狂銀ちゃん、デビュー! さーしーえー
最近砂糖まみれで、かばは猛省した。
(´・ω・`)初心に帰ろう。
◆今日のテーマ◆
元気なナレーション。
──数日前よりッッ!!
──ドニオスの街は、その噂一色で染まりまくっていたッッ!!
──ある賑やかな酒場の二人ッッ──!!
「おい! 聞いたかよ、例の噂をよぉ!」
「あ? なんだよ、ハニーバターパンのことか? あれは美味いよなァー」
「ちっっっげぇよッ! "黄金の義賊ちゃん"のことに決まってんじゃねえかッ!」
「は、はぁ? その話題って古くねぇか!? あの"黄金姫"がオレらの街に来てからよぉ、もう二ヶ月とちょっと経つだろーがよ!?」
「ばっか……! 情報がおせぇよ!! 確かに噂ってのは、あの義賊ちゃんのことさぁ! でも、本人のことじゃねえ……!!」
「おい、勿体ぶらずに言ったらどうでい!!」
「……数日前に、"もうひとり"の方も、現れたんだってよォ……!!」
「あん……? "もうひとり"ってーと、いったい何の事でぃ?」
「──"狂銀オクセンフェルト"さ……ッッ!!」
「な、なんだってぇ──……ッ!?」
──場面は変わり、買い物帰りの親子の会話ッッ!!
「……ねぇママぁ。"クルルカン"のお姉ちゃん、ケガしちゃったのぉ……?」
「そ、そうねぇ……お母さんもママ友達から、同じ噂を聞いたわねぇ……」
「"クルルカンのぼり隊"のみんなが言ってたんだぁ……。この街に、"狂銀オクセンフェルト"が来たんだって……!」
「そ、そぅなの……?(何なのかしら、その集まり……)」
「クルルカンのお姉ちゃん、狂銀とたたかってケガしちゃったのかなぁ……イヤだなぁ……」
「! レン……あなた……」
「こわいなぁ……狂銀が来たら、どうしよぅお母さん……」
「……だ、大丈夫よ! もし狂銀が来ても、クルルカンのお姉ちゃんが守ってくれるわ!」
「ほ、ほんとにぃ?」
「ふふ、もちろんよ……!」
──と!! このような噂があらゆる所に広まっていたッッ!!
──至極当然であるッッ!!
──"義賊ちゃん"こと、アンティ・クルルは、あのド派手な金ピカ鎧で街を飛び回りッッ!!
──仕事時は丁寧な接客をッッ!!
──僅かな休息時は、食事を作るための買い物を普通に街中で遂行していたッッ!!
──街の住人たちと、生活圏がモロ被りであるッッ!!
──至極一般の専業主婦層は、自らの子供が金色のお姉さんに遊んでもらっている事を、非常にありがたがっていたッッ!!
──また、冒険者たちは彼女の神秘的な出で立ちと!! 何よりッ、どんな小さな手紙でもキッチリと届ける彼女の真摯な対応に、好感を持つ者が後を絶たなかったッッ!!
──その彼女が傷つきながら帰還しッ!!
──誰もが知る"宿敵"の格好をした白銀の女の子を連れ帰った事はッッ!!
──あらゆる噂の形となって、ドニオス中に広まってしまっていたッッ!!!
──彼女が来て、はや二ヶ月ッッ!!
──皆から愛される黄金の郵送配達職"アンティ・クルル"は、すでにドニオスの街の顔と言える存在になっていたのであるッッ──!!!
──そしてッッ!!
──彼女たちの帰還から、おおよそ三日ほど経った時ッッ!!
──街中を取り巻く噂は、とある形となって、ドニオスの冒険者ギルドに顕現したッッ──!!
「よォ……手紙出してぇんだけど……"嬢ちゃん"はいるのかい?」
「ねーねー! 私も小包、運んでほしいなぁー……なんて」
「てーかよぉ! アンティちゃんは元気してんのかぁ!?」
「前、だいぶ怪我してたって聞いたんだけど……」
「うぇ、うぇ……お姉ちゃん、狂銀にやられちゃったのぉ……?」
「配達もしてほしいけどよぉ……ホントのトコ、どうなの?」
「あの狂銀のカッコした子、誰なんですかぁ!?」
「や、あの、ちょっと、ちょっと待ってくださいぃぃ〜〜……!!」
──ドニオスのベテラン受付嬢、キッティ・ナーメルンは困惑したッッ!!
