配達は爆発だっ!!
ひゅ〜〜るるるるるるるるるるぅぅ〜〜──……。
「……んで、ちょっと私に説明してくんなぃ? お二人さん……」
『────……。』
『>>>…………。』
「説明、してくんにゃい……?」
なぜに私が、"お空まっ逆さま"なのかをさぁぁぁ…………!
『──五フヌ前に戻るニャよ!。』
────ギュルルルルルルルル──……!!!
義賊の足には、キンキラ車輪────。
『────"スケイルスケイター":正常稼働中。』
「……ねぇ、やっぱこれ、ガルンの方が速いわよね?」
『>>>うーん、今回、街道つかうの? いつも通り突っきる?』
「えっ、かっ、考えてない……」
『────ガルンツァーの推定最高時速は:777ケルメル/ジカです。しかし:舗装されていない地形での運用は不可能判定。』
『>>>いや、舗装うんぬんっていうか、街道でもキツいだろうなぁ……。土が露出してる所もあるんだ。そんなスピード出したら、スリップするか、車体が浮くよ……』
「なにそれこわい……」
『────森林ではなく街道を選択した場合:目撃者数は増加すると予測。』
『>>>騒音被害もありそうだよねぇ……爆走するタイミングは考えた方がいいなぁ……』
「うぇーん! なんかいい案ないのぉ!? こんな事なら、お休みせずに速く行けばよかったぁ!」
『────落ち着いてください:アンティ。それではギルドの救援物資を受け取る前に:出発してしまいます。』
『>>>ははっ、本末転倒だねぇ』
「わらいごとやなぃっ! あ、じゃあやっぱ空だ!! 空に障害物はないわっ!」
『────むぅ。』
『>>>あぁ───……。』
「えっ、なに」
『────い:いえ:別に……。』
『>>>そ、空はねぇ……』
「なんで歯切れがわるいのよ……」
『────ウイング部をアナライズカードで形成した場合:強度に問題が……。』
「えっ、でも何回も作り直せるんだよね?」
『>>>あんまり高度を上げても、いざと言う時キケンだし……』
「いや、先輩……今まで私が、どれだけお空をピョンピョンしてきたと思ってんのよ……」
『────え──………。』
『>>>あ───……』
「えっ!? なに、何なのその反応!? ちょ、しっかりしてよ!? "カーディフ・ブースト"使えばいいじゃないのよ!?」
『────ギクッ。』
『>>>うわぁ……』
「ほらぁ、もうすぐ直線の道に出るから、誰かに見られない内にお空に飛びあがっちゃえばいいじゃん!」
『────あ:あのですね:アンティ……。』
『>>>それはちょっと、危険と言うか……』
「な、なんでよ!? お城でうさ丸探ししてた時も、問題なく使えてたじゃん!?」
『────じ:実は今:少し出力が不安定でして……。』
『>>>ちょっと威力に不安が……』
「なぁ──に寝言いってんの! あんな山火事が、すぐに無くなるはずがないじゃないのよ! 私、知ってんのよ? あーもー! らちあかん!!」
『────アン……。』
『>>>ちょ……?』
「そっちが使ってくれないなら、こっちでやりますよーだ。"デバイス"の実行権、もらうわよ──」
『────『>>>!!』。』
ジジジ……ポン。
「え──と、これね……"カーディフの火"……ポチッとな」
『────アンティ──ッッ!!!。』
『>>>いけないッッ──!!!』
「──へっ?」
ジジ……ポンッ。
─────────────────────────────
< log >
デバイス:"カーディフの火":ロスト▼
上位互換デバイス:"ソルギア":マウンテッド▼
直結起動・・・▼
─────────────────────────────
『────緊急停────!!!。』
『>>>多重積層アナライ───!!!』
「ふぁ──?」
────どごごがぁあぁぁあああああああああああああああんんんんん!!!!!!!
────。
『──冒頭に戻るのニャー!。』
──ひゅるるん、ひゅるるん、ひゅるるんる────ん。
──パリッ、バリッ、ジャラララララララ────……。
……拝啓、故郷の父さん、母さん。
今。私、アンティ・キティラは、
青い空を下にして、真っ逆さま落下中です……。
身体中から、透明なガラスの板のようなものが、剥がれ落ちるように、めちゃくちゃ噴き出しています。
恐らく、先ほどの大爆発から、クラウンと先輩が守ってくれたのでしょう。
──爆心地は、私の背中でした。
「ねぇ……説明して……なんで私、爆発したの……」
『────し:身体ダメージ:無。防御:間に合いました。』
『>>>ああああバカじゃないの……フィルター無しでやるとか、命知らずにも程があるよ……』
「にぇえ……なんで、爆発したの……」
……先輩にバカって言われたけど、
それに言い返す気力がない。
放心しながら半泣きである。
「ねぇぇ……、……。」
『────"力量加圧":強制モードを解除。』
『>>>ちょ、ちょっと待って後輩ちゃん!! クラウンちゃん、やっぱ多重積層で形成しよう! この高さだと、滑空した方がいい!!』
『────了解しました。ウイング部:構築を開始します。』
────ジジジ、ピピピピ────……。
ウィ──────ン!
