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やめよ……? さーしーえー

ごめぬ……先に謝っておく……(´;ω;`)



『────……認めたく:ありません。』

『>>>後輩ちゃん……今……何てった?』



 金の少女に近しい二人は、困惑した。


 金の王冠は、知っていた。

 その名が、彼女の夢の始まりだと。


 金の仮面は、察した。

 憧れの人が、敵になるデジャヴを。


 魂が、揺るがされる────。



「……紫電(しでん)の、魔法使い……」

「──IIIIIIIIIII────……!」



 かくて、ページは紡がれる。


 ──歯車は、噛み合った。



「……やめ、よう?」

「GIGIGI……GIGIGIGI……!」



 既に、何回かの攻防があった。

 金は放心し、銀は唸った。


 それでも。

 そうだと(・・・・)わかった金は、強かった。



「──IIIIAAAAAAAAAAA─────!!!!!」

「…………やめ、よぅ……?」


 ガ……キィんん……!!


 振りかざされた狂いの爪を、金の少女はいなす(・・・)

 彼女の両腕は、歯車を組んだ大きな腕になっていた。

 銀の爪と、金の拳。


「──UUUUUUU──……」

「ねぇ……やめ、よ……?」

「──IIIIIIIAAAAAAAA────!!!!!」


 銀の体に、電流が(ほとばし)る。 

 金の目は、虚ろ。

 金の王冠と、仮面がいる空間に、変化が起きる。


 ──ピピ───、ピピピ──!

 ゥゥゥ、ヴォヴォヴォヴォ──!!


『>>>っ!? これはっ!? アナライズカードか!?』

『────……!:

 ────各デバイス:マニュアルデータです。

 ────アンティが介入:コピーしています。』

『>>>!! 今まで開発した全てのをかぃ!?』


 王冠と仮面が座る幻影のコックピット。

 その側面、両側から、大量の光の板が吐き出される。

 それらは空間で飛散し、粒子となる。


 現実世界の金の少女の周囲に、

 情報は、細長い透明の光として顕現する。

 まるで、無数の剣のようである。


「やめよぅ……?」


 しゅたたたたたたたっ。


 光の剣は、規則正しく、金の少女に刺さった。

 後頭部、背中、両肩。

 ゆっくりと、等速で体内に吸い込まれていく。


『────……複写マニュアル:全て体内流路に転送(ダウンロード)されました。』

『>>>……! このバカっ……! あの長細いアナライズカード一枚で、常人なら脳が焼ききれる程の情報量なんだぞっ……! それを全部、自分の流路にぶっ込みやがって……!』


 パァァァ……、ァァァ……。


 全ての情報を飲み込んだ少女。

 金の髪は、淡く光った。


「ねぇ……やめよう……?」

「──GULLLLLLLLLLL……IIIEERRRLLDDDYYYYYY──!!!!!」


 咆哮。

 稲妻の雨。

 歯車は、全てを格納する。


「もぅ、やめようょ……」

「GULLL──」


 銀の爪を振るう。

 地表の雪より、銀の牙。

 空中に出た歯車と、黄金の鎧が噛み合う。

 スライドするように、金が流れた。

 三つに別れた銀の牙の道は、見当違いな方を穿(うが)った。


『────"氷乱(コルラン)":回避成功。』

『>>>……! ……もう、避けられるのか……!』


「やめよ……? ね……ね?」

「…………」


 ───ギコォンン!


