かみですよかみ さーしーえー
うう……リアル忙しふにゃふにゃなのです……!
(இωஇ`。)。・:+°
「そうだ、髪の毛で隠せばいいのよ」
後輩ちゃんが、ワイルドな事を言い出した。
いや、この場合、ワイルドで済ませていいのか……?
ヤバいこと言い出したなぁ。
『────……:……。』
クラウンちゃんが相当、困った顔をしている。
おぉ……新鮮だな。
ほんと、表情豊かになったよなぁ。
で、一応その原因の女の子にも聞いてみよう。
『>>>……気は確かかぃ?』
「どーゆー意味よ。アナライズホロコーティング? あれ、細かい粒子状のアナライズカードでしょ? 応用したら、いけると思うんだけどな……」
んなバカな……。
かなり自由度の高い、応用が利く能力だけど、
髪と織り交ぜて水着なんか作れるか……?
「クラウン、目隠し」
『────……レディ。』
『>>>おっ……』
……ペトん。
クラウンちゃんのミトンみたいな手が、ぼくの両目を覆う。
今は、手首は回転していない。
「ヨロイ、パージ!」
『────レディ。』
ガチャ! ガチャン……、
──ぎゃおおおおおおおおぅおっぷ。
『>>>……いいのかぃ?』
『────:一度:やってみないと気が済まないでしょう。』
『>>>確かに』
はは。
さすが、相棒なだけあるね。
その通りかもしれない。
……ま、チャレンジは現実を見せてくれる。
「アナライズホロコーティングの操作、私に貰っていい?」
『────ご随意に。』
シャラララァァァ──……!
「ぱんつもいらん!」
『────レディ。』
──シュパ! きゅぃいん……!
こ、この子は……。
マジで髪だけで隠すつもりなのかぃ……。
てか、今は目隠しされているけれどさ、
コレ、完成したら、ぼく見るのか?
……せめて、最低限の貞操観念は守ってもらいたいもんだね。
シュルル……。
シュルルル──……。
『>>>歯車も使って、大事なトコはしっかり隠してね』
「え、え──……、それって何か、ヨロイみたいでヤダな……アブノさんのお店のマネキンみたいんなるじゃない! それに、肌に歯車って、なんか跡つきそうじゃない?」
『>>>いや、きみねぇ……』
『────やれやれ:です。』
……。
行動は漢前すぎる時があるのに、
たまに、すっごく女の子っぽいこと言うよなぁ。
『>>>ていうか、なんでぼくは目隠しされて、女の子の早着替えを待ってんだ……? いてっ』
「言い方がやらしい」
『────沈黙推奨。』
何今の。
クラウンちゃんの頭突きか。
しゅるる──。
しゅるっ……。
「ん。隠すとこは隠した。もういいよ、クラウン」
『────……。』
『>>>ん、お……?』
ミトン、パージ。
「どやさ」
『────……。』
『>>>…………』
…………。
マ、ジ、か。
ちゃんと、水着になってる。
え? それ、髪? どうなってるの?
「……ふふーん♪」
クラウンちゃんとぼくの沈黙が気にいったのか、
後輩ちゃんが、ご機嫌になった。
後輩ちゃんの髪は長い。
この二ヶ月、ほとんど髪を切っている所を見た事が無い。
毛先はたまに切りそろえてるけど、
どうやら限界まで長く伸ばす事にしたようだった。
そこらへんに無頓着なだけかもしれない。
そのなっがい後ろ髪を使って、水着を編み込んでいる。
スポーティなシルエットの水着で、背中側は露出が多い。
でも、別にいやらしくはない。綺麗な感じの水着だ。
髪の毛を使ってるので、当然、金色だけど。
後ろ髪が服みたいになっちゃったので、
前髪だけが顔の側に垂れている。
見た事のない、新鮮な髪型だった。
「ほらぁ、いけるじゃない! あ……紫の時限結晶の歯車、どうしようかな。いいや、胸に付けちゃえ」
しゅるるっ。
後輩ちゃんの胸元の水着が解け、
まるでブローチのように、
紫の宝石が付いた歯車が編み込まれる。
まるで、生きている繊維みたいだ。
「あ、手に入れたモフラーさんの日誌……ご、ごめんね二人とも、後でちゃんと読むから……。ん、聞いてる?」
後輩ちゃん水着Ver.の手には、
アナライズホロデータの多面体が浮いている。
でも、ぼく……と、クラウンちゃんも、それどころではなかった。
『────……アンティ:私の完敗です。』
『>>>……潔く負けを認めよう。まさかそこまで完成度が高いとはね……!』
「いやいや、何の勝負やねん……」
なまり口調の苦笑いで、呆れられた。
『>>>いやしかし、すごいな……。アナライズホロコーティングで、こんなに自在に髪の毛を構成できるもんかぃ?』
『────当機も:若干:分析不可能な操作性を感じます。』
