ヤ・ヤツがくるぞ! さーしーえー
連投のような気もする(๑´ㅂ`๑)。・:+°
日持ちする食材を大量入荷するのは、
食堂の基本なのよ。
調味料然り。干物然り、ポタタ然り。
ポタタなんて、湿気がなくて暗い所だと、
風通しがよけりゃ数ヶ月も持つんだから!
暑い時期は氷の魔石と入れなきゃ、やばいけど。
あー、つまりですね。
私が何を言いたいかというとですね……。
後々、使えそうな素材は、
集められる時に、集められるだけ集めろ!
……と、いうことなのよ。
で、今の私は、何をしてるかというとですねぇ……。
「……ぅお〜〜し、こっちこーい」
「キュッキュッ──!?」
「キュアア──!!」
「クムクム♪」
大樹に登って、光るモルモットを捕獲しています……。
──ベッチャ!
あっ、て! いきなし頭ん乗るんじゃないの!
もぅ、びっくりするわぁ……。
回ってるクラウンが珍しいのかな?
「キュムキュムゥ──……!」
『────……こんなに至近距離で:
────げっ歯類を観測するのは初めてです。』
『>>>あははははは!』
呑気に笑ってんじゃないのよ先輩。
こっちはモフモフ大戦争なのよ。
うわ、こいつもデカいわね……20セルチはある。
みんな綺麗な白色なのが救いだわ。
基本的に食堂娘はラット系の魔物に苦手意識あるかんね。
「よーしいくわよー。クラウン!」
『────レディ。
────"七光":オーバーラン。』
──ピカァァ────……ぶぁっっ!!
私のツインテールがアホみたいに輝き、
放射状に拡がっていく。
やがてモフモル達に吸い付くように髪の毛が触れ、
流路は、カタチとなって顕現する。
ぱぁぁァァァ────……!!!
きゅぃん! きゅぃん! きゅぃん!
きゅぃん! きゅいん!
『────成功です。
────"ぴかぴかどらいぶ"を入手しました。
────数量:5。
────"ぴかぴかどらいぶ"の累計数量:75です。』
「きひひ、しめしめ……! もうけもうけ……♪」
『>>>よく集めるねぇ──』
だって、タダで手に入んのよ!? タダで!!
こういう地道な採取とか、けっこう好きなんだわ、私。
肉の下ごしらえとか、黙々とできるもんね。
「しっかし、魔物を倒さなくても"どらいぶ"が手に入るとはね──!」
『────やはり:能力精度は多少落ちるようです。』
『>>>ドロップした"どらいぶ"じゃあないからね。少しだけ能力を引っこ抜いてる感じか。まぁ、"閃光弾"としては優秀だよ!』
まったく。"七光"とは、よく言ったもんだわ。
まさに、"ヒト様の能力を借りパチする能力"じゃないの。
「やれやれ。変なドロボウスキルを手に入れたもんね」
復習と、わかったこと。
①この地底湖(正確には貯水槽跡かな?)で、謎の花嫁型幽霊さんと出逢ったことにより、"七光"というスキルが発動した(多分)。
②"七光"は、先輩いわく"パッシブスキル"(ようわからん)と言うヤツらしく、私の身体の流路を限界まで活性化させるスキルだった。髪もですよ……。
③流路の強化によって、"歯車法"は完全に近いカタチで私に同期してしまい、"同期結合"が強化され、"同期融合"というスキルに進化してしまった。
④流路まみれになった私の身体は、なんと歯車が透過する事が可能になっちゃった。クラウンと先輩いわく、体内に歯車機構を組んで装備(って言うのか?)したり、外付けの装備の歯車の稼働範囲を気にしないで装着したりと……よくわかんないけど、かなり歯車ガチャガチャの自由度が上がるんじゃないかって話。よくわかんないけど……。
⑤"七光"の副産物的な能力で、私の流路(てか髪)を使って、他の生き物の流路を借りパチできるようになった。しかも"どらいぶ"として。今までは倒した敵からランダムに入手していたけど、この方法を使えば、一定レベルの魔物から、安定して"どらいぶ"を引っこ抜けるとのこと。
⑥ライトニング=モフモルに"七光"を使うと、"ぴかぴかどらいぶ"なるものが入手できた。投げると光る。撃ち出したりして、目くらましに使えそうよね……。ちなみにぴかぴかを引き抜いても、モフモルは光っていた。根こそぎ相手の能力をぶんどるワケではないらしい。
⑦ヨロイ着ました。シゼツが起きません……。
ぱぁぁァァ────……!!