 銀の体より、鎖を携えた槍が真横に発射される。

 銀の少女の姿が、再び掻き消える。

 後ろから突き刺さらんとする爪を、

 金の少女は見ず、半歩で避ける。


 黄金の鎧の各所には、

 既に、獣の爪のような、

 透明のデバイスが展開されている。


 巻き付こうとする鎖。

 黄金の回転が、砕き斬る。

 破片が落ちる前に、電撃。

 歯車に当たって、屈折した。


「やめよぅ……?」

「GI…………」


『────頼みがあります。』

『>>>ぼくにか』

『────今の私は:役立たずです。』

『>>>そんなことはない』

『────私の予測が:間に合いません。

 ────アンティは今:全てのデバイスを使いこなしています。』

『>>>……』

『────私の有用性は:一点のみです。』

『>>>んなこと、言うな』

『────"対象の:分析(アナライズ)をする事"。』

『>>>でも、それは』

『────アンティと:隙を作ってください。

 ────当機は:"狂銀"の分析に全てを捧げます。』

『>>>……リスクがあるな?』

『────当機ハードウェアの積層防御を解除し:感度を上げます。』

『>>>やめてくれ』

『────頼みます。カネト。』

『>>>やめろよ……』

『────彼女は:"紫電(しでん)"です。』


 王冠の少女は、笑った。


『────私は:救うための"分析(アナライズ)"をしたいのですよ。』

『>>>……』


 仮面は、何も言えなかった。


『────やります。

 ────お願いします。』

『>>>……、……』


 パリン……。


 紅い宝石が光る、金の王冠より、

 光の装甲が霧散する。

 冠の等速回転は停止し、宝石の面は、

 激しく動く狂銀の方向を捉え続ける。


『────トライ1:失敗。』

「そんな仮面……とって……」

『>>>……!』


 ボロ布を纏った銀の少女。

 先ほど砕いたはずの狂銀の仮面は、

 ほとんどが修復されていた。

 二本のツノが、天を向いている。

 仮面の中の義賊は、

 先程までの分析結果的を見ながら、祈るように言った


『>>>……よく聞いて、後輩ちゃん……。あの仮面は周囲の氷と金属を使って再生してる。あの子は、この場所(フィールド)の流路と繋がっているんだよ。あの二本のツノが、アンテナのような役割をしてる。仮面を、砕くんだ……』

『────トライ4:失敗。』

「そんな仮面、脱いで……」

「……IIIU……」


 果たして、仮面の言葉は、金の少女に届いたか。

 金の拳を、構える。


 なんの動作も無しに、狂銀は地面を槍に変える。

 義賊の少女は避ける。

 気配を感じ、時を操り、最低限の動きで避けたのだ。

 信じたくない再会で凍った心が、

 皮肉にも、彼女を冷静に、機能的に動かさせた。


 銀は電撃を縫う。

 金は電撃を避ける。

 避けた所に、黒の銀が放たれる。

 ボロ布が舞い、仮面が削れた。


『>>>やった……!』

『────トライ8:失敗。』


 バリィィイインン……!


「……!」

「>>>っ!!」


 面は取れた。

 ツノが、取れない。

 銀の髪に、直接生えていた。

 氷の、鬼。


『>>>くそったれ……』


 間髪入れずに、銀はきた。

 銀の大腕が、消えている。

 重さを捨てて、速さを出す。

 小さな布で縛られた腕が、金の拳を打った。


『>>>アンティ、(かが)め』

「やだ……」


 ばギィィぃぃぃぃぃぃぃぃイイ……!!!!!


 触れ合った瞬間に、銀の腕が膨張した。

 尖る氷の刃が、金のヨロイに迫る。

 じわじわと、伸びている。


 ビキビキ、ビキ……!


「……!! そんな……!!」

『>>>っ!!』


挿絵(By みてみん)

 金の少女は、いきなり膨張した銀の腕に驚いたのではない。

 銀の少女の、体に、だ。

 ボロ布が飛んだ狂銀の体は、ひどいものだった。

 血の滲みが凍った布。

 突き刺さる氷の破片。

 地肌から繋がれた鎖。

 しなやかな少女特有の肉体が、その傷をより儚く見せた。


「なん、で……」

『────……トライ12:失敗。』

『>>>(バカなっ……!! この体は、凍らせる事で延命処置をしている!! 無茶苦茶だっ! 雪山の流路とリンクしている事を利用して……? さっき片方のツノを破壊したせいで、出血しているのか!? この子は、ギリギリだ……!)』

「いやぁ……」

『>>>……!』


 ガチャ、ン……!


 金色の腕の装甲の隙間から、紫の宝石が覗く。

 白い歯車と共に。


『>>>きみ、ヒールスライムを……』

「いま、治すから……!」

『>>>……』


 金の仮面は、止めようとは思わなかった。

 この心優しき少女が、傷だらけの彼女を見て、何もやらないでいられる筈がない。

 憧れの人なら、尚更だ、と。


『>>>(それに、傷が治れば正気に戻るかもしれない……)』


 打算はあったが、かつての義賊は、

 確かに甘くなった優しさで、ヒールスライムのデバイス起動の補佐をした。

 無限の空間の聖なる一部は、金の歯車と直結した。


「……もう、痛くないから……」

「IA──……」


 ぱあぁぁぁあああ────……!


