づかづかハート
魔法に憧れて、でも私は、魔無しだった。
周りの子らは、少しずつだけど、
確実に、魔法を覚えていった。
私に、何が足りなかったんだろう。
恥ずかしかったけど、魔力って、どんなものか
聞いてみたことがある。
「自然にそこに、あるものだよ」
「僕はたまたま、火だったんだ」
「そのうちできるようになるよ」
わからない。
何故、わからない事を、
誰も、わかってくれないんだろう。
みんな、自分のことばっかり、考えている。
「────きみは、違うのかい?」
私?
私は……みんなの事ばかり見ていたの……
私には、考えてもわからない事だったから……
魔法使いごっこをする時、
私はいつも、守られる役だった。
魔法が使えないから、守ってあげる。
その時、自分が守られる側なのが、嫌だった。
守る側になりたいと言ったけど、
魔法が使えない子は、弱いから、って。
みんなは、自分の魔法で、遊んでいたわ。
私は、ずっとそれを見ていた。
ねぇ、私は何か、がんばらなければいけなかった?
人より、努力が足りなかったのかな……。
だから、守られる側に、なってしまったのかな……。
「……きみが、羨ましいよ」
え?
「ぼくも、たくさんのモノを守ったけど、それと同じ分だけ、たくさん、壊したよ。……きみの言うとおりだったのかもしれない。ぼくは、自分の好きなものを守り続けた。自分のためだけに、守り続けたんだ」
…………。
「……ぼくが、羨ましいと言ったのはね、ぼくを助けてくれる人が、いなかったからなんだよ」
そうなの?
「ああ、そうさ」
あなたは、守ったのに?
「うん……」
……ひどいね。
「でも、きみは、ちがったね」
え?
「きみは、ぼくを、最後の最期に、助けてくれたね」
えと……私が?
「すごく、うれしかったんだ……」
私、なにを、したっけ……
「きみは、いつも守れなかったと言ったけど、今まで、たくさんのものを、守ってきたんだと思うよ」
そんな、そんなはずない。
だって、私は……
「弱いから? でも、きみを、助けてくれる、支えてくれる人たちがいるだろう?」
1人じゃ、何もできないから……
「ちがうよ」
?
「今、きみが守られるのは、きみが弱いからじゃ、ないんだよ」
えっと?
「きみが、いつも助けようとしてくれるから」
…………。
「さいしょに、いつも、"私が守りたい"と思ってくれるから」
…………。
「だから、みんな、君に力を貸そうと思うのさ」
でも、私に、そんなこと……
「ねぇ、きみがもし、守れる力を手にしたなら、きみは、ぼくと一緒に、何かを守ってくれるかい?」
え?
「ぼくは、一緒に戦う仲間がいなかった。助けてくれる人は、最期まで」
あなたは……
「きみだけは、ちがったね」
あなたは……誰?
「あ、長々と話しちゃったけど、これは、言っとくね」
はい?
「彼女に花を届けてくれた────
借りは、死んでも、返すよ?」