スルースキル?(ガチ) さーしーえー
むかぁしむかし、ある所に。
小さな街に住む、食堂の一人娘がおりました。
魔法が使えない、少々、男勝りな彼女は、
愛され、悩み、笑い、走り、
元気に、育っておりました。
彼女は、食堂の一人娘として、
その生を、終えるはずでした。
しかし、この世界を支えし、七つの柱たちは、
既に、限界を迎えていました。
彼らは、悩み、嘆き、考え、
その力を、地上の者に託すことにしたのです。
数々の失敗の中、
最後に選ばれたのは、
食堂の、一人娘でした。
これは、
誰もが知る、
誰もが知らない、
黄金の少女の、物語。
ビ───:ビ───:ビ───。
エラー音。
異常を示す音。
私の、体の中から?
あ、ああ、あ。
『────気を確かに:アンティ! クルルカン。』
『>>>やってる! くそ、なんだこの流路伝導率は!? 髪は露出してる一部でしかない!』
あ、あつい……!
からだがっ……、
あ、あつ……ごぼ。
─────発熱、している。
─────風邪じゃない。
────私は、病気?
───水が、冷たくて、火傷する。
────いつの間に、お風呂に入ったの?
「……、……ぷ、ぁ……」
───沈む。
───ここ、お風呂?
───こんなに、底が深かったっけ。
『────スクリュー部:四基構築。
────させません:上昇します。』
『>>>頼むよ! くそ、高密度すぎる……! これで魔力じゃないって言うのか……!?』
『────操作系は:構築できます。
────暴走ではないんです。』
『>>>これが通常だってほうがヤバいよ! 後輩ちゃん!
聞こえるかぃ!? おいっ!?』
ぶくぶくぶく。
ぽかぽかぽか。
さらさらさら。
──あによ……。
───人がゆっくりお風呂入ってんのに、
────うるさくしないでよね……。
──あ……なんか、
───あったかい…………。
────ひかりが───────。
ゆらゆらとゆれる、光と水の境界。
手を伸ばす。
羊水のような、この場所で、
七つの光が、舞い降りた。
それは、天使の輪のように重なり、
私に、同期した───────。
────"七光"を取得しました▼
────"同期結合"が更新されました▼
───待機しています……▼
───待機しています……▼
───待機しています……▼
───Now Loading……▼
────。
とんっ。
もむもむ。
もっそもそ。
「キュッ」
「……」
「キュイキュイ」
……あの。
……ハラの上に、ネズ公が乗ってんだけども。
「キュア──っ!」
「……、……」
まぶい。
褒めてない。
物理。
「キュッ、キュキュ」
え……私、寝転んでる?
この床、デコモゴしてる。
……あ。
地下の大樹の、根っこの上だ。
苔のジュータンってやつ、よね?
「キュッ、キュ〜〜ッ」
「……あの。呼吸しにくいから、おりてくんない?」
そこぁ私のへそだぞ、コンニャロウ……。
『────! アンティ! 気づいたのですか。』
『>>>い!? 後輩ちゃん! 起きたのなら言ってくれよ!』
「んぁ……?」
二人に、妙に驚かれる。
「あによ……ねぇ、私、いつ寝たの……?」
「キュッ、キュッキゥ〜〜!!?」
コロコロろん。
上半身を起こす。
モフモフが転がってった。
ざまぁみぃ。
乙女のおへそを勝手に踏み荒らすからよ。
──うわおっ!?
何だこの、体に巻きついてるのっ!?
あ……髪、の毛……?
あ、そっか……自分でやったわ、コレ……。
デコを、手で押さえる。
「ぅ……ごめん。まさかお昼寝しちゃうとは。あれ、いつ寝たっけ? 私……」
『────アンティ。気分は:如何ですか。』
「ぅん? いかが、って……うーん、かなりスッキリしてるわ」
『>>>……本当に、大丈夫かぃ?』
「……?」
なんだか、えらく心配されてる?
む、身体は濡れてるわ。
やっぱり、さっきまで水の中にいたみたい。
わぁ……木の根っこが温かい。
お昼寝には、もってこいの大樹ね。
「……ええ。むしろ、いつもより爽快なくらいよ?」
腕をちょっとだけ、ぐるんぐるんしてみる。
寝てる間に水着、解けなくてよかったぁ──。
少しでも解けたら、身体中に髪が巻き付きまくってる全裸の女の子んなっちゃうもんね!