 光る。

 僅かに召喚されしソレは、まるで天使の羽根のようだった。

 満ちる神気。

 銀を包む。


「GA……AA……AA……」

「もう、大丈夫だから……」


 みるみるうちに、銀の傷は癒えていく。

 血の後は澄んだように消え、

 氷の破片は消し飛び、

 肉には仄かな紅が戻った。


「これで……これで、あなたの名前が聞けるよね……?」

『────トライ16:失敗。

 ────対象:"紫電"の外傷治癒が促進。

 ────流路回復を確認しています。』

『>>>よし……』


「GA……ぁ……」


 銀髪から生えるツノが、光に染まっていく。

 恐らく昔は淡い紫だったであろう髪と瞳。

 それは戻らないにせよ、確実に傷は癒えていった。

 やがて、光は(おさ)まる。

 肌を出す少女が、残った。

 銀は、自分の腕を見た。


「やった……ね……あなた……」

「………………、………」


 金の少女は、優しい笑みを浮かべて。

 一歩、前に歩み寄る。

 氷は、崩れだしていた。


「これで、やっと……!」


 笑み。


「…………! ……、……あ、ぁアァ……!」

「──え?」


 銀の、驚愕(・・)


『────トライ:21──:──!。』



 銀の少女の柔肌が、光り始めた────。


 強烈な、光────。



「……あ、れ……?」


「──あああ……あああああ、ああああああああぁぁぁ!!! イヤだ! いやダ! イヤダ!!! イヤダッ!!!!! うわぁああああああああぁぁぁAAAAAAAAAAAAA────!!!!! 」




 光球が、現れた。



 光球が、現れた。



 光球が、現れた。


 光球が、現れた。


 光球が、現れた。


 光球が、現れた。


 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。

 光球が、現れた。


 銀の少女は、光る。



 金の少女は、立ち尽くした。



『>>>なんだ、これ……なんなんだこれは!! 彼女は……"紫電"は、電撃(サンダー)系の使い手じゃないのか!? それが何故か先生の力を持ってしまって、だから氷が──……!!』

『────成功しました!!。

 ────クルルカン:一部ですが分析が……。』

『>>>──っ!! それで!? いったい何がわかったん──…… 』








  ────" 電離法(ぷらずまほう):Lv.6 "








 ──カッ、カッカッ。


 ──脳裏に()ぎる、チョークの音。


 〘 ──つまり、"プラズマ"とは、固体、液体、気体に続く物質の第四の状態のことを指す。気体を構成する分子が電離し、陽イオンと電子に分かれて運動している状態、即ち"電離した気体"に相当する。雷を連想しがちだが、例えば火もプラズマの仲間になる。その他の自然現象で有名なオーロラは"極光"とも言われ、これは太陽風のプラズマが──…… 〙




『>>>……、……"雷"は、"副産物"だ……!』

『────クルルカン……?。』

『>>>彼女の能力は、電撃系じゃない……! 彼女の本来の能力は!! ────"加熱と分解(・・・・・)"だ!!』



 光は、熱量を孕んでいる。

 そう。

 分子を崩壊させる程の。




「オマエの、せいダ……!」


「   」


「オマえノセイで、ワタシは……!」




 神々しい程の、光の球体たち。


 大地から天に向け、白い稲妻が幾重に走った。



 ───ドゴォオオオオオオオンンン──!!!!!



 雪が、溶けていく。



『>>>……まさか……凍らせる事で、抑えていた(・・・・・)のか……? この大地の流路を全て使って……?』


 バチバチと、地面の氷が光り出す。

 煙が上がり、その形質は、変化する。


『>>>流路を回復させては、いけなかったのか……? そんな……それじゃあぼく達は、なんて判断ミスを……』

『────アンティ:……。』



 光の少女が、手を向けた。


 金の少女は、それを見ていた。



「……ナンデ、ホッといてクレなかったの……!」


「   」


「なんデ、ワタシを、やっと……! ナのに……!」


「ぁ、……わた……  」


「アナタなんて、だいキライ……」


「……   」


「こコから、消エテ……」


「   ……」


「サヨナラ……」


「待っ……」



 光り輝く少女に、鎖が巻きついている。

 悲鳴をあげるように、巻きついている。

 二本の銀のツノは、まだ折れていない。


 神のようだった。


 山の頂きに立ち去る白銀の少女を、

 黄金の少女は追いかけようとした。



「待って……!」

『────アンティ:いけない!。』

「え……!」


 空の白雲は、ドス黒く変わり、

 それが光を、よく目立たせた。


 雷は、神の鉄槌のように。




 ────カッ──────!!




『>>> ── 』



 ──ぃん──……。



 仮面が少女から離れ、空に舞った。









「…………、……!」

『────……:……。』



 辛うじて残った雪の上に、

 黄金の仮面が落ちている。



 片方の目の穴から、真っ二つに裂けていた。



「…………せん、ぱぃ…………?」



 返事は、なかった。






(×|  |ω× )バヵーン!

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