悪い子たちの夜明け さーしーえー
前話に挿し絵を追加(◍´꒳`)b
GLタグによるリミッター解除。
今日も元気に問題作です(;^ω^)(笑)
「にょきっとにょきっとにょきっと!!
にょにょ、にょきっとなぁ!」
「ぅ、うん……?」
家族で晩ご飯を食べた後。
自室にて、うさ丸が騒ぎ出した。
どしたんさ。
アンタ、さっきまで、
バリバリ野菜のヘタ、食べてたでしょうが……。
「アンティ……なんか、鳴いてるよ?」
「くゆぅ〜〜?」
「クラウン? "にょきっとマスター"起動!」
『────レディ。
────翻訳デバイス:にょきっとマスター:Ver.3.3を起動します。』
──ヴぉん。
「にょきっとにょきっとにょきっと、にょきっとな!」
──ポン。
───────────────────
なぞの うさぎが いた!
───────────────────
「…………」
……アンタほど謎に包まれたウサギを、
私は他に知らんのだが……。
「よしよし」
「にょきっとおぉ〜〜……!」
にょきにょきうるさいので、
ナデナデして黙らせることにする。
夢でも見たんだろうか?
うーん。うさ丸も、寂しい時があるのかもしれない。
こんな丸いラビット、他に見たことないもんね。
「にょきっと……」
「はいはい。私たちがいるじゃないの」
「うさ丸、元気だして」
「くゆぅ〜〜♪」
どこかに他のまん丸ラビットがいたら、
友だちになれるかな?
「アンタに似たラビットがいたら、声かけてあげるから」
「……にょんや?」
「ホントよ! ねぇ、マイスナ?」
「うん。ひとりの寂しさ、よくわかる。約束」
「……にょっき!」
明日の朝、ドニオスに帰ろう。
今回は、かなりゆっくりできたなぁ。
また、あの姿で、がんばらなきゃあ。
──と、思ったのだけれども。
「にょむにょむ……Zzz」
「かん、かーん……Zzz」
「にょむにょむ……Zzz」
「くるるるぅぅ……Zzz」
「……なんか、目、冴えちゃったね」
「そう、だね……」
……いや、私たちが悪いのよ?
ご飯の前に、けっこう寝ちゃったかんね。
今、全く眠くありまーせんっ。
「あはは……こうやって朝寝て、夜起きる悪い子になっていくんだわ」
「アンティ、悪い子じゃないよ!」
「し〜〜っ!」
「あ、ごめんなさぃ……」
父さんと母さんは、もう寝てるわよね……?
まぁ、私の部屋の真下は厨房だから、
少しくらい、うるさくしても、
響かないとは思うけど……。
「……アンティの、パパとママ、優しいね」
「! そ、そーぉ? ふふ……」
「えへへ……。その……さ」
「ん?」
「……私たちのこと、言った方が、いい?」
「? それって……新しいチカラの事?」
「! う、うん……! そ、それも、そぅ……」
「うーん……かと言ってねぇー。このチカラの事、どう説明したらいいのやら……」
──ベッドに、ゴロン。
" 電鎖歯車法 "の能力って、簡単に言うと、
" 機械 "を生み出せるチカラみたい。
歯車の力は、動力源を発生させ、
鎖の力は、それ以外を連鎖する。
あの二丁拳銃も、この力の応用で造られたし、
ガルンのエンジンの精度が上がったのも、コレだ。
クラウンや先輩たちが言うには、
私の"歯車"と彼女の"鎖"は、
恐ろしいほど相性が良いらしい。
私たちふたりの体内にある骨格フレームも、
かなり精度が上がってきている。
もう、骨格と言うより、キカイの人形だ。
さっき、お風呂の時に一度、
マイスナと一緒に身体の外に出してみたんだけど──、
──まさに、金と、銀のロボットですよ……。
あはは……こんなのが常に体内にあるとは。
ちゃんと女の子型してるわ。
これが、外側のヨロイと連結することで、
外からも、内からも、私たちの身体を守ってる。
そこらじゅうにあるアタッチメントは、
即座にデバイスと接続し、
スキルで生み出した武装を固定、運用できる。
