仮面舞踏会
お腹の前で、ふたつの歯車が、回っていた。
一つは左に。 一つは右に。
高速回転する、それらは、間に、凄まじい摩擦を発生させていた。
回転する金属に、木をつっこんだら、どうなると思う?
まぁ、こうなるわな。
ぎゅいいいいいいん!!!!!!
────ばっさああああああ!
「ぎゃああああ!! 木の粉がすごいんですけど────!!?」
ホント、勘弁してくださいよ……。
「うわっ、ペッペッ……ぐぢにはぃっだぁ……」
『────アンティ! 離脱してください!』
「はいはい……って、"あんてぃ"?」
『────あっ。』
「え? あっ、て……?」
え。
どゆこと?
どゆことですか、クラウンさん?
「…………」
『──────。』
………………。
この時ばっかりは、バケモノさんも、待ってくれたわ。
『────クラウンギアは、退避を申せ──。』
「────いやいやいやいやいやアンタそれはないわ! な──に──とりつくろってんのとりつくろっちゃってんのいまなまえでよんだじゃないの素でてたじゃないのでちゃってたじゃないの何なのあんたマジでなにカマトトぶってんのなになんなのデレたのデレ期なのそういうことなら私もたのしみがふえるっていうかおちょくりがいがあ──」
────ばっさああああああ!
「びぃやああああああ!!!」
目が!
目がぁぁぁあ────!!
────アンティちゃん、きな粉がけ、いっちょう!
「ぐぐぐらうーん!! 今、わざと粉かぶるように角度変えたでしょ───!!!」
『────敵前でそのような行動を推測する思考が不明。』
「んだとゴラァァ────!!!」
『────第一、該当歯車は、他媒体が操作中です。』
「! 他媒体って……な」
オオカミヘッド蔦が、ひとしきり、きな粉になったところで、回転していた歯車が小さくなる。
キュインと、私の両耳の下へ。
くるくる、ガチャん。
「あ────アンタ!!!」
────呪いの仮面さん、健☆在ッ。
「うわぁぁぁ、アンタ何戻ってきてんの! おばあちゃんに、めちゃカッコつけて押し付けてきたのに台無しじゃあないのよ───!!!」
『────アンティ! 距離とってください!』
「うっ、ちょおおおお!!!」
ずどん、ずと────ん!!
うおおおおお、オオカミヘッドこえぇぇぇえ!!!
地面に、顔からめり込んでいったわよ!!!
……お前ら、親に文句言えよな。
ぐ、
「ぐ?」
ぐ、
『──両耳、指詰め推奨。』
ぐぎがごおおおおおおおおおおおおん!!!!!!
「おおおおるせぇええええぇ!!!」
間一髪、耳塞ぐの間に合ったじゃないのよ!
きゅういいいいん!!
ずどん! ずど──ん!!
よけるよける!!
「うわぁ……またモロに顔から行ったわ……」
『────前方視認不足。』
「さーせんしたぁ。さて、こいつどうすっかな!!」
でけぇわ、はえぇわ、うるせぇわ。
うわっ、もう首から下は、蔦っていうか、触手よ触手。
あれ絶対接近したくないわね。
ん? てかアレ地面ついてないわね?
木の間を、触手を使って滑り抜けてる……。
森を泳いでるみたい……
ありゃ速いはずだわ……でっけぇし。
「クラウン、火が、弱点、だったわね」
ちゃんと覚えてるわよ!
『────正確には、"口"と"火"です。』
「……あんた、反抗期?」
『────理解不能。』
「あぁん、もう、機嫌直しなさいよぅ」
ぐがごおおおおおおああああああああ!!!
「さっきから、でっかい口あけてるんだけど、動きが怖いわね。くねくね森を泳いでるし。小回りききそう」
『────アンティ、仮面から同期申請がきています。』
「おぉう?」
仮面から同期って、そーいやこいつ呪いとけたのか?
いや……置いてきたのに、戻ってきたわけだかんな。
もう私の中で、こいつは呪い以外の何者でもないわ。
「えぇい、ままよ! 同期っつったって、被りゃいいんでしょ? はーい被ります、被りました──!」
『────……。』
カッチャン。
おおぅ……両耳、歯車ホールドされたで……。
こりゃとれないわ。
で? 何が変わったのんな?
くぉぉぉぉぉぉん……!
くぉぉぉぉぉぉん……!!
「なっ……!!」
オオカミ蔦が4本……!!
あれは、ちょおっと、やばい……!!
ビュビュビュッン!!!
「うわ、あッ!!!」
ト、ト、ト、ト────ン 。
え?
あれ、なんで、
こんな高いとこ、いんだ?
てか、今、全部、見えてたような……。
『────分析完了。
仮面の完全同期により、スキルが共有化されます。
・反射速度:比例上昇
・眼魔:常時発動
────クラウンギアに流路が集約されました。
────連動展開が、可能です。』
わぉ!
ぱわぁー、あっーぷ!