ぼくらの時が、動くとき⑱
(●´ω`●)またせたや!
キーン、
コーン、
カーン、
コーン……。
「>>>ん……」
「……では、気をつけて帰るように。あまり盛り場には立ち寄るな。号令」
「きり──つ!」
>>> ……!
>>> 慌てて、立つ。
>>> 黒板の上の時計を見ると、もう3時半を回っていた。
>>> 帰りのホームルームを寝過ごしたのか……。
「れいっ!」
「「「「「さよおなら──!!」」」」」
>>> 回らない頭で、ワンテンポ遅れてお辞儀をする。
>>> 銀色の髪が教壇を流れ、廊下へと消えていった。
>>> ほ……先生には、バレなかったみたいだ。
「やっと終わったなー!」
「帰ろうぜ──!」
「ちょっと新作のフルーリーヤバくない!? この後行こうよ!」
「>>>ふぅ……」
>>> ドカッ、と座る。
>>> ホームルームを居眠りするって、なんか寂しいもんだ。
>>> みんながガヤガヤと笑顔になる中、
>>> 自分だけが取り残されてるような気がする。
>>> 何か、大切な連絡事項を聴き逃していないだろうか。
>>> ……まぁ、仮にそうだもしても、死にゃーしないけどね。
(>>>なんだかなぁ……)
>>> クラスメイトは、ぼくに挨拶ひとつせずに、
>>> 明るい表情で教室からチラホラ出ていく。
>>> 薄情者め。
>>> 起こしてくれてもいいだろう。
>>> ま、そう言うぼくも、
>>> ホームルーム中に誰かが寝てても絶対に起こさないけど。
「>>>……ふぁあぅあぅ……」
>>> 穏やかな西日が左側の窓から降り注ぎ、
>>> よりぼくの置いてきぼり感をUPさせた。
>>> ……今日も平和だ。
>>> 昨日の残り物のカレーは、さぞ美味しいだろう。
「え、お前アニソンとか聞いてんの!」
「バッカお前、そういう入り方が世界を狭くすんだよ!」
「>>>……」
>>> しばらく窓の外をポ〜〜っと眺め、
>>> 高校生らしからぬ余韻に浸る。
>>> ────……。
>>> いけない。
>>> 昨日は早く寝たと思ったけどな。
>>> この、陽気のせいかな。
>>> 窓の外にヒラヒラと舞う、桜の花びらが綺麗だ。
>>> ────"桜"?
「>>>……──なんで。今は……四月じゃあ……」
>>> ……。
>>> ……。
>>> ま、いいか。
>>> 散っている物は、散っているんだ。
>>> 騒ぎ立てた所で、綺麗なモンは綺麗だ。
>>> ……、……。
「>>>……帰ろう。こんな日は、生徒会なんて無いに決まっている──……」
>>> あやふやと自分に言い聞かせ、
>>> 使い慣れた机を立とうとする。
>>> ……────あれ?
「>>> うご、かない?」
>>> 机にポンと置いた両手が、
>>> まるで体を押し上げようとしない。
>>> 力が入らない。
>>> 足もダメだ。
>>> 体が動かない。
>>> 時が止まったみたいだ!
>>> 筋肉の動かし方を忘れてしまったみたいに、
>>> ぼくは静かに座っている。
(>>>金縛り、か!?)
>>> ……くそっ!
>>> 金色なんてキライだっ!
>>> 金色なんてキライだっ!
>>> 金色なんてキライだっ!
>>> こんな、まだ明るい教室で、金縛りなんて、
>>> ただ、マヌケなだけだ!
>>> 怒ってもしょうがない。
>>> こういうのは、ちょっとした刺激で動けるようになるんだ。
>>> 周りの奴らを見て気を紛らわせたら────……。
(>>>……──え……?)
>>> 教室には、ぼく一人だった。
>>> だあれもいない。
>>> いつの間に、みんなは帰ったのだろうか。
>>> そんな……誰かいないのか……?
>>> 首の向きさえ、変えられない。
>>> 目線で……、目線が、下がってきた。
>>> なんでだ、なんで視線を下げる!?
>>> 何故、机を見るんだ!? う、うご、け……!?
「>>>……──、……、……、……!」
>>> ゆっくりと、ぼくの顔は俯いた。
>>> 両手は机の上に投げ出され、スフィンクスみたいだ。
>>> なんで、だ、うごけ、うごけ……!!