私の体内の義体を、"ゴールドフレーム"。
彼女の方の義体を、"シルバーフレーム"、
と、呼称する事に決定。
ニャーナが付けた。
まぁ、シンプルでわかりやすい。
……これ、身体から出してヨロイ着せたら、
"おとり"にできんじゃね? と私が提案。
『────アンティ及び:マイスナ自身の防御力が下がります。
────非推奨行動判定です。』
『>>>ヨロイのスキルは体から離れると使えないからなぁ。それに服が引っかかるから、今みたいに全裸じゃないと体から引っ張りだせないねー』
……"デコイ"案は保留。
マイスナとお風呂を楽しんだ。
巨大船舶型テラトリウム" 箱庭フォートレス "の駆動系にも、
"スプロケットとローラーチェーン"という、
新しい歯車と鎖を組み合わせた動力伝達系が、
勝手に増殖してるんだって。
先輩が『>>>まるで自転車の変速ギアだ……』とか、
先生が〘#……生きている機械のようだな……〙とか言ってた。
こっ、こわいこわい。
前のケンカ事故の後、自動修復の過程で、
明らかに戦艦っぽくなってるらしいのよ……。
新しい力でできる事は、無尽蔵に増えていく。
もし電力での稼動もできるなら、
無限の可能性があるとの事だ。
「"機械"ねぇ……。私は先輩の知識をインストールしちゃったから、その概念が分かるけど……マイスナは?」
「私もアンティと繋がっているから、何となくわかるよ」
「そっかぁ……。こーゆーチカラ、父さんと母さんらに説明しても、よくわかんないかもしれないなぁ……。"じかん箱"の凄いヤツ! ……って言ったら、わかってくれるかな??」
「うゅ……? あ、あのね! 先生が、"かでんりゅうしほう"が作れるかも、って言ってたよ!」
「……なんかソレ、イヤな予感しかしないんだけど……」
しっかし、眠くならんなー。
うーむ、これは夜更かしコースかもしんない。
マイスナが、立った。
窓の外を、見てる。
「……ここで」
「……?」
「ここで、アンティは大きくなったんだね」
「……」
ベッドから起き上がり、
彼女のそばに立つ。
真っ暗な、何も見えない、外。
彼女には、何が見えてるのだろうか。
私は……謝った。
「……ごめんね」
「え?」
「あなたが……あの雪の中で凍えてる時……私はここで、ぬくぬくと暮らしてた」
「── 」
「むにっ」
マイスナが、私のほっぺを両側から優しくつねる。
「ふや」
「……ふふ、ほんと、ふざけてるよ」
「っ!?」
「あなたが私に与えた熱量を、全部返してあげましょうか?」
「ん! む……」
それはまわりくどい、お礼の言葉。
気にしないでという、メッセージ。
頬から手が離れる。
……。
「……あなたが」
「?」
「あなたがこの街を救った人だって、皆に教えたい……」
「……! フォレストウルフくらいで、大袈裟だよ」
「ううん。あの時……ホントに怖かった。見つかったら、食べられちゃうかもしれないって……ホントに思ってた。みんな震え上がっていたのよ」
「アンティが……。想像、つかない」
「一匹だけでも怖いのに、たくさん街に入ってきて……でも、あなたがやっつけてくれた! ふふ、カッコ良かったなぁ……!」
「……カッコいいって、言った」
「そうよ。そこだけは、譲らないわ」
「アンティ……私は、そんな人間じゃないよ」
「あら……意見が、わかれるわね?」
「……"絵本の敵同士"だからね?」
「ぬ……! もぅ!」
「えへへ……」
マイスナは、たまにこんな冗談を言ってくる。
私も、たまに言ってるかも。
彼女は、いつも素直だけど、
こういう時、とても、笑顔が深い。
何だか……底が見えない笑顔だ。
少し、ゾクっとする。
ほんの少しだけ……"狂気"を孕んでいるような──。
──それに時々、とんでもないこと、言う。
「……──ねぇ、飛び降りよっか」
「は?」
「この窓から、外へ」
「……は??」
──すっとん狂な、声が出る。
は?
