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モフモフハザード

背景の黒に、だまされるな。


 たまたま燃え残ったページにしては、

 ずいぶんな内容だった。

 燃えた他のページも、こんなのだったのかな……。


「……背表紙には、"研究日誌"って書いてあるわ」

『────現時点より:現在地を"地下の研究機関"と呼称します。』

「あれっ!? そういえば、なんで燃えたの……? 私、今も火の魔石は使えないよ……? 魔力、無いんだし……」

『>>>さっきの火の魔石、見てみな。魔石の下の穴に、何か透明の飴のような物が仕込まれてる』

『────類似アイテム:有。

 ────"ジェム"に酷似しています。』

「──っ!! それってギルドとかで売ってる……!?」

『────条件下において:火の魔石に魔力を供給すると予測。』

『>>>何らかの刺激を感知すると、本棚が勝手に燃え出すのか……研究資料を消すために……』


 それで、魔無し仮卒業の私でも、着火したのね……!

 ……不思議な感覚だわ。

 触った魔石が反応するなんて。

 いや……私がみんなと違うだけか。

  

「にしても……何を研究してたって言うのよ……」

『>>>後輩ちゃん……ここにはその、たくさんのベッドが……』

「やめてよ……」


 寝ていたのは、人でしょ?

 人を研究していた(・・・・・・・・)って言うの?

 あああ、バカぁぁ……!

 みんな、楽しく生きろって……! うう……。


「……他に読めそうなモノはないわ……」

『>>>内容が気になるな……。"小さい時にやれば、力は増すが、流路は育たない。大きい時にやれば、流路は育つが、力は小さくなる。" 魔法のことか……? なんの事だろう』

「もぅっ! んなのっ魔無しだった私に、わかるわけっ──……」


 …………。


「……" 魔無し "?」


 ……、……ぁ。


「……" 何故、15まで待つのか "……」

『────アンティ。』

『>>>? どうしたんだぃ?』

「……。……まさか」

『────どうしたのですか。』

『>>>何か、わかることがあるのかぃ!?』

「これ……」



 "小さい時にやれば、

 力は増すが、流路は育たない"


 "大きい時にやれば、

 流路は育つが、力は小さくなる"


 "15まで待つ"



「……────" 能力おろし "の、ことだ……!」

『────! ……。』

『>>>そ、それって!!』


 なぜ、思いついてしまったのか。

 私がそうだったからか(・・・・・・・・・・)

 ひろいあげてしまった、胸クソ悪い文章を読み直し、

 妙に筋が通る感覚に、気分が悪くなる。


「これ……"魔無し"について書かれてある……? ここで研究されてたのって……まさか」

『────……。』


 ボロボロになった、たくさんのベッドを見る。

 いや、まさか。そんなはずはない。

 だって、こんなに……。


『>>>……後輩ちゃん。差し支えなければ、"能力おろし"について教えてくれないかぃ……? 情報を整理したいんだ』

『────クルルカン。アンティへの配慮を。』

『>>>あっ、いや……』

「っ! ……。子供たちは、学校や街の施設で、何回かの検査と試験を受ける。15歳の誕生日までに魔法を使えないと判断された子供は"魔無し"と呼ばれ、教会の祭壇の魔法陣で"能力おろし"という、"神様"からスキルを譲り受ける儀式を受けることができる。"魔無し"は非常に珍しく、"能力おろし"は受けない事もできるが、ほぼ受けない人はいない。"能力おろし"で授かったスキルは生活魔法程度のものが多く、有能な魔法使いにはなれない可能性が高い」

『────……。』

『>>>……』

「あ……。先生の受け売りなのよ。はは……」


 淡々と、感情を殺して、しゃべってしまった。

 昔に、散々聞かされたことだかんな。

 ま、ちょっと、ヤな覚え方してるよね。


『>>>ここが、その……そうだと?』

『────クルルカン。』

「なんだろう……すごい、しっくりきてる。このページに書かれていることは、ゼッタイそうだって、確信さえある」

『────……アンティ。』

「! はは……。アンタがそんな声出すの珍しいね? 大丈夫よ。お陰で、アンタに会えたもん」

『────……はい。』

『>>>……はぁ──くそったれ。きみの予想が正しいなら、ここは相当ヤバい。でも、そんな研究が可能なのかぃ? "能力おろし"……ぼくは、そこらへんの情報にはうとい(・・・)……』