「>>>……なんっ、でっ!」
>>> まばたきも、できない。
>>> ──ポタリ。と、
>>> 机に、たれた。
(>>>え……涙……!? ちがう……!!)
>>> あかい。
>>> 血だ。
>>> 左目だ。
>>> たれている。
>>> なんでだ。
>>> ──ポタリ。
>>> ──ポタリ。
>>> 泣くように、たれている。
>>> 体は、動かない。
>>> 視界が半分、赤くなった。
>>> あぁ、ああ。
>>> 目の上からも、滴っているんだ。
>>> 左目を、タテに裂くように傷があるんだ。
>>> でも、見えてる。
>>> 机に、血痕が増える。
>>> ……やめてくれ。
>>> なぜ、動かない。
>>> このままだと、左目から、真っ二つになってしまう。
>>> いやだ。
>>> 血痕は増え続ける。
>>> 血痕は増え続ける。
>>> 血痕は増え続ける。
>>> こっ──……、
>>> このままは、一人はっ、いやだっ……!
>>> うごけっ……!
>>> 動いてくれっ……!
>>> ぼくは、、、ぅ……動きたいっ!!
「>>>うっ、いゃっ、あ、ぁ……た!」
>>> たのむっ……! ぼくは、
>>> ぼくは、あきらめないぞ。
>>> 絶対に"止まらない"っっ!!!
>>>だから──……っ!
「 >>>──誰か……、ぼくを、止めないでくれ……っっ! 」
>>> 』
>> 』
> 』
──。
「────『大丈夫』。」
『>>>───────っ!?、……?』
>>> 後ろから、女の子の声が重なって聞こえた。
>>> まだ、教室には誰かが残っていたのだ。
>>> 二つの足音は、ゆっくりとぼくに近づきながら言う。
『みんな知ってる。たくさんの人が知っている。
あなたが、決して止まらず、駆け抜けた事を』
「────全ては:継続しています。
────全てが:証明しています。
────あなたの全てが:未来に繋がっていると。」
コツ、コツ。
────カン、カン。
>>> 首はまだ動かず、背後は見れない。
>>> でも、その声を聞いて、何かが溶けだす気がした。
>>> 顔の左側から流れる血の恐怖が、
>>> 声と、窓の外からの光に和らぐ。
>>> 確かに、桜の花びらが舞っている。
『ねぇ。あなたは、一人じゃあないの。
ずっと、いつだって、一人なんかじゃないのよ』
「────皆が:あなたを認知します。
────未来永劫:し続けるのです。
────あなたの活躍は:語り続けられている。」
『……ふふふ。これでもかって、くらいにね?』
コツ、コツ、……コツ。
────カン、カン、──カン。
「>>>──……、?……」
>>> ふたつの足音が、すぐ両隣で、止まった。
>>> 学校の制服のスカートの柄が、左右にチラリと見える。
>>> この人らは……だれ……だろうか?
>>> こんな声の女子、ぼくのクラスに、いたかな……?
>>> ぼくの顔は、ゆっ、、、くりと。
>>> ──上を、向き始めている。
『それにねっ!
もし誰もが、あなたを忘れようとも───、』
「────全てが:
無かった事になったとしても───。」
" " スッ──…… " "
「>>>……!」
>>> ぼくの動かない両手に、
>>> 小さな手がふたつ、重ねられた。
>>> 視覚が、感覚が、とらえている。
>>> ── 煌めく、黄金の髪。
>>> ── 紅く輝く、王の心。
「 ────『 私たちが 必ず 繋げるわ 』。 」
「>>> ……、きみ、たちは……?」
両の手に、確かにある温もり。
血が滴る左目に、残りの手が覆いかぶさっていく。
上の傷には、小さな少女の手。
下の傷には、人形のような手。
傷口をふさぐ、二人の少女の指の隙間を、
ぼくの血が、伝っていく。
『ごめん……。
私には、これは変えられないことだから……』
「────申し訳ありません。
────私では:あなたに会う未来を:奪えないから──。」
「────『だからっ』:」
「>>> 、 」
──────" たたかって!
黄金の義賊クルルカン ───!!! "
────Download:completed▼
──ガタッ!?
