やぁん、うるせぇ。
連投ですよー!°*.\(*´∀`*)/.*゜
いい?
よく聞いてね。
私、今、憤慨している。
決して先輩に『>>>これ詐欺られたんじゃないの?』
と言われた事が原因じゃないのよ。
決して先輩仮面を網焼き皿にしない事を、
誓わなかった事とは関係ないのよ?
確かに妙な出来事だったわ。
森で謎の少女に出会い、
なんか良心を刺激されて精霊花を巻き上げられた。
いや、そんな事はもはやどうでもいーのよ。
何故、トマトを投げられたのか。
これはもう、哲学なんじゃない?
え? 深みにハマってはいけないって?
じゃあ損得の話にしますよーだ。
精霊花を女の子に渡したら返礼がトマトだった。
これは釣り合うのかな?
エルフ的にはアウトなんじゃないの?
「えっ? 貴重な花が緑黄色野菜にですか?」
とかマトモに返されたら私どうすんの。
なんにせよこれからトマトを見る度に、
強制的に今日の出来事を思い出してしまう私を、
本当にどうしてくれようか。
このモヤモヤ感を、
果たしてトマトの酸味は吹き飛ばしてくれるのかな。
てかこれ食えんの?
痩せてるようにみえるけど……。
あ、ケツ見たらちゃんと白いホシあるわ。
ケツに白いホシあるトマトは美味いのよね。
「マイスナ、トマト好き?」
「アンティの方が好きだよ?」
やぁん、うるせぇ。
私、トマトと張り合いたいわけじゃないのよ?
あ? 照れてねぇわ……。
ちょ……ちょ、やめれ。
さわんな。
微笑むな。
天使か……。
「アンティトマト」
「怒るわよ」
「アンティトマト」
「あん?」
私もマイスナも、今はヨロイは脱いで、
ドニオスに巣食う変態チョイスの私服に着替えている。
もうすぐ本格的に暑い季節だ。
今は森を抜けて街道。
え? 青い髪の女の子?
んなもん知らん。
走れ走れ。
風が気持ちいいけど、
油断するとヤバいぱんてぃの色がバレるのでガチで要注意。
コレを地元の人に見られたら三日間は布団から出ない。
てかスカートタイプで爆走している私たちは割とツワモノである。
──ぎゅううういいいんんん──!!!
私が足に展開しているのは、
もちろん"距離滑り"……!
略してスケスケですよ。
初めっから、とっっってもお世話になっている、
ローラーブレード型のデバイス。
いちばん初めに作った移動用デバイスは、これだったなぁー。
リリィィィィィ──────!!!
マイスナのは……?
なんてったらいいだろな……。
……す、"スケート靴"、みたいな??
〘#……"滑走刃"……ランディング=ブレードを構成してみた。踵部分から展開した刃が、地面氷結と磁場反発を利用して滑走する。平面に特化し過ぎているが、先人の技術があるからな。不安定な土地では飛べばよい〙
と、先生が説明してくれる。
う、うーむむむ……。
カッコイイし、なんだか……優雅だわぁ!
僅かに凍らせた地面を、"リリィィ──!"って滑ってる!
マイスナが通った細い氷の跡に、
ちょっとだけ、紫の雷がぴりぴりと、迸る!
とってもオシャレで、彼女にピッタリだなぁ……。
「……」
「……?」
「あ、や、きれいだなぁーって」
「えっ! えへへぇ……」
「マイスナトマト」
「むぅ──!」
ぎゅぅぅういいいいんんん──!!!
リィィィ──────────!!!
……いーなぁ。
あれ、男勝りな私じゃ似合わないだろーなぁ……。
『────移動デバイス:"滑走刃"を複製しますか。』
「えっ!? い、いや! いいっ! 別にこれで、大丈夫だもーん!」
『>>>うん? なーに意地張ってんの。スケートしたいなら、そぅ言えばいいじゃん。ねぇ?』
「クラウン」
『────ふんっ。』
『>>>っっぶ! な、肘……やめ……うぇっぷ……』
七児のパパになったくせに、
まったく、デリカシーのない呪いの仮面に、
我がスキル(嫁)がエルボーを御見舞したわ。
やったぜ。
「いまさらだけど自分のスキルが子持ちのお母さんって、イミわかんないわよね……」
『────こ:こほん。
────まもなく"カーディフの街"を視認可能判定です。』
「にょきっとなー!」
「そぅねーもうすぐね! って、アンタわかんの?」
「にょにょにょん」
にょにょにょん、って何やねん。
アンタのお手手やっぱすごいわ。
まるで肩から落ちる気配がない。
「くゆくゆぅ〜〜♪」
「カンクル、落ちちゃダメだよ?」
「くるっ!」
カンクルは、ずっとマイスナの首にクルッてなってる。
まるで貴族の女の人がつけてるマフラーみたい!