何言ってんの?
は??
真っ暗じゃん。
黒しかない世界じゃん。
こんな小さな街に、
光の魔石なんて、灯ってないよ?
「ほら、どうせ、眠れないでしょ? 行こう?」
「マイスナ……?」
あっ。本当に、窓を開けやがった。
おい待てコラ。
てめぇ、なんのつもりで。
──ぐいっ!
「えへへ──……! 」
「──!? ちょ、おまっ──!? うぉわ──……!? 」
──いきなり。
服を掴まれ、外の世界へ、誘われる。
マイスナは重心を完全に理解していて、
私たちの身体は、クルリと、
窓の外へ投げ出される──。
──私は、信じられない目で、彼女を見る。
「あぶ、な……!」
「──いと、思う?」
──ふざ。
……け?
「できるでしょ?」
「──…… 」
──屋根を、トン、と蹴る。
──瓦の、強度の強そうな場所。
──手をつなぐ。
──身体を、捻る。
──回転する、金と銀の髪。
──銀の少女が、振りかぶる。
──家の外壁の突起に、足を掛ける。
──同時に、蹴る。
──落下の速さは、回転へと変わる。
──くるくると、ふたりの身体が回る。
──それは、暗闇の中の、ダンス。
──回転の軸が、横から、縦へ移り──。
──トン……と。
私たちは、着地する。
「……、……」
「なんで、危ないと思うの? 私、わかるよ。私もあなたも、これくらいじゃあ、もう止められない」
「ん………」
二階の窓から飛び降りた。
全く、怪我をしていない。
こんな小さな身体だけで、
回転の力や力加減だけで、
ここに、降り立っている。
歯車も鎖も使っていない。
私は、変な顔をしている。
もう……こんな事が。
息をするくらい、自然に、できるんだわ──。
「……」
「アンティは、自分の凄さに疎いんだね」
「……マイスナ……?」
「あなたは私より、ずっと凄い人なのに……」
「そ、そんな、こと……」
「……私、あなたに"憧れの人"って言われるの、少しだけど苦手だな……」
「──ッ!」
「そんなんじゃない……私は、そんなのじゃない。あなたが……私の憧れなの……!」
「ま、マイス……」
「──ねぇ! 追いかけっこ、しよう!!」
「──は!!?」
「ふふ、私を捕まえてね? クルルカンさん……!」
バッ! と、マイスナが、暗闇に融ける。
私は迂闊にも、2ビョウほど、停止する。
「……」
お……追い、かけなきゃ──ッ!!!
「あ、あ……あ、あの、バカたれぇぇぇっ──!!」
こんな深夜に、家を抜け出す!
初めてかもしれない!
「ふふふ、うふふふ──……!」
まるで、楽しく狂うような。
あの子の声が、闇から聞こえる。
『────……少々:"おイタ"が過ぎるようですね。』
「く、クラウン!!」
『>>>はぁ……なんなんだ、この状況っ! こっちはスキルの切り離しの研究で、大変だってのにぃ……!』
「先輩っ!」
「えへへ、はふふふ、ふふふ……!」
〘------のーん? マイっち;何やってるのん☆〙
「ふふ! 鬼ごっこだよ! ローザも手伝って!」
〘------え──☆ 面倒のんな──☆〙
「私が勝ったら、アンティに美味しいお酒を買ってくれるよう、頼んであげる!!」
〘------任せとけのん! 逃避行は得意だのんっっ☆☆☆〙
〘#……な、何事だっ!? おいっ、マイスナ!? 待て! 鎧の使用は認めぬぞっ!?〙
「……先生のケチ。じゃあ──……っ!」
──ギィン……!!
