"営業スマイル" さーしーえー
(*´∀`*)ギルドも色々大変だと言うお話です。
「お、おい! 北の山が、また光ったぞ!」
「マジかよ……! きょ、局地的な雷だって?」
「みみみ見に行こうぜっ!?」
ダダダダダダダダダダ───……。
あー、また冒険者の方が出ていかれましたね。
いきなりですが、
私、"ユキコ・ヨワタリ"と申します。
パートリッジギルドの新人職員です。
ペーペーです。
名前でお察しの通り、ナトリの街の出身ですね。
なんの因果か、南の街から北の街まで来てしまいました。
最近のパートリッジの街は、激動の大忙しです。
雪は止まないわ、
クルルカンさんは来てくれるわ、
雷は止まらないわ、
意味がわかりません。
わかりませんが、私も一、ギルド職員です。
がんばります。
うん。さっきまで、がんばっていたんですが……。
「うひひひひ……! 見なよユキコ、膠着状態よ?」
「は、はぁ…………」
私は今、先輩のギルド職員のリルレカさんと、
大白柱の一本に隠れています。
大白柱っていうのは、
巨大なドーム状である、
パートリッジギルドの受付カウンタを支える柱です。
何本かあるんですよ。
そこに隠れてます。
あ、そこから見えます?
そう。白っぽい髪で前髪パッツンポニテたれ目が私。
エンジ色の髪の天パの女のヒトが、リルレカ先輩です。
ぶっちゃけ、私の教育係の方です。
「お、おい、俺たちも外の様子を見に行こうぜ!!」
「あ、ああ!! あんな異常気象、一大事だもんなっ!?」
ダダダダダダダダダダダダ……。
また、冒険者の方が出ていきました。
いや、逃げました。
わかっています。
確かに、今の北の山は、異常です。
頂上で、雷が鳴りまくっています。
でも、さっきからソレを理由に出ていく冒険者さんは、
ココの空気の重さから、逃げ出したかっただけです。
私たちは柱の物陰から、受付カウンタを覗いています。
そこでは、二人の御仁が、睨み合っていました──。
「……マジてめぇ、さっさと吐けテメコノヤロー」
「あのですねぇ、さっきから言ってますよねぇ……? ハッ」
プレミオムズ魔法職、
"マジカ・ルモエキラー"さん、その人と、
我らギルドの仲間、対クレーマー対応係、
"ヒーユリット・スマイル"さんです。
「うひひひひっ、こりゃ面白くなってきたわねー」
「……先輩、前から思ってましたが、その笑い方、下品ですよ……」
フワフワ……。
受付カウンタのヒーユリットさんに絡んでいるマジカさんの後ろには、木箱が20ヶほど、ふわふわと浮いています。
すごい……。
浮遊魔法で、あんな数を……。
流石、"魔法職"のプレミオムズといった所です。
あの小さな身体のどこに、そのような大魔力が秘められているのでしょうか。
あんなに、ちっこいのに……。
あんなに……寸胴なのに……。
実家にあるコケシにそっくりで、ちょっと可愛いです……。
「てめーマジいいかげんにしろ、マジで切れっぞテメー」
「だからねぇ……言えないって言いましたよねぇ……?」
ただ、マジカさんは、口が悪いので有名です……。
"毒舌のマジカ"とは、あの人のことですよ……。
「クルルカンの後に、えらいのが来たわねー」
「マジカさんとクルルカンさん、面識があるんでしょうか」
「さぁねー。どっちもプレミオムズだから、名前くらいは知ってんじゃないのー? ただ口は悪いから、仲は知らないけどさー?」
「私、前にマジカさんが来た時、挨拶したら"萌よ滅びろ"って言われたんですけど……」
「あら、羨ましい。それ、暗に"美人だ"って言われてんのよ」
「そ、そうなんですか?」
「あんた今いくつ」
「17です」
「19までに絶対結婚できるわ」
「マジ……ですか」
「マジよ。あの人に"滅びろ"発言されたヤツは、必ず幸せな家庭を築けるって有名なのよ。チッ……」
こっ、この人いま、舌打ちしました?