「でも、できたよ?」
さ、流石は歯車法のマスターだと言えるかもしれないね。
歯車ほとんど使ってないけど。
「今さらだけど、泳いでいいの……?」
『────。』
『>>>──』
クラウンちゃんとぼくは顔を見合わせた。
……ふっ。
『────後で後悔する事は:しないのでしょう。』
『>>>はっは。そんな準備万端で言われてもねぇ』
「あ、ありがと」
後輩ちゃんは、ちょっと照れたようだ。
横に置いてある、でっかいハンドスピナーのようになったクルルスーツを、バッグ歯車に格納する。
「あのさぁ……ワガママついでに、先輩にお願いがあんだけど」
『>>>?』
────。
『>>>……本当に、いいんだね?』
「お願い」
『────経験値管理はお任せを。
────レベルダウン領域までは:余裕があります。』
後輩ちゃんの申し出は、意外なものだった。
"──私の体を使って、泳いでみてほしいの"
『>>>わかってると思うけど、ぼくがきみに憑依すると、歯車法の経験値は少しずつ減って、変換できる歯車の量は減少する。……だから、少しだけだよ?』
「ワガママ言ってるって、わかってる。ありがとね」
『────モニタリングを:開始します。』
『>>>よし、じゃあ……《接続》』
「んっ……」
後輩ちゃんの身体に、ぼくの感覚が反映される。
……? 流路への同期率が、前より高い?
何故だろう……? 妙にすんなりできたな。
ぐっぱ。ぐっぱ。
……うん。これなら前より負担なく、身体を使えそうだ。
『>>>じゃ、いくよー』
『────口内に呼吸用のバッグ歯車を設置。』
「ん!」
──きゅいん!
口の中に直接空気が出るので、窒息の心配は皆無。
深い所に潜るには、コツがいる。
まず、腰を大きく曲げて────……
「わ、わ!」
『>>>こら、口開けない』
……─────どぽぉおおおおんん……!
今回、ぼくが"憑依水泳教室"を引き受けたのには、理由がある。
正直に言うと、この前ぼくが無理な動きをしたせいで、後輩ちゃんの身体にダメージが残った事を、ぼくはかなり気にしている。
でも、有益な事もわかった。
憑依中のぼくの"感覚"は、後輩ちゃんの"経験"になる。
おこがましくも、ぼくが義賊の"プロ"だと例えると、その"プロの感覚やコツ"は、そのまま後輩ちゃんに引き継がれるのだ。
これは、ある意味チート的な教育方法かもしれない。
ここの水深は、深い。
後輩ちゃんは、小さな街で育った。
こんな所では、泳ぎ慣れていないはずだ。
これからの人生で、いきなり水中の戦闘になってしまった時。
"水が深い所での泳ぎ方"を知っているのと、知っていないのとでは、パニックになるならないに、大きな影響がでる。
いざと言う時のために、そこらへんの感覚を覚えてほしかったのだ。
『>>>ま、ぼく自身も、そんな泳ぎが得意なわけじゃないけど……』
「ぷくぷくぷく!(すごい! すごい!)」
『────提案:歯車でスクリュー部の構築可能。
────実行しますか?』
『>>>や、それは後で後輩ちゃん本人が泳ぐ時でいいや。今は素潜りをやってみよう』
『────了解。アナライズ積層構造で:水掻きを構築します。』
『>>>ありがとう、流石だね』
「こぽぽ! こぽぽぽ!(すごいね! 飛んでるみたい!)」
はは、人生、何が起きるかわかんないもんだな。
異世界で、女の子の体を借りて、泳いでるんだぜ?
肌に直接感じる水の感覚が、気持ちいい。
すごい透明度だ。綺麗な分、魚がいないのが少し寂しいな。
……けっこう泳げるもんだ。
こっちに来て、色々できるようになってから泳いだのって、初めてかもしれない。
ほんと、不思議なもんだ──……。
『>>>……後輩ちゃん、そろそろバトンタッチしたい。一回あがるよ』
「こぽぽぽ……ぷはぁ! ふぅ……もう、いいの?」
『>>>ああ、堪能したよ。さいしょに真下に潜るのが、一番難しい。やってごらん』
「へへ、じゃあ……!」
……─────どぽぉおおおおんん……!
結果から言うと、水の中の後輩ちゃんは、まるで"魚雷"のようだった。
のみこみが、本当にはやい。
"同期憑依"で、いくら直接"コツの感覚"を得られるからって、ここまですぐに、できるもんなんだろうか。
ペンギンもビックリの泳ぎっぷり。
自由自在、とはこの事だ。
あ、途中で耳抜きも教えた。
金の髪が、泳ぐ軌道にそって、なびく。
頭上の王冠には、赤い宝石。
胸元の水着には、紫の宝石が光っていた。
何を思ったのか後輩ちゃんは、先ほど手に入れた"モフラーの日誌"のホログラム多面体を、手に出して見始めた。
水中で、何してんだ?