『>>>あっ!! あの音は!!』
『────アンティ。
────マイスナが:"狂銀の仮面"を装着化しました。』
「はっ……はっ……! バカぁぁあ! 正体、バレたら、どうすんの!」
『>>>先生が、"銀の花嫁改[百光]"の使用は抑えてくれてるみたいだ! でも、あの仮面を装着したってことは……! "氷帝"と"鎖錬"は使えるって事だぞっ!?』
『────ローザも協力しています。
────丸め込まれたようです。』
「あんのォォ、酒汁スライムぅ〜〜っ!!」
先輩の仮面と同じで、
先生の仮面にも、ふたつのスキルがあるの。
──"氷帝"。
水の魔素を、魔力に依存せずに、氷結させる力。
──"鎖錬"。
氷と金属粒子を組み直し、鎖を作る力。
えらいこっちゃな事に、
"時限結晶"内には、大量の水と、金属粒子がある。
私は歯車の輪っかから、それを取り出せ、
マイスナは鎖の輪っかから、それを自由に取り出せる。
マイスナの"電離法"は、
いくらでも無機質を分解して、材料にできる。
あの羽鯨のヨロイを着なきゃあ"錬成"はできないから、
複雑なモノは造れないはずだけど……!
先生の仮面だけでも、
"氷"と"鎖"は、ほぼ、やりたい放題になる……!!
こんな地元で、ヤバいことをされたら──……!!
「はっ……はっ……! と、とっ捕まえたら、ガチで、お仕置きだわっ……!!」
『────"クルルカンの仮面":着用を提案。』
『>>>後輩ちゃん! 今のきみ、だいたいの感覚だけで、あの子を追い駆けてるだろう!! これだけ暗いんだ! ぼくのスキルもちょっと使おう!』
「よっ、ヨロイは絶対、ダメだかんねっ──!?」
『────レディ。心得ています。』
『>>>あんな目立つ鎧は、この街ではダメだ! それに──!』
『────あんな悪ガキ一人の捕獲に:鎧など不要判定です。』
「いっ、言うようになったじゃない、クラウン!! 先輩の仮面、出して!!」
『────レディ。』
────きぃんんん!
──ぱしゅ!! がきぃんん──!!
──黄金の重さが顔に伝わる!
前までは両耳に歯車で固定してた仮面だけど、
今は黄金義体を介して、
頭部に直接連結する!
──少し遠くの闇から、銀色の笑い声がした!
「あはは……! やっとつけたの? 遅いねっ」
「……あ、あいつぅ……!! どうやらホントにシバかれたいらしいわねぇッッ!!」
『────"反射速度":弱起動します。』
『>>>視覚野を暗視系に切り替える。マップ出すよ!』
………だ、ぁ、ん……!
────スローモーション。
時の流れが、重さを持つ。
夜の街が、光のラインで、描かれる。
いた。
二つ角の、後ろ姿。
このツケは、でかいわよ────?
「──っと!」
ヨロイを着ていないので、
"力量加圧"による急加速は使えない。
でも、ゆっくりの時の流れは、
前のバカに追いつくための、"最善の一歩"を作り出す。
後、3セルチ右に、踏み込んだ方が、
走る勢いが、落ちないはずだ。
走れ。
走れ。
走れ。
最善の一歩を、繰り返せ。
銀の背中が、近くなる。
ナメんなよ、テメェ。
学校でなぁ、毎日かけっこはしまくってたのよ!
私の記憶見て、知ってっだろ!