これからの季節だと、ちょっと暑いけどねっ!
「暑かったら氷だすよ」
「そゆことじゃないのよ。あ、でも夜はお願いするかも」
「にょやっ!」
「くゆー! むしゃむしゃ……」
「また自分で花くっとる……」
どんな時もセルフ飯できていいわねぇ……。
実は精霊花、お茶にして飲んだ事あんのよね。
苦い。
マイスナ吐いたし。
においでうさ丸、逃げたし。
クラウンがうがい薬に良いのでは、と言ってたわ。
そー言えば、受付カウンタにあった鉢植えを見たヒゲイドさんが、「これ、間引きしたら木になるんじゃないか?」って言ってた。
カンクルが定期的に食ってるので、事実上、間引きしているのと同じなのよねぇ……。
栄養の集中した精霊花は、随分と枝っぽくなっているみたい。
盆栽みたいになったら、バスリーさんにあげよっかな?
「ねぇ……アンティ」
「! なぁに?」
「そ、その……今日は、アンティのお家に泊まる?」
「え? そ、そのつもりだけど……」
「え、と……一緒に、寝ていい……」
「えっ!? あー……」
すっかり忘れてたけど、マイスナ泊めていいか、
父さんと母さんに交渉しなきゃね。
うわぁ……そんな事、初めてするわねぇ……。
と、「友だち泊めていい?」ってか……。
……。
「……」
「……」
……この子、"友だち"、か……?
……────。
「マイスナぁぁぁ──!! 競走だァァァ!!!」
「まっ!? 待ってぇぇ────!」
──きゅううういいいんん──!!!
──リリィィィ───────!!!
〘#……人に見られる前には、解除するのだぞ?〙
〘------飲んだら;のんな──☆ うぇろろろろろ──☆〙
ついたで。
「……──おっっ!?」
「あ、門番のおっちゃんだー!」
「こ、こんにちは!」
「にょきっと」
「くるる〜〜♪」
「……!? う、ウルフの、子ども……?」
──当然、職質の流れとなった。
▼ MISSION ▼
門番のおっちゃんを、言いくるめろ!!
────START!!▼
「──ちちちっちっちっちちちがうのよ、おっちゃんね!? ここここここれはウルフじゃななななななくくてですねぇええあえ──!?」
「かんかぁぁあ──ん!」
「あ、アンちゃんッッ……!? こ、コイツはいったい……? 初めて見る種だな……いや、しかし……ッッ!?」
ややや、やってもーたでぇぇええええ──!!!
ウルフに襲撃された過去のある街に、
ウルフを連れ込むという暴挙!
ここにおわすは、門番のおっちゃん!!
この街の守り神だわっ!!
こここここれはアカ──ぁあン!!!
「──ああああああのねっ!? この子はねっ!? ウルフじゃないっていうか色々あるって言うかお肉食べないしくゆくゆ鳴いて可愛いししっぽフサフサだしお花は綺麗だし入浴剤要らずだしつまりとっても私たちに有益な「──キツネです!!!」──ぅんッッ!?」
…………。
……なんて?
「新種の、キツネですッッッッッッ!!!!!!!!」
「くゆ?」
「! き…………きみは……?」
「どうぞ!!!!!!!」
──!!
マイスナがカンクルを持ち上げて、
門番のおっちゃんに渡しよったわ!?
「くゆーっ♪ くゅくゅ」
「お!? おぅ……。む……、す、少し、この子の口の中を見せてもらっていいか……?」
「カンクル、あーん!」
「く? くや──っ!」
カンクルが、マイスナの言うことを聞いて、
門番のおっちゃんに向かって、アーンした。
ええ子やなお前……。
「……! こりゃ……肉を食う歯じゃねぇなァ。臭いも無い。アンちゃん? コイツは何を食ってんだい?」
「え……! そ、その子は……自分の体から生えた花と、水しか飲まないのよ!」
「何だって……!? そいつは……! めちゃくちゃ珍しいじゃねぇかぁ! てめぇで自給自足できる魔物ってことかよォ!?」
「し、新種のキツネですからっ!!!!!」
「くゆっ──!」
「──うぉっ!?」
とゅっ──! と!
カンクルが、おっちゃんの手を蹴って高く跳び、
くるくると空中でまわり、
私の頭の上のうさ丸に、飛び乗ろうと──……、
──ぼふむっ!