──冒険者や一般依頼客が大量に受付カウンタに詰め寄り、一斉に配達依頼を申し出たのであるッッ!!
──本当に依頼をしたいだけの者もいたかもしれないッッ!!
──しかし、キッティはこれが一種の『安否確認』だと言うことを、正確に見抜いていたッッ──!!
(ひ、ひゃわわぁああ〜〜!! アンティさ〜〜ん!? もう庇えませんよぉおおお〜〜!? まだ回復しないんですかぁ〜〜!? はやく皆さんに、元気な姿を見せてくださぁぁあ〜〜い!!!)
──数日前に会った際のアンティ・クルルたちは確かに元気だったがッ!!
──鎧にヒビが入っている事も確認しているキッティであるッッ!!
──イレギュラーコールという大役を果たした後ッッ!!
──キッティは出来れば、アンティたちに自主的な休養を取って欲しかったッッ!!
──だがしかしッッ!!
──今、受付カウンタに詰め寄る人だかりは、もうすぐ3ケタを超えようとしているッッ!!
──この危機的状況を打破するには、"アンティ・クルルの出頭"が必要不可欠であったッッ──!!!
──ワイワイガヤガヤとッッ!!
──人混みの波が迫る──ッッ!!
(ひゃわわ……!? ど、どうしよう……!! どどどどど……、──ハッ!?)
──混乱の筆頭で、しかしキッティは、その視線に気づいたッッ!!
──後ろで腕を組んでいる漆黒の巨人ッッ、ドニオスギルドマスター、ヒゲイドザッパーその人であるッッ!!
(…………むぅ)
(……ギルマスぅぅ! こ、これ以上はムリですよぅ〜〜ッッ!!!)
──八年間、共に働いた者たちができる、以心伝心アイコンタクトであるッッ!!
──ヒゲイド・ザッパーは、その状況下にて、大きな決断を下す事にしたッッ!!
──三メルトルテの虚空より、眼光が光るッッ!!
──カッッ!!!
(──いいだろうッッ!! キッティ、やれッッ!!)
(──!? ほ、ホントに!? ホントにいいんですかぁ!?)
(──かまわん!! この騒ぎを収めるには、あのバカ娘を引っ張りださぬと無理だッッ!!)
(──どっ、どうなっても知りませんよぉ〜〜!!?)
「「「「「 キッティぃいい〜〜!!! 」」」」」
「「「「「 クルルカンちゃん、どこぉおお〜〜!!??? 」」」」」
「あーあ、あーあ!! わかりましたよぅーこんちくしょうめぇぇー!! 呼びます!! 呼びますから、天窓の下から離れてくださいなー!!!」
「「「「「 !! 」」」」」
──人混みが後退したのを確認して、腰のベルトのケースから、ある物を取り出す受付嬢キッティッッ!!
──それはッッ──"黄金一色の鐘"であるッッ!!!
「ふぅ……もう誰にも、止められませんよぉ……?」
──読者の皆様は覚えているだろうかッッ──!!?
──キッティが、40メルトルテの階段を登りたくがないためにッッ!!
──楽器屋さんで実費で買ってきた、"クルルンベル"という呼び出しベルの存在をッッ──!!!
──キッティは、そのハンドベルを天高く構えるとッッ──!!!
「ふっ──!!」
──左下ッッ!!
「とっ──!!」
──右下ッッ!!
「はっ──!!」
──そして、再び天へと振り上げるッッ──!!
──黄金の三角形の残像が描かれッッ!!!
──その音は、空気を震わせながら三度、轟いたのだッッ──!!!!!
─コルルゥゥ──……──ンンッッ──・・・!
──コルルゥゥ──……──ンンッッ──・・・!!
───コルルゥゥ──……──ンンッッ──・・・!!!
──その美しい音色にッッ!!
──その時だけはッッ、受付カウンタの喧騒が静まった……!!!
「ふっ……」
──キッティはドヤ顔であるッッ!!!
「「「「「(ご、ゴクリ……!)」」」」」
──数ビョウが、経った……ッ!
──何も、起きないのか……ッッ!?
ひゅおお……
「「「「「「「 ……──っ! 」」」」」」」
ひゅおおおおお──……!