背中に、手を伸ばす。
「──とっ!」
「──ちっ!」
シュルリと、交わされる。
指の間を通る銀の髪を掴むのを、躊躇した。
「えへへっ……やさしい!」
「やろっ……!?」
『────告。
────マイスナも:"反射速度"を使用しています。』
『>>>っ!! スキルが"完全融合"してるとはいえ……ここまで上手く! ぼくのスキルを使えるのかっ──!?』
「あ、あの子っ……、なんでこんなにスタミナ持つのっ……!」
『────呼吸の乱れが:あまりないようです。』
『>>>純粋に、走り方が上手いんだっ! 疲れないように最低限の力で走ってやがる!!』
「くっ、そっ……! "天才型"は、コレだからぁ……!」
「ふふふ、アンティ! もうへばったの!」
あ、あいつぅぅ……。
もうかなり、建物のない所まで走ってきている。
騒音がしても大丈夫かな……。
そろそろ、足に車輪つけるか……?
「おーにさーん、こーちら♪」
「へらずぐち!」
ああ、意味わかんね……。
私ら、なんでこんな真夜中に、謎の追いかけっこしてんだ?
くそ……こんなの母さんにバレたら、ゲンコツもんだわ……っ!
「あはは! ねぇ、こわい? 優しいママに怒られるの、アンティ、こわい!?」
「──イラァ 」
はっ。
おーし、わかった。
歯車で輪投げ、しちゃる。
マイスナ、てめぇーは景品だ。
「──ふっ!」
──きゅぅうういいんんん!!!
「えいっ!」
──ギィィィイイインンン!!!
鎖で……! 弾きやがった!!
「おこったわ」
「おそいなぁ」
──きぃん!!
──ギギィィン……!!
──きぃんん!!
──ギィィインン……ッ!!
歯車を、飛ばしまくる。
鎖が、弾きまくる。
連続する、金属の音。
「おらぁ!」
「えへへ!」
腹立つ笑い方すんなぁー。
あとで覚えとけよ?
こちとら、この街では良い子ちゃんで通ってんだぞ?
それが、こんな……。
──ははは、コイツホント。やってくれるわぁ……。
「えへへ──えいっ!」
──ギィィィイイイユユンンン!!
銀氷の鎖が、伸びる。
あっ! こいつ、私を拘束する気か。
おまえふざけんなよ。
シバくぞ。
──咄嗟に拳を歯車で包み、鎖を殴る。
────ギきギきギきぃいいィンンン!!!
「ちょっと私のこと……なめすぎじゃない?」
「──んッッ……!?」
マイスナの造った鎖が──、
"氷と銀の歯車"へと、変わる──!!
『────対象管轄下のスキルの使用を確認。』
『>>>"氷帝"……!! これは……"経験値"を変換した歯車じゃない!! "マイスナのスキル"をきみが使って、"物質"から歯車を造ったんだ……!!』
つまり、アンタが仮面かぶったら、
私も、そのスキルを……使えんのよ──!!
──きぃぃいいんんん……!
「わ、ぁ……!?」
「おぅらぁ──!」
自分の鎖を、いきなり歯車にされたマイスナ。
少しだけ驚いて、重心が浮く。
下から抉るように踏み込み、掴みかかる!
──ギきィィィイイインンン!!
──氷の爪に、防がれる。
──私も、歯車で手をガードしてる。
「えへへっ、凄いね!」
「何なのアンタ!」
──ギィン!
きぃん──!
──ギャヤアン!!
ききぃん──!!
……ホント、何してんだろな。
あの山で、アンタと血みどろになったの、
けっこうトラウマだって、知ってるよね?
なのに、なぜにそんな、ニコニコするかな。
アンタも、思い出してんでしょ?
私とこうやってて、楽しい?
や、そうかもしんないけどさ。
わかんだわ。
なんか、さびしがってるよね、今。
何なの?
