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⚙⚙⚙ " THE RIDE FIGHT " ⚙⚙⚙



 ──たぱっ、ぼたたたたたた……!



『──ニャ~ニャ~♪ ふニャむ:ふニャっ:ふニャふニャニャ~~♪。』



 目を覚ます。


 神秘のヌコが歌うフニャフニャソング。

 顔にかけられつつある、お湯が(したた)る布。


「……」


 ちょ……。

 しぼろう?

 あと、口まで(おお)うのやめてね。

 窒息するかんね。

 すぅ────……。


「──ぷぉっ!」

『──ッッニャッは!?。』


 ──ベショお!


 食堂の接客で鍛えた肺活量は、

 いとも容易く濡れタオルをふっ飛ばす。

 顕現せし七番目の獣は、びっくらこく。


『──おぉお:起きてたんニャか! ドン・アンティ!。』

「あんた……何してくれちゃってんの。うわぁ! 枕元ベッチャベチャやないの!」

「──ニャむぅ~~! ビックリさせないでほしいのニャッ!

 ニャーの繊細なハートがドキドキしたらどうすんのニャー!。』


 寝言は寝て言いなさいよ、招かれざる猫め……。

 繊細な看病人が、ギルドのベッドをこんなにお湯まみれにするかぁ。


「クにゃウン! 私、どれくらい眠ってたのっ!!」

『──ニャっ!? ニャ:ニャニャジカン(・・・・・・・)くらいニャっ!。』

「──7時間(・・・)っ!? そ、そんなに……?」


 ジトォ……。


 うぬぁっ。

 うぅ、うなじがウェットに温かい!


「……おい猫。なして、お湯タオルを我が顔に被せん」

『──もちニャん疲労回復ニャあ! 疲れた奴にはとりあえず蒸しタオルのせとけばいいニャ! 世界の真理ニャよ!。』


 極論すぎる……。


「う、うん……。まぁ、ありがと。次からしぼってね」

『──ニャっふー! どたましてニャ~~!。』

「く、クラウン! 余分な水分だけ格納してくれる?」


『      。』


「! ……クラウン?」


 ……?

 クラウンからの応答が無い。

 しっとりしたベッドの上で、急に不安になる。

 ついさっきまで喋っていたのに!?


「クラウン!? ……先輩!? へ、返事して!!」


『       。』

『>>>      』



 えっ……。返事が無い!

 どうしたの!?

 まさか……修復に失敗した……!?


 ──ガッ!!


「クにゃウン!! くくく、クラウンと先輩がしゃべんないよッッ!?」

『──おおお落ち着くニャ:ご主人たま! しっぽ離してニャッッ!! ひっぱるニャって!

 安心するニャ! クラウンたまとクルクルの記憶流路の修復は:100パセルテルジ完了してるのニャ!。』

「で、でもっ!?」


 ぐぃーん、ぐぃーん。


『──さいごまで聞くニャっ! は:離せニャあ!

 記憶(メモリ)は治ったニャ! でも"ボディ"の方は:まだなんニャよ!。』

「っ!! ぼでぃ……??」


 ボディが……まだ治っていない??


「クにゃ、ウン、どういうことなの? クラウンと……割れた先輩の仮面は……?」

『──ニャむっ:そんニャ悲しそうな顔しニャさんニャって。

 お湯も(したた)るいいおんニャ! ほぃニャ~~!。』

「!?」


 きゅるるる……──キィン──!


「あっ!」


 先輩の……──"クルルカンの仮面"っ!!


 クにゃウンが出したバッグ歯車から、見慣れた黄金の仮面が姿を現す。

 わ、割れていないっ!

 私のよく知ってる、小洒落た貴族の被っているような仮面だ……!

 思わず乳装甲に抱きしめる。


「よ、よかったぁ……! 元通りになってる!」

『──ハードウェアの修繕とデバイス変換は:ドンの歯車を使って完了したニャっ!。

 ニャッへん! これでクルクルも完全にドンの支配下ニャあ……!

