表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/1216

断れないじょうず

 やばい、着替えたい。



 一度、汗をかきまくって、乾いている。

 今、そんなに服に違和感がない。


 この乙女の危機感を(・・・・・・・・・)わかってくれる(・・・・・・・)だろうか(・・・・)……


「この状況に慣れてしまったら、女として終わる気がする……」


 そんな繊細じゃないからな……私。

 多分、知らない間に、服が2着くらいしかなくても、生活できるようになってしまう……。

 それだけは、それだけは、避けねば……。


『────心配の意図が不明。』

「……"ま、いっか"って割り切って、合理的に生活しだすと、知らない間に男になってるかも、ってことよ……」

『────意味が不明。』


 ええい、乙女の矜持がわからぬ王冠め。

 一人暮らしなっても、"女の子らしさ"を捨てたくないのだよ……ぐすん。


「服屋! 服屋はどこ!」

『────内蔵ダンジョン情報に、該当:無し。』

「あたり前でしょ! ここドニオスよ!」


 こんな中規模の街がダンジョン化したら、この世の終わりの始まりよ!


「うーん、地図とか、ないわね──……」


 今、ドニオス街門から歩いて、少しした所だ。

 人通りには活気がある。

 ガヤガヤしているわ。

 案内棒に、板で、お店の矢印が打ち付けられているけど、多すぎて探せないわね……。


『────案。宿を確保後、着替えを実行。』

「あ──……うん、すぐに着替えたい、とは言ったけど、ちょっと散策(さんさく)したいってのはあるのよ……服屋なんて、この前は行けなかったし。宿に着いたら多分、私すぐ寝るわよ?」

『────……。』


 あによ。何で黙るのよ。

 いいじゃない。

 乙女のわがままに付き合いなさいよ。

 いつも頭に乗せてあげてるでしょう。

 結構、度胸いるのよ?

 頭に王冠あるのって。


 さっき門の所で、

「かわいい王冠だね!」

 って商人さんに言われたでしょ!

 超キョドったわよ……。







「……こりゃダメだ。どこかで場所をきこう……」


 ドニオスひろい。

 なかなかひろい。

 けっこうひろい。


 ただ、食堂の看板娘は、人と喋り慣れている。

 見知らぬ人に、道を聞くなんて、割と余裕だ。

 ふふん。


 うーん、でも、これだけ人がいると、逆に話しかけづらいわね……。みんなバラバラに歩いてるし。


 そうだ! この街のお店の人にきいてみよう。

 ずっと街にいるから地理には詳しいだろうし、その場所で呼び止めても、そんなに迷惑にならない。

 おお、我ながら名案だわ。


「お店お店……って、探し出すとないものね」


 道なりにあるいて、大きめの広場みたいな所にでてしまっている。

 ……ドニオスは、宿屋以外は、教会しか行ったことないからなぁ。

 お? あの建物……?


「おおきい……なんだアレ」


 入口が、何本かの、白く大きな石柱で支えられた、遺跡みたいな外観の建物が見えた。


「もぅいいや。まずアソコできいてみよう」









「ここ……劇場だ……」


 入ってびっくり。

 外から見ると、白い石の遺跡みたいだったのに、入ると、床は高そうな赤の絨毯。天井にはシャンデリアや、高級そうな生地の飾りが、垂れ下がっている。


「ひぁ〜〜……」


 食堂娘には、まるで縁がなかった場所だ。

 思わず、キョロキョロしてしまう。

 あ、あっちの扉が並んでいる所が、劇場に続くのかな。


 壁には、演目のでっかいポスターが、いっぱい貼られている。


「"パートリッジの森の怪"」

「"ドニオス純愛紀行"」

「"黄金の義賊! クルルカン"」


 あ、義賊サマは、ここでも人気なのですね……。

 結局、私の持ってる仮面が本物かどうか、わかんないからなぁ……。

 ポスターの仮面の方が、随分カッコいいし……。


『────告。ストレージ内の仮面より、憤慨の感情を察知。』

「きたわね、呪いの仮面め……憤慨って、どれくらい?」

『────ぷんすかしています。』

「それくらいなら無視よ。絶対に勝手に出てこられないようにしてね……」

『────受理。抵抗を開始。』


 まったく……アンタがホンモノのクルルカンの仮面なら、堂々としてりゃいいのよ……。


 うーん、どの人に服屋の場所をきこう。

 あ、あの女の人にしよう。

 女性のほうが、おしゃれ情報は多いはず!


「あの、すみません!」

「ん? あら、なあに?」


 あ、感じの良さそうな人だ。

 青い生地でできたドレスをきている。


「服屋さんの場所を、教わりたくて……」

「服屋? ……あぁ! あなたね?」

「へ?」


 あなたっ、て?


「助かるわ! ちょっと待っててちょうだい」


 スタスタ歩いていく、黒髪の女性。

 軽そうな青のドレスが、きれいだ。

 ……じゃなくて。


「……何か嫌な予感が」

「────お待たせ、はい! これよ!」

「へ? ────うわ!!」


 ドサッ。


 いきなり渡されたのは、とっても大きな、生地の塊。

 お、おもい……。


「な、何ですか、これ……」

「いや〜、これないってきいてたけど、助かったわ! はい、これ服飾屋の地図! 垂れ幕の貸出期間、ギリギリだったからねー! あそこの店主、変態だし、自分でいくのは嫌だったの〜」

「た、垂れ幕……変態?」


 白金色の、大きな、ホントに大きな生地。

 これ、劇場で使う、垂れ幕……?

 そりゃあデカいはずだわ。

 おっも……。

 てか前見えない……。


「あの……」

「じゃあ、可愛いお手伝いさん! 返却よろしくね!」


 スタスタスタ……。


 行ってしまわれた……。

 どうやら、今のお姉さん、劇場の関係者みたいだな……。


 あ……これ、雑用押し付けられたわね……。

 なぜ、私がこんな目に。

 いや、服屋さんの場所は聞けたけど……。



「てか、こんなデカい布の塊、持って歩けませんん!!」


 あと、変態な店主って、なんだよ。






『────仮面の鎮圧に成功しました。』







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