「(きれい……)」
あ、なるほど……。
純粋に、形がキレイなのか。
ガチャガチャの、
ちょっとオシャレなスーパーボールみたいだもんな。
文章データは、三角形と、正五角形を組み合わせた、
アナライズカードの半透明の多面体で構成されている。
魔法的な理由なのか水の中でも透明に見えず、
キラキラと、半透明に輝いていた。
すべてが、大樹からの光で、照らされている。
『>>>女の子、だねぇ……』
「──ぶくっ! ぶくぶくっ!(ちょっと! どういう意味よっ!)」
『────アンティ:水中での発声は非推奨行動です。』
「ぶ、もがっ──!?」
『>>>ああっ、あほぉ!』
なぜ口に直接空気が出るのに、むせるんだいっ!?
あ、持ち直した。ま、全くもぅ……。
心配させないでくれ?
水中で咳き込むとか、アレだから。
『────アンティ:研究者の日誌③が落下しています。』
「コポっ!?(あえっ!?)」
『>>>あ、ほーんと……』
キラキラと、水中を多面体が落ちていく。
後輩ちゃん──、がんばれぇ──。
はやく泳いで、追っかけてぇ──。
「ももも────!」
も、ももも──……?
後輩ちゃんは、すごい勢いで真下に潜り、
あっという間に追いつく。
すげぇな。もうどこまでも泳げるんじゃない?
「ぷくぷく……(あぶない……)」
ま、せっかく手に入れた手がかり、水中に落としちゃダメだね?
手を伸ばし、多面体を取ろうとする後輩ちゃん。
その時、えらい事が起きた。
────しゅるる!
「(───!?)」
『────……!?。』
『>>>>──!?』
────しゅるるるる! くるんっ!
水着になっていた髪の一部が解け、多面体を絡め取ったのだ。
「────〜〜〜〜ッッッ!?!?!?」
『────ア:アンティ:姿勢制御を。』
『>>>こっ、後輩ちゃん!? 落ち着け、落ち着け!』
「ごぽぽっ!? ごぽぽぼっ!?(ほどけたっ! 水着、ほどけたっ!?)」
『>>>うぁっ、見てない! 見てないから呼吸!』
「ぶくぶくぶく〜〜!(うあぅ〜〜!)」
ちらっと見えてしまったけど……手で押さえて隠してた。
み、見てない! 見てないよハッキリとは!?
後輩ちゃんは、何とか落ち着きを取り戻し、
水面への上昇をし始める。
……手で隠しながら泳げるなんて、もうベテランダイバーだね。
「(うえぇ〜〜、な、なんで解けたのぉ〜〜……)」
『────アンティ。やはり頭髪部の流路構造に:異常が発生しています。
────過度な操作能力の向上は:それが要因です。』
「(──!?)」
『>>>なんだって!? ちょ、こっちでも分析してみる……!』
『────クルルカン:これを──。』
髪の内部構造のスキャニングデータを、
クラウンちゃんから回してもらう。
……──!? 何だこれ!!
これ……ホロコーティングじゃない……!
おい、おいおいおいおいおい……!
『>>>どうなってんだ……後輩ちゃん』
「……ぷはぁ!! う、うにゅ……なんでじゃあ……なんで水着、ほどけたんじゃあ〜〜……!」
『────なまっていますよ:アンティ。』
『>>>ねぇ、後輩ちゃん。さっき、手で"ホロ多面体"を掴もうとしたろ』
「ふぇ……? あ、"多面体"! 落として──……!?」
───パシャ!
「な、ん……」
水面から出た金髪が、多面体を持ち上げていた。
水着は、半壊している。
「にゃんでなん……、……?」
『────アンティ。
────要因は不明ですが:頭髪部の流路伝導率が100パセルテルジになっています。
────あなたは:髪を操作したのです。』
『>>>その操作性能の理由は、髪の毛の表面のアナライズホロコーティングのお陰じゃないんだ……。身体から出た流路束が、頭部を経由して毛先まで、完ペキに浸透してる。……さしずめ、"黄金流路ケーブル"と言った所かな。クラウンちゃん、全身調べるぞ』
『────了解しました。』
「ふ、ぇ……?」
後輩ちゃんの金髪が、"流路そのもの"になったらしい。
半裸の彼女は、水面で放心していた。
「好きラノ」開催中!(●´ω`●)。・:+°
①アンちゃんの水着うしろ姿が艶っぽすぐる
②サイゼリヤのサラダは美味しいけどドレッシングかけすぎだ
上記二点、どちらかに該当する方は、
ぜひ、投票してください((✽´ཫ`✽))笑
〜2018/7/15まで♪