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お湯に突っ込めるよ!!


 雪。

 チロンちゃんが、心配そうに私を見ている。


「クルルカン……だいじょうぶ?」

「だだだだだだいじょばない。今、ヨロイの製作者を問いただしたい。主に物理的に」

「く、クルルカンが、暴力に走る……!」


 ぶるるる……ぶるるるる……!

 あっあ、あー、ぶるるるるるる──……!


『────暖房機構の開発:急務と判定。』

『>>>飛んでる時はブーストの余熱があったからなぁ……ちょっと待ってな!』



 クルルスーツ・レディオル改。

 ドニオスいちの変態が作った、神秘の黄金ヨロイ。


 〜 露出している箇所 〜


 ①へそ

 ②せなか

 ③わきばら

 ④二の腕

 ⑤内もも



「ふふふ、ふざけやがってぇぇぇえ……!」

「く、クルルカン、もうすぐ、もうすぐだから」


 あ、いけない……チロンちゃんがちょっと引いてる……。

 ううう! だってだって!

 このヨロイ、もうホント肉抜き、穴だらけなんですもの!!

 ふざけんじゃないわぃ! さっっっむ!!

 あんの変態がががががぁぁ──!!

 どーせ「これぞ、ごーるでんせくすぃーである! ふははは!」とかヌかしてこんな意匠(デザイン)にしたんだろへそがヤベぇはこちとら15の女の子だぞお腹冷やしちゃダメだろがううう手で温めたいけどこのグローブキンキンに冷えてそうだあかんうさ丸飛んできて私を助けてカンクルでもいいよモフモフしてうさ丸がお腹でカンクルが背中ねああなんで脇腹も露出してんのバカじゃないのうっわ冷てえっ、あっ、泣けてきた──……。


『────全身のドラゴンインナーマッスルに:流路形成が完了しました。』

『>>>おーし、試験運用してみよっか。"シバリング:デバイス"、いくよー!』


 ぎゅぎゅ、ぎゅぅぅぅうういいんん……!!


「──ぴゃッッ!?」

「!? どうしたのクルルカン?」

「にゃ、にゃ……!? ふぁっ!?」


 い、いや、どうしたも何も……!?

 なによこれ!? ぜ、全身が……震え……?


『────"シバリング:デバイス"の正常稼働を確認。』

『>>>どう? 後輩ちゃん。あったかい?』


 え? え──、あっ……。

 ぬくい。ぬくいですね……。

 ぬくいですが……。


 ぴとっ……。


「っ! クルルカン……この鎧、なんか震えてるよ」

「え、え、えぇ、えぇそうね。震えてるね」

「だ、大丈夫?」

「あ、あ、うん、大丈夫! はは、これね、寒いとこうなるの」

「そうなのっ!?」

「う、うん。あ、ほら! 寒いと震えるでしょ!? こっ、これはね、ヨロイが代わりに震えてくれるの!」

「そ、そうなのっっ!?」


『────素晴らしく:的を射た回答。』

『>>>おおー、よくわかったね! まさにその通りだよー』


 ぎゅぅぅぅうういいんん!!


 お、おおぅ、ちょ、これ、なんだ、なんか全身マッサージされてるわよ!?

 うぉい! 確かにあったかくなってきたけど……これアレか!

 ヨロイの内側のドラゴンお肉が、身震いしてんのね!?

 うおお、ぬくいけど、なんか変な感じだって!!

 全身が遠慮無しにマッサージされてるわ!!

 けっ、血行が良くなりそうであります!