「先輩……。ここは、教会の地下よ。上には、"能力おろし"用の魔法陣があるはず……」

『────……。』

『>>>ッッ……。地下の研究者たちが、勝手に教会の"魔法陣"の真下で、実験してたって言うのか……』

「今日の自分の察しの良さを、呪いたいわね」

『>>>冴えてるって事が、幸いではないね……。ここのこと、あのギルドマスターの爺さんは知っているのかな……』

「……わからない。でも」


 ……無関係なんかじゃ、ない。


『────アンティ。調査続行が不可能な場合は:休息を……。』

「……! アンタ、優しいわね……ありがと。大丈夫よ。せっかく不法侵入してんだから、もーちょっと調べていきましょ!」

『────……レディ(準備完了)。』


 すぅ────、ふぅ────……。

 こりゃ、私にとって複雑な場所に来てしまったみたい。

 相変わらずの真っ暗闇に沈む部屋。

 なんだかそれ以上に、ズ────ンとくるものがあるわ。

 …………。

 ……他に、気になる所は……。




 どこを調べますか?▼


   壁際の焦げ跡

  ▼床の植物の根  ピッ

   ひしゃげた扉




 ──ガンッッ。


 布で包んだ"魔刃シゼツ"が、何かに当たった。

 この大剣、私が背負うには、デカいんだわ。


「木の根っこみたいな物がある……」

『────生命活動を確認。』

『>>>ほんとだ。雪に覆われた地下だし、光は無いはずなんだけど……』


 大きな木の根っこ。

 ひび割れた床から、メリメリっと出ている。

 根っこが吸い取る水分はあるとして……確かに、

 こいつのご飯になるようなお日様の光は無さそう。

 あわ、ここにも泥の水たまりができて……。

 ──っ!!


「──見て! ここに本が沈んでる! すくいあげるね!! 歯車で……」


 ──きゅぅぅういいんんん!


 ドポドポン。


「──!? 崩れた!? ご、ごめん。もっと、丁寧にすれば……」

『────清掃を開始:泥を格納します。』


 きゅぅういいん……!


『>>>いや、今のは泥の塊だよ。2年もの間、ほったからしだったんだ。むしろここまで残っているのは運がいいよ』

『────清掃を完了。』

「あ、きれい……。っ! かなりページが残ってるよ!」

『>>>ページがピッタリ貼りついてた部分の侵食が、緩やかだったのか』

「うわ、紙が何だか柔らかい。けど、読めそう!」




 研究者の日誌② を手に入れた▼


 前半のページは欠落しているが、

 後半のページは残っている。


 読みますか?▼


  ▼はい

   いいえ




「ごくり……」



 ペラッ……。


───────────────────────────

   月  日


  この研究所に務め出してから、

  もう、かなり経つ。

  食料や生活雑貨は支給されるが、

  たまの息抜きには、教会の敷地で、

  伸びをするくらいだ。


  所長に文句を言ったら、

  いつも通り、ヘラヘラしていた。

  まったく、しょうがない奴だ。


  にしても、支給されたベッドだけは、

  何とかしてほしい。

  見た目より硬く、寝づらいったら

  ありゃしない。

───────────────────────────



「……! ベッド……」

『────……。』


 金のブーツで、

 近くのボロボロのベッドの上を、踏んでみた。

 ……硬ぇ。


「……これ?」

『>>>踏んで確かめるんだね……』

「だ、だって……手で触りたくないじゃん……」


 ここにあるのって……、

 研究してた人用の、ベッドなのかな?


『>>>この日誌、日付が書かれてないね……』

『────筆跡の特徴が一致。

 ────先ほどの書類と同様の著者です。』

「なんですって! モルモットが必要、とか言ってたヤツか!」


 うう、なんかヤな感じ……。

 続きを、読む。



───────────────────────────

   月  日


  まずい事が起きた。


  実験用のモルモットの数が合わない。

  増殖している。

  あれだけちゃんと仕分けろと言ったのに!

  こいつらが増え出すと厄介だ。

  誰も、止める事はできない。

───────────────────────────


  

「……え」


 ペラッ。



───────────────────────────

   月  日


  最悪だ。


  モルモットが何体か逃げ出し、

  繁殖しているらしいと噂になる。

  俺も、天井から物音が聞こえるのを、

  何度か確認している。

  あっという間に、俺たちの数を超えるぞ

───────────────────────────



『>>>おいおい……』

『────……。』

「……」


 ペラッ。



───────────────────────────

   月  日


  今日も最悪の日だ。

 

  久しぶりに配給食ではなく、

  一からオムライスを作った。

  ケチャップを大量にかけて

  食おうとしたら、上の排気口(ダクト)から、

  でかいモルモットが一匹、降ってきやがった。

  ふざけやがって、ブチ殺すぞ!


