しゃりんダンス?
空中を、ゆっくり、落ちている。
なんで、こんなに飛べたんだ?
「おっ、とっと……」
着地しなきゃ。
くるくるくる。
これだけじゃダメよね。
あ、また蔦だ。
なんか、遅いな。
あ、ここ、いい足場になりそう。
こういう角度がいいな。
そう、そこそこ。
「────よっと!」
────カィィン!
「ギオオオオオ───!!」
絶妙なタイミングで蹴りこまれた歯車は、私の体を失速させるだけではなく、蔦の頭に致命的な一撃を打ち込む。
くるくるくる。
トンッ。
すごく、余裕がある着地となった。
「────どうなってんの?」
目の前で、バラバラになる、5本の大蔦。
あれ、私が攻撃したんだよね……。
『────解。
反射速度の上昇効果によって、より効果的な設置分析が可能になったと推測。』
「はんしゃ? 光とかの?」
『────この場合、"反応"に近いものです、アンティ。』
「えっ、と──……?」
『────あなたの反射速度は、"脊髄概念"に起因しません。
────オートではありません。
────マニュアルなんです。』
「説明書って……?」
え、えっ──と……。
ぷ、ぷしゅ────……。
『……────意訳開始。』
『────あなたは、ゆっくり見る事ができる。』
『────あなたは、考えて避ける事ができる。』
『────あなたの、思考のはやさ自体が、格段に、上昇しているんです。』
「な……何よソレ……」
なに言ってんの。
私が早く考えても、時間の速さは変わらないでしょ……?
え……? アレ……?
「ぐがらうううぅうぅぅぅぅう……」
「おわっ」
超、上から覗き込まれてましたぁ……。
うわっ! 何あれっ! 太いっ!
「クラウン見てみてあれ! 超太いよ!?」
『────質量直径:5メル30セルチ、蔦部攻撃、きます。
────とっとと避けてください。』
「言い方! あれキツくない!?」
その、
『────そんくらいできんだろ。』
みたいな言い方なに!?
グレたの!?
────ごおおおお!!
うわぁ、きたで!
前から、思いっきり、風、切ってきてる!!
どどどどうするの、普通に避けていいの!?
きゅぃぃぃぃぃん……
あ、仮面、あったかい。
トンッ
まず、当てたのは、手のひら。
もちろん歯車で補強済み。
軽くとび、両足を持ち上げる。
蔦は下を、とおっていく。
違う蔦がきた。
これも、太い。
横なぎに、はらってくる。
あ……これよく見ると、相手の両手だわ。
蔦まみれで、わかんなかった。
いやいや、こんな事、考えてる時じゃない。
じゃないはず、なんだけど……
何か余裕あるわね……。
いや、油断は、してないけど……物理的に?
だって、遅いんだもん……。
ていうかホントに蔦で、できてるわね。
段差があるわ。
…………──と。
コン、コン、コン。
ホップ、ステップ、ジャンプ。
────いや、だって……
あんなの、ただの階段じゃない。
避けるっつうか……歩いたわよ?
「ぐるがガがああああッッ!!!」
うるさい。
くぐもって聴こえる。
パンチしてきたわね。
モップみたいな手ね。
どうすっかな。
やってみたのは、かかと落とし。
これは、攻撃のため、じゃない。
モップパンチの上に、引っ掛けるように、当てる。
ギャッ、カコンッ!
攻撃を、蹴り下げる。
と言っても、私に、この質量を蹴落とすのは、ムリ。
食堂屋の看板娘に、そんなパワーないでしょ!
つまり、実際は、私の身体が上に流れた、だけ。
くるくるくる。
世界がまわる。
そりゃ、あの速さのパンチを踏み台にすればね。
もう片方のモップ腕が、くる。
うわぁ、ひじ打ちっぽい。
ん? これ、私から軌道それてないか?
……あわてたっぽいね。
────これ、足場にしか、ならないよ?
もちろん、モップ腕に接地する前に、
両足の歯車は、回転済みだ。
……まてよ?
片方の回転数さげたら、曲がるんじゃね?
(クラウン)
『──実行済。』
いい娘ね。
きゅるるるるるるるる!
ぎゅるるるるるるるる!
「ぐがらあぁぁあ!?」
「どこ、見てんだよ」
────ギャルルル、ガオン!!!
「きぐごあああああああああぁぁぁぁ!!!」
右眼、もろたで。