 ニャっフフ……。

 ニャフフフフフ:

 ニャフフフフフフッ:フフフフフフニャ……!。』

「アンタ……。わっるい顔で笑うわねぇ……」


 悪代官ヅラで嘲笑するトラヌコに若干引きながら、

 改めて胸の中の仮面を見てホッとする。

 本当に治って良かった……。

 真っ二つのままだったら、ホント、どうしようかと……。


「あ……。クにゃウン、"記憶が治ったけど(ボディ)はまだ"って、どーゆぅことなの……?」

『──ニャむ! 仮面がずっぱんちょした時:クルクルが壊れた区域(エリア)は3つあるニャよ!

 ①記憶流路(ディレクトリ):②仮想義体(アバターボディ):③仮面本体(ハードウェア):ニャ!

 ほんでニャ?

 ①の修繕をクラウンたまの記憶で:

 ②をクラウンたまの構成データで:

 ③をドンの歯車で修理したのニャー!!。』


 ──!

 いちはOK……。

 さんはこの仮面だから……。


『──……ニャむ~~。そうニャ~~。

 ②の:仮想義体(アバターボディ)をイチバン後回しにするしか:ニャかったんニャー。』

「っ、クラウンの両手両足が無くなってたのは……先輩のボディの修理に使っちゃったからね?」

『──ニャ〜〜。クラウンたまは:最低限②を修理してから:①と③の回復を優先したのニャ……。』

「……」


 クラウン……。


『──仮想義体(アバターボディ)の破損箇所を一定レベルまで補修(リペア)するまで:あの二人との交信を制限してるニャ。』

「重症だってことだよね……治る、よね?」

『──任せるニャ。ちょっとお時間くださいニャ。みんニャ頑張ってるんニャ!。』

「んっ? おみゃーまたサボっとんのか!?」

『──ニャッ……。ち:違うニャよん……! ミャーツ(二号機)のマネくらいで動揺するニャーじゃニャいニャよ!?。

 ドンのサポートは"ニャーナ"のリッパな仕事だニャー!。』

「いや、別にモノマネした気は無かったんだけどね……」


 ……ぅん?

 "ミャーツ(二号機)"、"ニャーナ(七号機)"……。

 そ、そーいえばそんな名前つけたような……。


『──それよりビッグマム「やめぃ」! さっきから外が:えらい騒がしいニャよッ!?。』

「? 何が? 別に何も────……」




 ご ご ぉ ぉ ぉ お お お お お お お お ん ん ん !!!!!


 ご ご ぉ ぉ ぉ お お お お お お お お ん ん ん !!!!!




「──!!!」


 ──雷だ。


「クにゃウン!」

『──ニャ! ドンが起きる少し前から:さらにひどくニャったニャ……!。』

「そーいやあんた! "こっち側"に出てきてて、大丈夫なの!?」

『──アニャライズコーティングは問題ニャく作動してるニャ!

 今は:クラウンたまもクルクルもおらんニャ! ニャーがサポートするニャっふ──!。』

「……! よし……。"ニャーナ"! "クルルカンの仮面"を装着たのむ!

 そういえばヨロイ……は、大丈夫よね? あの時、ドラゴンが……」


 ──きゅるる、かしん、キィン!!


『──クルルカンの仮面:装着(エクイップ)完了ニャっ☆ ヨロイの状態は完全に近いニャ! "力量加圧(パワーアシスト)"も正常運用が可能ニャ!。』

「わかった! アンタ、私の肩にのんなっ!」

『──ニャう! 失礼しますニャ!。』


 ──Pon! Pi:Pi:Pi──!


 仮面を装着すると共に、視界の内側にアナライズカードの情報ウィンドウ画面が多数表示される。

 まずは現状を把握しないと……!


『──栄養補給を推奨ニャ!。』

「!」


 もっともだわ。ぶっ通しで寝てたワケだし……。

 この子、こういうの気がつくのね。

 きゅるる──ぽんっ!