そんなのは、痴女よ痴女!
変態の仲間入りは、ごめんだわ……。
『────バイタル安定。定着しつつあります。』
『>>>はぁ……どう説明したらいいんだろうか……』
「あにをよ」
さっきから何やねん。
王冠と仮面さんは、何やら歯切れが悪い。
歯車法の関係者とは思えぬぞ。
「??」
『────アンティ:落ち着いて聞いて下さい。』
「ぅん? うん。落ち着いていますとも」
『>>>ふーむ。あのねぇ後輩ちゃん』
「はい」
『>>>きみの血管と神経が、ほぼ全部、流路になった』
「うん」
『>>>きみの全身を、魔法じゃない何かが、循環してる』
「うん……ぅん?」
いま、なんて?
『────アンティ。
────恐らく"歯車法"が:あなたと完全に同期しました。』
「はぁ」
……。
「"歯車法"は、私のスキルでしょう。てか、クラウンもそうって言うか……」
『────ええ。ですから。』
『>>>多分なんだけどね……きみはスキルと一体化したんだよ』
「…………」
……ぅん?
「……クラウン先生。先輩の言ってる事が、わかりません」
『────……はい。』
『>>>もうコレ見せた方が、はやいんじゃないかぃ?』
『────賛成:1。
────多数決により:提案を可決。』
「……少人数すぎじゃん?」
『────アンティ:こちらをどうぞ。』
──ヴォン。
スルースキルが発達した自分のスキルに、
懐かしいステータス表を見せられた。
───────────────────────
アンティ・キティラ
人間(♀)15歳
◆装備◆
装飾:クラウンギア
頭部:クルルカンの仮面
身体:クルルスーツ・レディオル:改
追加:白金の劇場幕
紋章:P.A."配達職"
◆スキリング◆
・歯車法:Lv.6
・時限結晶
・状態分析
・反射速度
・眼魔
・力量加圧
・燃焼防止
・七光《NEW!》
◆特殊◆
・同期融合《NEW!》
───────────────────────
「──ええっ!? スキルが増えてるじゃない!?」
『────はい。』
"七光"……"セブンスライト"!?
ええええええ。
なんでじゃこりゃぁぁああああああ!!!!!!!
「な、なんでこんな親のスネをハムハムしたような名前のスキルが増えてんのぉぉおおお──!?」
『─────それだけではありません:アンティ。』
「なにがっ!!」
『>>>ああ。ほら、前は"同期結合"だったのに……』
「──!? "同期融合"になってる──!!?」
──"シンクロユニオンッッ"ってなんぞや……!!?
わ、私の運命を変えまくったと言っていい、
あの何でも取り込みまくる"同期"のチカラが、
サラリと変化していやがるわっ!!?
「あぁあぁあっ! ヤな予感しかしないんだけど……!? ええっ、何コレ……!? クラウンっ!? なんでこんな事にっ!? "呪いの先輩スイミングスクール"のせいなのっ!?」
『>>>おい……』
『────"義賊のっとられ水泳教室"のせいではありません。』
『>>>……。ほんと似てきたなぁ、きみ達……』
「え!? 何、血管と神経!? "流路"んなった!? どゆことっ!? わわわ私のカラダ、どうにかなっちゃったの!?」
『────"循環系"と"伝達系"の細胞が:ほぼ全て"歯車法"の一部になったと推測。』
「なるほどわかんないいい……!!」
『>>>うーん、そうだよねぇ……よし、実験してみよう』
「えっ、……?」
「キュッ、クィ?」
「ぁ……」
横にいるモルモットに、ふと、目が行く。
「お姉ちゃんも、実験台にされちゃうの?」
い、いやいやいやモフ公がそんな事言うわけないでしょはははふざけんな妄想が過ぎるわ私はぁはぁ父さん母さんごめんなさいもう服は脱ぎ散らかしませんからどうか実験動物だけには──……。
『>>>ああ、いや……。そんな怖がんないで。歯車、ひとつ出してくれたらいいから……』
「ぅ、うん……」
「キュッキュ〜〜」
モルモットさんの前で、何やら実験開始される私。
そうか、これが被検体のキモチってヤツか……。
おまえもツラい思いをしたんだね……ぐすん。
「キュッキュ!」
「うん、がんばる……」
『────ひ:非人道的な実験内容は:非推奨です。』
『>>>あ、あのねぇ! やるわけないだろぅ! 体の調子と歯車の反応を見るだけさ!』
「ふんぬぅ〜〜……」
どうなってんの……。
私が、"歯車法"と"同期"した……?
