ぼくらの時が、動くとき④
あ、つめこみすぎた(;^ω^)(笑)
ごゆっくりとお読みください<(_ _*)>。
ある街道途中の休憩所で、
ぼくの周りに、人集りが出来ている。
まぁ、こっちでも、この手の芸は受けがいいのだろう。
この手、っていうのはつまり────
────そ。 "ジャグリング"だ。
「よっ、とっ、はっ」
わざと、陽気な声を出す。
そう、わざとさ。
「わぁ〜〜! すごぉ〜〜い! ビンがくるくるしてるよ〜〜!」
「あら、ほんとねぇ。落ちて割れないかハラハラするわね?」
「はっは! こんな所に大道芸人がいるたぁ思わなかったなァ!」
「あれっ、今、ボールが増えたんじゃないか!?」
「すごい金ピカのピエロだなぁ!」
「やぁねぇ、芸人さんはあれくらいハデじゃなきゃあ!」
……ひぃ婆ちゃんの遺言で「芸人だけにはなるな」というのがあったんだけどなぁ……。
ぼくは、このような人の集まりがある所では、
大道芸人として振る舞うことにしていた。
もっと大きな街でなら、
マントとフードで目立たないようにするけど、
これくらいの、道の途中の小さな休憩所でなら、
程よく警戒心も解け、日銭も稼げるのだ。
荷馬車や押し車を置いて井戸の近くで休憩する人達は、
ぼくが投げる大きめのポーション瓶や、
水晶球のようになった空間凍結ボールを、
楽しそうな笑顔で見ていた。
む……。
あそこに商人を護衛する冒険者の二人組がいるが、
あの表情だと、純粋に余興として楽しんでいるのがわかる。
警戒しなくても大丈夫そうだ。
今は、ピエロを演じよう。
「────よと!」
ポーション瓶は青。空間球は透明。
状態回復薬の瓶は黄緑だ。
陽の光の下でジャグリングをしたら、
ぼくの愚かな金の鎧が、グッと演出してくれる。
光が反射して、まるでミラーボールだ。
目の前の馬車から顔を出す女の子は、
まるで演劇の舞台を見るようなキラキラとした表情で、
ぼくの気まぐれに夢中になっていた。
ま、本業は盗賊なんだけどね。
うん……。
それはいい。
それはいいんだけどさ────……。
『 おかね──☆ へへへ☆ おかね、ここ──!! 』
「…………」
……お前……何やってんの…………。
「おうっ! くれてやらぁ、ミイラっ子!」
「仮装か何かしら? ふふ……どうぞ」
「うわぁ──ミイラだぁ──、えいっ!」
──チャリン! チャリンチャリン!
ロザリアが歩き回り、
取り巻きから小銭を回収している。
地面に置いてあった皿を、勝手に持ちやがった。
……。
……お前なぁ……。
元、帝国の王女だろぅ……。
そのボロ布被ってると、見た目がまんま乞食だからな……。
『 へへへへ────☆ 』
……。
……ま、いいか……。
「────とっ!」
最後に空間球を高く、高く、投げて。
後ろの手でキャッチして、そのまま、お辞儀をする。
愚かな黄金に、拍手喝采が贈られた。
────。
「ふぅ……」
まだ、周りはガヤガヤしている。
だけど、さっきの周囲の反応を見るに、
ここではこの金の鎧を着ていても、もう大丈夫だろう。
派手な旅芸人か何かだと思ってくれるはずだ。
『 おかね──☆ 』
「あ……? あ、あぁ……」
皿に満杯になった小銭を、ロザリアが渡してくる。
なんなんだこいつは……。
こいつの父親のせいで、ぼくらは……。
『 へへへ──☆ 』
……。
はぁ……。
金を受け取り、アイテムバッグへ入れる。
……そう言えば、このアイテムバッグはロザリアから貰ったな。
あの時のこいつはドレスだった。
……ふん。
「……ん? ぉ、おい、ロザリア」
『 なに──☆ 』
「……お前に憑いてる幽霊、なんか……伸びてるぞ」
『 え──☆ 』
あ、こいつ見えないのか……。
まだ魔物になっていない幽霊だからな。
微弱な"魔素"でも、ぼくの"眼魔"なら見える。
で、ニョロニョロ伸びてんぞ。
「なんなんだ……」
胴体が伸びている幽霊を数歩追いかけると、
草むらを、指さしている……?
なんだ?
キラッ。
……?