「あむ」


 コッコ鶏の照り焼きチキンサンドを出して、かぶりつく。

 部屋から出て、キンキンとパートリッジギルドの廊下を早歩きだ。


 きんきんきんきんもぐもぐもぐ。


『──お行儀悪いニャー! お水はいるニャか?。』

「もぐもぐお願い! アンタ、なかなか気ぃ利くじゃない!」

『──ダテにいつもサボりの後に気配りしてニャいニャ! 口のニャかに直接お水を出すニャねっ!。』

「せっかく褒めたのに台無しじゃないっ! ごくごく……」


 アンティスピードメシをかっ食らったと同時に、ギルド受付広場に着く。

 ずいぶん慌ただしい!

 モフモフ制服のギルド職員さんが、

 忙しそうに行き交ってる!


「くそっ、追加の冒険者はこないのかっ!!」

「やっぱり順に避難勧告を出した方がいいわよ!」

「雪が止まない中での立ち回りはキツイはずだ!!」

「ダメだ、定期連絡がこないよ! 戦闘で人手が割けないんだ!」

「ギルマスはどっちに行った!? 探してきてくれ!」


 "戦闘"……?

 冒険者ギルドの外にでる。

 あっ! あの雪キツネ耳は……チロンちゃんだわ!


「チロンちゃん!」

「っ!! クルルカンさん! 起きたですか!」



 ご ご ぉ ぉ ぉ お お お お お お お お ん ん ん !!!!!


 ご ご ぉ ぉ ぉ お お お お お お お お ん ん ん !!!!!



「っ!」

「うう~~!」


 爆発したかのような雷音。

 ペタンと寝る、チロンちゃんのキツネ耳。

 薄暗い雲の中に見える、銀の山。

 山頂だけが……光ってる。


「う……クルルカンさん、体調は大丈夫なのですか」

「え、ええ……。外、ずっとこの調子なの?」

「そうなのです……ここまでずっとゴロゴロだと流石のチロンも……そうだ!! た、大変なのですよ! 雪山から魔物たちが大量に降りてきているのです!」

「なんですって!?」

「山頂は雷がビカビカで、光の魔石みたいなのです! 雪崩も観測されました! 恐れをなした魔物が、一気に下山したですよ!」

「それってやばいんじゃ……!」

「本当は山頂に探索に行く予定だった冒険者の皆さんが、魔物の討伐に駆り出されているのです! マジカさんがいて助かったのです!」

「──!! い、今、マジカさんって言った?」

「言いました! プレミオムズ魔法職(マジナリー)のマジカさんなのです!」

「まじか……」


 あのKOKESHI魔女さん、ここに来てるのか!!

 魔法職の火力は強いって噂で聞くけど、大丈夫なんだろうか。

 ……。

 山から魔物たちが逃げ出すほどの稲光(いなびかり)


 それは、つまり。

 あの子は、まだ。

 あそこに────。


「──……」

「あ、あのクルルカンさん、その鎧は本当に大丈夫です? そっそれに、その肩に乗っているのは……?」

「ニャーナ。まだクラウンと先輩とは、通信できないよね?」

『──しばらくは無茶ニャ! さっきコンデション確認したニャが:クルクルは半身がぶっ壊れてて:クラウンたまは両手両足おじゃんでボディごと換装ニャから〜〜!。』

「しゃしゃしゃしゃ、しゃべったのです!」


 ……──クラウン達を待っていたら、間に合わないかもしれないわ。


 ────行かなければ。


「ニャーナ……私に付き合ってくれる?」

『──ニャふふー! ニャーが付き合わニャかったことニャんて:今まであったかニャ〜〜?。』

「はっ、言うじゃない!」

「あ、あの、クルルカンさん? どうするつもりなのです! ギルマスを探してきますから、体が無事なら避難するです!」


 獣人だからなのか、チロンちゃんの勘がいい。

 私が何処へ向かおうとしてるのか、わかったみたい。

 ポン、とフワフワ耳の間に手を置く。


「ごめんね。ちょっと、これからは逃げたくないから」

「く、るるかんさん……?」

「ニャーナ、ここいらで一番高い建物はドコ?」

『──スキャン完了ニャ! 正面:教会と思われる建物が一番高いニャ!。』

「踏み台にするわよ」

『──バチあたりニャなー!。』


 歩きだす。

 雪に吸収されて、足音が出ない。


「ちよ、ちょっと待つのですクルルカンさん! あの……」

「いってくる。大丈夫、帰ってくるよ」


 キィン……!


