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☪ SEXY TONIGHT……! ☪ ⑲ さーしーえーまーつーりー




 変態がいたら、君たちは、どうするだろうか。




 悲鳴をあげる?


 もしくは憲兵に突き出す?


 なるほど、それは確かにノーマルだ。




 そして今、それは現実となった。


 確かに彼は、そこに立っている。




 悪魔が、魔獣が、狩人が、虎猫が。


 ボロきれをまとう美しき乙女たちが。


 それを、見ている。


 しかし、悲鳴など、あがらなかった。


 敵であるはずの、ビック・ブリーフでさえ、


 この時ばかりは、声を殺した。




 乙女たちは、黒いゆらめくシルエットに、


 (ほう)けるように、魅入(みい)る。


 なぜか、本能で、理解した。


 この変態は、私たちの、味方だと─────。




 ──そう、彼は、変態で。


 そして、何かが、完成(・・)していた──。




 ハートビート&ロックンロールが、


 今、聞こえる─────────。








挿絵(By みてみん)

「 ──FYUUUUUU──OOOOOOOOO……! 」


 "ゼッタイ・アブノ・マール"は、


 ここに、目覚めたのだ────!!!




{{ や、やったわ……! }}

「……っ! お、おいイニィッッ!?」



 ……どさっ!


 力が抜けたように悪魔が倒れ、

 狩人がそれを、受け止める。

 この二人は、すでに名でお互いを呼ぶ仲となっている。


「おい……っ!」

{{ きゃは、はは、やってやったわ……! }}

「いや、やってやったって、おまえな……?」


 狩人が、戸惑いを含みつつ、黒の変態王を見る。

 すぐ横に浮かぶ、虎猫の妖精が言う。


『──ニャッ……!?。ニャんニャんニャ:あの高密度:流路装甲ニャ……!?。"転換路"、"せくすぃーくろーばー"、"闇の力"が:あのヘンタイさんとヒトツになってるニャー!。』

『 ガルルンルゥ────ン♪♪♪ 』

「ぃ、いや、なんかあの鎧、すげぇ所に穴が空いてんだけどョ……」


 狩人の言う通り、

 漆黒の装甲は、3つの箇所が解放されている。

 ハート型の意匠に、穿(うが)たれた神秘!!



 ────左乳首!!


 ────右乳首!!


 ────そして、ギャラン・ドゥゥ!!!



 最後のひとつは、もう少し下なら、アウトである。


 幸いにも、変態の処理は、完全無欠であった。



「仮面……騎士様……! な、なんて力強いお姿なんでしょう……!」

「なんと言うことじゃ……! あのように露出面積が少ないというのに、あの存在感とはっ……!!」

「……神々しくすらあるのじゃ……! 若い頃のワシらに、見せてやりたいモンじゃのぅッッ!!」


 桃の髪の乙女と老夫婦が、なんか感動している。

 目の前に立つ、大いなる白の悪意を、無視するほどに。


 ────スルーされぎみの白は、(うな)るように、言った。



『『『 ……認めぬ…… 』』』


「 ………… 」


『『『 ……認めぬぞ…… 』』』


「 ………… 」


『『『 ──ッッ!! み、認めぬぞぉおおおおお!!!! お前が、お前のような!! ポッと出のブーメランパンツが!! "完全(かんぜん)(ちょう)変態(へんたい)"を成し遂げるなどとォォオなあぁぁァァァアアアアアアアア────!!! 』』』



 体長10メルトルテを超えし、肉厚のブリーフが、

 冷や汗まみれで、絶叫する。


 対する変態は、静か。

 その外見だけは、静かさを(たも)ち。

 変態紳士は、白に、つげるのだった。



「 FYUI──……わかっているはずである。エロメイネス・P・シャイニングよ……。この姿が、貴公がたどり着きたくて、たどり着けなかった姿、そのものだとな……。お前は、一番大切な、"せくすいーぱぅわ"の本質を、見誤ったのだ……! 」


『『『 だ、だまれ……ッッ!! 』』』



 白の怪物の心に、(あせ)りと、疑念が渦巻く。


 "まさか、まさか────こいつの、言うとおりなのか?"