ばさばさばさ──……!
──誰かが言った……!
「 ──くる 」
────ヒュっ、
──ガァキィィィイイイイイイいいいいいんんんんん!!!!!!!
──ズギャァァァアアアアああああああああんんんん!!!!!!!
「「「「「「「……──〜〜〜〜!!!!!!!」」」」」」」
──恐ろしい金属音と共にッッ──!!
──ふたつの影が、舞い降りたッッ──!!!!!
──何故か、二人とも四つん這いで、向かい合って着地しているッッ……!!
──たまたま居合わせたナトリの街出身の冒険者はッッ!!
──正円の天窓の光を土俵に空目しッッ!!
──まるで"相撲"の立ち会いのようだと、そう感じたッッ!!
「…………」
「…………」
──獣のように睨み合う彼女たちの、一人が床から手を離し……ッッ!!
──ゆっっっくりと、立ち上がった……ッッ!!
──き・ぃ・ん・ん……!
「……チッ」
──黄金の鎧を纏いし、"アンティ・クルル"であるッッ!!
──何故か、超ッッ!! 舌打ちであるッッ!!
(あ、アンティさん……? よ、鎧のヒビが、完全に直ってる……!?)
──受付嬢キッティは、その輝きを増した黄金の鎧に驚愕するッッ!!
「おお……!」
「ぎ、義賊ちゃんだ……!」
──天窓を丸く囲む皆にも、笑顔が見てとれたッッ!!
──陽の光に反射するその姿は、まさに黄金の義賊そのものであるッッ!!
「わぁ……! すごいや……!」
──我らがアンティ・クルルは、健在だったのだッッ──!!!
……──そして、もう1人……!
──ギ・ィイ・イィン……、……!
「「「「「「「 ……──!!! 」」」」」」」
──その場にいた者たちは、静まり返った──……!
──しかぁしッッ!!
──幼い少年が、ポツリと言ったのだッッ……!!
「………………"狂銀"、だ……!」
──そうッッ!!
──我らがアンティ・クルルの前に立ち塞がったのは、確かに"狂銀"の意匠を纏った者だったのであるッッ!!
「ふん……」
──何故か、超ッッ!! 不機嫌であるッッ!!
──白銀の、二つツノの仮面ッッ……!!!
──白銀の装甲が、ミノムシのように重なり合い……!!!
──白銀の手甲には、まるで氷のような刃が見て取れる……!!!
──しかし、それだけではなかった……ッッ!!
(あの白い羽根みたいなドレス……半透明で、陽の光に透けてない……!?)
(てか、後ろの鎧の隙間から、花、咲いてね……?)
(いや……なびく銀髪が、綺麗すぎるんですけど…………)
(狂銀なのに…………お姫様だ……)
(はぁ……背中からも羽根みたいなの生えてんじゃん……)
(え? ……て、天使様……?)
(仮面に、目の穴が空いてないよな……ど、どうやって見てんだ?)
──そうッッ!!
──狂銀の少女、"マイスナ・オクセン"もまたッッ!!
──その場の空気を、呑んでいたッッ──!!!
──確かに、"狂銀"を彷彿とさせる意匠ッッ!!!
──しかし、それと同時にッッ!!
──希少なミスリルで編まれた幾重もの装甲とッッ!!
──透過性のある変幻自在のヒールジェム可変ドレスはッッ!!
──彼女をまるで、"天界から来た姫君"のように、魅せちぎっていたッッ!!
──またッッ!! ヒールスライムである"ノウンチェイン≒ロザリア"に混入した"精霊花"の種は芽吹きッッ!!
──白く光り輝くドレスからはッッ!!
──生命力溢れる聖なる花が、咲き誇っていたッッ!!
──"狂銀"でありながら、"聖女"ッッ……!!!!!
──それが、"マイスナ・オクセン"を初めて見た、ドニオスの住民たちの率直な感想であった──ッッ!!!
「………………。」
「………………。」
──睨み合う、黄金の少女と、白銀の少女──ッッ!!
──こんなアホみたいな絵本の格好してたら、普通は爆笑モンであるッッ!!!
──しかし、そうはならなかったッッ!!
「「「「「「「 ……、…… 」」」」」」」
──なぜだろうッッ!!
──この二人はッッ!!
──お互いに、相応しかったッッ!!