ひろう。
「……5イェル硬貨……?」
幽霊を見る。
……。
「お前…………死んでるのに、セコいな……」
昼の幽霊は、揺らめいた。
コインを手遊びしながら歩く。
……水のストックが欲しいな。
すぐ隣を、さっきのお客さんが通り過ぎた。
質問する。
「すみません、ここの井戸は有料ですか?」
「あらっ! さっきのピエロさん! さっきの素晴らしかったわ! あー、お水ね? 絶対ってわけじゃないんだけど、あそこに精霊王ヒューガノウン様の像がある小さな祠があるでしょう! あそこに5イェル程、お布施をするのが暗黙のルールなの!」
「なるほど……ありがとう」
「あの木の突っ立て小屋の中で、水浴びもできるわよ!」
「それはいいですね」
見ると、少し大きな試着室みたいな建物がある。
……木造で、蹴ると倒れそうだ。
幽霊のお陰で5イェル儲かった。
ここは日本人らしく、水を贅沢に使うとしよう。
コインをキィンと、指ではね、
像の前の布施台に、チャリンと乗せる。
……。
「……おい。お前も水浴びすんなら、勝手にやれよ」
『 わたしはいい──☆ 』
「……ぁ、そ」
王女はほっといて、井戸で水を汲んだ。
ぶっ壊れそうな小屋に入る。
金の鎧に手をかける。
ギシッッ……。バ、キ……。
「……、……」
大丈夫だ……。
辛うじて、まだ脱げる。
手は、もう……。
────ガチャ。
『 かおみせて──☆ 』
「──おぉおわぁッッ!?」
バカ王女が入ってきやがった!
ぼくは今、上半身裸だ。
『 ふっきん──☆ 』
「お、おいっ、出ていけッッ!」
『 かお、みたい 』
「な、なんなんだよ、この前からしつこいな……!」
『 かお、みせて……? 』
……。
あのなぁ……。
……。
「無理だ……」
静かに言う。
『 なんで、むり? 』
「この仮面は……もう、ぼくの顔に"停止"している」
『 "ていし"? 』
「"止まって"しまっているんだよ。顔の皮膚ごと、固まってしまっているんだ……脱げないんだよ」
『 ぬげない……? 』
「ああ……」
『 ……。ざんねん…… 』
……。
「わかったら、出てけ」
ギィ───、カタン。
ボロい木の扉を閉めた。
小屋から出ると、ロザリアと幽霊が、空を見ていた。
こっちに気づいて、ニコリと笑う。
……。
『 ねぇ、カネトキ、なんで"にし"にむかうの? 』
「……うん?」
『 なんで、"にし"にたびしてる? 』
……。
「……"西遊記"、って知ってるか?」
『 ふぇえ? 』
「……なんでもねぇよ……」
バカか……ぼくは。
こいつに言って、何になる。
「……なんとなく、だ! 特に目的はないさ……」
『 じゃあ、せんせぇも"にし"にむかってるかもしれないね☆ 』
「はぁ? お前、何言っ────……」
馬鹿にしようとして、ハッとした。
ぼくは先生と、よく話していたのだ。
ぼくらは国に召喚されたから、
お抱えの身になってしまったけど。
もし……誰にも属さない自由の身なら、
三蔵一行のように西へ、旅をしてみたいもんだ、と。
それを聞いて、戸橋はケラケラ笑っていたっけ。
「あのねぇ、誰が私たちの三蔵になるんですぅ?」
──そう、言って。
「…………」
『 せんせぇも、にしにむかうかな☆ 』
「そ、……。」
何故か、否定しそびれた。
何かのブレーキが、かかった。
────。
「──よォ!! ピエロの旦那! なんか買っていかないかぃ!? さっき、けっこう潤ってただろぅ!?」
「……っ!」
心が痺れていたぼくに、
この砕けた態度の商人は有難かった。
「そう……だな。何がある?」
「保存食もあるけどよォ、今は"白紙の巻物"なんてモンがあるぜ? 好きな魔法、何でも込めまくりよォ!」
「──! それは普通にいいな。見せてくれ」
商人に手渡された巻物は、確かに未使用だった。
このインクの香りは確かだ。
使用済みを加工した粗悪品なら、ぼくの"眼魔"で見ると光るはずだ。
「……なぜこんなに安い? 中々の品だと思うけど」
「あ……いや……そのぅ、よォ……」
「……!」
"噂"を仕入れる機会なんて、そうそう無い。
わざと声を小さくして言うと……。
「……少し多めに払う。情報を売ってくれ」
「おっ……。へへ……。次の街なんだがよ」
商人は少し顔を近づけてくる。
「どうも悪い噂があってな。街を一つ、とび越えて、そのまた次の街に行こうと思ってる。支度の金が欲しいってことよ……!」
「どんな噂だ」
「若い男女が、消えている」
「……は?」
「い、いや、駆け落ちとか、そういう話じゃねぇぞ!? 5歳くれぇから17歳くれぇの男女が、ある日フッッと煙のように消えちまうって話だ」
「……誘拐、と言うことかぃ?」
「あぁ……どうもな、エルフが関わってるって話だ」
「? エルフが?」
「次の街はなァ──、"エルフの隠れ里"が近いんじゃないか、って噂で前々から有名なトコでよォ!」
「……で?」
「数ヶ月前に、街にエルフの戦士が現れたんだと!」
「!」
「そして、街の門番にこう言ったらしいぜ! 『青年と娘を寄越せ!』ってな……」
「……! 本当か?」
奴隷として虐げられている彼らが、
人族を誘拐だって?
