でまえいっちょう
(இωஇ`。)みじかいん。
「…………、
狂銀を、倒す……?」
「そうだよ!
ぼくの友だちが、狂銀をみたんだ!」
「あー! まだそれ、言ってんのかよー!
そんなの、いるはずないよ!」
「なんで、そう言えんだよ!
お前、あれから北の森に行ったのかよ!」
「そ、それはっ……!
でも、いないものはいないよ!」
「なんだよ! ほんとは怖いんだろ!
それにさぁ! いないって言うけど、
ここには、クルルカンがいるじゃん!」
「こっ、こわくなんてないやいっ!
それに、このお姉ちゃんだって、
本物のクルルカンなわけ、ないじゃんか!」
「…………」
「うそじゃないって! だって、
北の森で、2人も見てんだぜっ?
きっと、長い眠りから復活したのさ!」
「こらっ、滅多なこと言わないの!
ごめんなさいねぇ……。
ちょっと、そういう噂が流行っているのよ」
「…………。
……狂銀を見たって子は、ここの子なんですか?」
「え……? あぁ、いえ……、
よく、ここに遊びに来てた子供たちなの。
森から帰って来た時は、すごい泣きようでねぇ。
街で、少し騒ぎになったくらいなのよ?
2人とも、あれから顔を見てなくてね……。
とくに、ラメト君の方は、
部屋に閉じこもって随分、怯えているってね……」
「おび、えてる……?」
「いやぁね、つい気になってね?
何度か、お家までお節介に行ったのよ!
でも……いつもお姉さんが、玄関で首を振るだけでねぇ。
いったい、北の森で何を見たのかしら……」
「北の森にはね!
すごくお化けが出るので有名なんだ!
他の街で、劇になるくらいなんだよ?」
「お、お化けなんて、見たことない!
狂銀なんか……、
ホントにいないものなんか、こわくない!」
「お? じゃあ明日、一緒に行こうぜ!
北の森にさ!」
「あんた達! ぜっったいにやめなさいっ!
おしりペンペンじゃ、すまないわよぉぉ……?」
「……お化け……」
「クルルカンのお姉ちゃん……、
ラメトくんのおウチにいくの……?」
「……──っ! えっ」
「ラメトくんのとこ、いく……?」
「あ、いや……私は……」
「おみまい、いってほしいの……!
お姉ちゃんがいったら、ぜったい、
ラメトくん、喜ぶから……!」
「私、は……」
「きょうのごはん、すごいおいしい!
ラメトくんに、とどけてあげてほしいの!」
「ん……」
「おぅおぅ何だよ!
お前、ラメトが好きなのか?」
「おれ、しってる!
ラブラブってやつだろ!」
「やぁー!」
「こぉら、あんた達!
クルルカンのお姉さんを困らすんじゃありませんっ」
「……、
……ねぇ、あなた」
「……?」
「ラメト君に、会いに行ったの?」
「う、うん」
「会えた?」
「うん」
「なにか、言ってた?」
「"ぜったいに北の森にいくな"って」
「他には?」
「すごい、こわがってた……。
泣きそうなかおしてて……、
あれから、会ってくれない……」
「そぅ……」
「あと……"ぼくが、仮面をあげちゃった"って」
「!」
「そう、いって……ずっと、ふるえてた……」
「……
……今日のご飯、配達したい?」
「……はいたつ?」
「お届けしたいか、ってこと」
「! したいっ!」
「……ふぅ。普段、出前はしてないんだけどね。
特別よ?」
「んぅ……?」
「料金は、ツケといてあげる!
ちゃあんと、届けるわ」
「っ!? ほ、ほんと!?
ありがとう!! クルルカンのおねえちゃん!!」
「あらあら……そんな事、言っていいの?
この雪ですから、お忙しいでしょう?」
「……まぁ。立場上、この手のお願いは断れないもので。
それに……無関係でも、ないから……」
「え?」
「地図を、見せてもらえませんか。
ラメト君という子が住んでいる所が、わかるものを」
「ん、そうね……あ、これとか!
ここいらのものが詳しいわよ。
あれっ、なんで? もう、たたんじゃうの?」
「えっ? あ、大丈夫。もう覚えましたか──……、
……──っじゃ、なくって! 前に見たものと一緒でした!
あは、あははは……」
「……──?」
「じゃあ……ちょっと出前に行ってこよっかな?
ねーぇ! チロンちゃん!
お鍋とか、明日ギルドの人に回収してもらうのよー!」
「わかっふぁー! もぐもぐ」
「……はぁ。
優秀な、キツネお耳の受付嬢だこと……」
「ふふっ、"黄金の義賊"が、お宝の分配だなんて……、
なんだか、ドキドキするわね!」
「お、お宝って……カレーライスですよ?」
「あら、子供にとっては一緒よ!
……でも、良いことだわ」
「……?」
「もし、"狂銀"を怖がっているんだとしたら……。
あなたほどの、特効薬は、ないでしょう?」
「…………」
「クルルカンのおねえちゃん!
"はいたつ"、おねがいしますっ」
「……ん。任せて。必ず届ける。
必ず、ね……」
チーズまみれバーグカレー ×2 を手に入れた▼