「───うわぁ! あっ、あっ、え!? ここどこっ!?」
……あっ、迷宮跡の隠れ家だ。
「あ、あ、あ、イスっ、たおっれっ、おとっとっとぃとぃとぃとぁあ────…… 」
……ガキコォ────ン……。
「……」
……こっちの隠れ家でも、イスで倒れましたょ。
「うう──……、かっこわるぅ……。
なんか、変な夢を見てたような……。
どんなだっけ……あっ!! また鎧、砕けてるっ!!」
石のレンガの上で、無防備に背中からコケるという醜態。
受け身をヘタこいたらしく、今のでさらに鎧にヒビが入った。
「ち、ちぇ───! この前までは最強の鎧だと思ってたのに……! あいててて……またコレ皮膚、裂けたな」
クラッ……。
「う、おとと……」
あ……これ、やっぱり熱も出てるなぁ。
なんでだろう……。
所々、鎧が剥がれて、
そのたびにポーションぶっかけて治してるからなぁ……。
軽い全身満遍なくの炎症も相まって、
体温調節が効かなくなってるのか?
「……密閉された鎧って、けっこう断熱防寒になってたんだな。まぁ、皮膚の感覚が戻ってきたってコトか……ぶるるっ。やばいっ、布団なんてないぞ……」
オーソドックスな迷宮跡の隠れ家ということで、
つまり石レンガの建築だった。
ぼくの世界の昔の貴族って、石のお城が冷たいから、
壁にも絨毯を貼っつけてたって聞いた事あるし……。
教えてくれたの先生だっけ?
わぁ。やばい、寒い寒い寒い……。
「ああ〜〜、でもポーション使わないと皮膚ヒリヒリするし……まだあったかなぁ」
ふぅぅぅぅ。
レエンの隠れ家から、迷宮跡の隠れ家に帰ってきて、
すぐに机で寝ちゃってたんだな。
ま、ここまで来れば、もうすぐだ。
バスリーちゃんとは、目と花の先。
なんてね。
あれ……? そーいやさっき、学校の夢を見てたかな?
あ、ポーションあった。
「うーん、あまり残りがないなぁ……。
まだエルフの旅団がいれば、他の地域の薬草なんかが取引できそうかもだけど……」
ここに帰ってくるまでも、
一応、旅の商人に会えた。
バスリーちゃんに会うまでは、あんなに見つからなかったのに。
レエンを出発してから数日経った時に、
初めて見るクリーチャーのような魔物と人間の親子が一緒に居て驚いた。
それが正しく商人一家で、
襲われているわけじゃなくて家畜のようだった。
まるでセーブポイントみたいな確率で出会うなぁ、と思った。
まぁ怪しまれたけど。
「お、お前さん、随分と珍しい格好をしているな……」
「お、お父さん。この人、お客さんなの……?」
「ぐるぉ、ぐるぉあ! おえっ!」
>>> え、ええ。旅芸人でして。
>>> これでも、それなりの腕なんですよ?
「……ほおぅ。それにしては、その鎧……」
「ぐぉ、ぐぉう! ぐぉうぐぉ───!!」
>>> ……。
「……いや、何も言うまい。何が欲しいのかね?」
「お、お父さん……だっ、大丈夫なの?」
「ぐぉおおあああ──!」
>>> あ、えーっと、ポーションをあるだけ。
>>> あと……魔法の巻物があれば見せて下さい。
「ふむ……売れるポーションはこれだけしかない。初級だ。
巻物は火のが、少しだけあるぞ」
>>> あ……! それは助かります。
「……包帯は、いらんのかね?」
>>> !
「お父さん……?」
「こう見えても、昔は冒険者をしておってな……。
怪我を隠している者の表情は、よくわかるんだよ。
このポーションは初級だからな。気休めだぞ。
包帯も買ってくれるなら、安くしておこう」
「ぐああ、ぉあああああ──! ぷしゅっ! ぷしっ!」
>>> ……。
>>> あのっ、その魔物は……?
「ん? ホーンパックビースト種を見るのは初めてかね?
見た目はちょいと怖いが、もうコイツは家族みたいなもんでね」
「ら……ララちゃんっていうんだよっ!」
「ぐぶぉおああぁぁあああ──!!!」
>>> ……ぉお。
>>> あっ……包帯も、いただいておきます。
>>> えーと、支払いはこれで……。
「わっ! お父さん、それって……!」
「……!! お、おい、こいつはダメだッ!