「──にょぶ!!」
「──ぐぇっ!!」
……。
おいキツネさんぇえ……。
体ん中に歯車製の内蔵フレーム入ってなかったら、
私の首、イってたかんな……?
「くゆゆぅ〜〜♪」
「にょきっとぬ……」
「こ、このように、新種のキツネですっ!!!!!」
マイスナさん、割とゴリ押しですね。
うさ丸? うさ丸? 生きてる?
「──わっはっはっは!! おもしれぇ芸を見せてもらった! アンちゃん、いい仲間を持ったなぁー!!」
うさ丸? ねぇ?
「ラビットと仲良しなウルフってのも、まぁ、いないだろうしな……。しっかし、アンちゃんは出会いに恵まれてるなぁー!! そんな珍しくて知能の高い魔物は、そうそう出会わねぇもんだぜ!?」
「は、はは……そ、そーねー!!」
「くゆぅ〜〜♪♪♪」
私が生み出してしまったキツネとは言えんわな。
うさ丸? ほんと大丈夫? よだれ垂れてない?
「ようこそ、カーディフの街へ!! 歓迎するぜ! アンちゃんのご友人たちよ!!」
「お、おおげさねぇ……!」
「! あ、ありがとう……!!!」
「にょんぐぉ……」
「くゆーっ♪」
ふぅ……。
たまにはゴリ押しも、有りだと学んだ!
『C7:たまに……?』
『C2:シっ──!』
「……にへへ」
「な、なにその笑い方……」
「アンティの家、食堂なんでしょう?」
「ん、そぅよぉー! 街一番の食堂なんだから!」
「ごはん、おいしいっ!?」
「あったぼーよぉ! 私がだぁれに仕込まれたと思ってんの!」
「よ、よだれでる」
きひひ。
日替わり定食は、ぜひ食べてってほしいわね!
「アンティ、手ぇつなご!」
「えっ……あ、ちょ──」
手を握られ、引っ張られる。
走ろう。
────。
変な感じ。
4年ぶり。
はぁ〜〜〜〜。
ここを、一緒に、かぁ……。
──。
やった、なぁ……。
はは。
前向いてくれてて、助かる。
ちょっと……泣きそうだもん。
街の中央から、少し、それた道。
私たちは、お互いの顔を見ずに、駆け抜ける──。
「……、……こっちで、あって、る?」
「……、……うん……あってる」
マイスナの声が、少し震えてるような。
『────結晶部:隠蔽モードに入ります。ローザ。』
〘------あいあいのん☆
------NON PROBLEM のん☆
------ヒール樹脂で"時限結晶"を覆うのん☆〙
『────こちらも歯車装甲で"時限結晶"を覆います。
────では:ごきげんよう:アンティ。』
今は、まーたまた、お昼時帰省だから、
お客さんが、い──っぱい居るはずだわ。
あんまり目立たないよう、
クラウンとローザ、それぞれの本体の時限結晶を一応隠す。
まぁ、実家では大丈夫……かな?
ヒキ姉みたいにウチまで来る人なんて、そうそういないだろーし……。
あ、いい香りがしてきた────。
ふふ、懐かし──……、
────ガ──タガタガタガタガタガタ──……!
「ぬぇっ!?」
「──っ??」
あり……?
わ、私の、ヒザ、が……?
────ガ──タガタガタガタガタガタ──……!
「にょにょにょにょにょにょにょにょにょ……!?」
「……アンティ。アンティのヒザ、すごい震えてる……」
「え……? な、なんコレ……?」
「あっ……」
────ガ──タガタガタガタガタガタ──……!
────ガ──タガタガタガタガタガタ──……!
「くゅくゅくゅくゅくゅくゅくゅ……!?」
「な……」
「わ、私のヒザも、震えてるっ……?」
マイスナと一緒にガクブルの私である。
なんだこれは!?
世界が揺れているの!?
『────違います判定。』
やっぱ私たちだけ!?
どうなっとんねん……。
まるで、本能が何かを恐れ慄いているような……?
「──……ハッ!」
「あ、アンティ……?」
……。
……まさか……。
「……マイスナ、やばい」
「えっ……? なに……?」
「母さんが……ブチ切れてるかもしんない……」
「やだー」
カーディフ一の味自慢。
『キティラ食堂』は、もうすぐそこである。
「──ふふふ、ふふふふふふふ、ぅふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ────……!」
「そ、ソーラ! しっか、しっかりしろ! 正気を保てぇ!! ソーラぁぁあああ!!!!!」