カシュッッ!! パララララぁぁ──……!
私の身体をバクハツから守ってくれたアナライズカードが、組み変わり、半透明の翼になっていく。
六角形のカタチを連ねたような、光の羽根だ。
風の抵抗で、身体の向きが変わっていく。
「とっ……と!」
『────"多重積層アナライズホロウィング"6基:展開完了しました。少々:突貫工事ですが……。』
『>>>ふぅ──……こっちはブーストの調整デバイス組み直すよ……また焼けついて、消滅してたからね……』
「…………」
──"ベアークラッチ"を使って、
自分の羽根を見る。
淡い水色の、透明の六枚の羽根。
……なんとも絵物語チックだこと。
風を受け、滑り、私の身体を前に押し出している。
けっこう速い。
ツインテールからは、金色の光の粒子がふた筋、
まさしく、尾をひいている。
ま、それはいいんだけど……。
……──ヒュオオオオオォォォォォォ────……。
「おいこらぁ……」
『────……。』
『>>>…………』
「……"ソルギア"って、なんだぁ……」
『────……。』
『>>>あ──……』
「せつめいしないと、泣くかんなァ……」
『──五フヌくらい:経つニャ!。』
「……えと、つまり……"カーディフの火"が大きくなり過ぎて、停止できない……ってこと……?」
『────うぅ:ぅぅ……。』
『>>>ま、そういう事だねぇ……』
いや、そういう事だねぇ、って、アンタ……。
「そ、そんなにヤバいの……?」
『>>>けっこう……"箱庭"の太陽、覚えてるでしょ』
「あ、あぁ……あれ、確かに"カーディフの火"だって言ってたわよね……でも、それは例えばの話で……所詮は、山火事でしょう……?」
『>>>それが、ねぇ……』
『────謝罪します油断していたんですあそこまで高出力になるとは予測以上です異常です内部歯車構造にアクセス不可能です今も内側に加速度的に威力が膨大していますあれに触れてはいけません押し止めているんです膨らんだ風船のようです内部に無限が閉じ込められています。』
──は、早口のクラウン、こわっ!!
「ま、まさか……本当に太陽みたいになってる、なんて言わないわよね……?」
『────ぅぅあう:う"ぅぅ──……。』
『>>>…………』
……………………まじスか。
「……どこかに、捨てにいきましょう……」
『────ひっ:非推奨の行動ぅぅ……。』
『>>>そ、それはダメだっっ──!!』
「──なァんでやねんっ!?」
元々、ひろってきた山火事なんだから、
どっか……とりあえず小分けにして捨ててきたらいいんじゃないのッッ……!?
『>>>い、いいかぃ? 後輩ちゃん……。きみの"時限結晶"は、たとえ無限質量であっても保管できるんだ……。それを最大限利用して、何とか"ソルギア"の外側への拡大を、抑え込んでいるんだよ……でも、"内側"は別だ……』
「食堂娘にもわかるように言ってくださいぃぃ……!」
『>>>いくらでも入る箱の中で、太陽は膨張し続けている……』
「 」
『────う:ぅぅぅぅぅ。』
『>>>……"ソルギア"は、"太陽のビックリ箱"だ』
い、いちばんビックリ箱にしちゃいけない物だぁ……!
『>>>問題はね、後輩ちゃん……。そのビックリ箱の"バネの強さ"が、ぼく達には、全く計測できないんだよ……』
「…………」
『────ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい──。』
『>>>だからさ……。そんなもん開けて、"世界がビックリ"しちゃったら……大変だろぅ……?』
「…………」
…………。
「────うわぁぁぁあああんんん!!! おかあさぁぁぁあああああ────んんんんんッッ────ッッ!!!!!」
その後、再調整した"ソルギア=ブースト"で、
ちょっとだけ加速した。
むっちゃ速かった。
ぴゅん、ぴゅ──────ん!!!
(*´ω`*)おおきゅうなって……。