先輩が結婚できないのは、私のせいではないですよぉ……。
「マジイライラ……マジイライライラ……!!」
「これだけ言っても、まだわからないんですかねぇ?」
事の発端は、シンプルでした。
つい先程、マジカさんが、
ホールエルの街からの食料を持ってきてくれました。
あの、プカプカ空中に浮いている、いっぱいの木箱です。
なかみは……「あ、魚」だそうです。
……リルレカ先輩、なんでマジカさんの物資リスト持ってんですか。
最初に対応してたの、リルレカ先輩ですね?
厄介事、ヒーユリットさんに擦り付けましたね?
あ、話がそれました……。
それで、マジカさんがギルド受付に着いたら、
なんと大量の配達待ちの物資が積んであるのを見つけちゃってですね。
クルルカンさんが持ってきてくれたやつの一部ですね。
それを見て、ビックリしたマジカさんは、
ギルド職員の一人をとっ捕まえて、
「マジ意味わかんねぇ、この補給物資もってきてたのマジ誰だ」
と、なった訳です。
マジカさんからしたら、けっこう無茶な方法でホールエルから物資を運んで来た(たぶん"浮遊魔法"使いながらホウキで空を飛んできた)訳ですから、それを超える速さで運ばれた、大量の物資量を見て、物凄く不思議に思ったわけです。
そして、いつの間にかヒーユリットさんに対応がバトンタッチされていた、と。
こういう訳です。
マジカさんの対応をしているヒーユリット・スマイルさん。
ちょっと小太りの、おじさん職員です。
この方は、この手のトラブルのプロだと聞いています。
でも、さっきからなにやら、言葉にトゲがあるような……。
「テメェェェェエ、マジちょーしのってっとなぁぁぁあ」
「おや、調子に乗っているように見えるんですねェ。はァ……当たり前の事を言っているだけなのですけど?」
(だだだ、大丈夫かなぁ……!?)
クルルカンさんの運んできた物資は、
ドニオスギルドの"イレギュラーコール"が適応されたものです。
我らがパートリッジのために、ドニオスが切りたくないカードを切った。
ペーペーの私にだって、わかります。
あの義賊さんのアイテム格納質量は、異常です。
何かのバランスを、崩してしまえる危険な能力。
我らはその力の執行に敬意を表し、
決してそれを口外してはなりません。
もちろん、他のプレミオムズの方にもです。
なんとか、マジカさんには帰っていただかないと……!
「いいからマジ教えろコラ。誰がコレ運んできた」
「規則って、わかりますよね? 言う必要のないものは、言・え・な・い・ん・で・す・よ? ──ねぇ?」
「マママママママママママママ……」
ま、マジカさんの、青筋が……っ!
「(ちょ、ちょっと先輩!? アレ大丈夫なんですか……っ!? ヒーユリットさん、めちゃくちゃ煽ってるようにしか見えないんですけどっ!? この手のプロなんじゃあなかったんですかっ!?)」
「(ふ、バカねぇユキコ……ヒーユリットはね、このギルドで、"三撃のスマイル使い"って言われてんのよ。どんなクレーマーでもボッコボコよぉ……!)」
「(さ、さんげきのスマイル使い……? スマイル0イェン的な感じのアレです……え!? 今ボッコボコって!?)」
「(アイツはねぇ……たとえどんな相手だろうと、"正論をズケズケと嫌味ったらしく言える天才"なのよっ!! どんなクレーマー冒険者でも、ブチ切れて帰るわっ!!)」
「(いいぃぃいいいい〜〜!?)」
「(うわっはっはっは! そして見てなさい!! アイツが"三撃のスマイル使い"と言われる所以をっ!! それっ! もうすぐ最初のが出るわよ……!)」
「(……!?)」
「わざわざこんな目立つ所でダダコネとは……ぷぷっ(失笑)」
「…… マ──── ……!?」
「で、でたぁっ────っっ!! "失笑"のファーストスマイルぅぅ!! にはははははははっ、ゲラゲラゲラゲラゲラ──!!」
「ぅっわぁぁあ──!?」
ぃ、いや……リルレカ先輩……!?
笑い転げてる場合じゃないですよ……!
今の、ゼッタイ笑っちゃいけないタイミングでしたよ……!?
見てください!?
マジカさん、怒りで肩が震えてますよっ!?
救援物資を運んで来てくれたプレミオムズの方に、何をぶっ込んでるんですか……!