 うう、なんかすごい。規則的にジワジワくる……。

 な、んなのこれ、こんなの初めて……。


『────酸素消費確認。血液温度:順調に上昇していきます。』

『>>>そーいや仮面の部分も出来るけど、やる?』


 ちょ、ちょっと待ちなさいよ、あんた達……。

 実際に体験してないからそんなこと言えるけどね……。

 こっ、これは私の15年の人生で未だかつて無い黄金体験よ……。

 いやこれ、お風呂とかでやったら気持ちいいかもしらんけけけけけけども……。


「うう──……顔はダメだかんね……」

「だ、大丈夫……? 寒いの苦手?」

「だ……!? 大丈夫だから、はやく行こう。あれが、ここのギルドの解体場なんでしょう?」

「! そう。調理場も一緒に付いている」

「ん」


 ほ、ぁぁぁ……あ、慣れたわ。

 うん、あ、あったかいわ。

 慣れって怖いわねー。

 ほーぅ、ぬっくいぬっくい。

 あざまーす。


『────お役に立てて:光栄です。』

『>>>これ寒いとこでは使えるなぁ。ソルギアが暴発せずに済むし』


 ……料理にけっこう火ぃ使うんだから、

 暴発はなぁ……お願いしますよ、お二方……。


「ここ! んぎぎぎぎぎ……」

「! 扉、凍ってんじゃないの!? ちょっと待ちなって」

「むぅー」


 チロンちゃんが、耳をぴょこぴょこさせながら、

 大きな扉の取っ手を離した。

 ……パートリッジのギルドの制服って、あったかそうでいいなぁ。


『────分析完了(アナライジング)

 ────やはり:扉の一部が氷結しています。』

「大きな扉ね……」

『>>>魔物の素材の搬入口も兼用してるんだろ。両開きの引き戸になってるみたいだ』

「小突いてみようか」

『>>>それがいいと思う』

『────ナックル部:展開します。』


 ──ガッチャン。パシュッ!


「よし……チロンちゃん。ちょっとだけ離れて!」

「! ……どうするの?」

「あー、中に入る時は、ノックが必要でしょ?」

「?」


 ふむ……。


「──ってぃ!」


 ────ごぉぉぉぉぉンンン!!!!!


「──っ!」

「……どない?」

『────氷結部:亀裂を確認。』

『>>>いーい力加減だねぇー!』


 ふぅー。

 まぁ、ほとんどこのヨロイ、着っぱなしだもの。

 そりゃーイヤでも慣れてくるってもんよ。


「扉の間の氷を割ったわ。開けるから、離れてなさい」

「て、手伝う……!」

「ふふ、いいって。クルルカンに任せなさい?」


 よっ、とっ、はっ……!


 ──ゴリ、ガガガ、ギギギギギ──……!!


「! お、おっもいわね! こ、これ、一人で開けようとしてたの!?」

「ま、まずはチャレンジを……」

「いい精神だけど、仲間を頼りなさいって! どらぁぁ!」


 半開きになったでっかい扉に、足をつっかえて蹴り押す。

 けっこう力入れたわよ!


 ギギゴゴゴゴゴ、ゴゥン。


「ふぁ───! これで通れるでしょ!」

『>>>この扉の隙間が、後輩ちゃんの足の長さなわけだね』

「クラウン記録すんな」

『────えっ……:れ:レディ(準備完了)。』

「チロンちゃん! 光の魔石どこ!?」

「っ! 待って、すぐつける」


 中に入ったチロンちゃんが、光を灯す。


「……! ほんとだ、調理場だ! 天井高いね……!」

「うん。ここはクエストあがりの魔物が集められて、そのまま加工されたり、料理されたりする」


 ……! これが調理台か! 大きい……いいな。

 ふふ。食堂娘としては(いささ)か興味を惹かれるわね。


「クルルカン。これが鍋。これも鍋」

「ん? で……! でっか!!」

「これが台車!」

「いやそれ荷車!!」

「これに、のっける!!」

「いやムリムリムリムリ……あんた体格考えなさい」

「……うう、ぐすん」


 いや、泣かないでよぅ……。

 そんな大きなお鍋、ふたつも……。

 そもそも荷車が重いでしょうよ!

 

「ギルドの誰か、呼んできたらいいんじゃない? 誰かは手が空いてるでしょう」

「炊き出しは明日の予定。今日は忙しい。でも、チロンは今日、炊き出しをしたい所がある」

「う、うーん。食材はあるの?」

「そこ」


 ん? ありゃ!?

 これ、私がドニオスから持ってきた木箱じゃないの!

 何箱か搬入されてる……あれ。

 あの重い扉を開けずに、どうやって中に運んだんだろ……?


