サンダーアクト
──ニャニャッッ!
ドンと、あのコとの戦いがはじまったニャ!!
「くぅぅう、ぅう──ッッ!!」
「しんじゃぇえ……っ……!」
今、また雪の表面が光ったニャ!
ドンはすぐに飛び上がるニャ!
ソルギアブーストニャー!!
地面にそのままいたら、バリバリニャー!!
「 " 照……全 " ……!!」
「──っ!? ぐぅぅうううう──ッッ!?」
──カッッ!!
バリバリバリバリバリリィィィ──ッッ・・・!!!
ニ:ニャァァァッ──────!?
紫色の電撃がいっぱい、蛇のように雪原から伸びるニャ!!
まぶしいニャ──!!!
これは数が多すぎニャ──ッ!?
ドンのブーストさばきも見事ニャけど、
何本かの電撃は避けきれずに接触するしかニャいニャ!!
──ヒュ──……、バチッ、バチッッ!!
「ぎぅあッッ!?」
『──ダメニャ! 髪の毛も使って放電するニャ!!。』
──バリバリバリバリッッ!!
ドン・アンティのカラダの表面は、
多重積層高密度アナライズカード、つまり、
"アナライズホロコーティング"で包まれているニャ!
でも、あのすんごぃ電撃は、それだけじゃ無効化できニャいんニャ!!
そこでニャ!!
ドンの必殺ツインテールを使うニャ!!
ドンの髪の毛は、いまや"流路束"のカタマリニャあー!
"カラダの表面"に接触した電撃を、髪の毛の方向に流して放電しているのニャ!!
ニャオオ……。
広がったドンのツインテールから:空中に電撃が逃げるニャ!
こっ:これは結構アブない防御方法ニャ!!
ヒャー:おっかないニャ──!!
「っぐ……。あ、あなた、このチカラ……!?」
「…………。空を飛ぶなんて……。
英雄さまは、いつも、ずるいね……?
いつもいつもいつもいつもいつもいつも、
さいごはさいごはさいごはさいごはさいごは……!」
「……」
ひぇー:めっちゃコッチ見てるニャー……!
あの……"紫電"って子……!
ゼッタイ前より強くニャってるニャ……!!
前みたいに、怒りだけに任している感じがしニャいニャ!
明確に、コッチを狙ってきてるニャッッ……!!
それに……あの電撃!!
強すぎニャい!? どうニャってるんニャっ!?
あんニャの、まるでゴロゴロカミナリ様ニャ……。
ニャん……?
「ぐ……! やっぱり"反射速度"は足場にするモノがないと、すぐ行動に移せないっ……!!」
ドンの言う通りニャ……!
"思考を加速するスキル"を使っても、
咄嗟に避けるためには"アクション"が必要ニャ!
空中での"ソルギアブースト"は調整がめちゃムズだし、
歯車で足場を作って足場にするのはタイムロスがあるニャ!
あんな無数の電撃を避けるなんて繊細な回避行動は……キツいモンがあるニャ!
かといって、地面に降りたとしてもニャ……。
「おりてこないの? クルルカン……」
「……あなたが、あがってきたら? オクセンフェルト……」
「いじわる……」
「は……」
ピカッ、ピカッ……バチチッ、バチッ……!!
……あの足元の雪、もう目に見える所、
ほとんど帯電してるニャ……!
ピカピカ、白く光ってるニャよ……!
これじゃあ降りれニャいニャ……!
「しんじゃえば……しんじゃえば、いいのにっ……!」
「っ……! んなこと簡単に言っちゃダメって、お母さんに習わなかったのっ……!?」
「……。あなたの、おか、あさんは、教えてくれたの……?」
「……!! くそっ……そうだよっ……!!」
……ニャー。
ドンが漢口調で悲しい顔にニャってもたニャ……。
ニャむぅぅ……。
ニャーにはわかんのニャ。
ドンにとって、あの子は憧れの冒険者さんのはずニャ……。
ドンもあの子も、
同じ歳くらいの、おんニャの子ニャ……?
ドンはあの子の事、好きなはずなんニャ……。
そんで、あの子も、たぶん……。
「……しんでよ。お願いだから……だって、わたしは……」
「っ……。やめろよ……」
あの子が、ゆっくりと。
こっちに向かって、歩いてくるニャ。
……ニャうぅ。
空を飛んでるニャー達のほうを、銀色の瞳で見ているニャ。
あの子の足元の雪から、白い煙が立ち上っているのニャ……。
「ずるいなぁ……」
「──!!」
──ジャリんっ……、っと。
──銀色の鎖に繋がれた両腕が、天に伸ばされたニャ。
──それは:そっと交差して……。
「……消し飛んじゃえ……!」
「──!! まずぃっ!!」
──ニャッっ!?
「 " 氷乱……時雨尾 " ……!」
……!
あの子……さっきから"技名"を言っているんニャ……!?
ニャぜ……!?
── ギ ィ ン ・ ・ !
ニャ……!?
天に伸ばした両腕を……振り下ろしたニャ!
同時にカラダを後ろに反り返えらせて、跪いて……!
地面を両手で叩いたニャ!
まるで……あ……!
アイススケートの、最後の決めポーズみたいニャ……!
イナバウアーニャ────!!!
濃度を増した空中の冷気が、白と紫に染まるニャ!!
「──あほっ!! クにゃウン!! 回避ッッ!! 下からよっ!!」
『──ニャッッ!?。』
──また、電撃ニャかッッ!?
っ、ニャ……"氷乱"って言ってたニャ……?
し、しまった! 違うニャッッ──!!!
バ キ キ …… !
ズ ド ド ド ォ ォ オ オ ン・・・ ! !
「でぇぇええええいいッッ───!!!」
『──ニャニャ───っっ!!?。』
白銀の地面から、でっかい氷の柱が生えてきたニャ──!!!
ま:まるで巨大な杭ニャ……!! はやいニャッッ……!
総数13……!! ニャんて大規模な氷のチカラニャ!!
その内の一本が:ドンを狙うように伸びてきてたニャ!!
空中のドンは、ブーストを使ってカラダを捻るようにして回避したニャ!!
───ごぉぉおおおおぉぉおっっ!!!
『──ご:ごめんニャさいニャ! ニャんのアシストもできニャかったニャ!。』
「……おかしいわ。随分と大雑把な攻撃すぎる。こんなに氷柱と氷柱の間が離れているのは何故……広範囲すぎだわっ」
『──ニャんと!?』
……ジャリん……!!
あ……あの子また……ニャんか両手を前で交差させて……?
「 " 獅子莉吹雪 " ……!」
── バ キ ・・・ !
「! っ───……」
『──ニャッ!? ニャォッッ!?。』
また、ドンの回避は:ニャーの演算より速かったニャ。
ニャー、役立たずニャあぁー!!!
──ブシャシャシャシャシャシャシャ────!!!!!
さっきのでっかい氷柱から:氷の枝が伸びまくったニャッッ!!
いニャ……枝なんて可愛いモンじゃニャいニャ……!
や……槍ニャ……! 無数の、氷の槍……っっ!!
「──ちっ」
ドンは舌打ちして避けまくってるニャ!!
ブーストだけじゃ追いつかず、
足場の歯車を出したり、氷の枝を蹴り飛ばしたりして避けたニャ!!
ドン……さすがニャあぁぁ……!
ドンは、ガチャん、と、氷で出来た枝のひとつに着地したニャ!
あ……枝にある、氷の結晶が……、
まるで、花みたいニャ……。
──ガシャン……!
ドンが、頭らへんにあった、
邪魔な氷の枝をナックルで叩き割ったニャ。
砕かれた氷が落ちるニャ……。
──バラバラ、パラ……、……。
「…………」
「…………」
下の雪原にいる銀の瞳と、
上の氷柱にいる金の瞳が、
お互いに捉え合うニャ。
「……あっという間に氷の森ができたわね?」
「……よけるのだけは、うまいね……?」
「は……いらつく……」
「……こっちのセリフ」
「……悔しかったら、ここまで来てみな」
「じっとできたら、行ってあげるよ……?」
「……」
「……」
ニャ……ニャんか、この二人……すごいニャ……。
誰も寄せ付けん雰囲気があるニャ……!
金と、銀……。
えらいこっちゃニャ……。
ニャむむぅ……。
「クにゃウン……あの子の分析、トライたのむ」
『──! ……了解ですニャ。:::……失敗したニャ。ニャーの出力では不可能判定。』
「そう……」
『──ドン・アンティ。さっきから避けの一手ニャけど:どうする気ニャっ? そもそも:どうやって紫電を止めるんニャんよ……?』
「……しょうじき、わからん。勢いで来た……」
「── 。」
……ニャー。
ニャっふぃ……。
『──……ドンのそゆとこ:ニャーはキライじゃニャいニャ……。』
「……どうも。"ニャーナちゃん"は、なんか素んんん晴らしいアイディアある?」
『──ニャんで"ちゃん"付けニャっ!? ……いっこあるニャよ。』
「えっ、マジ」
『──おおマジニャ。』
「教えて、ニャーナ先生」
『──……。ドンの髪の毛は、いまや"流路束"のカタマリニャ? それは:あらゆる流路情報を読み取る"感覚器官"として運用できるはずニャ。』
「!」
『──あの子……"紫電"は:流路の未発達が原因でチカラが漏れまくってるニャ? 見るニャ……あの子の足元の雪のケムリ……あれは雷で水分が蒸発してるだけじゃニャいと思うニャ……。ニャんかヤバいチカラがダダ漏れ中ニャ……。』
「……つまり、あの子の"流路の状態"を……」
『──ニャ。ドンの"髪の毛の流路"をあの子に接触させて:直にコンディションを診断:分析するニャあ!。』
「あんた……ホントそういうのよく考えつくわねぇ……!」
ニャー!!
ドンに褒められたニャー!!
『──あ:でも問題があるニャよ。』
「言って」
『──ひとつは電撃ニャ。アナライズホロコーティングだけでは強力な電撃は回避できんニャ。髪の毛の流路使って分散させないと、電撃がヨロイを貫通するニャ。あの子のボディに髪の毛を接触させた時に電撃を受けたら避けられんニャ。』
「他には」
『──……"ツイン流路ケーブル"分析のデータは:たぶんクラウンたましか正確に分析できんニャ……。』
「なるほど……」
──スっ……ジャリん。
「──っと」
ドンが飛び退いたニャ。
隣の、氷の枝に着地するニャ。
さっきまで乗ってた氷の枝から、
ウニみたいにトゲトゲの、氷の花が咲いたニャ。
あの子の方を見てみると、こっちに片手をかざしてたニャ。
……こわいニャ。
「……ニャーナ。あんた、クラウンを起こしてきなさい」
『──!?。』
ニャ、ニャんて言ったニャ!?
『──でもっ:それじゃあドンが:お一人様にニャってまぅ……!。』
「そーよ。こっちはタイマン張っとくわ」
ニャ、ニャ……!
マジですか……首領・アンティ……!
「ふぅ……クラウンがいなけりゃ、せっかくあの子の流路の情報を得ても、正確な分析……できないでしょう? それに──……」
『──ニャむ……?。』
「クラウンと先輩……いくらなんでも遅すぎるわ。なんかあったのかもしれない。助けてあげてほしいの」
『──ニャーが……。』
「あんたさ? こういう土壇場……強いでしょう? あんたも勿論だけど、私には……あの二人の助けが必要なのよ」
『──……。』
「だから……今は一人で頑張るわ。
たのむ、ニャーナ」
……。
『──しニャんとってな?。』
「しなねぇよ」
……きゅいん……。
ニャーは、歯車の中に格納された。