こんな回りくどいことしなくて、
直接、口で言えって。
何百年でも、聞いてやるじゃん。
ほら、もう、わらうなって──。
「──っ、……」
「──ん……」
────ギきィ…………ン。
私たちの心は、もう、繋がっている。
私に、自分が寂しがってるとバレたマイスナは、
それを察して、笑顔をやめた。
「……、──んっ!」
「──急に、キレがなくなったわね?」
鎖と爪の隙間に滑り込み────……、
体当たり。
──ドンッ!
「あっ──」
「くっ──」
柔らかいトコロ同士がぶつかるようにして、
お互いのケガを無くす。
痛いもんは、痛いけど。
ちなみに、許して。
場所が悪かった。
「「 っ 」」
──ばっちゃ──ん…………。
「「 ………… 」」
マヌケな水音をたてて、ふたりで落ちた。
暗いけど……ここ、あの浅くて綺麗な水路んトコだわ。
……散々ねぇ。
ぱんつまで、べっちょべちょだわ。
わたしがうえ。
あなたがした。
雪山の時の、逆だった。
「…………くすん」
「……やって、くれたわねぇ……」
つっっっめてぇ。
寒い時期じゃなくてよかったって。
「……アンタの言い訳が楽しみで、眠れない」
「……怒ればいい」
「なんでこんな事、したのよぅ……」
水の流れが、私たちを撫でていく。
はよ言え。
帰ってお風呂、入り直したいのよ。
「……なければ」
「あ?」
「あの日、会わなければ、よかったって……」
「 」
「そっ、そしたらっ、あなたの人生が狂わずに── 」
「
二 度 と 言 う な ! ! !
」
怒った。
「わ、わ、わた……!」
「あ……ん、てぃ……?」
「わたしは、かえってぇ……おふろ、はいったらぁ……!」
「う、ん……」
「すっごい泣くッッ!! ものすっごい泣くッッ!!」
「は、い……」
「しぬ気でッッ、慰めろ! 全てをかけて、なぐさめろッッ!!」
「……っ!」
「わ、わ、わたしがいいって言うまでぇえ、ず、ぅっと、抱きしめてろぉぉ!」
「 ……あ 」
「 わ か っ た か ぁ !! 」
「あはは……」
寝る時は髪の毛が繋がってるので、
当然、マイスナも泣きながら寝た。
ざまぁみろ。
私の心を、思い知れ。
真っ直ぐ走って、ぶつかって。
私とグチャ混ぜになったのなら、
そのままもっと、混ざってしまえ。
……べつに、いいって言ってんじゃんよ。
ばか……。
──朝。
「おっ……なんだなんだ?」
「あらぁ〜〜♪ ケンカしたのぉ〜〜??」
「………………べつに」
「な…………なんでも、ありません……」
「にょきっと」
「くゆゆー」
「ふふ……しょうのない子ね〜〜ぇ♪ せっかく友達ができたと思ったら〜〜」
「ま、ケンカするほど、なんとやらだぜ! な!? 最愛の娘たちよ!!」
……。
友達じゃ……ないモン。
そこ、踏み抜いてるもん。
「これ、食べなさいな♪」
「……ありがと」
いい匂いがする小包を渡される。
「マイスナちゃん?」
「は、はいっ」
「……アンティのこと、よろしくね?」
「……はい」
ちょっと、無愛想に出発した。
──ガルルルロロォォオオオオオンンン──!!!
帰りは私が運転で、マイスナが後ろだった。
おへその辺りに、白銀の抱擁。
この体勢、割と顔が近い。
ちょっち、気まずい。
──ガルルルロロォォオオオオオンンン!!!
「…………」
「…………」
「……ねぇ」
「……ん?」
「お……怒ってる? 昨日のこと」
「もっち。ちょ────ぉ、怒ってる。もぉ、すっっっげぇ怒ってるから」
「ご、ごめんなさぃ……」
「いーや、ぜってー許さねぇ。一生許さねぇ」
「っ! あはは、そっかぁ……」
「うん……」
──ガルルルロロォォオオオオオンンン!!!
