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⚙⚙⚙ ドニオスの街 ⚙⚙⚙


 酔ったで。



 ううっ、きもちわるっ。



「うぇえ……」

「お嬢ちゃん、前向いて座んな。余計ひどくなるぞ」

「あ……ありがとうございます……」


 御者さん優しい。


 揺られる馬車の中で、調子に乗って30フヌくらい本を読んでいた。


 "バールモンキーでもわかる宝石・鉱石辞典"


 ログのお父さんから貰ったやつだ。

 うぇっぷ。


 何を調べてたって?

 そりゃあもちろん、"時限石"についてよ!




 私のお父さんが、若い頃に偶然、攻略したダンジョン。

 その時に手に入れた、小さな宝箱から出た、2つのアイテム。


 その内の1つが、今、私の頭の上で回っている。

 "時限石"。

 王冠に輝く、赤い宝石だ。


 そう……"赤い"……。



 私が、リバース直前まで本を読み込んでしまったのには、ちゃんと理由がある。


 時限石の項目は、アッサリと見つかった。

 以下、出だし文。



 ⚫時限石

 成分に、時空魔法が含まれる、青い宝石。

 アイテムバッグを始め、様々な分野に利用される。



 …………。

 ……………………"青い"宝石。


「────しょっぱなから、なんか(ちが)あぁ────う!!!!!」

「「「ビクッ!」」」


 馬車の中で思わず絶叫よ。

 他のお客さんに、超、ビビられたわ。

 その後にも、えらい事が書かれていた。



 ⚫時限石を使ったアイテムに入れられない物

 1.生き物

 2.火

 3.魔法


 …………。

 ………………。

 ……………………"火"。


「……かじはいってるやまかじはいってるやまかじはいってるやまかじはいってる……」

「お、おい、どした? お嬢ちゃん……」


 おい、ログの父ちゃんよ。

 ホントに辞典(コレ)、使えんの?

 私のコト、かついでないでしょうね。

 山火事が、出たり入ったりしてんのよ……。



 ペラ、

 ペラ、


 ない……。


 ペラペラペラペラ、

 ペラペラペラペラ、


 どこにも、ない。


 ベラララララララララララ……


「山火事のことなんか、のって、なぁぁぁ───あい!!!!!」

「よし……いっかい落ち着くんだ、な? お嬢ちゃん……」


 御者さん、マジ紳士。




 辞典の、時限石の項目の近辺を読んでみたが、赤い宝石の情報は限られていた。

 宝石種が約8種類、あと"賢者の石"がのっていたけど、こりゃ伝説だ。存在しないだろう。


 色々調べていたら、気づくと、リバーシブルになりかけたワケだ。

 おもに胃が。

 おぅっぷ。


「何で、時限石の項目と一致しないのよ……クラウン、ホントにこれ時限石なの?」

『────解。検索野に"時限"項目は該当。

 ────極めて近い存在と認定。』

「うーん、そりゃ、チカラだけ見りゃね……。でも、色とか、火とか、ぜんぜん違うじゃん……」


 前に、学校で見たサンプルのアイテムバッグは、宝石が見えないように加工されてたからなぁ……

 時限石が、まさか青い宝石だったとは……。


 きな臭くなってまいりました……。


 ログ父からもらった宝石辞典には、山火事の事も、ベッドの事も書いていない。

 使えぬ。

 我が気分を、害しただけではないか……。

 うぅ! ……おぅっぷ。


『────今のターンは、後、21セルチでした。』

「……? あんの話よ……」

『────危なかった、という話です。』

「…………」


 あぁ……口までの距離(・・・・・・)か……。


「クラウン、やばくなったら歯車で押し戻しなさいよ」

『────賛同しかねます。』

「私だって、本意ではないわよ……」


 ゆずれないモンがあんのよ……。


「お嬢ちゃん、一度、吐いちまったほうが楽かもよ?」

「いえ……大丈夫ぇす。意地があるので」

「?」


 食堂屋の娘が、食べ物を粗末にできん。

 うう〜。


 結局、宝石辞典を見てわかった事は、

 馬車の御者さんが、ハートフルだって事だけだった。







「見えてきましたぞ────!」


 御者さんの声で、目を覚ます。

 あや、寝ちゃってたみたいだ。


 馬車の客荷台の前から、街の様子が窺える。


 ────"ドニオス"。


 カーディフの街からは、ホントなら馬車で4ジカくらいなのに、随分かかったもんだわ。


 15歳の誕生日に、一度、(おとず)れた場所。

 "歯車法"と、出会った場所。

 慈悲のない、神官さんと出会った場所……。


「……そいや、お茶を飲む約束してたっけ……」


 まぁ、その場のリップサービス感はあった……

 神官さんは放置でもいいや……。


 神官さんを、スルーする方針を固めたころには、

 ドニオスの街門の側まできていた。


 やっぱ、入り口が、大きいな。

 王都は行ったことないから、わかんないけど。

 でも、この門はかなりの大きさなんじゃないだろうか。

 ……それとも、カーディフの街と比べたら大きいだけで、これは小さいほうなのか……?


『────分析完了(アナライジング)

 ────ドニオス街門、縦:7メル、横:7メル20セルチ。』

「……その20セルチ、気になるわね……」


 それ、設計ミスじゃないの……

 絶対、職人さんの都合あわせだよ……。


「アンタといると、色んな事がわかっちゃうわね……」

『────恐縮です。』


 王冠が(ちぢ)んでどうすんのよ。

 皮肉よ、皮肉。




 ドニオス街門に大人の事情を(かい)間見得(まみえ)つつ、私は再び、この街に入った。






 ……服、着替えたい。







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