──陽の光が二人を照らす中ッッ!!
──ドニオスの者達は、本能で思った──ッッ!!!
──この二人は、"二人で完全"だと──……ッッ!!!!!
──互いの美しさが、共鳴していると──ッッ!!!!!
──再現された絵本のラストシーンにッッ!!!
──皆が、固まった……ッッ!!
「…………、……」
「…………、……」
(てか、何なんですかぁ、この空気……!? まるで、相手を威嚇しあってるような……!? あ、あれぇ!? この二人、仲良かったですよねぇ!?!?)
──キッティが、二人の間の、謎の緊張感を疑問に思うも束の間……ッッ!!
──金の少女が、銀の少女に言葉を浴びせる……ッッ!!
「……ぉおい……、マイスナぁぁ……。
いつまでその面、隠してやがる……。
さっさと目ぇ見せろやぁ……」
──アンティ・クルルッッ!!
──相変わらずのッッ!! ガラの悪さであるッッ!!
「…………」
──現在のマイスナの仮面は……ッッ!!
──二つツノに、三日月の面が組み合わさったような造形であるッッ!!
──何故か、目の穴は開いていないッッ!!
──その白銀の仮面に、変化が起こるッッ……!!!
……──ガシャッッ!!
……──ギィィい……ん・・・んっ!!!
(──ぎ、銀の仮面がっ……!!)
((──て、展開したッッ……!?))
((((((( か、かっっケェぇえええ〜〜……ッッ!!!
)))))))
──顔の上半分を覆っていた、三日月型のパーフェクト・フェイス・ムーン……ッッ!!
──それが、左右、上下に展開するッッ!!
──"可変式フェイスガード"であるッッ──!!!
──その下から覗くのは、"銀の瞳"……ッッ!!
((((((( え、ヤバ……ぁ…… )))))))
──"狂銀オクセンフェルト"はッッ!!
──絵本のラストシーンで"花のような氷の結晶"を全身に纏っているためッッ!!
──"花の狂銀"と呼称されることがあるッッ──!!!
──今のマイスナはッッ!!
──まさに、その二つ名に、相応しい姿であった──ッッ!!!
きぃん……!!
「──……はっ! やっと顔見せやがったか、狂銀ちゃんよォ……」
「……あれぇ……? さっき間近で見ていたの、忘れちゃったかなぁ……?」
「……ッ、……」
「ふん……」
──ちょ、超ッッ!! 険悪であるッッ──!!!
──どうしたッッ!? アンティ!? マイスナッッ!?
──めちゃくちゃ仲悪そうであるッッ!!!
──周囲、ドン引きであるッッ!!!
「あわわわわわ……!? あああアンティさん、マイスナさんんんんっ……!? あれから、いったい何があったんですかぁぁぁあ……!?!?」
「ど……どうなっておるのだ……! あの二人は、仲が良さそうに見えたが……?」
──二人のあまりのやり取りに混乱を増していく、受付嬢キッティとギルドマスターヒゲイドッッ!!
──そんな周囲をガン無視決め込みッッ!!
──アンティとマイスナは、ガチでッッ!!
──お互いにメンチ切り合っているッッ!!!
──金と銀の視線、バッチバチであるッッ!!!
きぃん……!
ギィン……!
「…………何か、言いたいことあるなら、言えば?」
「はぁ……? は、きひははははは……! ……いや、わかってんだろテメェ……」
──超ッッ!! 険悪(以下略)ッッ!!
きぃん……!!
──黄金の姫は、白銀の姫に、一歩、詰め寄る──……ッッ!!
──周囲に、緊張が、走る──……ッッ!!!!!
「あらぁ………なにかしらぁ?」
「……おい、マイスナぁ……!」
────そして、二人は……ッッ!!!!!
「──てんめぇええええええええッッ──!!!!!!! さっき私のトイレに乱入したのは、どういう了見だコんにゃる"ォォオオオ「アンティが悪いンだもぉぉおおおおおおおおおおおん"ん"ん"んんんんんんんんんんん!!!!!!!」オオオォォッるっっっせぇぇええええええええええええ──ッッッ!!!!!!!」
──クッソ低ッッッッッ俗な言い争いをッッ!!!
──おっっっ始めたのであるッッッ!!!!!
(´・ω・`)あれっ










