ぼくらの時が、動くとき⑳ さーしーえー
さっき、シャイニングパンツマンという話を思いついた。
((((;゜Д゜))))
オオオ……。
ォォォ……。
『 ぐぐぎごごごごご──……ピィ────……! 』
森王の獣:ノルケリアスは、
人の可聴域を超えた音を出しながら、彼に迫った。
王は、蹂躙した。
人型を征する事に長ける黄金は、
しかし、シガラの祖たる獣には無力だった。
時の剣を編もうと、黄金に真理が集まる。
だが、それは氷のように砕け、霧散した。
「……ぐ……!」
黄金は目を見開き、
自らがもう、時の結晶を作り出せない事を察した。
『 ぐごごぎ 』
『 ぐごごぎぁ 』
先に人外の顔が蠢く、狼の蔦がしなる。
黄金は素早く動く。
彼は、敵わぬ危険からは、逃げてきた。
立ち向かおうとする意志が、彼の長所を殺す。
それでも避け続け、前に進もうとする。
どんな怪異にも、死があると信じて。
とぶ。
とぶ。
とぶ。
それは、前へ進もうとする意志。
しかし、暗殺の術など大いなる獣には届かない。
丸太のような蔦が腹を打ち、
木に叩きつけられた彼の、黄金が砕けた。
「が……はっ……! く……」
飛び散る体液を無視し、
彼は過去に作りし時の剣を出す。
透き通る剣。
森の王に比べれば、小枝のようなソレを、
勇敢に、振り回す。
鋸のような、雷のような模様のマフラーがなびく。
コツンコツンと、音が鳴る。
森の王は、一蹴した。
さらに砕けた黄金は、新たな剣を作ろうとする。
もう何も、起こらなかった。
「そんな……」
全ての時は、動き出している。
彼はもう、止める事ができなかった。
でも。
目の前の怪物を見て、
コイツだけは、近づけさせないと誓った。
「……も、ぅ、誰も、殺させは、しない」
立ち上がり、
彼は少しだけ目を閉じて、
命を使う事にした。
バカらしく、願った。
「……異界の地よ。もし、神がいるなら────」
何処にも、いないかもしれない。
でも、さいごに。
「……──少しばかり、奇跡を起こしてくれよ──……」
綻んでいく光の粒子の中、
彼は、両の手を前に出した。
迷いなど、なかった。
今まで恐れていた領域を無視し、
最大の力で、時を止める。
……止める?
いや、違う。
────動き出さなければ。
彼は、最期の最期に。
自分の力の、正しい使い方をした───。
────────キィィィン。
『………"Exactly"。
YOUは:ここでは:死んでしまうね。
……SORRY&SORRY。全ては:ボクらの責任だ。
いつかキミに会った時:殺されてあげてもいい。
……でもね?
キミたちがここに来たのは:偶然じゃない。
ボクたちは:キミらに賭けたのさ。
不死鳥のとは違って:器だけではダメだからね……。
でも:今は。
森の王を:SLEEPさせてやって欲しい。
そいつは砂の王と違って:保てなかったんだ……。
すまない。
キミは:願ったね。
……All right! いいだろう。
今:この世界には……もう一人のキミがいるね?
彼女たちと一緒にさ。
だいたい:800年目くらいかな?
何とか:接続しよう。
せめてもの:罪滅ぼしさ。
────BOY!!
────ボクをぶん殴るために:戦いたまえ──!!
────>>>Present for YOU……!
────>>>HAHAHAHAHAHA──……!』
『 ────>>>いつか:再会の時は:訪れるのだから────。』
────S>>>F:Connected▼
────D:server/FRIDAY.act▼
────Acceleration:mode▼
────GOOD LUCK▼
────>>>黄金の王は、祝福する。
カ
ッ
!!
────光の世界が、顕現した。
『 ぐ、お、お、お、お …… ? 』
全ては、黄昏だった。
輝く草原は、黄金の稲穂のように揺れ、
空は、朝と夕を合わせた色で、輝いた。
木々は、煌めきに染まるように葉を揺らし、
光はシャボンのように、溢れ出た。
「 ……────うごき、だした──…… 」
『 ぐ、ご、ぎ ? 』
光り輝く者が、立つ。
見渡す限りの、黄金の大地で。
法則を無視し、正円の輪を形取るマフラー。
砕けたはずの鎧は、光の力を撒き散らし、
仮面は左右に伸び、輪のように連結した。
両手には、大小の長剣と短剣。
それはまるで、一対の針のよう。
森王の獣は、時の世界に惑う。
『 ぐ、お、う …… 』
……── キ ィ ン !
男が、歩き出す。
金の光を撒き散らしながら。
両の針を以て、動き出す。
森の獣は、蔦を振るった。
男が針の剣を翳し、
蔦の時間は、巻き戻った。
森の獣は、狼狽する。
全ての攻撃は、無かった事になる。
黄金の鎧の男が歩いた場所は、
無茶苦茶な順序で花が咲いた。
種。
散。
咲。
芽。
実。
朽。
光。
────" 黄昏の時の大地 "
命と引換に、全ての時を操る力。
「……──ぼくのおわりに、付き合ってもらうよ──……」
世界の概念は、英雄の力に照らされる。
輝く光の風が舞う、黄金の大地を見よ。
『 ──── ぐ、お、お、お、あ ! 』
害なす時は全て巻き戻る。
逃げようとも、元に戻る。
彼はゆっくりと歩み寄る。
長針と短針の剣は融合し、
一振の黄昏の真剣となる。
空間に光の秒針が現れる。
それは道化。
それは騎士。
それは義賊。
描かれなかった、未来。
「時は、動いていくんだ──……ぼくが死んだ後でもね」
チクタク、チクタク。
光の秒針は、命の終わりを告げている。
それでも、
────充分な時間だった。
「──あああ、ああああ!!」
断/つ。
絶/つ。
経/つ。
森の王の胸は砕け、
心に、濁りし緑の結晶がある。
黄金の義賊クルルカンは、光に溢れる手を伸ばした。
『 ぐごぎおおおおおお!!! 』
「く……!」
彼の体に、多くの蔦が絡む。
獣の頭が、食らいつく。
残された"秒"は、もう少ない。
彼は防御を捨て、緑の結晶を握り込む。
黄金の鎧は再び砕け出し、
命が光となって、燃え始める。
しかし、
若葉のように光る瞳に、迷いなど無かった。
「うご、け……!」
彼は本能で、ソレを動かした。
加速する穢れし結晶は、瞬く間に滅びを迎える。
バキン、と。亀裂が鳴った。
『 ぐ ご ぎ あ あ あ あ あ あ ──…… !! 』
森王の獣は老い始め、枯れ木となって解けていく。
幾ばくかの種子が飛び散ったが、王の姿は無かった。
彼は、守りきった。
ぽつんと、立ちすくんでいる。
「──…… 」
パキ、パキき……、
バキバキ、パキん……!
ガキゃ、ぱん!
パラパラ……、……。
「……」
黄金の義賊は、迷った。
このまま消えようか。会いにいこうか。
死期は近い。
あのナイフと手紙は、取りにはいけない。
「はは、は、はは……。
ごめんよ、バスリーちゃん。
ぼくを、許してくれ──……」
黄金の義賊は、聖なるナイフと手紙を諦め、
彼女がいる方へと、歩き出す。
さいごに、会いたかった。
苦い表情が、彼に浮かぶ。
届けたかった。
でも、間に合わない。
約束があった。
「必ず、戻る────……、……、…… 」
────そして、歩きだす。
つぎ、しめゆ(இωஇ`。)。・:+°