 "私は、"エロティック"が最強の力だと、過信してしまったのか?"


 "白ブリーフは……世界最強の下着では、なかったのか?"


 エロ伯爵は、自分の信じてきたものが、


 ぐらりぐらりと、ゆらぐのを感じていた。



『『『 そ、んな、バカッ、なっ……!? 仮に、お前の言うことが正しかったとして……それでは、私が今までやってきたことには、いったい、なんの意味があったというのだ…………!? 』』』


「 ……エロよ 」


『『『 ……くっ! 』』』


「 ……そのブリーフ魂にも、"せくすぃーぱぅわ"はあるはずなのである……! しかし、貴様は!! 自身の"エロティック"に溺れ……周りの人々に溢れていた"せくすぃー"に、目を向けようとしなかった!! 自分のためだけに、突き進んでしまった!!」


『『『 ──ッッ!! かっ……!! 』』』


「 ……最後に問おう。"せくすぃーNG"を、(つぐな)う気はあるであるか…… 」


『『『 ………… 』』』



 沈黙。



『『『 寝言は、寝て言うがよかろう……!! 』』』


「 ……っ!! 」


『『『 ふ、ふ、フォハハハハハハハハ!!! "せくすぃー"だと!? それが、周りに溢れていただと!? フォハハ!! おまえは頭がおかしいのかッッ──!? 』』』


「 ……伯爵よ…… 」


『『『 ──っ、忌々しい……!!!!! 今、お前が身につけているものは、私が神になるための神具さぁ……!!! フォハハハハ、フォハハハハ……!!! ……返して、もらおう 』』』


「 ……致し方、ないのだな 」


『『『 ──くどい。フォオオオオウウウ───!!! 』』』



 ゴ、ゴ、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………!!!!!


 エロメイネスの巨躯から、輝かしい光が溢れている。

 麗しの乙女たちから奪いし、神秘の力が。

 その肉体は、さらに膨れ上がる。


 変態は、動かない。



『『『 ──ブ、フ。お前を倒し、全てを奪ってやる。その次は、後ろの女どもだ。老害二人はいらぬ。私の糧にはなれんだろう…… 』』』


「 ……ッ、貴様ッ…………!! 」


『『『 フォハハハハ!! 矮小なる黒よ。その小さな体で、私を止められるものなら、止めてみせよ!!! 』』』



 ……ズズゥゥウウンンン!!


 ……ズズゥゥウウンンン!!


 巨大エロ伯爵が、

 天井すれすれのその体で、

 こちらに歩いてくる。



「あ、ああ……」


 

 桃の乙女、ラミエリは、恐怖した。

 確かに、目の前の変態は、完成されている。

 でも、体格差は、歴然だ。

 あの凶悪な光の権化(ごんげ)に、

 本当に、勝つことなど可能なのだろうか──……?


 不安な眼差しで、黒の背中を、見た。


 ───変態は、片足を上げ、



「 ──FYUUッッ!! 」



 ──がァアン!! と、地面を踏み固めた。


 その瞬間────!!!



 ぶぉぉおおッッ────!!!



{{ なっ──!? }} 

『 ガルルッッ!!? 』

「な、なんだよ、この光……!? 」

『──床が:ピンクに光ってるニャ!?。』

「か、仮面の騎士様の足元から、光が拡がっていく──……!」

「おお、なんという……」

「温かな光じゃ……!」


『『『 な、なんだこれは……!? 』』』



 黒の変態王から拡がる、ピンクの光。

 暗闇は、淡く照らしだされ、皆を驚愕に染める。



 それは、まさに────、"せくすぃーふぃーるど"。



 変態の支配せし、王の領域(フィールド)である。

 彼は振り向き、桃の乙女と、老夫婦を見る。

 乙女は、胸が高鳴った。


 ──優しい声で、変態は告げた。



「 すまない……かりるぞ(・・・・)其方(そなた)たちの"せくすぃー"を……!! 」


「 え……? 」



 ぴかぁぁあああ──!!!



