ギルマス、きみにきめた!
誤字が減らない……ごめぬ。・(つд`。)・。
かばは悲しくて玉ねぎサラダにカツオのタタキを
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コツコツコツ。
ズッシズッシ。
キンキンキン。
3人で、ドニオスギルドの格納庫ってトコロに移動している。
パートリッジの街への支援物資が集められているらしい。
荷物を運んでいるギルド職員のみんなが、
通りすがりに、私たちをチラホラ見た。
途中でキッティが他の職員さんに呼ばれ、
走って、先に行った。
「……」
「……」
ズッシズッシ。
キンキンキン。
ヒゲイドさんが、ぜったいに私に申し訳ないと思っている。
後ろから見る背中が、デカくて、重い。
「……話せば」
「え?」
「お前に話せば、お前の性格上、受けてくれると思っていた……」
「……ふふ、そうですね」
「すまない……」
「人助けですから! ほら、クルルカンだし」
「しかし、お前の秘密は……」
「確かに、こわいと思います。未だに家族が人質に取られる夢なんかも、たまに見ます。でも……」
「でも……?」
「たぶんこれって、私にしかできないことだから」
「……」
「それに」
「?」
「こんな日が来るんじゃないかなって、実はちょっと思ってました」
「アンティ……」
「ふふんっ♪ 有能な冒険者を使って、できる限りのお仕事をスマートに運用するっ! ヒゲイドさんは、ギルマスとして立派だと思いますよ? 私の性格、よくわかってますし!」
「……、……。……アンティ。俺ができるサポートは、全てやる。何でも言え」
「あぃ」
ズッシズッシ。
キンキンキン。
ついたのは、大きな、大きな部屋の前。
ギルドの裏に、こんな所があったんだ。
奥に、いっぱいの木箱と、人。
「……」
私、木箱の量、ナメてた。
こりゃ多い。
もちろん、ぜんぶ入る。
……だからこそ、めっちゃ目立っちゃうと思う。
あ。あの人は私服だけど、
ギルドの制服姿でいるのを見たことがあるわ。
休み返上で働いてるんだろな……。
……キィン──!
「「「「──!」」」」
ヒゲイドさんと一緒に、室内に入る。
入口の所に、"第一多目的格納庫"と書いてあった。
私の足音に反応したのか、中にいたギルドのみんなが、
ほぼ全員、私たちの方を見る。
ん……なんだろ? この雰囲気……。
なんか、不安そうな目線が多いような……?
ヒゲイドさんが声をあげる。
「だいたい準備は終わっているか! キッティ。木箱の数はどうなっている」
「は、はい。今で127箱になりました。火の魔石のストックがかなりありましたので、その分が増えています……」
「そうか……」
ギルド職員さんたちは、険しい表情だ。
ヒゲイドさんを見上げてる……だけじゃない。
……なんだろう。やっぱり私も見られてる。
険しい表情だ。
キッティが側にやってきた。
「……キッティ。もしかして私、歓迎されてない?」
「そ、そういう訳ではありません。ただ……」
「……ただ?」
「……──ギルマス、少々よろしいでしょうか」
「──!」
男性のギルド職員さんが、ヒゲイドさんに話しかけた。
「……なんだ。手短に頼む」
「まさかとは思っていましたが……彼女に……アンティさんに、物資の運搬を頼むおつもりですかっ?」
「……! ……」
ヒゲイドさんが、こちらを見た。
事実だから、しゃあない。
……無言で頷く。
「……そうだ」
「──っ! バカなっ……!」
ざわ……
ざわ、ざわ……
目に見えて、皆がざわついた。
……そっか。
これ、私……、信用されてないんだな……。
キッティが横で、小さな声で教えてくれた。