『────アンティ。左奥に扉が存在。』

「……チロンちゃん。そっちの扉から入ればよかったんじゃ……」

「……鍵を勝手に取ったら怒られる……。チロンは秘密で一日はやく任務を遂行する……」


 あぁー……なるほどぉー……。

 この子、確かにキツネお耳よろしくギルド受付嬢さんだけど、それ以上に11歳の女の子なんだわ……。

 ……。


「……ふぅ〜〜! わかった、わかったわ。お姉さんに任せなさい」

「──!! く、クルルカン……!」

「で? チロンちゃんは料理できるの?」

「お湯に突っ込めるよ!!」

「……ワイルドねぇ……」


 うーん、水炊きは確かにヘルシーで身体あったまるけど、しばらく雪で栄養価の高いモン食べてないなら、ちょっとくらいガッツリいっていいかなぁ……。


「"オハウ"……スープ系がいいって言ってたわね。メニューは決まってるの?」

「お湯に突っ込めるよ!!」

「……うん……。木箱の中身、見よっか……」


 どれどれ……。


 ごっ、──がっぱぅ。ガサゴソ。


「……! こっちは野菜ね。ニンジン……オニオン……ん? この袋は……あ、ポタタか。芽が出ないように、光が当たらないようにしてある。ヒゲイドさん、やるわね……」

「んぎぎぎぎぎ」

「あ! チロンちゃん! 蓋の端っこ押したら、反対の蓋が浮くから!」

「む、なるほど……」

「これ、本当に使っていい食材なのね?」

「問題ない。確認はとれている」

「信じるわ。蓋はまとめて捨てる?」

「捨てない。この木箱は、釘が使われてない。全て木で出来ているから、(まき)にしやすい」

「───!」

「ドニオスのギルドマスター、ヒゲイド殿は、からっぽになった木箱を燃やせるように、これらを手配した。チロンたちにとっては、本当に助かること。ドニオスに、感謝の念が絶えない」

「……そっか。すごいよね。ギルドマスターって」

「運んでくれたのは、あなた。みんな今は忙しいけど、本当にあなた達に感謝してる」

「……ありがとう」

「?? ……なぜそこでお礼を返すのか、チロンはよくわからない」

「生きてて良かったって、思うことって、あるでしょ?」

「???」

「ふふ。そっちは何が入ってた?」

「! ちょっと待つ。───!! チョコだっ!」

「えっ!」

「ほらっ!!」

「うわっ、おっきいね!!」


 ほ、ほんとにでかいな!!

 まな板くらいあるじゃないの!!

 割れやすいように、格子状に筋が入ってるわ!


『>>>へぇー。まぁチョコレートは体温上げやすいし、寒い所ではいいよね!』

『────アンティ:彼女の調査している木箱の番号の入力を。』

「え……? チロンちゃん、その木箱、何番?」

「む……16番」


 クラウン、なんで番号きいたの?


『────アンティ:物資リストの16番に:チョコレートは記載されていません。』

「えっ……でも」

「?」

「チロンちゃん、その茶色い板、見せて」

「? はい」


 ──ガッシ。


 でっかい板だな……。あ……。

 香りで、わかった……。


「……チロンちゃん。残念だけど、これはチョコレートじゃないわ」

「ええっ!? そうなの……」


 すごい残念そうね……キツネ耳、ぺたんってなってるわ。


「ねぇチロンちゃん、そっちの木箱も開けてみて?」

「ん……。! ライスだよ」

「米粒の形を見せて」

「え……」

「一粒でいいから」

「???」


 受け取ったものを、見る。

 細長くなくて、楕円形だ。


 ……オーク肉は、めちゃくちゃ持ってるし。

 お水は遺跡の地下水がある。

 大きなお鍋は、ふたつある。

 はっ……きてるわね。


「…………ふふ」

「クルルカン?」

「チロンちゃん、炊き出しのメニュー、決まったわよ」

「!? どうするの!?」

「この茶色いのをね……お湯の中に、突っ込むの!!」

「!? えええ〜〜!!?」



 さぁーて、ここでやっちゃおうかな?



「……クラウン。歯車で、野菜の皮って()けるかな?」

『────レディ(準備完了)

 ────お任せ下さい。

 ────ポタタの芽など:粉砕してみせましょう。』

『>>>まさか……回転でえぐる気か……』

【 ええええええ!? 俺っちの出番はぁあああ!? 】

< わ、わっち、今回は用無しどすえ……? >

{{ あ、私は別にパスでも…… }}


 いや、後でお肉の下ごしらえとかするから……。

 みんなに助けてもらいますから……。


「……ねぇ、チロンちゃん。今から見る事は、私たちだけのヒミツだかんね?」

「う、うん……?」

「──きっひっひ。では……あわれな野菜どもよ。片っ端から、裸んぼになるがいい──!」


 黄金の光が、調理場に(きら)めいた。


 ────ぎゅぅぅぅうううおおおおおおんん!!

 バリバリバリバリバリバリバリィィ────!!

 

「あわわわわわ……! く、クルルカン、ヤバい────!!!」



 ぴょこぴょこ────!!!




(✽´ཫ`✽)もうわかるよね!!

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