「──わっ!? こ、これッッ!? 」



 桃の乙女の、胸元が、光る。



 ぴかぁぁあああ──!!!



「うおお、なんじゃあああ!!?」

「ワシの、ボインがぁぁあああ!!!」

「!? じ、じぃじと、ばぁばも!?」



 桃の乙女と、老夫婦。

 光輝く、ピンクの光。

 そして────それは、出た。


挿絵(By みてみん)

「──……!! 光輝く、"ハート"……!」

「わ、ワシの胸板から、"ハァト"が出よったッッ!!」

「おぉ……ワシからもじゃて!!」


 皆の視線を浴びながら生まれる、3つのシャイニングハート。

 それはまるで、生命の輝きのような。



『──ま:まぶしいニャあああ──!!。』

『 ガガガッ、ガガガガッッ──!? 』

「おいおいおいっ!? なんだァ、こりゃあ!?」

{{ ──!! 店長、まさか──!? }}


「 FYUUU……そうである。それが、其方(そなた)たちの"せくすぃーの力"……! 誰もが身に宿す、生命のチカラなり……!! 」


「こ、これが私の、"せくすぃー"……!?」

「よ、よもや、こんな老いぼれに、そのようなチカラが……!?」

「じゃが、この光は、温かい……!!」


『『『 ぐ、ぐおぉお……!? なんなのだ、この光ははぁああ────!!? 』』』



 エロが眩しさに(もだ)え、

 ズズン、ズズゥンと、足踏みしている。

 それほどに、強いピンクフラッシュなのだ。



「 FUMU……ガルンよ、頼みがある 」

『 ──ガ、ガルンッッ!? 』

「 我とエロとの戦いから、皆と、"せくすぃーがぁるず"たちを守ってほしいのだ 」

『 ガ、ガルルン!! ガ、ガルルルルゥゥ…… 』

「 ──!! そうか……。自身の手で、エロと戦いたかったのであるな……? 」

『 ガル…… 』

「 すまない……それは、我に任せてくれぬだろうか。我も、初めて使う力を制御できるかわからぬ……。イニィ殿もヤンも疲れている。広範囲を守れるのはガルン、君だけなのだ…… 」

『 ガ……ガルン! 』

「 ……頼む 」


 桃の光の中で、変態王は魔獣に、頭を下げる。


『 ──ガルンッッ!! ガルンガルンッッ♪♪♪ 』

「 ……──! ふ……これは時給アップせねばな…… 」

{{ ……あら、私もお願いしたいですわね? }}

「……お、じゃあ私もどうよ?」

「 ……ヤンよ。貴様は雇った覚えはない 」

「へっへ……ダンナ」

「 うむ? 」

「──やってやんなッ!」


「……!! うむッッ……!!!」



 コォォオオオオオ────!!!


挿絵(By みてみん)


 3つの光のハートは、傷ついた者たちを離れ、

 変態王の元へと────。


 そして、もちろん(・・・・)、それは!!!



「 FYUUUUUUUUUUUUUU────!!!!! 」



 変態ボディの"アソコ(・・・)"へと、


 装備される(・・・・・)のだ────!!!!!




 3つの"せくすぃーハート"は、

 3つの"せくすぃーハート"に、

 吸い込まれる────!!!!!

 



「 "ニップル・レフト・せくすぃ"ィィイイイッッ!!!

 ファースト・エクイップッッッ!!! 」


 ピカァァ!! ズッッ、ギュウウウンンッッ──!!!

 それは、老婆の優しさの"せくすぃー"!!!

 左の乳首に、それは輝いたッッ───!!!!!



「 "ニップル・ライト・せくすぃ"ィィイイイッッ!!!