  せっかくのご馳走が、

  スプラッタくそネズミに早変わりだ。

  神様は俺に恨みでもあるのか?


  白い毛並みが真っ赤に染まって、

  皿の上でジタバタしていやがるので、

  仕方なしに風呂に入れてやることにした。

  湯にブチ込んだら、少し溜飲が下がった。

───────────────────────────



「…………ん?」

『────……ん。』

『>>>…………んん?』


 ぺらり……。



───────────────────────────

   月  日


  ここは、もうダメだ。


  実験棟以外の生活区域にまで、

  モルモットが出没する。

  もう、みんな捕獲する元気がない。

  何人かの女性研究員があきらめて、

  膝の上に乗せて撫でている。

  いや横、走ってんだろ、捕まえろ。

  そこらじゅうにモルモットがいる。

  モルモットハザードだ。

  教会直属の研究所が、この有様だ。

  実験には、そこらへんを歩いてるヤツを

  拾い上げて使っている。

  探す必要はまるで無い。

  まったく、何を食って育ってんだか……。

───────────────────────────



「…………」

『────……。』

『>>>あ、例えじゃなくて、ガチでモルモットなのね……』


 ペラッ……。



───────────────────────────

   月  日


  いま、横に一匹のモルモットがいる。

  この太っちょ……俺にはわかる。

  こいつは前に、風呂にぶち込んだヤツだ。

  オムライスの恨みは忘れねぇぞ。

  よく俺に顔を見せられたモンだ。

  俺の横で、植木を引っこ抜いて、

  根っこからバリバリ食ってやがる。

  このヤロウッ! ふざけやがって!

  地下の生活で、植物は癒しなんだぞッ!

  てめぇ、ブチ殺されてぇか!


  しかし、クソデブなモルモットだ……。

  40セルチ以上、あるんじゃないか?

  今日からこいつを「デブ助」と呼ぶことにする。

  名前を呼ぶと少し、溜飲が下がった。

───────────────────────────



 ……。


「……ひ、ひどい……」

『────……はい。』

『>>>で、デブ助はないかなぁ……』


 ペロッ……。



───────────────────────────

   月  日


  くそっ、ダメだ……。


  教会の真下の実験棟で、

  「能力おろし」の動物実験をしているが、

  上手くいくのは、やはりモルモットだけだ。

  他の魔物には、追加や上書きのスキルが、

  全く発現しない。


  モルモット共は皆、

  光属性のスキルを得るようだ。

  他の属性にならないので、まったく面白くない。

  俺たちは人工的に作り出したこの種を、

  「ライトニング=モフモル」と呼ぶことにした。

  こいつら、ピカピカ光って、ウっザイ。

  デブ助も横で光っている。ウっっゼ。

───────────────────────────



「うわぁ……」


 ペラッ……。



───────────────────────────

   月  日


  ダメだ……。

  何故、他の魔物じゃダメなんだ……。

  ヒューマン系の生き物以外では、

  モルモットだけが能力おろしに成功する。

  "魔無し"のヒューマン系は珍しいので、

  都合よく"能力おろし"の人体実験など

  不可能だ。

  何故、モルモットは100パセルテルジ

  成功するんだ……。


  アホらしい噂を聞く。

  モルモットは昔、異世界の者が持ち込んだ、

  違う世界の魔物だと言うのだ。

  はっ、バカらしい!

  こんなくそネズミ共を異世界から持ってきて、

  何になると言うんだ! バカにすんなって!