……。
「いや、噂の域を出ねぇから、まァ、わからんさ! でもよォ、エルフっつったら魔物のいる森で生きてる、野獣みたいな奴だろぉ!? 顔はそりゃ綺麗だけどよ……俺ァ、おっかなくて仕方ねぇよ!」
「……消えているのは17歳くらいまでの人だろ。あんたは心配ないじゃないか」
「ばっきゃろう、俺は18だ!」
お!? 同じ歳だ……。
「そ、その街に現れたエルフはどうなったんだぃ……」
「門番としばらく睨み合って、森に消えたとよ」
「……」
「で、買うかい」
「……。ああ。巻物とくれ。食べ物も頼むよ」
「あとよォ……ピエロの旦那ァ……」
「……ん?」
「こいつは、どうよォ」
バサァ、と商人が広げたのは派手な色のローブだった。
ギザギザの模様のマフラーのようなものが巻き付いている。
……? 背中のマントを叩いて言う。
「いや……ぼくはこいつがあるからいい」
「ち・げ・ぇ・よ! そっちの嬢ちゃんに、だ!」
「……──え?」
『 へひひ──☆ 』
あ……ロザリア、に……?
「あのなァ旦那……人の奴隷に口を挟みたくないが、その包帯の上にそのボロ布は、流石にどうかと思うぜィ? そりゃ、哀れみがあった方が金は集まるけどよォ……、旦那の芸の腕前なら、そんな小細工しなくても金は集まらァ!」
「あ、いゃ、これは……」
「いい!! 皆まで言うな! 俺ァわかってる! そんなボロボロの嬢ちゃんを世話してる兄ちゃんも、何か訳ありだろぅ! 怪我負いの奴隷を引き取るなんて、そうそうできるもんじゃあねェぜ!!」
『 できるもん☆ できるもん☆ 』
そ、そう言えばこいつ、
包帯まみれだけど、やっぱり怪我してるのか……?
元気そうに見えるが……。
「でもよォ! せっかくの機会だァ! これは運命だァ! ここで、このボロ布たァおさらばよォ! どうでいどうでい、どぅどぅでいいィ──!!!」
「ぁ、あぁ────っとねぇ……」
そうか……。
このボロ王女が隣にいると、
ぼくが非人道的な人間に見えるのか……。
間違いじゃないけど……うぅむ。
いや待て。
何故ぼくが、こいつなんかに施さなきゃならないんだっ!!
詰まる所の、仇の娘だぞ……!
金の詰まった、帝国製のアイテムバッグを見る。
……。
『 へへひ──☆ 』
「……」
召喚したての頃は、
こいつの配下に随分と世話になったな……。
王はあんなのだったからな……。
……くそっっ。
「……いくら」
「まいどォ☆」
『 へへへ──☆ 』
「おい、ロザリア。あの突っ立て小屋で着替えてこい。あっ、こら、そこはぼくが水浴びしたから下がベチョベチョだろっ、隣いけっ、隣だ、ここで脱ぐな入れっ! ……バカかお前……」
……。
突っ立て小屋から出てきたロザリア王女は、
それなりに清潔な布を被り、
ジグザグ模様のなっがいマフラーみたいな物を、
体に巻き付けていた。
……それ、ターバンみたいにして使うんじゃ……。
「はぁ……」
「あ、ちなみによォ、ピエロの旦那」
「おあっ、まだいたのか……」
さっきの老けた商人が話しかけてきた。
同じ歳ではあるが……。
「あんた、船にのる金はあるのかい」
「は?」
「橋が壊れて、今は高級船の席を買わなきゃ、次の街へはいけないぜ?」
……。
「────はぁあァッッ!!?」
『 へへひ──☆ 』
ニョロニョロ。
活動報告に、第二巻の進捗のお知らせが、
うっ、うっ、のっています……(´;ω;`)