い、意味わかんないよね……。
今まで、"歯車法"は私のチカラだったはず。
そんなの、元々ひとつみたいなモンじゃないの……。
"融合"して、無くなったとか……?
え、もしかして、
歯車が出せなくなってるとか、無いよね……!?
「だ、だすよ?」
──にょき。
──にょきにょき。
──くるるぅ──。
────きゅううぅぅぅうういいんんん───!!!
……おぅ。よう回っとる。
「なんだぁ……普通に出せるじゃん」
『────異常ありません。頭髪部:変化:無し』
「え、髪? ……あっ!! そ、そう言えばさっき私の髪って……!?」
『>>>あー、それは後ね。うーん……別に回転運動に変わりはないなぁ……。"同期結合"から"同期融合"になって、いったい何が変わったんだ?』
『────予測提案。"歯車"の構成能力ではなく:同期能力自体が向上したのでは。』
『>>>うーん、そりゃそうかも知んないけどね……? でも、なんかあるだろぅ……?』
「ね、ねぇ。もういいじゃない! 別に身体に痛いトコとかないよ? それよりも! さっき私、髪の毛を動かせた気がしたんだけどっ!?」
とりあえず、自分の髪が心配よっ!!
父さんから貰った髪と、母さんから貰ったこの瞳には、
もぅ、めちゃくちゃ愛着があるんだからねっ!?
「ね、流路になったって、どーゆーことなの!? 髪の色とか質感がさ……変わるのは、その……イヤじゃん」
『────色が変化する可能性は:限りなく低いと予測。』
「なんでそう言いきれんのよ──」
『────色素変化は:見られません。』
『>>>うーん、わかんなぃな……?? 何ができるようになったんだ?』
「キュック──!」
「あ、こら……」
髪の毛の事で、ちょっとクラウンに突っかかっていると、
さっき、我がおへそにライドしていた、
ライトニング=モフモルが飛び跳ねてきた。
あっ、歯車に!
回ってるのが面白かったのッ!?
「あ、あぶっ……」
「キュッキュッ──!!」
キィ────ン!
ライトニング=モフモルは、歯車に攻撃した!▼
前歯アタック!▼
効果は抜群だ!▼
ライトニング=モフモルは光っている!▼
歯車は、吹き飛ばされた!▼
きゅるきゅるきゅる───……、
───────すぷんっ。
「 」
『──── 。』
『>>> 』
…………………。
私の腕に、歯車が、刺さってる。
「 ァ〜〜〜〜〜〜……!?(ぱくぱく)」
『────あ:わ:わ:わ:わ:わ。』
『>>>は、はやくヒールスライムを……!! っ!? ぃ、いや、待て……!?』
────ず、ず、ず、ず、ず、 …… ! !
────きぃん、ぽとんっ。
「…………」
『────……。』
『>>>…………とお、った……?』
腕……さすさす。
「……なんとも、な、ない……」
『────分析完了。
────外傷:無……。
────も:もう一度:分析します。』
え、え、え……ぶるるっ。
「……おしっこ行っていーぃ……?」
『>>>ぼくに聞かないで。なるほど、わかったぞ……』
『────損傷箇所:発見できません。』
いま、歯車……腕をすり抜けたよね?
……。
まさか……。
きゅん。
きゅんきゅん。
きゅんきゅんきゅん。
…………ぅあ。
「……。どう、して……」
『────分析では:損傷は無しと判定。』
『>>>後輩ちゃん、見ての通りだよ!』
「見ての、とおり、っつったってぇぇ……」
ずっぷずぷ。ずっぷずぷ。
「どうなってんの……」
信じらんない。
今、大小、様々な大きさの歯車が……、
私の身体を通過しながら回っている。
『好きラノ』ライトノベル人気投票!
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リアルタイムでアンちゃん水着くらった方は、
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第二巻もお楽しみに♪⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝♪