天空エール
(*´ω`*)短く、こゆく。
今、はるかに下を、彼女が飛んでいる。
小さな猫さんと一緒に、お空を飛んでいる。
私達は、この時を、ずっと、ずっと待っていた。
雪雲のせいで、彼女の姿は最大望遠でも目視することができない。
でも、あれだけ秘められた情報量を、私達が見失うはずも無かった。
味気ない三角形のマーカーが、マス目が引かれたワールドマップに、
ゆっくり、ゆっくりと、尾を引いていく。
真っ直ぐに、あの山へと向かっているのだ。
まだ、わかっていないかもしれないけれど、
この世界の違和感に、一番最初に気付く可能性があるのは、彼女達だ。
条件は揃っている。
もう気付いていても、おかしくはない。
私が返したノートもあるしね。
でも、今の彼女は、彼女の事で頭がいっぱいだ。
それでいい。
ここに来て、わかった。
長い時間というのは、恐ろしい。
一番短いはずの私でも、そう感じるのだ。
うずくまり、堪えきれなくなりそうな時もあった。
でも私は、ひとりでは無かった。
いつでも、おしゃべりはできたし、
ここから、みんなを眺める事もできた。
でも、もし、そうなってしまったら。
彼女は、ひとりぼっちになってしまう。
私達は、それを恐怖した。
これは、最後のチャンスなのだ。
彼女が、彼女の方に、向かっている。
手を差し伸べるために、駆けていく。
いそげ。
急いで。
手を掴んで、引き寄せあって。
私達3人は、こちらで見ている。
そっちの3人は、あなたと共に。
残りの1人は、時間次第。
しちにんみんな、味方だよ────。
……ありゃ?
なんか猫ちゃんが困ってるな。
なんだろ。
うーん。
声、拾えるかな。
えーっと……。
──ビピ:ギュイ!
「だぁーかぁーらぁー! "ベアークラッチ"に表示する情報を増やしてほしいのっ! 今、地形データとチャット機能が、ほっとんどじゃないの。もっとなんかあるでしょ? "HP"とか、"MP"とか。あ、私、MP無かったわ……」
『──ニャ? ニャニャん?。』
「もー、歯車の残弾数とかあるじゃない! スタミナグラフとか……デバイスショートカットとかさぁ! ちょっとくらい情報過多気味で大丈夫だからぁ」
『──ニャむ? ニャむむぅ?。』
「にゃー、クにゃウンしっかりせんかいぃー!」
──ジジ、ピーキュイ──。
は、はは……。
アンティ、そりゃ無理だよぉー……。
それ、私の世界のゲーム知識がないと、理解おっつかないじゃん。
その猫さんも、流石にゲームコックピットの知識は無いんじゃないかな……。
アンティあれでしょ、視覚をゲーム画面みたいにしたいんでしょ。
あっ、そうか。
クラウンさんがバタンキューだから、知識が追加ダウンロードできないのね。
まったくぅ-! 先輩、はやく治してよねぇー!
あーどしよ。
聖樹ネットワーク、使えるかなぁ。
200年ぽっちしかやってない小物の言う事を、聞いてくれますかねぇ。
ちょ、ちょっと、Q.Q.さんも手伝ってくださいよ!
ここ一番の時なんですから!!
え?
疲れて寝てる?
……。
調子のって無茶するからですよ!!
そういうあなたは?
パス繋がってるんでしょ?
はぁ?
あの二人には、もう無理?
なんで。
向こう側のメモリが無い?
ウソでしょ?
えっ、次あのヨロイの目が覚めたら、どうすんスか。
……いや笑うとこじゃないでしょ。
う、うぜぇ。
このやろぉ────!!
……ホントにムリなんすか。
ホントですね!?
えっ……情報量、負けたんスか!?
次、憑依したら?
ふっとぶ?
ふっっっとぶんスか!?
ギャー!! いいですよ!! 私がやりますよ!!
それってアレでしょ、けっこうマジなヤツでしょ!!
いいからジッとしといてくださいっっ!!
死ぬか死なないかの話を、そんなアホみたいに笑いながら言うのやめてくれませんかっ!?
Q.Q.さんも大丈夫なんでしょうね!?
昏睡してるんじゃないんスか!?
し、下っ端はツラいぜ……。
あーうー、猫さんこれ情報受け取れるかなー。
ネットワーク経由でダイレクト通信出来そうなのは、
あのウサちゃんとオオカミちゃんだけだしなー。
ダメだ、近くに聖樹がねぇ。
オワタ。
ダメ元で、直でやってみるしか……。
えい。
お。
いけた?
おーし。
キタコレ。
ほぉーら、アンちゃん納得ですよ。
猫さん、首ひねってるっスね。
ま、やったの私っスからね。
……。
これくらいしか、ここからできないや。
……。
『────アンティ▼
────みんなと、がんばって────……▼』
……。
ん?
あっ。
寄り道した!
あー……。
助けに、いったんスね。
やれやれ、まったく。
……ふふふ。
ホンットに、女の子とは思えないほど、
『ヒーロー』してるっスねぇ────!!
(✽´ཫ`✽)風邪だなコレ