ヤバいですって……!?
え、あれっ、あっちの柱に隠れてる職員さんも、肩が震えてる……?
え、アレ笑ってるの!?
いやいや笑う所じゃないでしょ!?
何が面白いの──ッッ!?
「マジぶっ飛ばすマジぶっ飛ばすマジぶっ飛ばすマジぶっ飛ばすマジぶっ飛ばすマジぶっ飛ばす」
「やれやれ……こっちは正論を言ってるだけなのにねぇ……『マジぶっとばす』ですって(苦笑)」
「マ──…… 」
マ、マジカさんの、顔が、顔がっっ!!
「(き、キタぁ────っっ!! "苦笑"のセカンドスマイルぅぅう!! あっは、はっはっはっはっは、ぐ、ぐふっ!!)」
ペタペタペタペタペタペタペタ!
いや……。
なに大白柱たたいて喜んでるんですか先輩……。
今年、29歳でしょう。
こんな事で笑っているから、婚期を逃すんですよ……。
ブフォ──────!!
(────っ!?)
え……!? あそこで座ってる冒険者さんが、
口からBEERを噴き出したっ!?
どうしたんでしょうかっ!?
ゴトン……。
ジョッキを置いて……、
「あっは……はっはっはっはっは……!
これはたまらん、傑作だ……!」
パチ、パチ、ペチ。
(えぇ〜〜……!? なんで急に手を叩いて笑いだしたの……!? もしかして、ヒーユリットさんとマジカさんのやり取りを見て笑ってるの〜〜!? こ、こわぃよ〜〜!! 何が面白いの〜〜!? ヒヤヒヤしか感じないですよ〜〜!! パートリッジの人の感覚がわからないぃ〜〜!!)
「(ユキコ……"スマイル使い"をよく見ておきなさい……。アイツの精神には、学ぶ所があるわ……)」
(えぇ……何で急に真面目モードなの、リルレカ先輩……)
「……せ、先輩、あんなのよくないですよぉ。カウンタ業務は、真心込めて、誠実に受け答えしなきゃ、いけないじゃないですかぁ──……」
「はぁ? アンタなに言ってんの? ある程度お客のことクソ野郎だと思ってないと、丁寧な接客対応なんてできないわよ? 園児に丁寧に物を教える感覚を身につけなさい。芝居よ芝居。冒険者様は神さまです、なんて心から思ってる奴は即ノイローゼよ。バカに付ける薬は無いと思って接しなきゃ」
(あ、この人けっこうヤバい人だ……)
「…………、マジ…………」
「ま、これ以上ゴネるようでしたら、違反例として掲示に張り出して、晒し者に成ってもらいましょうかねぇぇ……?(薄笑)」
「 ── 」
「(き、決まったわ……! "薄笑"のラストスマイル、よ──……! 見なさい……! あのまるで勝ち誇ったかのような見栄だけの笑い……! ただただ、相手を薄ら笑うおっさんの笑顔……! あれは、並の人生をおくってきたものには受け止められないわ……! こうなればもう、ずっとヒーユリットのターンよ!)」
(何言ってんの、この人……)
「──────……」
「おや、お黙りですねぇ。プレミオムズとあろうお方が、自分より多くの物資を運んた者がいるだけで、突っかかってくるなんて、ねぇ……?(失笑) 冒険者の「杖の振り方」辺りから、やり直しされては────」
「────ベッ!!」
!?
つ、つ……、
((( つば、吐きよったぁぁ────!!? )))
「(ちょ、ちょ! 先輩!? つば吐きましたよ!? つば! マジカさん、床につば吐いちゃいましたよ───!?)」
「………!! 、……! …… !! ……、……!!」
「せ、せんぱいぃ──!? なに声殺して爆笑してるんですかっ!? こっ、怖いですからぁ〜〜!!」
「……! ……し、しぬ、笑いじぬ……!! ……!! ふっ、ふっきん、が……!!」
(こ、この人、ダメだわ……!)
いや、よく見てみなさい私!!
なんか、けっこう笑ってる人いる!!
パートリッジギルドは、魔窟だわ!!
世界が私を試しにきた!!