 セカンド・エクイップッッッ!!! 」


 ピカァァ!! ドッッ、キュウウウンンッッ──!!!

 それは、乙女の輝きの"せくすぃー"!!!

 右の乳首に、それは輝いたッッ───!!!!!



「 "ギャラン・ドゥ・せくすぃ"ィィイイイッッ!!! 

 ファイナル・エクイップッッッ!!! 」


 ピカァァ!! ドッッ、パァァアアンンッッ──!!!

 それは、老人の強さの"せくすぃー"!!!

 股間の上に、それは輝いたッッ───!!!!!



「わ、ワシのハートが、股間に輝いとるぅぅぅうううう!!!!!」



 激烈に、ハート!!!

 鮮烈に、ビート!!!

 豪烈に、エクセレント!!!

 変態王は、完全となる────!!!!!



「 FYUUUUUUUUOOO………!!! 」



 いま、変態王は、エクセレントなポーズをとっている。

 どんなポーズかは、ご想像にお任せだッッ!!!



『『『 フォ、フォウッッ……!? な、なんだ、その"エロティカル"な姿は……!? 』』』



 さすがのエロ伯爵も、戸惑いが隠せない……!

 変態王の恥部は、光輝いている。 



「 ──ガルンよ!! 何をしているッッ!! はやく"せくすぃー"たちを守るのだッッ──!! 」


『 ガッ!? ガ、ガルンッッ!!! 』



 呆気に取られていた魔獣の身体が、膨らみ出す。

 暗黒の(おり)が、形成されていく。

 魔獣は考えた。

 どのようにしたら、被害を最小にできるか。



『 ──……! ガルン──……♪♪♪ 』



 ───そうだ。

 壁を作るより、

 戦っている者たちを(・・・・・・・・・)囲んでしまえばいい(・・・・・・・・・)



『 ───ガルルゥゥウウロロロオオオオンン!!! 』

{{ ……──ガルン!! こ、これは……!! }}

「マジかよ……いやァ、世界って色んなヤツがいんだなぁ……」


『『『 な、なんだ、この囲い(・・)はッッ!!? 』』』


「 FYOUUUU……!! なるほど……ガルンよ!! 見事である!! これは臨時ボーナスであるな……!! 」


『 ガルンガルゥーン♪♪♪ 』



 ──────"漆黒(しっこく)リング(試合会場)"。


 それは奇しくも、異世界の格闘技会場に似ていた。

 変態王は、向き直り、そして────。



「 ──さぁ、エロメイネスよ…… 」


『『『 ────!!! 』』』



「 か か っ て き や が れ 」



『『『 ざ、ザケンナァァァァア────!!! 』』』



 巨大な光のこぶしが、変態王を襲った!!!

 ものすごいプレッシャーであるッッ!!!

 いくらなんでも、体格差がありすぎる!!



「だ、ダンナァぁぁああ────!!!」

{{ ……ッッ、店長ぅ……!! }}




 ───どっごぎゃああああああんんんん!!!!






 ────。





 ────。





 ────。

 




「 ──"ニップル・レフト・せくすぃー"……!! それは、孫を守りたいと願う老婆の"せくすぃー"なチカラ……!! お前ごときでは、この"せくすぃー"を、破ることはできない──!! 」


『『『  ば、か、なぁ…………!!?  』』』



 黒の変態の声。白の悪意は、目を()いている。


 絶対的な結果が、そこにあった。



「だ、ダンナ……す、すげぇぇ……ッッ!!」


『──ひ:光のシールドニャ!!。変態サンの左腕に、ピンク色の光の盾ができてるニャ!?。』


{{ て、店長!! やはり、その力は──!! }}




 ダメージは、微塵も通っていない(・・・・・・・・・)!!!


 左手に出現したハートの盾は、全てを防いでいる!!



『『『 う、うおおおおおおお────!!!?? 』』』



 連打!!


 連打!!


 連打!!


 怒涛のような、ラッシュ!!!