とてもじゃないが釣り銭を用意できないぞ!」
「ぐおっ」
>>> あ……お釣りはいいですよ。
>>> 今、その硬貨しかなくて……。
>>> とっておいてください。
「お父さん! こんなにあったらしばらく暮らせるよ! よかったねララちゃん! しばらくベロベロ肉以外のごはんが食べられるよっ!」
「ぐろろぉぅ? がんがんがんがんがんがん──!!」
>>> べ、ベロ……?
>>> ははは、良かったです……。
「ば、バカを言っちゃいかん!
初級ポーション数本と雑貨品で、こんなに支払う奴があるか!」
>>> ……いいんです。
>>> じゃあ、ぼくは急ぐので!
「……!! ま、待ちな、お前さん! 少しだが食料も持っていけ!! ちっぽけな干し肉や豆しかないが……」
「あっ! ねぇ、お兄さん! 私からも、これあげる!!」
>>> ……? これは?
「たんたんたーん! "お手紙セット"! 私が初めて仕入れた商品なのっ。ねぇ、お父さん……いいでしょう? こんなに多く払ってくれたんだもの!」
「そ、それは構わんが……こんな金額に対して、これしきの品物だけでは……」
「ぐろぉおおおお──!」
>>> お手紙、か。はは……。
>>> ありがとう! これも、もらっておくよ。
「えへへっ! まいどありだよっ! こちらこそありがとう!
あっ、私ね? どうしても欲しい絵本があるのっ!」
「こらっ、シゥネ! そんなどうでもいい事を、お客さんにしゃべるんじゃない……」
「ぐおっ、おぶっぼっ、ぼぼっ、ぼぼぼぼぼぅ!」
>>> ふぅん……ふふ。手に入るといいね。
「うんっ! えへへ……」
「これと……これと……こっちがポーションだ!
……。お前さん。これはお節介だが、あんた、かなり体調が悪そうに見える。そんな鎧は脱いじまって、どこかの村の宿で休みな?」
「ぐんっ、ぐんっ! ぷしゅ! がっ!!」
>>> ……ありがとうございます。
>>> そうだね……こんな鎧は早く脱いだほうがいい。
>>> じゃ……ぼくはこれで。
「……気をつけな」
「じゃあね──!」
「ぐおおぉぉおあああああ────っ!」
────と、言う事があった。
「……あの魔物は、グロテスクだったな……。
毛が無かったもんな……あんな敵キャラの──……」
パキッ……。
「……、ぐっ」
鎧の一部が、クッキーのように砕ける。
手で破片を握り潰すと、
あの無敵の硬度が嘘のように粉々になって、
キラキラと風化していく。
金の粒子が、光の魔素に戻っているだろうな。
はぁ……普通の服を買う日は、近いかもしれないなぁ。
「……ふ、ぅ……」
あの行商人の旦那さんが言った通り、
道中、ぼくは体調を崩していた。
"黄金時代"を使う度に、黄金の鎧は崩壊する。
全身の鎧が徐々に剥がれ落ち、肌のあらゆる所が痛痒い。
これに対して体が異常を感じてしまっているようだった。
……風邪っぴきには、なっていないと信じたい。
──ポンッ。
ポーションのフタを取り、包帯の上から染み込ませる。
こうすることで、無駄なく皮膚を治療できる。
ぶっかけると垂れちゃうもんな。
初級だから飲んでも効果がイマイチだろうし。
ツゥ────……ジワ……。
「いてて……」
厄介なのは、今まで無意識のうちに、
切り傷なんかも"凍"らせていたって所だな……。
鎧が砕けた場所によっては、傷口が一気に開いてしまう。
けっこう怪我しまくってたんだなぁ、ぼく……。
「まさか、こんな事になろうとは……」
力を使うと、ちゃんと空間が停止して幻影効果を得られる。
けど、しばらくすると、
光の鎧を養分にしちゃう"精霊花の根"。
"反転"の時を戻す効果。
このふたつの強力な力で、
ぼくはカチカチ金ピカになる以前の姿に、だんだん戻っていくのだ。
前に作った透明のナイフや道具は、
まったく破壊できない停止アイテムのままだった。
光の魔素を取り込まないかぎり、
永遠に壊れることはないだろう。
金ピカのみが、致命的なダメージを受けまくっていた。