「はぁ、はぁ……ヤベぇ……。"スマイル使い"関連で、今日が一番おもしろいわ……。あ、ユキコ。あそこに、ほふく前進でマジカちゃんのつばを拭き取ろうとしてる冒険者がいるでしょ」
「え? あ、はい……。ハンカチで拭いてくれようとしてますね。親切な方ですね」
「そこのレンガで殴ってきなさい」
「……意味が……わかりません……」
「早くしなさいっ!! これは先輩命令よっ!!」
「いみが〜〜、わかりませぇぇん〜〜!!!」
「いそぎなさいっ!! 手遅れになるわよっ!!」
……。
ゴトっ。
おも。
「あたまにレンガの重みだけで落としなさい。後ろからよ」
……。
ソソソ……。
ゴンっ!!
タタタ……。
「……殴ってきました」
「見てた。よくやったわ」
「……あの……、なんで床を掃除してくれようとした、親切な冒険者さんを殴らなければいけなかったんですか?」
「あんたホント甘ちゃんねぇ……。あいつの目的はハンカチの転売よ。全国にどれだけのマジカちゃんファンがいると思ってるの。ギルドの不祥事になる所だったわ」
「 ……──── 」
(……私、このギルドに務めてよかったのかなぁ……)
「やれやれ……神聖なギルドの床につばを付けるとは、それがあなたの理想とする冒険者の姿ですか? 人生をやり直され「お前マジうぜぇ消えろ」
あっ。
宙に浮いてる木箱たちから────……。
パカッ。
「ご、ごべぁぁァ"───────!!!!!」
ヒーユリットさんに、たくさんの魚が降り注いだ。
……。
わぁ。
生臭いなぁ……。
あー、みんな笑ってるなぁ……。
「あの……助けないんですか?」
「なにを?」
「ヒーユリットさん」
「なんで?」
「いや、だって、代わりに対応してもらって」
「やぁよぉ。私あいつ、嫌いだもん」
「……──は、い……?」
「あいつ、いつも嫌味ったらしいもん」
「……、……。で、でも、いつも正しい事を言っているんでしょう?」
「やぁねぇ。たかが人間が、いつも正しいワケないじゃないの」
「えぇ〜〜……」
「私の体感で、アイツは6割正論、4割暴論、って所よ。てことはよぉ? アイツの人生は、6割が正しい事を言ってる嫌味ったらしいヤツで、4割が間違った事を嫌味ったらしく言ってるヤツってことよぉ。間違った事を、さも正論のように嫌味ったらしく言ってる時があるヤツに、人は手を差し伸べないわ」
「いや、でも……いつもクレーム処理を押し付け……」
「あいつ、報告書の仕事、でんでダメだからねー。文章がヘタなのよー。だからイケニ……一番得意な仕事をまわしてるワケ」
いま、生け贄って言いかけましたよね……。
「マジ失礼。礼儀正しくしろ、ペッ」
ぅ、うっわぁ……。
マジカさんが一番言っちゃいけない言葉だぁ……。
「流石プレミオムズ、いい事言うわね……。いい? ユキコ、アンタも正しいか間違いか以前に、いつも礼節をもって人に接するのよ。じゃあ勝手に人が集まってくるから。魚まみれになりたくなければ心がけて」
(なるかぁ……)
「ぐ、くふ……」
モゾり。
あ、魚の山の中から、ヒーユリットさんが………。
「あ、生きてた」
「…………」
「マジいらねーな。"浮遊魔法"」
「──フゴッ!!」
あ、魚が一匹、ヒーユリットさんの口に突き刺さった……。
あれじゃ、笑えないね……。
む、むごぃ……。
言い方はアレだったけど、
決まりに則って、隠そうとしただけなのに……。
「ヒーユリットさん、さすがに可哀想です。後でキャンディでもあげようかな……」
「やめときなさい。その手の優しさに慣れてないから、すぐ惚れられるわよ」
「え、それはヤダ……」
「賢明ね……自分の幸せを大事にしないやつは、他人の幸せを願う権利はないわっ!」
リルレカ先輩……。
何カッコつけて、意味わかんないこと言ってるんですか……。
「なぁ」
「え、わわっ!!」
マジカさんっ!?
いつの間に、私のそばに!?
あっ、リルレカ先輩、いないっ!!
逃げやがったな、ちくしょー!!