 しかし────。



「 ──ふッッ! 」



 びよよよよん。


 ぼよよよよん。


 ばぼぼぼぼん。




『『『 なぜだぁぁあああああ──!!?!? 』』』


「 言ったであろう……この盾は、我が左乳首に収まりし、老婆の"せくすぃー"の力だと! 」


『『『 ばかを言えぇ……!! そ、そんなことがあってたまるかぁぁああ──!!!! 』』』



 ……ドドドドドドド……!!

 


「……ばぁばの、"チカラ"……?」

{{ そうよ…… }}

「──! 悪魔さん……」

「どういうことなんだよ、イニィ!?」

{{ 店長はね……貴女たちの"せくすぃー"を、借りているのよ }}

「は、はぁぁ!?」

「私たちの、"せくすぃー"……?」

{{ ええ……今、店長の左胸にあるのは、貴女のお婆様の"せくすぃー"の力。さっき、身体を盾にしてまで貴女を守ろうとしたお婆様の"心"そのもの……! だから、左手に盾が出たのよ! }}

「な……あれが、ワシの"心"の力だというのかぃ!?」

{{ そう。貴女がラミエリさんを守りたいと思う"心"の力……! }}

「なんだそれ!? じゃ、じゃあよ……!? ダンナのハートはあと、2つ残ってるぜ!?」

{{ ええ……!! }}



 変態の左腕の装甲には、左乳首のハートの意匠から、

 ピンクの光の流路が、幾つも伸びている。

 それは、血液を送る心臓のように。

 左腕の光のハートの盾にエネルギーを送り続けている。


 ───ハート、ぜんぜん壊れねぇ。



『『『 フォ、フォオオオオウウウ────!!!?? 』』』



 エロメイネス伯爵は打撃のラッシュを止め、

 変態王アブノ・マールに、掴みかかろうとする!!



 シュバッッ────スカッ!!



『『『 ──!! き、消えたッッ────!? 』』』



 ……──トンッ。



「 ──"ギャラン・ドゥ・せくすぃー"……!! それは、孫を守りたいと願う、老人の"せくすぃー"なる勇気……!! お前ごときでは、この"せくすぃー"を、止めることはできない──!! 」


『『『 う、うしろ、だとっ……? 』』』



 ヤツは、ポールに立っていた。


 腕を組んで、立っていた。


 股間のハートからは、ピンクの光の流路が、


 両足の闇の装甲に、カクカクと根を張っている。


 ちょっと、ジュースをこぼしたみたいに見えなくもない。


 しかし、その"せくすぃー"は、


 下半身に、驚愕の脚力を生み出している──!!!



「 くらうがよい!! これが、愛のタックルだ!! FYUUUUU────!!! 」


『『『 なっ、ぐぉおおおおおお────!!!?? 』』』



 ───ドゴォォオオオオオンンン!!!



 変態の加速は、まるで火山の噴火のようである。

 手を広げて突撃する変態を、誰も止めることはできない。

 股間は光輝き、白の悪意は、リングのギリギリまで吹っ飛んだ。



「ワシの……"せくすぃー"……!!!」

{{ ふふ……そうね。あれは貴方が、そのお歳を召した体でも臆せずに、あの伯爵に飛びかかっていった、"勇気のせくすぃー"……!! 貴方の想いが、店長に爆発的な脚力を生んでいるんだわっ!! }}