「……アンティさん。ギルマスは今朝、救援物資を全て木箱に詰めるように指示しました。普通、アイテムバッグのそれぞれの容量はバラバラなので、小分けにして、入るだけ入れるのが普通です……」
「……! ……それって」
「ええ……ギルマスは、アンティさんがこの依頼を受けるのを、ほぼ確信していました。他の冒険者の方も、"目撃者"を減らすため人払いさせました……木箱に資材を入れて、本来は運搬協力を仰ぐべき冒険者の方を排除した……それで、ギルドの皆は、ギルマスへの不信感がつのっているんですよ……」
「ぁりゃ……」
そか……普通のアイテムバッグだと、あの大きな木箱自体が入らない事もあるんだね……。
ヒゲイドさん、私が断らないって確信してたのかぁ……はは。
信用されてるなぁ、私の性格……。
男性職員の人が一歩踏み出し、私を睨む。
「……ギルマス。あなたが箱詰めと人払いを指示した時、ギルドの皆は、予感はしていたのです……! もしかしたら、この"クルルカン"の少女に頼むのではないかと……!」
「む……」
「しかし……この量は、無茶ですよ!! ギルマス!! 正直、あなたが何を考えているのか、僕にはわからない!!」
「…………」
……わぁ。
『────……。』
『>>>あっちゃ〜〜……これけっこう、こじれそうだな……』
「っ……」
「う」
男性職員さんと、目が合った。
「……おい、気を悪くしないでくれ。君が、たくさんの手紙や小包を運んでくれていることは、ギルドの誰もが知っている!! しかし、これは無理だろうっ!? 君のアイテムバッグには、この全てが入るって言うのかぃ!? それに、なぜ他の冒険者を近寄らせない!? 運搬の手伝いや、護衛の者はどうするのだっ!?」
「……アンティ」
ヒゲイドさんの目線。
……。
……護衛、か。
…………ダメだ。
誰かが側にいたら、全力では、走れない。
気遣いはありがたいけど……確実に、遅くなっちゃう。
あと、他の冒険者の人に、
私の格納量がバレるのも、こわいな……。
ギルドの人にバレるのは仕方ないかもだけど、
冒険者の噂なんて、どこまで拡がっていくか、
わかったもんじゃない……。
みんな、ゴリルさんみたいに黙っておいてくれるかどうか、わかんない……。
私は、首を横に振る。
「……単騎で行かせようと思っている」
「──あ、頭がおかしくなったのですか!? ギルマスっ。どうして!?」
あぁ……。そう、なるわよねぇ……。
「こんな量の物資を、この子に運ばせるっ!? か、仮にこれを全て持てたとしても、彼女はGランクっ……最下位ランクだ!! 万が一、彼女の身に何かがあったら、どうするのですかっ!? これほどの物資は、そう簡単には、再び用意なんてできませんよっ!?」
必死の、訴えだった。
……当然だと思う。
私みたいなガキが、これを安全に運べるなんて、
誰も信じられないだろう。
周りの他の職員さんは、黙って聞いていた。
……たぶん、みんなこの男の人と、同意見なんだと思う。
「ど、どうされてしまったのですか、ギルマス……!? とにかく、冒険者を募りましょう! 木箱からアイテムバッグに資材を移して……」
「──ダメだ。木箱は必要だ」
……! ヒゲイドさん……?
「な、なにを……」
「ギルマス、どうしちゃったんだ……?」
「なんで、そんな無茶なことを……」
ざわ……
ざわ、ざわ……
「……」
……いけない。
このままじゃ、
ヒゲイドさんと、ギルドの皆が、分裂しちゃう。
そんなの、誰も望んでいない。
考えろ。
考えろ、アンティ。
どうすれば私は、信用してもらえるのかを──。
……。
……。
……。
ダメだ。
もう、シンプルにいくっきゃない。
「ぎ、ギルマス!! あなた、何を考えてっ……」
「 ──── わかるわ 」
「「「っ!」」」
……──キィイン……!!