「なぁ……マジ教えてほしいんだけど、この物資、運んでくれたの誰だ……?」
「う、ぅ……それは……」
下から、見上げられる。
最強の魔法職に、見上げられる!
ああ、そんな目で見ないでください!
ほんっと、実家のエリーゼちゃん(コケシ)にソックリですね!?
しかし、私も曲がりなりにもギルド職員……!
"イレギュラーコール"の事は、言いませんよぉ〜〜!!
「じぃ〜〜〜〜〜〜〜〜……」
うっ! 言えません、言えませんよ!?
クルルカンが、助けてくれたなんてっ……!
ちょ、タンマ、タンマです!
はぁう……!
先輩そこの物陰でしょ!?
助けてください────!!
「じぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
にゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
────バタァァァァアアア──ンン!!
「「「「「!?」」」」」
何事っ!!?
ギルドのドアが、蹴り開けられた!?
な、なんて無礼な!!
入ってきたのは────……!
「 ────とおせ!! 」
「 ──道をあける!! 」
──ギルドマスターと、チロンちゃんッッ!?
すごい慌てて、入ってきた!!
あの冷静な、ブレイクさんがっ……!?
──!! ブレイクさん、腕に何か抱えてるっ!!
布に包まれた──……あれって、人!?
あの金色のなびいているのは、"髪"?
あれって、まさか────……!?
「────"クルルカン"……?」
「え……!?」
マジカさんが呟いた言葉に、驚いた。
髪の毛しか、見えてないのに────!?
ブレイクさんとチロンちゃんは、
魚まみれの受付カウンタに近づく……!
「そこの魚に埋まって遊んでいるのは誰だっ!! 奥の仮眠室の鍵をよこせっ!!」
あ、あそ……、
運命のイタズラが、ひどすぎる……。
魚の中のから、ヒーユリットさんが、
口から魚を落としながら、現れた。
「あ……あ……マスたぁ……私は、私は……」
あ、ヒーユリットさん、涙目だ……。
あれ、アレだ……。
がんばって、機密事項を喋らなかったの、
褒めてほしいんだ……。
でも、ちょっと……、
私から見ても、タイミング悪すぎです……。
「あの、私の仕事を……」
「ふんっ!! お前の事など、どうでもいい!! じゃまだっっ!! ──チロン!!」
「アイサー! チローン、キィ────ック!!」
しゅたたたたたた……!!
チロンちゃんの可愛い蹴りが、
カウンタ周りの魚を吹っ飛ばしていく。
かわいい。
あ、すごい。
カラの木箱に、魚が綺麗に入っていく。
救援物資だもんね。流石です。
魚がいなくなったカウンタの引き出しが開けられる。
キツネ耳が、ピョコピョコ動いた。
「カギ、ゲットなり」
「ふんっ!! 急ぐぞ────!!」
「マジまてコラァ────!!」
「あっ」
ぴょい、ピュピュ──────ンン!!!
マジカさんが、ホウキに乗って、
飛びながら、走るブレイクさん達を追いかけてった──……!
「むっ!? ふんっ! この口悪魔女め! 何をしにきたのだっ!!」
「マジ失礼。魚持ってきたマジカは偉い」
「チロンはビックリした。受付が魚の山だった」
ドドドドドド…………。
嵐が、去っていく……。
「ギルマスの腕にいたの、あのクルルカンちゃんじゃない? 大きな布で包まれてて、よく見えなかったけどさ?」
リルレカ先輩……。
よくもさっきは逃げましたね……。
ほんの少しだけ、静かになったギルド。
外には、まだ荒れる雪山が、そびえている。
受付カウンタ内の魚の山で、
ヒーユリットさんが、両手を床に着いて、項垂れていた。
ヒーユリットさん……、
ギルド、辞めたほうがいいよ……。
この団体に、属さない方がいいよ……。
何か違う方向で、楽しく生きましょう……?
みんな、ちょっとアレですから……。
私もキャンディ、あげないけど……。
「そうか……これが営業スマイルの末路か……」
「リルレカ先輩、ちょっと黙って」
我が故郷、ナトリの街のお兄様。
色々ありますが、ユキコは何とか、やってます。
悲しみの連鎖をこえて……!!(`✧ω✧)+