「わ……ワシらのチカラを使って、あの方は戦ってくれとるのかッ……!」



 老人と老婆の目に、涙が浮かぶ。

 先ほど、自分たちの無力を噛み締めた彼ら。

 しかし、その想いを糧に、

 あの漆黒の戦士は、戦っていると言う。

 こんなに、嬉しいことはない。

 彼らは、涙で前が歪みながらも、その戦いを見つめている。



「なぁイニィ……私、思ったんだけどよ……」

{{ ……なぁに? }}

「今のダンナのチカラってよ、その……人から"せくすぃー"を借りて、それをエネルギーにすんだよな……」

{{ ……そうね }}

「それってよ…………無敵、じゃね?」



 狩人は、思う。


 まだ幼い、子供がいたとする。


 年老いた、戦士がいたとする。


 線の細い、乙女がいたとする。


 その者たちが、理不尽に襲われた時。


 恐らく、心の想いだけでは、それを防げない。


 だが、もし、この男が側にいれば。


 か弱い者たちの、


 "心をチカラに変える者"が、いるとしたら。


 それは弱きを守る、確かな光となるのではないか。



「……"心の、代弁者"……?」

{{ ……あら、うまいこと言うのね }}


 狩人の腕の中でぐったりしながら、

 悪魔が、笑みをこぼす。



 ……ズ、ズズズゥゥウウンンン……。



『『『 ぐ、く、くそぉ…… 』』』


「 ……どうであるか、エロメイネスよ。お前にも、わかっているだろうッッ……!! これは、お前がバカにしてきた者の"せくすぃー"の力であるとッッ!! お前が……お前が今まで(さげす)んできた者の中に眠る!! 尊い!! "せくすぃーぱぅわ"なのだぁぁぁああッッ────!!!!! 」


『『『 う、うそだぁあああああ────!!!?? あいつらは、ゴミクズだァァァァア──────!!!!! 』』』


「 ……お前にもう、言葉はいらぬ 」



 変態王の、右乳首が、強烈な光を放ち出す────!



「 ──"ニップル・ライト・せくすぃー"……!! それは、家族を守りたいと願う、乙女の"せくすぃー"なチカラ……!! お前の愚かさは、この光輝く"せくすぃー"に、討ち滅ぼされるがいい──ッッ!! 」


『『『 フォハハハハ……、フォオオオオウウウ────!!!!! 』』』




 伯爵は、両手を前に広げ、


 無数の光弾を、放つ。


 ひとつひとつが、屋敷を消し飛ばすほどのそれは、


 変態の盾により、霧散する。


 光。光。光。


 変態のブーツが、地面に食い込む音がする。


 しかし、進む。進む。進む。


 変態を、止めることなど、できない。


 光の力を使い、伯爵の肉体は、


 少しずつ小さくなってきている。


 しかし、その勢いは、凄まじい。


 白い閃光で、変態は見えなくなった。



 ………ドドド……ドドド……。



『『『 フォハ、ハァ……ど、どうだ……これが、私の…… 』』』



 肩で息をする、伯爵。


 光が、燃えるように変態を隠している。


 沈黙。


 不安。


 そんなものが、光に含まれ────、




挿絵(By みてみん)

「FHUUUUUUUUUUUUOOOOOOOOOOOOOOOO────!!!!!」



 それは咆哮と、ピンクの閃光に、塗りつぶされた。


 みっつの"せくすぃーくろーばー"は、


 光の流路となって、変態を覆い尽くしている。


 その雄叫びをあげる右腕は、大きく、後ろに引かれている。







 このエネルギーは、もう"せくすぃー"ではない。


 濃密なそのチカラは、たぶん、


 ──────────────"愛"のちからだ。






 ────伯爵は、ポツリと言った。



『『 そうか……私の、負けか…… 』』




「 ──" ラ ブ パ ン チ ッッ = グ レ ネ イ ド " ォォオオオオオオオ─────────!!! 」








 ──────。










「 ………… 」




 でかい穴が、あいていた。



 屋敷の壁に、でっかい、ハート型の穴が。



 朝日が(・・・)射し込んでいる(・・・・・・・)



 とっくに夜なんて、終わっていたのだ。



 大きなハートの窓に、一人の男の、シルエット。



 そこにいる皆が、温かい陽の光のなか、



 その背中を、見ていた。




 

挿絵(By みてみん)

「 ……"せくすぃー"は、重いな…… 」







 ───────── 変態が、勝った。






٩(๑>∀<๑)۶わった〜〜!!

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