  デブ助が、今日も俺のズボンを甘噛みしている。

  なんでこっちにくるんだ……。

  こいつは前歯がでかい。

  いてぇ。

───────────────────────────



『>>>……!』

「モルモット……って、でっかいラット系の魔物だよね?」

『────私のデータベースには:"ライトニング=モフモル"という魔物の情報記載は存在しません。』

「え!? すごい……クラウンが知らない魔物なんてっ! じゃーここの研究員さん達、本当に新種の魔物を作っちゃったんだ……」

『>>>後輩ちゃん。きみ、親族に身元不明の人とか、いないかい?』

「へ? はぁ? い、いやっ……私、父さんらの顔しか、知んないよ……?」

『>>>そっか……』

「?? ……てかさぁ。この日誌、なんかモルモットの話しか書いてないんだけど」

『────モルモットに日常を毒される過程が:よく理解できます。』

「……私たち、何しに来たんだっけ?」


 ペラッ。



───────────────────────────

   月  日


  実験に頓挫しまくりなので、

  デブ助を実験台にして憂さ晴らしする。

  でっかい前歯や白い毛並みに、

  あらゆるバイ菌を塗って経過を観察する。

───────────────────────────



「やめたげて……」


 ペラっ……。



───────────────────────────

   月  日


  すごい事がわかった。

  デブ助の前歯や体毛には、

  非常に強い殺菌効果がある事が証明された。

  全身は、非常に清潔に保たれている。

  どうやら、デブ助に関わらず、

  「ライトニング=モフモル」には、

  全てにこの能力が備わっているようだ。

  汚れた水につけると、かなり浄化された。

  風呂に沈めると湯が長持ちすることに気づく。

  俺は風呂に入る時に、湯船にデブ助を

  ぶち込むのが日課になりつつある。

  デブ助はぶち込むと、なぜか喜ぶ。

──────────────────────────



「……いっしょにお風呂入ってんじゃん……」

『────……。』

『>>>ぶち込んじゃダメだろ』


 ペラっ。



───────────────────────────

   月  日


  寿命で死ぬ個体や、幼体で死ぬ個体が

  相次ぐ。

  くそ……何故だ。

  「能力おろし」を受けた幼体は、

  過剰な力に、未発達の流路が耐えられない。

  小さなネズミ共は、光り輝き、死んでしまう。

  これが人間の赤ん坊で起きたらと思うと、

  恐ろしい。

  教会の上のヤツらが「15歳になったら」という

  規則を設けているという事は、恐らく、

  この事を知っていやがる奴がいる。


  若い個体ほど、強い力を持つのがわかっている。

  虚弱な流路の問題さえ克服できれば、

  新たな可能性が、掴めるのに!


  いくつもの死を前にして

  悔しい思いをしていると、

  デブ助が足にしがみついてきた。

  ……あっちぃ。

  ……こいつ、でかくなり過ぎじゃね?

  机に転がして計ってみると、62セルチあった。

───────────────────────────



「…………こわい、な」


 "能力おろし"って、赤ちゃんの時に受けると、

 危険なんだ……知らなかった。

 実際に受けた身としては、思うところがあるわ。


『────当初の目的と違いますが:有益な情報のように思えます。』

『>>>教会のトップがこれを隠してるとなると、こちらの社会全体がきな臭くなってくるね。純粋に人々を守ることが目的ならいいんだけど……』

「義賊っぽいこと言うじゃない」

『>>>茶化すなよ。かなりのページが残っているね。まだある?』

「もうちょっとね」


 ペラッ──。



───────────────────────────

   月  日


  ネズミ共が何を食っているかわかった。

  貯水区画に、クソでかい木が生えていた。

  やたらめったらデカくて、綺麗な木だ。

  水面から、100メル以上の高さがある。

  いつの間に、こんな物が育ちやがったんだ。


  「ライトニング=モフモル」共は、

  ここを根城にしていたらしい。

  枝がピカピカ、光っている。

  貯水槽の水質を調べると、以前より

  良いことがわかった。

  くそネズミ共が水遊びしたもので

  風呂に入っていたかと思うと、虫唾が走るが、

  データ上では清潔が保証されているので、

  なんとも言えない。

  よく考えると、いつもデブ助と入っている。


  貯水槽の下の亀裂から、木が生えたようだ。

  ネズミ共は、枝や葉をかじっているが、

  でっかい木の生命力が、それに負けない。

  むしろ、水質はいい。放置する方向に決まった。 

  何人かの研究員が、ふざけてこの木のことを、

  「聖樹」と呼び出した。

  バカやろう。盛りすぎだ。

  あんなもん「ネズミツリー」で充分だ。

───────────────────────────



「……ここで、終わってる」


 つい、夢中で読んでしまった。

 こんなに長く、人の日記を読んだのは初めてね。

 うーん……。

 "悪の組織"って聞いて来たけど、

 モフモフに毒されてるだけで、

 あんまり悪い人達の集まりには思えない。

 これ書いた人、かんなり口は悪そうだけど!

 デブ助と仲良さそうだし。

 あ……"聖樹"……?