「 あなたが言っていること、わかる── 」
「……き、きみ……?」
「 ……私は、確かに頼りなさそうだよね。こんなバカみたいなカッコウしてるし、子供だし。こんな大変な仕事を任せたら、不安だって、そりゃ、わかるよ── 」
「いや、それは……当然で……」
「 ……でもね、私。今回の仕事……降りる気は、ない 」
「 えっ ……? 」
「アンティ……」
「アンティさん……」
目の前の皆が、
信じられないような面で、私を見る。
……しらん。しったこっちゃあない。
最善の答えは、もう、出ている──。
『────ふぅ:ふふ……。』
『>>>あぁ〜〜……はは。こうなったらこの子、譲らないぞぉ〜〜……?』
……さぁ。
私のしまらない頭で考えつく打開策なんて、
ほんの、ひとつだけだわ。
「 ……ねぇ、ヒゲイドさん? 」
「ぅ……なんだ?」
すぅ〜〜……、ふぅ〜〜──……。
「 ──殴りかかってこい 」
「 おま …… 」
金色のグローブを、持ち上げ、
ゴールデンフィンガーで、クイクイって、する──。
やっすい挑発よね。
「 "なぐりかかってこい"って、言ったのよ 」
「──!! お、おまえっ……!」
「あ、アンティさんッ!?」
おぅおう……なによお二人さん。
そんなビックリしちゃって。
「な……!? 何を言っているんだ!? 君は……!?」
男性職員さんが、面食らっている。
後ろの何人かの受付嬢さんが、真ん丸お目目で、固まっている。
……ま、今は放置ね。
「アンティ……!!」
「 ……"弱い"と思われているなら、ソコをぶっ壊すしかない 」
「 ……!、……!! し……かしっ……! 」
「 ……さっき言ってたでしょ。"俺ができるサポートは、全てやる。何でも言え"って 」
「 ……っ!! 」
「 いま、言ってんのよ 」
ヒゲイドさんが、目を、見開いた。
「き、きみ……ほんとうに、さっきから何を言って……」
「……──うぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお────っっっ!!!!!!!!!」
「「「「「「 ─ッッ!!!?? 」」」」」」
ヒゲイドさんの雄叫びが、大きな部屋の中に、
ビリビリと、響く。
大きな大きな黒いスーツのジャケットの、
至る所が、裂けた。
「──みっ、皆さん、下がって!! 下がってくださいっ!!?」
キッティが、慌てながらも、皆を下がらせる。
──さっすが、ベテラン受付嬢。よい仕事。
「 ……クラウン。"ベアークラッチ"、展ッ開! 」
『────レディ。
────アナライズホロコーティング:積層展開を開始。
────第二装甲ギアロック:解除します。』
──オォオオオオオオオオオ─────……!!
──ぎゅい、ぎゅぃぃぃいいいいいいんんん──……!!!
──シャァァアアアアアアア────……!!
「な、なんだ……? あの子の、髪。金色に、光って……!?」
「うそでしょ……どうなってんの……?」
「……きれい……!」
──カチカチッ、きゅうううんん……んんん!
『────"ベアークラッチ":スタンディングバイ。
────流路接続99パセルテルジ:正常値です。
────ドラゴニックインナーマッスル:組織結合完了。
────"近接戦闘モード"です。』
……おぅーし。準備おっけーだね。
『────"眼魔":発動中。』
上着がビリビリになった、
身長3メルトルテの魔王様からは、
私にだけ見える、赤い光が揺らめいている。
『>>>へぇ……ギルマスさんって火属性なんだねぇ。あれは魔素を肉体のパワーに変換してそうだ……こわいよぉー?』
「火山ってさ、あんななのかな……?」
先輩が、ヒゲイドさんのチカラを予想してくれる。
なんだ。
止めると思ったら、けっこうノリノリじゃない。
「ふぅぅ……アンティ……よいのだな……?」
「 もぅ、上着やぶっといて、なぁに言ってんのよ 」
周りのギャラリーが、すごい顔してるわ。
あ、ベアークラッチで、全方位、見えておりますので。
「な、なにが起こってるの!?」的な顔だわ……ぁはは。
「バッ……! ま、まさか、やりあう気かっ──!?」
「おいおいおいおい……! マジかよッ……!? ギルマスって……引退してるとはいえ、"Aランク冒険者"だぞっ──!?」
「ちょっ──!? こんなところでギルマスが暴れたら、資材が吹っ飛ぶわよぉ────!!?」
だ──いじょうぶ。
そんなへま、しないわよ。
そうよね? ヒゲイドさん。
「ふぅ──…………いくぞ、"クルルカン"よ──!!」
「 ── あぃよ! 」
ドッ────、
キン────。
結果から言うと、
私は13発のパンチを避け、
お腹に一発、裏拳を入れた────。