気。

 目線が合う。

 このキカイを隠すと、直ぐに決めた私。

 それを少し、残念に思っている彼女。

 今の彼女に何を言われても、私はつっぱねる。

 それを良く、わかっているんだと思う。


「……、……」


 私は謝ろうとして、でも、やめてしまった。

 お互いを理解しすぎて、それを尊重しあったら、

 最後は、何も喋れなくなるのかもしれない。


 距離だけはゼロのまま、

 私たちの静かさは増す。


「……」

「……」


『────情報統制化。

 ────ロック媒体:顕現しました。』

『>>>よし、錠前の形が、わかったね』


〘#……凄まじいな。この空間で生み出された"デバイス"の仕組みを、簡単には教わっているが……。クラウンくん、カネトキ。君たちの演算速度は、少々……異常な出力ではないか?〙


『────新型ボディ"アマテル型"では:

 ────この程度なら平均出力値です。』

『>>>そうかな……? まぁ、この左手は流路の集合体そのものですし……。それに一度、これに似たような隠し部屋を見つけたことがあるんですよ』

〘#……ほぉう?〙


「え……? そんなのあったっけ……?」


『>>>あっ、忘れてるなー? 後輩ちゃん』

『────カネト。

 ────最初の障壁機構に接触します。』



 ここと同じような、隠し部屋……?



『────流路障壁:解錠不可能判定。』

『>>>くっそ、本物のパソコンと一緒でセキュリティのようなものがあるな! まさか……ぼくと同じ世界から来た誰かが……?』

『────いえ:このホログラムPCは:あなたの世界の知識から派生しているとは思えません。むしろ:私たちが特化しているデバイスの内部構成を有しています。』

『>>>ははっ……じゃあ何だい? コレをこしらえた人は、ぼくらの世界の知識がないまま、こんなモンを造ったってことかぃ?』

『────返答しかねます。

 ────トライ:続行。

 ────分析を────……。』



 ──ピピ、ビビビっ。



「──! 何か、ウインドゥがポップアップしたわ」




────────────────────────

 D:System No.00002

 type:customization

 Server:SUNDAY│

 ─ ─ ─ ─ ─ ─

────────────────────────




『────:!!!!!。』

『>>>──あっっ!!!』


「よ、読めるよ……! "でぃーしすてむ"、"たいぷ"……か、"かすたむ"……?」

「あ……」


 この時、マイスナが喋ってくれて、

 正直、ホッとする。


「"さあばあ"、"さんでぃ"……?」

「う……うーん、よくわかんないね……あれ? これって、お城の"じかん箱"でも表示されてたヤツよね?? ──あっ!」

「? アンティ、これ知ってるの?」

「そっか! "似たような隠し部屋"って、王城の"クラスルーム"の事か……!」

「?? クラスルームって、なぁに?」

「え、えっとね? 私、実はお城にお部屋を持っててね……?」

「すごぉーい!!!」



『────"SUNDAY(日曜日)"、サーバー:……。』

『>>>……クラウンちゃん……』

 


 ……クラウン??

 何を、驚いているの……?



『────:アンティ……。試してみたいことがあります。』

「どうしたの改まって……なんでも言いな?」

『────私を:そちらに召還していただけませんか。』

「………………なん?」

『────先ほどのニャーナのように:私を高密度流路体で:現実規定世界に構成し直してほしいのです。』

「……………あなたを、こちらの世界に出すってことよね?」

『────はい。』


 クラウンと先輩は、一度だけ"時限結晶(ストレージ)"から出てきた事がある。

 あれを今、ここでやるってことだよね。


「……理由を聞いても?」

『────私には:このデバイスをこじ開ける事が可能かもしれません。』


 ……? どういう事だろう。


「……。いいわ。先輩、できる?」

『>>>Ver.アマテルになった彼女のボディは、かなりの情報量になってるんだ。長期間の顕現化はキツいな……。Ver.を落としたら持続できるかもしれない』

『────お願いします。』

『>>>……わかった。任せな』

「……」



 先輩は、すんなりとクラウンの要望を受け入れる。

 もう少し……『何故?』と、

 疑問に思う所があると思うんだけど……。

 え、私?

 私は、よく分からないからOKしただけだし……。



「……あ! 先輩! クラウンをこちらに組み直すのに、私の中のゴールドフレームを使えない? 骨格と擬似筋肉まで構成されてるんでしょ? 流用できると思うの」

『>>>あぁっ、その案いただきっ! ごめん後輩ちゃん。少しだけ、ヨロイをはだけさせてくれるかな……?』

「うっわー、所帯持ちになってから遠慮がないわねぇ! クラウン!」

『────レディ(準備完了)。』



 ──パシュ! バシュ──!

 ──ギャオオォォォ……ギチチチチチ──……!!