「……あのね?」
「……ぅん?」
「ちょっと私も、怒ってる」
「……なんで?」
「……だって。こんな気持ちにさせて、ずるいよ……」
「ぅん……?」
「好きな人に……幸せに、なって欲しいもん」
「…………」
「でも、そんな事、言うんだよね……アンティは」
「わ、私は謝んないわよ!」
「えへへ、いいもーん……。クルルカンに謝ってほしくないもーん」
「むっ」
「……だからね? 私も"悪役"っぽく……"狂銀"らしくする事にした」
「……へ?」
「誰に何と言われても……」
「?」
「私が一番したい事を……ずっと、し続けるんだぁ」
「っ? ……なに、すんの?」
「一生、あなたが──、
おばあちゃんになるまで、そばにいるっ」
「 ……っ!」
「それでね? 死ぬ直前に……隣で、あなたに言ってあげるの」
「……。……なん、て?」
「" ほぉら、最低な人生だったでしょう? 私のせいで、ぜんぶ台無しになったでしょう? " って……」
「っ! …… 」
「えへへっ……♪ あなたが私の大好きな人だから、悪いんだぁ……? だから悪役らしく、さ? あなたの人生をぜんぶ……台無しにしてあげる!」
「……」
「ね……? それで……いーぃ?」
「……きひっ」
「……アンティ?」
「きひひっ……! アンタごときに、できんの? それ!」
「っ!」
「私の人生を、台無しにする……? 確かに、私も言ったわよ! でもねぇ……」
「……?」
「──もしかしたら。
世界でイチバン幸せに、ふたりで一緒に死ぬかも、しんないじゃない?」
「っ──! ……」
「わたし、アンタにゃムリだと思うなぁ──!!」
「な……なっ!! そ、そんな事ないもんっ!!」
「いやぁ──ムリよムリムリ! ほら、昔っから悪役って正義の英雄に勝てないモンじゃん?」
「──む、むかっ!! ぎ、義賊の絵本では、最後のページ、決着つかないもんっ!!」
「いやいやいやいや……もうセオリーじゃん。むりむりむり。台無し上等。超幸せ」
「あ、アンティ甘い! とろけるように甘い! 死ぬ前に、"あ〜〜やっぱマイスナと一緒なんてヤだなぁ〜〜!"とか思うんだよっ!?」
「──なに今の!? 私のマネッッ!?」
「う!? うん」
「ヘタっぴ!!」
「むかぁ──っ!」
「あと、そんな事ぜってぇ思わないもーん♪」
「ううーっ!」
「はーい、狂銀、敗れたりーっ」
「ま、まだ負けてないもんっ! これからだもんっ!」
「……はーぁ、そうねぇ。これからよ」
「ぅん……?」
「まだ、15歳ですよ。私たち……」
「……うん」
「じゃ……とりあえず、さ?」
「……?」
「おばあちゃんになるまで、一緒にいよっか」
「……っ!」
「一生かけて、ケリつけましょう」
「……はい」
──ガルルルロロォォオオオオオンンン!!!
「アンティ……」
「なんじゃね」
「あの……"お礼"のこと、覚えてる?」
「??」
「食堂手伝ったから……なんでも、お礼するって……」
「! あっ……」
「あーっ……忘れてたな……」
「わっ、忘れてたけどぉ……な、なによ。じゃあ何してほしいの。あっ、昨日のこと許してほしいってのはナシだかんねっ!?」
「っ、あのね……?」
「……?」
「 私、アンティと結婚式したい、な…… 」
「 」
──ガルルルロロッロロォォオオオオオンンン!!!???
「……ね。今のはクルルカンの負けじゃない?」
「……ぅ、うっせ……」
狂銀オクセンフェルトとは、
長い戦いになりそうだ。
( ˘ω˘ ) スヤァ…