「……この木の根っこ、まさか……!」

『────根の経路を辿ります。

 ────分析中・・・。』

『>>>巨大な木、だって……? そんな巨大な空間、地表からのスキャンでは、わからなかったんだけどな』

「あ……そうよね?」


 今いる地下空間は、アナライズスキャンの地図でわかったけど、そんな巨大な木がある空間があれば、気づくわよね。

 ……やっぱり、崩落しちゃったのかな。


『────分析完了(アナライジング)

 ────アンティ。

 ────木の根を辿(たど)った所:不自然に空間が途切れている箇所があります。』

「?? んん?」

『────マーカー誘導します。』


 ?? どゆことクラウン?

 視覚に映った光る矢印の方向に、

 えっちらおっちら行く。

 大剣を背負いながらの移動は、

 何かに当たりそうで、気を使う。

 あ……ほんと、木の根っこを辿(たど)っていってる。

 床の亀裂から、見えてる。

 両開きの、大きなドアの前についた。

 なんだか、ひしゃげてる……。

 引き戸かな?



 どこを調べますか?▼


   壁際の焦げ跡

   床の植物の根

  ▼ひしゃげた扉  ピッ



『────ここより先は:先刻のアナライズスキャンでは:空間が無いと判断されています。』

「えっ……あ、地図のここよね? そうだよね……」


 お腹の前くらいにある立体の地図で確認する。

 うん、これでは埋まってる。


『>>>そんなバカな……根っこ以外は、土に埋まっているんじゃないかぃ?』

『────むっ……。

 ────アンティ:調査を。』

「はいはい……え。いや、調査つってもね……」


 どおせぇ言うのよ。


「…………」


 うん、よし。


「すぅ──────……」

『────……あっ。』

『>>>ああっ!! ちょ、ダメ────……!!』


「らぁ───────!!!!!!!」



 ──どっごぉおおおおおおお────んんん!!!



『────……。』

『>>>…………』



 ── 殴った。

 めいいっぱい、殴った。



「……見て、ドアが紙切れのようよ」

『────……はい。』

『>>>ばーかばーか』

「割るわよ」


 ドラゴンのヨロイ、なめないで?


「それより、見て……」

『────確認しました。』

『>>>ぼく、けっこう驚いてるよ』


 通路が、あった。

 ながっ……。


『────不可解です。

 ────何らかの要因で:スキャン探知不可能。』


 クラウンが見逃す通路なんて……。


『>>>!! 見て!!』

「!?」

『────"眼魔(ガンマ)":発動中。』


 先輩の声と同時に、見る。

 ──!! ドアの入口の壁で、何かが光ってる!

 "眼魔(ガンマ)"ってことは……魔力の光!?

 光は、燃え尽きるように消えて、

 何か、焦げた石のような物が残った。

 壁に埋め込まれている。


「……! ねぇ、これって……!」

『────恐らく:"ジェム"の一種であると推測。』

『>>>信じられない! この通路を隠していたのか!』


 そ、そんな強いチカラがあるのね、

 ジェムって、すごい……。


『────申し訳ありません。私のミスです。』

「え! いやっ!? ……そんな事」


 こんな謝り方をするクラウンは珍しくて、驚く。


『>>>ぼくも全くわからなかったよ……すまない。後輩ちゃん、これは"ジェム"に対する認識を改めた方がいい』

「ん……? え……という、と?」

『>>>ぼくが生きていた頃、こんな魔法技術はなかった……ぼくは、200年以上も前の人間だからね。クラウンちゃんも素晴らしい分析能力を持っているけれど、ぶっちゃけ生まれて2ヶ月くらいなんだろ?』

『────むっ……。』

『>>>あ、いやっ……、バカにする気じゃなくて……! ほら。ぼくは200年前の亡霊、クラウンちゃんは生まれたて。"ジェム"に対する予備知識は、ゼロだ。これは、"新しい技術"なんだよ。ぼくたちは弱くはないけれど、この未知の技術が思わぬ弱点になるかもしれない』

「"ジェム"、が……」

『────大変不服ですが:クルルカンの発言に同意します。

 ────アナライズスキャンを:見事に出し抜かれました。

 ────気を引き締めます。』

『>>>ああ。これは失態だ。気をつける。すまない』

「いや、そんな……! 大げさだって、二人とも」


 そこまで責任感じなくても……。私もいるのよ?

 こうやって、殴ればいいじゃない! ねっ?


『────いきなりの:殴打は……。』

『>>>控えてくれたら、嬉しいかなぁ──……』

「えぇっ……」



 ッちぇぇ────。


 大剣をしょって、キンキンと。

 暗い、隠された通路を、行く。




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