「──っ!」


 雪の上に出た歯車に、ブーツがかち合う。

 黄金の音が出る。


「クにゃ……ニャーナ。歩幅に合わせて足場を出して」

『──ニャー。無理しニャいでいいニャよ?。』

「ふふ、頼んだわよ?」


 ぐっ──……キィィくぅぉおおおおおんんん──!!


「「「──っ!?」」」


 蹴り出す。

 いきなりの甲高い金属音に、周りの人達が振り向く。

 いまは、いい。

 身体は地面と平行になって、魚雷のように進む。

 まるで低速飛行のような助走。

 ──次。


 ──キィィぁああああああんんん──!!


 後ろで多分、爆発するように雪が飛び散る、2回目の助走。

 さらに加速する。


『──着氷タイミングバッチリニャ! 相変わらずオソロシイ脚力ニャねー!。』

「飛行ユニットは?」

『──前にクラウンたまが設計したダブルバーニヤ型を採用したニャ!。でも:ニャーはあんまり調節得意じゃニャいニャよ?。』

「いぃいぃ。私わかった。最後はフリーハンドなのよ」

『──言ってるイミが:わからんニャ。』

「ぶっぱなしてくれたら、後はこっちでやるわ。───っと!」


 キィィぉああああんん────!!


 3回目の助走。

 ふふ、クルルカン女が横向きに吹っ飛んでるように見えるだろうな。

 そのままか。


「振り落とされんなよ」

『──ヌコニャめんニャ。』


 ──キィィ・・・ン。


 ──跳躍。


「硬いとこ」

『──ニャ!。』


 教会のてっぺんを、黄金の猫がマーキングした。

 神様ごめん。


 ───ガッッ・・・きぃぃぃいいいんんん!!!


 直で蹴り込む。


 浮遊っつーか、打ち上げ。

 銀河鉄道(・・・・)もビックリ。


『──ユニット:インストールするニャ!。』


 ───・・・ぎゅ、お、お、お、ん・・・!


 両肩口の歯車から、流線型に加工されたギア・ユニットが排出される。

 左右対称。今回はスタイリッシュな形ね。

 ここは地上から、100メルは離れている。

 花火をしても大丈夫でしょう。


 ──ガチャ、リ……。ギュィイインンン……!


 両肩の飛行ユニットが、展開した腕の装甲に食い込む。

 歯車製のネジが、身体に侵入する感覚。

 でも、私の筋肉は透過するため、

 ヨロイとユニットだけが滞りなく連結する。


『──物理接続:問題ありませんニャ!

 やっぱりドンの体内に歯車は干渉しニャいニャね。』

「こぉら。落下しはじめたわよ。はやくなさい」

『──ニャっと……。ウィング展開ニャ!。』


 ──シュオォ、ヴォおおおんんっっ!!


 金色の飛行ユニットから咲き乱れる、半透明の羽根。

 多いな。

 14対?

 28枚の翼膜。


『──多重積層アニャライズウィング:射出完了ニャ!。』

「……────」




 ご ご ぉ ぉ ぉ お お お お お お お お ん ん ん !!!!!


 ご ご ぉ ぉ ぉ お お お お お お お お ん ん ん !!!!!




 ひかる、氷の山を見る。

 ──。



 ────ひとりになんて、させない。




 ご ぉ お、 お お お ────……!




「 ……──出発、進行! 」


『──点火ニャあ!。』






 ────SOLGEAR:Connecting:::::▼






 ──── ──── ─── ── ── -






「「「「…………」」」」

「今のは、なんだ……?」

「流れ、星……?」


「クルルカン、さん……」







 パートリッジの者たちは、確かに見た。


 狂い鳴らす霊峰に向かう、


 黄金の尾を引く星を。





 

(*´ω`*)これですよ。

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