 クルルスーツの首元が展開し、

 装甲がパックリと咲き乱れていく。


 真っ赤なドラゴンの筋肉が規則正しく拡がり、

 まるで、黄金の龍が口を開ける様に、

 私の上半身が(あらわ)になる。


 "白金の劇場幕(マフラーマント)"で胸元を隠そうとしたら、

 純白の羽根が拡がり、私を覆い隠した。


 ──ふぁさぁ……。


「……! ふふ、ありがと」

「……先に隠してから脱ぐ」


 ふふふ、もっともだわ。

 マイスナのヨロイの半分はローザでできている。

 いつでも天使ごっこができるわね。


 今はマイスナの方が王子様に見えるわ。

 白き鬼姫に少し身体を寄せ、上半分が裸になった所で、

 私の中から、人のカタチをしたものが、

 私を脱ぎ捨てる。



 ──ズ・ズ・ズ……!

 ──カチカチ・キュイキュイ……!



「ん、くっ……」



 ──ガッ!



「「わっ!」」


『────申し訳ありません。

 ────ゴールドフレームのコントロールを掌握しました。』


 私から抜け出しかけの金色のアームが、

 ヨロイを掴んで、残りのフレームを引きずり出す。

 ふふ、まるで脱皮だわ。


『────感度良好です。

 ────神経流路接続:デバッグ進行中。』

『>>>ローザの流体をスキンに使おう。これほど柔軟な流路素材は他にないね』

〘------のんのんなぁ──☆〙


 ──キィん! と、金の骨格は着地する。

 まるで自分の骨が、逃げ出したみたい。


「……ねぇ、アンティ!」

「ん? どした?」

「それ……"プレミオムアーツ"?」

「ん!? あぁ……」


 マイスナが、私の首元を指さす。


 どうやらトップレスになった私の首元に、

 プレミオムアーツだけが残っているらしい。


 "郵送配達職(レターライダー)"の紋章が入った、黄金の首輪。

 さっきまではヨロイに一体化してたはずなのに……。

 これも、よくわかんない技術の産物よね。


 いつもは液体のようになって、

 ヨロイと一緒に脱げるんだけど……。

 半脱ぎだと、身体に残るのかな……?


「よく見ていーい?」

「うんっ、どーぞ?」


 さっきまでマイスナとは、ちょっと変な空気だった。

 これくらいで彼女との仲が円滑になるなら、

 いくらでも見てってくださいと言いたい。


「いいなぁー! 私も欲しいなぁ……」

「え、えぇ〜〜? でも、首輪よぉ?」

「むぅ〜〜アンティとおそろいがいい」

「まぁーた、この子はぁ」


『────相変わらず:仲睦まじいことです。』


「「──!」」

 

 ふたりで振り向く。

 色々言いたいことはあるけど──、


 ──端的に言うと、

 ツインテールのメカっ娘が、

 そこに立っていた。


「…………」

『────:……。』


 うお、、、いるやん。……って感じ。

 背の高さが、私と全く同じだ。

 頭に王冠やネコ耳みたいな付属パーツが、一切ない。

 人形のような、ワンピースを着た女の子。


「………ふふ、アンタさ。とうとう自由に出てこれるように、なっちゃったわねぇ……」

『────ええ……:なってしまいました。』


 ………。

 きひひ……。


『────その:奇妙な感覚です。』

「全くだわ」

『────どう:思われますか。』

「ん? まるで御伽話」

『────:ふふふ。』


 わろとるで。


「アンタと出会った日さ……そんな風に笑う子になるとは思わなかった」

『────私もです。』



 きひひ。ちょっと相棒と、(ひた)ってしまったかな?

 マイスナが、私とクラウンを交互にキョロキョロと見る。

 あによ。



「アンティとクラウンさん、仲がいい……」

「あら、嫉妬した?」

「負けないもん」

『────始めます。この椅子の使用の許可を。』


 この子……本当に普通の女の子っぽくなったわね。

 ただ、今の身体は"あの時"より、

 かなりメカメカしい感じだわ。


『>>>少し、前のボディに近いだろう。関節も球体だ。流体伸縮の筋肉にはしてみたけど……すまないね』

『────問題ありません。

 ────今回も:ずいぶんと可愛らしく生成されたものです。』

『>>>ははは、身内贔屓(みうちびいき)かな?』


 ダンナさんへの配慮も慣れたものね。


 ──キュゥイインンン……。


 関節から小さな駆動音をさせながら、クラウンが座る。

 目の前には、光の板で構成された、謎のキーボード。


「……それで? ソレ(・・)には鍵がかかっているんでしょう? あなたは何故、ソイツをこじ開けられると思ったの……?」

『────:……。

 ────アンティ:申し訳ありません。

 ────カネトの仮面を:お借りしてもよいでしょうか。』

「……! もぉ、あんたねぇー! 説明くらいちゃんとしなさいよね……?」


 ──バシュ! カチカチ、キリキリ……。


 と言いつつも、仮面を顔から引き抜き、クラウンに渡す。

 なんだかんだ、この子のことを信用しているのだ。


『────有難うございます。

 ────あなたに話す前に:試さなければならない。』

「?」


 ……カチ、キィ……ン。



 彼女は金色(こんじき)の仮面を被り、

 そのデバイスと、向き合った。





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