「……やれやれ。できれば一気に全身の鎧を砕きたいけど……それをやると激痛で死ぬだろうしな……」
……いたい。
でもそれは、生きてるって事でもあった。
希望がある。それは、ぼくをかなり前向きにした。
いつか全ての黄金が無くなるまで"戻"れば、
普通の人間になれるかもしれない。
……。
これは、戸橋やロザリアの命のかわりに、
ぼくが受け取ってしまったモノだ。
それを思うと、胸が苦しい。
「つッ……、……。くそ……」
マントの下は、あの時のロザリアみたいになっている。
ミイラ男が黄金の半端鎧を着ているのだ。
……あいつも、こんな気持ちだったのかな。
なんだか、奇妙な苦笑が浮かんだ。
「……服、買ってやればよかったなぁ……」
……。
立ち上がる。
思った以上に、総合的な体調が悪い。
この隠れ家までも、スピードは出なかった。
かなりの日数をかけてたどり着き、
何とか地味にキツい100メートルくらいの縦穴をロープで降り、
ヘロヘロになりながら、そこの机で意識を失っていたのだ。
……何日経ったのか、正確にはわからないや。
バスリーちゃんに寂しい思いをさせただろうか。
「ぅ……腹減った……」
目が覚めた時はアレだったが、
起き上がって歩くと、心持ち、体がかなり楽になった。
痛さは、あまりに全身だと、ほっとくと麻痺してくるもんだな。
机と椅子にドカッと座り直し、干し肉と豆、水を出す。
今の体力では肉を食いちぎるのに苦労したけど、
これが美味かった。
あのクリーチャーの旦那さんに感謝だな。
何とか食料も足りて良かった。
エルフの知識が無きゃ、帝国のやり方だけでは飢えていたかもしれない。
ゴトっ。
「あれっ、これ随分前の携帯食料だな……」
……わぁ。
待たせているバスリーちゃんに悪いと思いつつ、
アイテムバッグを整理しようと、机に中身をバラまく。
これ、好きな人に見せられない。
今見ると、要らないものが溜まりまくっている。
後ろの迷宮跡のトラップ跡の穴に、
ゴミをポイポイ放り投げながら、いる物だけを残す。
────キラリ。
その中で、特に異彩を放つモノがある。
精霊花の蕾が入った、透明のナイフだ。
「……。ちゃんと、咲くかなぁ」
戸橋とロザリアの力で、
純度と生命力が戻った精霊花。
それに光の力を与え、成長させる。
「上手く、いってくれればな」
全て、予想の域は出ない、不確かな計画。
本当に出来るかどうかはわからない。
これが唯一の可能性だからなぁ。
……まぁ、ぶっつけ本番だろう。
「むむ……」
マジマジと、ナイフの中身を見る。
琥珀のように入っている、聖なる存在。
────……ふむ。
「……そういえばバスリーちゃん。
精霊花は、精霊王ヒューガノウンの加護を受けた花だって言ってたっけなぁ……」
バスリーちゃんには悪いけど、
ぼくは、こっちの神様の存在を、まるで信じちゃあいない。
いや、神様じゃなくて精霊王か……。
それを信仰している人の敬虔さは、尊いと思うんだけどね?
うーん、ぼくがひねくれちゃってるからなんだろうか……。
「精霊王ってのは、どうも存在を信じられないんだよなぁ……。ロザリアも、お母さんが精霊のなんたらこうたら、呪文がどうたらこうたら言っていっけ……」
大切に首に巻いている、ジグザグのマフラーに触れる。
「……"反転の言霊"は、確かにコイツに宿ってくれていた。
あの、呪文と共に────」
口ずさむ。
「 孤高ではなく────、
憂いではなく ────……、 」
─────ピカッ!!
「────わっ!?」
ひかっ!
ひかった!?
──コンコロロん。
ナイフが、光ったぞ!?
いやビックリして落としたよ。
………。
いや、それに今、このナイフ────。
「……ロザリアの呪文で、少し大きくならなかったか……?」
……花咲か爺さんは、灰を撒けばいいだけじゃないみたいだ。
フラフラとする頭で……。
「……ダメだ、考えてもわからないや。
……動こう。止まらなければいい」
ぼくにやれる事を精一杯、やるしかないよな。
(*´ω`*)魂のにょきっとが足らぬ。