「な、なんかさ、こぅ……集めてると、楽しくなるわね? "どらいぶ"……」
『────成功です。
────"ぴかぴかどらいぶ"の累計数量:134。』
『>>>……後輩ちゃん、もう、いいんじゃない……?』
「えー! まだこんなにたくさん居るのにぃ──!」
「キュウキュウ──!」
「キュムム──ッ!」
「クィ……?」
見上げた大樹の枝には、
まだ光るモルモットがひしめいている。
「採集し始めた時に、『いざと言う時に、閃光弾があると逃げやすいかもね』って言ったの、先輩じゃない!」
『>>>や、言ったけどさぁ……多すぎじゃなぃ?』
「いやいや! 100や200、団体さんが来たらイッパツで無くなるわよっ!?」
『>>>団体さん……』
『────アンティ。思考回路が:食堂娘です。』
「イエス、アイ、アム。……ね、もちょっとだけ取っていこーよ!」
『────……クルルカン。』
『>>>しょうがないなぁ、あと少しだけだよ?』
「えへへ──♪」
私は夢中になって、枝の上のモフモルたちを蹂躙していく。
※撫でまくって油断してる隙に、
はぐるま取りまくってるだけです。
しかし、私は浮かれていたのだろう。
小さなミスが、あんな事になろうとは……。
「ほーれ、こっちおいでぇー」
「──キュ! クィッ……!?」
すかっ。
「あっ」
おちた。
「──ああっ!?」
『────アンティ。下は根っこです。』
『>>>うわぁ!』
「──まずいっ!」
下が水ならともかく、根っこに大激突はヤバいっ!!
トラウマ必至!!
今日のおねんねが後味悪くなること必至!
助けねばっ!!
「クラウンっ!?」
『────レディ。
────歯車:投擲します。』
──きゅうううぅぅぅううんん────!
落下していくモフモルの方に、
金色の歯車が駆ける────!!
──きゅうううぅぅぅううんん────!
『────範囲拡大。バッグ歯車。』
大きな受け皿のようになった歯車!
そこに、モフモルが落ちて────……!
びょびょびょ〜〜〜〜ん!!
バッグ歯車の入口で、はねた。
ナイス、クラウン。
慌てて下に降りる。
「キュ……キュッ……?」
「ほ……ケガはないみたいね……」
『────はい。完全にキャッチしました。』
『>>>こぉら、凡ミスだよー』
「ご、ごめんなさい……」
食堂の宿敵とはいえ、怖い思いをさせてしまった。
上を見ると、さっきまでいた枝の高さがよくわかる。
「だ、だいじょうぶ?」
「キュ……キュク……!」
あ。
なんか、この表情はやばぃわ。
「……キュクぅぅぅ〜〜〜〜〜〜!!」
「…………」
『────……。』
『>>>あ〜〜……泣かした……』
モルモットって、泣くんですか。
う、うわぁ、確かに泣いている。
なんという罪悪感。
アレか、私のせいか。
「ご、ごめんってば。ほら生きてるし、大丈夫だから。ね? 泣き止んで、ね?」
「キュッックゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
モルモットに必死こいて謝る黄金の義賊……。
何とも形容しがたい一場面ね……。
「キュワワぁ〜〜〜〜〜〜!!」
「あ〜〜ん!! 泣き止んでよぉ〜〜〜〜!!」
───────────────────────────
パートリッジの地下に隠されし、モルモットの楽園……。
そこに、やんごとなき鳴き声が響いた時!
ヤツは、必ずやってくる!
そう!
彼らはもう、実験動物などではないッッ!!
ぴかぴかモルモット王国を統べる、強き者よ!
小さな悲しみの声は、彼の者に届いたのだッッ!!
───────────────────────────
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……!!!
「……ん?」
「……キュア?」
……んだろ、この音。
『────アンティ。震源感知。』
「そりゃね」
『────こちらに:接近してきます。』
「なにが」
『>>>はぁ……あんまりモフモフしてるから、モフモフの王さまが怒ったんじゃないのぉ〜〜?』
「な、何言ってんのよ、そんなのいるわけ……」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……!!!
「……これ、デカくない?」
『────デカいです。』
『>>>後輩ちゃん……ここは、崩落しかけの地下だ。わ、わかるね?』
「 あっ、やっっばぁぁああ……!? 」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……!!!
ななななななななな何が来るって言うのよ────!?
なんで、こうなんのよッッ──!!?
わ、私が何をしたっていうのッッ!?
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……!!!
と、とりあえずこの地響きはヤバイわっ!?
崩れる前に、どこかに逃げないと────っ!?
『────アンティ。右前方です。』
「 」
──ドオォォオオオンンンンンンンゥゥゥ!!!!!
瓦礫が、おもちゃのように、吹っ飛んだ。
へし割れている。地下の、分厚い壁が。
『 キュウウウウウ、クゥィィイイイイ……!! 』
鳴き声。
おかしい。どれだけ反響するの。
ヒビまみれになった壁の向こうから、
とても、大きな力が働いた。
くる。
──バキィィイイ、
────ドゴォォオオオンンンン!!!
『 キュウオオオ、クゥゥゥウイイイイイイイッッッ──!!!! 』
「──ぎぃいゃああああああぁぁぁぁぁあああ──ッッッ!!!??」
爆散した。
壁をぶち破って現れたモルモットは、光っていて。
そして、バーグベアより、でかかった。
(;^ω^)や、ヤツだ……。